第96話 終わりのラウンド
「( では最終ラウンド開始だ リズ )」
「え・・?」
向かい合うハスラーキッドの姿はもう消えかかっている
けれど確かに聞こえてきたその声
それは機械のような声でリズの脳内に響いてきて
以前の声よりもはっきりとしていた
(雰囲気が変わった・・!?
最終ラウンド、ですって・・ どういうこと・・?)
するとハスラーキッドはかき消えながら
まだ粒子が残っていた左腕をサッと上にあげる
その左腕を上げた方向先には
前にアスラが倒れこんで伏せていた場所があった
でも今はアスラは倒れていなかった
「(え・・!アスラ・・!?)」
「・・・」
アスラはボーっとした様子で目を虚ろにして
崩壊したその淵の場所までゆっくり立ち上がって歩きだしていた
「(ラウンド開始だ・・!)」
リズの頭に声が響く
その瞬間
「え・・・!これは・・」
(シュウウ・・!)
その声が聞こえた瞬間 それまでリズが負っていたケガが
みるみるうちに回復していっていた
ハスラーキッドとの戦いでバキバキにされたと思っていた左腕も
元通りになっていっていた
(え・・なんで・・!)
岩をひこずるような音がする そこに
まだ倒れていたドラグ・バルバロイがその様子を察知して声をあげ
「おい!お前何やってる! その力は・・!チッ
まあ今は何でもいい だが力を使い過ぎだ
とっとと仕留めてここから出るぞ・・!」
「・・・」
その声に僅かにハスラーキッドが反応する
(あいつ・・!)
イヴの破壊の力からはしぶとく逃れていたらしいけど
ドラグ・バルバロイはダンジョンの崩落には巻き込まれていたらしい
だけどその見た目は前と違って もうかなり再生していた
今はまだ本来の動きができる様子ではないけど
このままではそのうち立ってまた動き出すかもしれなかった
(だけど・・今はまだ・・そっちに気をさいている場合じゃないわ
アスラの様子がおかしかった )
リズがそこから飛び立とうとしてアスラの方を向くと
(シュウウ・・!)
リズだけではなく
アスラが負った胸の傷や頭の傷が元通りに治っていっていた
ただその間もそこに立っていたアスラは
まるで夢の中にいるみたいにずっとボーっとしていた
「・・!」
(え・・? アスラのケガが治った・・?どうして・・?
とにかくこの状況 不自然すぎる すぐにアスラだけでも)
リズはアスラの元に向かって飛び立つ
しかし
(あ・・・)
そう 虚ろなアスラがつぶやいた瞬間
「ズオオオオオオオ・・!!」
「!! え・・ うそ・・!そんな・・!!」
視界の上の崩れかけの岩盤の足場の淵にいたアスラの元に
消えかけだったはずのハスラーキッドから光の粒子が移動してきて
それがアスラの姿を隠すように周りを回り始める
「まって・・!アスラ! 逃げて!!」
そのリズの必死の声は届かず
アスラの体はその光の粒子で覆われる
そしてその光がひときわ強くなった時、
(バシュウウウ・・!)
「ああ・・!」
そこにはアスラではなく代わりに
「 ドン・・! 」
敵のハスラーキッドが漆黒の怪人の完全な形の姿を取り戻していて
ゆっくりと立ちあがる
「「 」」パリン・・
その怪人の手元には何かの力をまとう宝石の結晶のようなものがあり
その結晶がパリンと砕け散って消えていっているのが一瞬リズには見えた
(あれは・・一瞬だけ見えたけど
オリジンの「秘宝」アイテム・・?のように見えた
なんでここにオリジンの秘宝が・・!)
直後に
リズの脳の中に強いプレッシャーと声が響いてくる
・・
(シュウウウウウ・・!)
「(・・さて 俺は復活した より強い意思を宿した体となってな
これで終わりだ ・・)」
復活した怪人ハスラーキッドは
アスラが元いたその場所からは下層にいるリズの姿を見下ろしていた
「・・・!」
(ど、どうすればいいの・・? 消えかけていたハスラーキッドが今度は
アスラに乗り移ったっていうことなの・・?そんなのって・・
やっと倒したと思ったのに・・!)
(落ち着くのよ・・こいつの術はさっきの分だとあくまで憑依でしかない
なんとかアスラから引き剥がせれば
・・でもそれを、今更どうやって・・)
「(・・どうした お前が来ないなら 俺からだ・・!)」
「!!」
ハスラーキッドは直後に崩れ出した岩盤の淵から飛び立つ
そして一瞬で宙に止まったリズの前にやってくる
「ゴオオオ・・!!」
すると拳での攻撃を仕掛ける直前にハスラーキッドの拳と姿が
まるで残像のように2つにぶれて襲い掛かってきた
「(え・・この動き・・!)」
ハスラーキッドの動きはとてつもなく速く その2つの残像を同時に対応するのは
通常の挙動では不可能に近かった だけど
「パシイ・・!!」
リズはそのぶれていた拳撃を刹那の瞬間に なぜか目で捉えて防御できていた
「(腕をあげたな)」
(・・・!)
「(なら これについて来てみろ・・!)」
(ブウウ・・ン!!)
ハスラーキッドの体全体がまたブン!とぶれて
なにかを仕掛けようとしてくる前動作を始動する
「!」
(これは・・ただの前動作じゃない・・!
「即死コンボ」だ・・!!
オリジン即死コンボの特殊前動作・・!)
オリジンには即死コンボという
通常のコンボ攻撃ではない、
制限を取り払った凶悪な連撃のコンボ攻撃が存在する
相手プレイヤーに対して死の予告をする意味を持つ宣言であり
制限を一時的に取りはらう代わりにその攻撃に入る前に
相手にそれを宣言をするように前動作をして
対策の余地を与えるようにしなくてはならない決まりがある
「させない・・!」
(シュバッ!!)
リズはすぐさま即死コンボ前動作に対して
それを阻止するために右腕を突き出す
が
「!」
(残像・・!!)
ハスラーキッドの姿をリズの右腕が捉えた瞬間にその姿が
光になって崩れて
「パアアア・・!」
残像の代わりにハスラーキッドの周りを回っていた電子生命体が
その姿を現して散っていく
そしてその崩れた残像の下から
ニュッと残像でない実体のハスラーキッドが出てきて
すぐさま距離を詰めて熾烈な即死コンボ攻撃が開始された
その姿はオリジンの通常時の制限を取り払われたのと同じ状態、
以前の漆黒と銀色の姿と違って 黄金色の陽炎のように揺れていた
「(構えろ・・ 俺は一切容赦しない・・!)」
「!!」
「ビシイ・・!バシイ!! ビキイ!!」
「くっ・・!!」
(容赦しないですって・・、そんなの・・私だって最初からそうよ・・!)
(けど・・このコンボ・・抜け出せない・・!?
全部が精密に次の一撃に繋がって私の体勢を崩してる・・!
私の対応すら計算に入れて次の手を出してる・・!!
精密だけど戦い方がさっきとまるで違う・・!)
ハスラーキッドはさらに威力の上がっていく神速の連続攻撃を重ねていきながら
一方でリズの意識に問い掛ける
「(さて・・リズ 「オリジン」では通称「即死コンボ」と呼ばれている、
14連コンボ以上の凶悪な連続コンボは
それでもコンボで最後まで対戦相手の体力を削りきることは
オリジンの健全な遊戯システム上、止められていた
だが 今のこの世界ではどうだと思う・・?)」
「ビシイイイ!!」
ハスラーキッドの連撃で威力の上がった拳がさらにリズに突き刺さる
「っ・・!」
(う、うぐ・・!また・・! どういうこと・・!
でもこの感じ・・、
この世界では・・そういう制限はないってこと・・?)
さらに続けて熾烈になる攻撃
徐々にリズの身を押し削ってくるように力を増して近づいてくる
(まさか 私がつぶれるまでこの攻撃を続けるつもりなの・・!?)
(ズシュウ!!)
その時ハスラーキッドの背中から何かの力がたまったように
大きなエネルギーのオーラが立ち上るのが見えた
それでもリズは必死に抵抗する
(・・! オリジンでは並外れた連撃はフィニッシュまでは続けられずに
コンボでガードをブレイクしてから止めて
通常技や必殺技で最後に決める必要があった・・、え・・まさか)
強いオリジンの力のオーラに包まれていくハスラーキッド
「(そうだ 厳密には
この世界にそのような制約は存在していない
この世界で目覚めたオリジンは
元のオリジナルと完全に同じものではないのだ
つまり
このまま非情なコンボ攻撃で相手の肉体を人間の見た目でなくなるまで
削って倒しきることも この世界では可能ということだ・・
だが・・今、その必要はなくなった・・!)」
「ズオン!!」
ハスラーキッドはリズへの連続攻撃を切り上げて
そこに締めのコンボ連鎖で威力の上がった強力な突きの蹴りを入れる
「ガギャアアアアン!!」
(うあ・・!!)
その熾烈な一撃に
リズの正面ガードが破られて衝撃で無防備にはじき出される
そこにさらに
ハスラーキッドはイヴの必殺の力をも相殺した、
必殺のエネルギーを両手から集中していく
「(ここで 終わりだ・・!)」
「( 超 星 ・ギャラクシー !!!)」
・・・・
その少し前の時に遡り
勇者ミトラはその場所に少しずつ近づいていた
「ズウウウ・・ウン・・!」
上層の岩盤が崩壊する音や
そう遠くない場所でリズが恐ろしい敵と戦っている激しい戦闘音が響いてくる
(うわ!)
「ドゴオオオン・・!!」
ミトラのすぐ近くに天井から剥がれた岩石が落ちてきた
「ガラ・・」
動かなくなった巨大な虫の残塊の上に当たって
砕けた岩の欠片がミトラの目の前に転がる
リズに降ろしてもらった持ち場からミトラは離れていたので
ここは安全ではなく崩壊した岩が常に落ちてきている危険な場所だった
(こんなもの危険でもなんでもないわ・・!
降ってくる岩はある程度察知はできるし なんとか避けることもできる
私よりもリズは遥かに危険な目に合ってるのよ・・
少しでも私にできることをするのよ・・!)
・・・
「(あの辺りだわ・・ もう少し・・!)」
勇者ミトラは「獄炎刀」が
上層の方から落下して見えた辺りの場所にやってきた
(この辺り・・、 ・・!あったわ)
「ドオオオン・・!」
「ガシャア・・」
「!」
ミトラが近づくと崩壊と戦闘の衝撃で
足場が崩れて剣のあった位置がずれて金属と鉱石のぶつかった音が出た
「(大丈夫・・よね、 ・・よし)」
(本当に禍々しい剣・・)
勇者ミトラは身の回りの確認をしながら
獄炎刀のすぐ近くまでやってきてその横に座ると
自分の聖属性の魔力で新たに封印式が書けるかどうか試してみる
「(シュウ・・ ・・)」
「これではダメね・・ まだ新しくは魔力は練れないわね
仕方がないわ 移動ができなくなるけど
足に集中していた魔力を今はこっちに全て集中しましょ それでなんとかできるわ」
「集中よ・・」
(ポウ・・!)
勇者ミトラは移した聖属性の魔力を使って「封印術」の文様の術式を
目の前の獄炎刀に向かって少しづつ刻み込んでいく
「コオオ・・」シュウウ
それは大昔 人の国を築いた偉大な英雄たちが持っていたとされる、
魔物のいる荒れた土地の力や
どうしようもない強大な魔物の力を抑えこむための力で
強力なその力の大半は
後世の時代の人間たちにはろくに扱えずに忘れ去られていって
失われたと云われていたが
一部の術はその力の末裔だと云われている勇者の力を持つ者へと伝えられてきた
「魔力がこれだけじゃ難しいわね・・でも・・時間をかければ・・!」
必死で作業を続けるミトラの額に汗が浮かぶ
その時、
「おい・・てめえ・・なにしてやがる・・!!」
「!!」
そこにはこの剣を探しに来たのか
倒れたままで体を地面にひこずってきたドラグ・バルバロイがやってきていて
恐ろしい形相で勇者ミトラをにらみつけていた
すると
「ガシュ・・!」
「きゃあ・・!」
獄炎刀から蜘蛛の足のようなものが1本分離して伸びてきて
ミトラの顔を切り付けた
切り付けられたミトラの頬からはツーっと血が流れる
だけどその後
その別れた蜘蛛の足のような部分の動きが急速に悪くなる
「ちっ・・!封印式か・・!まだ俺の力が戻ってねえか・・、
獄炎刀をうごかせねえ・・!」
「・・・!」
勇者ミトラは剣が動かなくなったのを見て
さらに集中して封印式の作業を進める
( 時間がない 急ぐのよ・・!)
ミトラの頬から流れた血が作業をする指の間に落ちていく
「てめえ・・俺の剣を・・! 許さねえぞ・・
今から俺がそっちにいってやるからなあ・・!
体がろくに動かせなくとも
今のお前程度なら十分だ・・、バラバラに引き裂いてやる・・!!」
「(ガラガラ・・!)」
ドラグ・バルバロイが散らばった岩を押しのけながら
体をひこずってミトラの場所まで徐々に近づいてくる音がする
(急がなきゃ・・!でもこのままじゃ・・)
祈りに目を瞑る
(私の中にもし、かつての大英雄の力を宿しているのなら
お願い 今だけ私にもっと力を貸して・・!)
すると
「「 」」
封印式に勇者ミトラの想いに応えるように強い光の文様が浮かび上がる
「!」
(・・! こいつの血、やはり・・、ぐ・・まずいな)
その様子を見て少し焦ったようにドラグ・バルバロイは面を上げて
「おい 勇者ミトラ・・!お前だけここで必死こいて意味あんのかア・・?
お前らに勝ちの目はねえ・・!
どうせリズはもうあいつにやられるんだよお!!」
(リズは負けないわ・・!私信じてるもの だから私もここで・・!)
「ほら 見てみろよお!!」
「え・・?」
「ガギャアアアアン!!!」
そこには近くでリズが空中で謎の力を放つ敵にガードを容易く破られて
無防備にはじかれる姿がうつっていた
そして謎の敵から波打つように放つ力のエネルギー密度が
致命的なほど限りなく高まっているのが
ミトラのいるこの場所からでも感じられた
「ククク・・!雑魚勇者風情がこの状況をなんとかできると思うなよ・・!
お前もすぐ終わりにしてやる・・!」
「リ、リズ・・!」
・・・・・・
・・・
そして場面はリズの視点
目の前にはいよいよ絶大なオリジンの力を開放した
漆黒の怪人ハスラーキッドの姿
「(これで 終わりだ・・!)」
「( 超 星 ・ギャラクシー !!!)」
「「 」」
(これは・・!あの怪人のオリジン必殺技だわ・・!まずい
この規模の力だと 私の滅拳じゃ相殺できない・・!
相殺するには同格の必殺技を撃たないといけないけど
イヴが・・、さっき全部力を使ってて、もう必殺技が撃てない!!)
「 」
だけどここでリズは気が付く
ハスラーキッドが力を放つその腕を向けたのが私の方ではなかったことに
(え・・・?)
そのハスラーキッドの腕の先の方向を見ると
・・・
「・・ミトラ!!」
いつの間に前に避難させたはずのミトラが離れた場所の岩場に座っていた
( )
その勇者ミトラは必死に何かの作業をしていて
勇者ミトラの手元には何か大きな光の力が宿っていたが
ハスラーキッドはその勇者ミトラの方に対して
その必殺技をすでに発動していた
(ミトラ・・! なんでそこにいるのよ!!
いけない・・!! ミトラ!!)
「え・・・?」
勇者ミトラは突如自分に向けられたその巨大なエネルギーの塊に気が付いて
座り込んだまま呆然としている
リズは
(あのミトラの手元の強い光・・!
ハスラーキッドは・・最も強き力を宿す者を潰すって言ってた・・!
それがまさか反応して・・!)
「組みついてでも止める!! 滅 拳 !!!!」
リズはハスラーキッドに飛び掛かる
(正面から相殺しなくても
その術の始まる部分に当てて軌道を変化させるように
滅拳を発動させてぶつければ
必殺技であっても対抗して軌道を逸らすことくらいできるはず・・!)
「え・・?」
「パシイ!!」
「(ズシュウウ・・・)」
リズが飛び掛かって滅拳のエネルギーが炸裂しようとした瞬間に
その場所に見透かされるようにハスラーキッドの手が添えてあって
「 」
発動前のリズの滅拳の力が静止して
まるで吸収されるようにそこで抑えられていた
「そん、な・・!」
金色のオーラを纏う漆黒の怪人の横顔を通り過ぎる電子生命体の光
その切れ間にリズの攻撃を完全に見切った漆黒の怪人の鋭い目が見えていた
「お前の破壊の力、もらい受ける・・!」
「 超 星 ・ギャラクシー !!!」
光が走り まるで時空が捻じ曲がるような必殺の強烈なエネルギーが
あろうことかリズの吸収された破壊の力とも合わさり
それが ミトラのところに直撃するように向かって・・
・・・
「ギュオオオオ!」
ミトラは
その迫りくる光を見て
(あ・・だめだわ・・ 封印式に動くための分の魔力も集中しちゃったから
もう私逃げられない・・
リズ・・私・・
いえ、せめて・・この剣だけでも・・
ああ私って最後までだめね・・まだ途中なのよね )
勇者ミトラはやってくる光に照らされながら うつむいて
その途中までの封印式が刻まれた獄炎刀を見る
(( ))
だがその刀の様子が若干違う
するとその目の前の獄炎刀が
「ピシ・・!」
(え・・?)
軋んだような音をたてる
「ギギギギ・・・ギュギュオオオーン!!!」
「バギャアアアアン!!!」
ミトラの目の前にあった「獄炎刀」が次元が捻じ曲げられたように
形がグニャグニャに曲がったかと思ったら
それがねじ切れて さらに爆発を起こしどんどん粒子になって消滅していく
勇者ミトラの目の前の次元が捻じ曲がっていて
でもそのすさまじい力の衝撃はミトラの前では止まっていて
至近距離のミトラ自身には何も起こっておらず
何もわからないといった様子で
ミトラは地面に腰を落としてキョトンとしていた
(え・・どういうこと・・?)
リズは少し固まって 力を放った後のハスラーキッドを振り返る
「残念だったな・・ 狂乱の炎ドラグ・バルバロイ お前はここで終わりだ」
(え・・)
ハスラーキッドの声はそういった
「 な、な、なああ・・!!
お、俺の 「獄炎刀」があ!!! お前・・!
ハスラーキッドじゃないな・・!あいつだな・・!!
てめえ!!生きてやがったのかあ!! 」
地べたを這いつくばっていたドラグ・バルバロイが
ハスラーキッドの方に向かって狼狽えたように大声で吠える
その姿は獄炎刀が消えるにつれて
ドラグ・バルバロイの体も連動するように霧のように消えていっていた
「あいにくな お前たちのおかげでひどい目にあったぜ」
「 てめえ・・!!ち、ちい・・、あの時からすり変わってやがったのか・・!
途中から様子がおかしいと思ったんだ!!
許さねええ!!許さねえぞお!!
俺をこんなにしやがって・・! 」
「それは俺ではなくお前が勝負でリズに負けたからだ
まあ 今から本当に消えてもらうが」
ハスラーキッドはそういうと
獄炎刀に向けていた腕に纏っていた力をさらに含ませて集中させる
残りの獄炎刀の刀身は一気に粒子に変わる
「 く、クソガキがァ・・!
こ、この俺が・・こんなはずが・・、
ちくしょう・・!馬鹿がよお!!分からねえのか!!
今あるこの世界なんぞ仮初めにすぎねえんだ・・!!
今にオリジンは目覚める・・!
この世界に真の地獄の扉は開かれる・・!!
俺の力は世界に必要だ!!! 後悔するぞ!! 」
(・・・)
「この世界にお前の力など必要ない 消えろドラグ・バルバロイ」
その時
(( ))
「「 ・・・、ッウオオオ嗚乎オオオヴォオ!!! 」」
「!」「む・・!」
(ゴゴゴゴゴ・・!)
その言葉がかかった時 一体どこから来た力なのか、
姿の消えかけていた怪物ドラグ・バルバロイは執念の気迫だけで立ち上がり
最後の咆哮を上げる
( なにこれ・・、
今までの感じじゃない・・? )
それはまるで今までと次元の違う何か恐ろしいものがここで目覚めかけていて
暴走する直前のように危険な力のオーラが噴き出す
「ククク・・ふん ちょうどいいぜ 俺も消えるが
巻き添えだ・・巻き添えに
最後にこの火の山を呼び起こして噴火させてやる・・!」
「(な・・!)」
「「 」」ポウ・・
だが
その瞬間に
なにか柔らかな光が湧き出てきて
すると
ドラグ・バルバロイから噴き出していた何かのオーラは
すぐに消失して掻き消えてしまった
「 な・・、
そんなはず・・
ちっ・・、 なんだよ もう許してやがったのか・・ あまいやつだ・・ 」
「」
祈るような所作の勇者の少女
その怪物は最後に上を見上げる
「(ボシュウウ・・・!!)」
ほぼ粒子になっていた獄炎刀が完全に消え
するとドラグ・バルバロイの竜人の体が消えて
(ドサ・・)
憑依をしていた元の勇者アギトの体が地面にうつぶせに倒れていた
・・・
・・
(・・・)
「・・・・
貴方は味方ってことでいいの・・?」
ドラグ・バルバロイとの勝負がついた後のその様子を見ていたリズは
空中で静かに立っていたハスラーキッドにつめよる
「・・ああ そうだ」
「あなた・・誰、なの?」
「大きくなったな・・ リズ
俺は・・クルード
だがお前と同じようにこちらの世界につながっていたもう一人の俺だ
クルード・アドバンストだ」
そういったハスラーキッドの声は
いつの間にかもう脳内の声でも機械の音声ではなく人間の声だった
「クルード・・兄さん?」
「そう呼ばれていたな 俺があの施設で12の時か
リズとはもう・・8年も前だったな 見違えるわけだ」
(え・・)
もうそんなに・・
でもそんな彼はもう大人になっているはずなのに
なぜか聞こえてくる声は遠い記憶のあの時の少年のままだった
「 」
リズとハスラーキッドはそれまで戦っていた地下世界の空中から
ゆっくり地面に降りる
するとハスラーキッドの足元から
金色の光の粒子がさらさらと流れて消えていっていて
そこから元のアスラの足が見え始めていた
(・・・)
「クルードも・・消えちゃうの? せっかく会えたのに・・
聞きたいことがありすぎるんだけど・・」
「ああ この術は負荷がとんでもない上に
俺自身もかなり無理をして力を使っていた
だがやつらの企みを止めることができるチャンスだったからな
消えるまでに今のお前に話せることは話しておこう
だが何から話したものか・・」
・・・
・・
「 実は・・この世界は俺たちの元の世界とは違う・・」
(え・・?)
「うん 知ってる・・ だって魔法とか使えるし・・」
「そうか・・」
「え・・?」(え?)
・・・
「・・、俺は以前から
ドラグ・バルバロイやあの先にお前が戦っていた漆黒の怪人
オリジンの力を持つ者たちがこの世界で戦闘行動を起こす前兆を見せた時
その周囲にいた小さな生物たちの目を利用して
縫うように追って敵をマークできるようにしていた
やつの力が弱まったタイミングで直接戦闘要求が可能になった
それから俺は力を介入させて
やつの憑依のコントロールを奪ったんだ
敵のドラグ・バルバロイは力は別の体にためこんでいたが
現界のコア自体は変わらずやつの獄炎刀の中に存在していた
だがやつが現世に持ち込んでいた獄炎刀は神器の魔剣、
それを破壊するにはオリジンの力でも必殺の力のエネルギーが必要だったが
介入するときにそれが不足して足りなくなっていた
それを補うため 敵に察知されないように
そこでリズとの戦闘を継続して
必要分の破壊エネルギーを溜める必要があった
近くにいたこの使い魔には悪いことをしたが・・俺が消えれば元に戻る
十分に力を使える体で俺の性能を発揮するためにも
一旦状態を回復させる必要があった」
(・・!)
「介入って、私とこの子の体が回復した時のこと・・?」
「そうだ あれはオリジンの戦闘システムによる仕切り直しを
そのまま当てはめた特別な力・・
勝負に一度完全に決着がついたとき
もしプレイヤーが第二ラウンドを宣言して移行する選択をした場合
その両者の体力がまた元に巻き戻って勝負が再開される
もう壊れてしまったが
俺が所持していたオリジンに組み込まれた仕様を別次元で再現する
オリジンの特別な秘宝、no.1333「再燃の灯」による力だ
・・それにあの時、俺はあの使い魔に呼ばれた気がしていた
乗り移った感覚が妙に不思議な魔物だったな・・」
(呼ばれた・・?あの子に・・?
そうだったの・・、やっぱりあれはオリジンの秘宝だったんだ
オリジン・・、あの砕かれた秘宝そんな力が・・)
「戦いは・・終わったの?」
「ああ そうだな 少なくともここでは・・
ドラグ・バルバロイの持つ現界コアは破壊した
あの怪人もこの世界には暫くは出てこれないだろう」
(・・・)
「そう・・あいつらはオリジンのプレイヤーのやつらよね
オリジンの力同士で接触して戦闘になったら敵に捕捉されるって
あなたが送ってきたシステムの子に聞いたんだけど」
・・
「それを聞いたならやつの名前は知っていると思うが
カーニバル・ジャッジ
俺たちに手を出してきた敵は楽園の次元間システムの力の一部を操作して
その位置領域から世界の変化を察知して追跡者を送り込んでくる
だがそれは今回はおそらくない
ここに現れたドラグ・バルバロイはカーニバル・ジャッジの陣営というわけではない
一時的に俺を抹殺する為に手を組んでいたが
元々はカーニバル・ジャッジとは敵対していた
そして今はもう決別している
奴はカーニバル・ジャッジの捕捉手段から身を隠す手立てを持っている
力に目覚めた人間が適応すれば力自体を察知されないように
周辺に影響する力を限りなく抑制してコントロールできる
やつは察知への警戒心から
まだ世界に対して変貌を生じさせるほどの戦いを表に出すつもりはなかった
行動を実行に移したときは用心深く より地下にあったこの場所を選び、
お前とぶつかり合った時も
その影響は一切外に向かっては漏れ出ないようにしていた
それにここは座標自体がダンジョンの奥地深くの隠れた場所にあって
この世界の隠された存在しないはずの扱いの場所のひとつ
元々やつらの察知能力は隠された領域にまで及んではこれない」
「え・・どういうこと・・
この襲撃は以前に襲ってきたカーニバル・ジャッジの差し向けじゃなくて
別の敵のドラグ・バルバロイの計画よる襲撃だったってこと?
それにクルードを抹殺するためって・・」
「そういうことになる
ドラグ・バルバロイ・・やつの持つもうひとつの正体 それは
俺たちがいたロストオリジに
かつて軍事部門が残っていた時の
古い編成組織の暗部で裏コードの力にも適合した人間だった
時代が変わり撤廃された過去の特等ランクを持っていた最上位級の人間で
隠された暗部での裏指令をこなしていた
だが奴は狡猾で素行が悪く、
軍事時代とは系統の変わった組織の命令を無視するようになった上に
組織の多くの秘密を知っていて、存在を危険視されたドラグ・バルバロイは
組織の手によって暗殺され、特等ランクの特権を剥奪された
「え・・暗殺?」
「そう やつはもう死んだはずの人間・・
だがやつは復活していた
奴はこの世界に同一の存在は持たなかったが他人に憑依をすることで
リズや俺と同じように
強いオリジンの力を行使することも可能になっていた
そして人の夢の持つ狭間からかいくぐり
この世界の線上にある次元間に自らで繋がり干渉を始めた
奴は始めはこの世界の僻地に眠っていた古代人の血の記憶を利用し
この世界で憑依魔術師として覚醒した
この今の世界と向こうの世界にあるオリジンの力は
繋がり合う強い因果を持っていて
オリジンの力を潜在的に持ち
眠らせている者はこの世界にも極少数存在する
だがこの世界にいる人間たちはまだ力には目覚めておらず
大半が発現していなかったりして完全な把握はできていなかった
おそらくまだ力の適合に至るには時期が早かったんだ
・・だがドラグ・バルバロイは
自らその適合時期を押し進めようと秘密裏に行動していた
素質を持つ人間を探し回り
その人間に夢を植え付け
オリジンの力の影響を早期に世界に高めようと・・
以前に共謀していたドラグ・バルバロイによって
やつの知る俺たちの情報は
敵対者のカーニバル・ジャッジの元に流され
この世界で「大滅の日」と呼ばれていた日の重要な任務の途中で
次元間を巻き込んだ大規模なジェノサイドを受けた
俺たちは抗戦をしたが
周到に策が張られていて俺以外はやつらの手に落ちてしまった
俺も無事では済まなかった リズが元いた世界の俺は
裏側から交信機械をハックされて脳に電流を流され
俺が持っていたハスラーキッドとしてのアカウント権限を凍結されて
かろうじて肉体は組織のコールドスリープで保存できているだけの状態だ
この世界での俺は捕まったように偽造して難を逃れられたが
身体には大きな影響が残っていて
今この場にいる俺はあまり長い間は力を行使できない」
(シュウウ・・)
そういって話している間にも
ハスラーキッドの姿はどんどん消えていっていた
(・・・)
「オリジンの力を持っていたから あなたや私が狙われたの・・?」
「そうだな
カーニバル・ジャッジは俺たちの持つオリジンの力を危険視している
実はすでに向こう側の世界は
オリジンの力の影響が世界の根本部分にまで深く根付いてしまっている
オリジンと深く関わりあるこの世界にも
いずれ近いうちにその影響の余波が及ぶ時が来ると考えているんだ
ドラグ・バルバロイは
リズがこの世界に同一の存在を持ち合わせていて
オリジンの力を眠らせている可能性があることを
過去の組織の秘蔵のデータへの不正アクセスから知り
リズを自分の側の力に引き入れるために接触をはかっていた
1度目はやつら側の所有するとあるアカウントを使ってリズに接触して不発し
2度目はこの世界に渡り終えたリズの所在を秘密裏に探りつつ
ドラグ・バルバロイ自ら力を蓄えながら世界に潜伏して
その機会がやってくるときを待っていた
それがこの今回の襲撃だったんだ」
「そう・・だったのね なんというか、まだわけがわからないけど・・」
「そうだな・・俺からリズに伝えたいことはまだある、が
今はもうあまり話せそうにない
俺はまたこの肉体を休ませなければならない せっかく接触はできたが
俺の体はここではない遠くにある
しばらくそちらに接触することはできないだろう」
「え・・まって・・あいつは何者なの
あなたと同じ姿をしたあの最初のハスラーキッドは・・」
(・・・)
「あれは・・ロストオリジの長年の研究の「集大成」
あのとき俺やリズが襲われた日に乗じて
組織の管理を破壊して離れ
裏で接触していたドラグ・バルバロイと共に姿をくらました
そして自由を得て
今限りなく完全な存在になりつつある
そしてやつはこの世界の破壊を目論んでいる 」
「そんな・・」
(( ))
「 そろそろ お別れだ リズ
だが気をつけろ 敵はもう動き出している
カーニバル・ジャッジは配下の「最強の悪魔たち」を引き連れて動き出した
カーニバル・ジャッジの支配下では悪魔たちはその力を制限されているが
その潜在能力はこの世界の法則の根本を歪めるほどの力を持っている
直接リズを狙うような動きは見せていないが・・
というよりやつは関心が移って
別のことにその力を注力し始めたようだ
カーニバル・ジャッジは「楽園」の支配だけではなく
いよいよこの世界そのものに対して支配の手筈を進めだした
もう兆候は始まっているはずだ」
「ええ・・!そんな・・まだ話したいことが・・
それにそんな大変そうなこと・・」
「・・いずれ また巡った時だ リズ 」
(シュウウ・・ウ・・)
「(クルード・・、)」
「(最強の悪魔たちが・・動き出した・・?)」
ハスラーキッドの姿が完全に消えて 残っていた金色の光の粒子の中から
立っていたアスラの体の全身がでてくる
(あっ・・!)
「アスラ・・!」
(トサ・・)
アスラの意識はまだ戻っていないようだ アスラが前のめりに倒れる寸前に
リズがかがんでその体を受け止める
「アスラ・・」
(すうすう・・)
リズの胸の中でアスラは眠っているようだった
(頑張ったわね・・アスラ)
「ジャキン・・」
「あっ・・!」
リズの背中のイヴの変形機械の翼がたたまれて解除される
他にも変化していた部分が元に戻っていく
・・・・
・・・
「(リズ・・)」
リズの覚醒が残っていた意識の中であのイヴの声が聞こえてくる
そこでリズは一瞬だけ イヴとの銀河で星が流れる精神世界で会話する
・・・
「イヴ ありがとう おかげでなんとかなったわ
ちょっとあそこまでやるとは思わなかったけど」
イヴが応える
「(私もつい張り切っちゃったわね)」
(・・あれはそういうレベルなのかしらね?)
イヴはまたあの銀河の淵に立っていて その隣に私がいる
「リズ、
オリジン必殺技の感覚はなんとなくつかめたかしら?」
「ええ 滅閃殲撃ね
なんとなくだけどつかめたわ 使えなかったけどね
だれかのせいで」
「・・それは知らないわね あなたが未熟だったのかしらね」
(イヴ・・)
それからイヴは真剣な口調になって
少し悲し気な顔を見せる
「ただ・・
やっぱり私はあなたがいないと自分の破壊衝動を抑えられないみたいだわ
でも今は大丈夫ね リズ、あなたがそばにいるから」
(あ・・)
イヴは私のそばを離れて また宇宙の果ての方を向く
というよりこれは私の意識の方が
イヴのいる銀河の川を徐々に離れていっているみたい
「また・・ ここに来て・・ リズ」
強くて奇麗で完璧だと思っていたイヴは私も知らない一面を持っていた
それにときどき切ない顔を見せるときがある
「うん・・」
イヴの姿が 次第に遠くに見えなくなっていく
「(あっ・・!)」
イヴに聞いておきたかったことを直前で思い出す
「そ、そういえばイヴが操ってた、
あのやたらでっかい虫みたいなのって一体・・!」
・・・・
・・・
リズの世界が戻ってイヴの声は聞こえなくなった
「・・・、」
(聞きそびれちゃった・・)
この破壊されたダンジョン空間に
完全に動かなくなって横たわっている巨大な虫の残骸
(はあ・・困ったわね この虫ボディが前にあった出口を完全に塞いでるわ
イヴみたいに操ってどかせる方法とか聞けたらとか思ったけど
どのみち出口は崩れちゃってるけど・・)
リズの体の覚醒状態が元に戻ると急激に倦怠感が襲ってくる
「う・・、」
やっぱり先の戦闘で少し血を失いすぎていた
(だけど私がここで気を抜くわけにはいかないわ
ここがまだ危険な場所なのは変わりない)
・・・
「とにかく まずは安全地帯にみんな移動させないと」
眠るアスラを抱っこしながら 勇者ミトラがいた辺りを見る
(・・・)
するとミトラはまだその場で腰を落として
静かに俯いてペタンと座り込んだままだった
(ミトラ・・!
もしかしてあの衝撃の中で何か攻撃が当たってしまっていた・・?)
あわててリズが勇者ミトラの方に駆け寄ると
「リズ・・」
座り込んで少しつらそうな顔を向けてきたミトラ
「ミトラ・・!大丈夫?」
・・・
「いや・・その・・腰が、抜けちゃったの・・」
「ミトラ・・」
自分で立ち上がれない感じで恥ずかしそうに再度俯くミトラ
「ちょっと勇者でしょ! しっかりしなさいよ!」
「しょ、しょうがないじゃない・・」
(まあ・・いいか 無事ならそれでいいのよ)
「しかし 困ったわね
ここから脱出するのに出口が塞がってるから
ミトラの光の翼で飛んでもらって
なんとかしようと思ったんだけど」
「え・・それなら リズだってさっきまで飛べてたじゃない?」
「あれは・・さっき引っ込んじゃったのよね
と、 いうわけだから はい手を出して」
右腕の方はもうアスラを抱いていたので ミトラに向かって左手をさし出す
「え、なに・・まだ私飛べないわ」
「いいから」
「あ・・!」
ミトラが手を出すと その手をリズが遠慮なくガッチリつかんで
一気にミトラの体を胸元まで抱き寄せる
「は、はう・・!」
「よっと・・!しっかりつかまってなさい」
「うん・・」
そういわれるとミトラは言われた通り リズにキュっとしがみつく
そこから少し勢いをつけて
「(バイーン!)」
(そう オリジンのコマンドジャンプなら少しなら まあいけるのよね)
リズはジャンプして少し上の足場を目指して移動する
(でも両手に抱えながらだと さすがにちょっときついわね・・)
「リズ・・服ボロボロね」
「ミトラもね これは帰ったら買い換えないとね またお買い物ね」
「あっ 私も、行く・・」
「・・しょうがないわね」
「あ、リズ見てあそこ!」
「あ・・!」
上の足場に移動したら視点が高くなって ミトラが指をさした先に
前に落として喪失したと思っていた、
リズが探索に持ってきた大きなリュックが転がっているのが発見できた
「よかった ちょっと取ってくるわね
はいアスラを持ってて」
「まかせて」
安全地帯の足場にミトラに持たせたアスラを残してリュックを回収しに行く
・・・
すぐに回収してリズが戻ってくると
リュックは傷ついて中身が出てしまっていて
落下時の衝撃で割れてしまったポーションがけっこうあって
見た目が結構悲惨なことになっていたけど
大量のお菓子の袋がクッションになってまだちゃんと使えるものもあったし
中のお菓子も残っていた
「ミトラ ちょっとリュックの中身 まだ使える分を分けといてもらえる?
お菓子は食べてていいから アスラがもし起きたら分けてあげて
私は倒れてる勇者アギトを回収してくるから
ついでにまだ他に通れる通路がないかも見てくるから」
「わかったわ」
「(バイーン)」
また足場からジャンプして リズがその場をちょうど離れたとき
「(ガラ・・)」
(しまった まだ崩壊が収まってなかった・・!?)
かなり上の方から少し崩れるような音がして
・・・
(ガララ・・)
「おーい だれかいるか~!」「なんだこりゃ どうなってる!」
「とんでもなく深いぞ 気を付けろ」
(あれは・・!)
戦いで崩壊した2番目の地下空間の天井にもイヴが暴れた時に
穴を貫通させたらしく
その穴がトルマドルマ洞窟ダンジョン奥の正規ルートと繋がっていたようで
その地下空間とつながった部分を発見したらしい救援隊ぽい人たちが
そこからロープ綱を降ろしたりして入ってきていた
「ちょっとなにこれ 大丈夫なの?!」
「今行くわ!」
救援の人たちに加えて
今まで私たちを捜索してくれていたっぽいステラとローラが
何かの魔法を使って浮遊して空いた穴から突入してくる
「お~い ここよ~!」
勇者ミトラが大きな声を上げたので
ミトラの腕に抱かれていたアスラがビクッ!となって目を覚ましていた
「(ふう・・どうやら 今度こそなんとかなったみたいね)」
リズはその様子にすこし安心して
上からやってきた救援のトーチの小さな光を仰ぎ見る
その後 私たちは救助されて
ようやく魔境と化していたトルマドルマ洞窟ダンジョンを脱出したのだった




