第90話 逃げない魂
「逃げない、だあ・・? 急に威勢がいいことだ・・
お前 逃げる気満々だったじゃねえか」
「まあいい 少しは相手にしてやる」
(シュウウ・・!)
勇者アギト?は不敵に笑う
「・・・!」
(私の予備動作を見抜かれていた・・)
「だが いいのかあ? 俺は俺を邪魔する人間を絶対に許しはしない
逃げてりゃあ
ショボい勇者として細々と生きて行けたかもしれないのによお・・
お前はそういうやつじゃなかったのかあ・・?」
「・・・・!」
(・・そうだったわよ、というより今でもそうよ それでも・・)
戦うことになって向かい合い
相手の動作の付け入る隙を見極める勇者ミトラ
だけど・・
(こいつ・・隙だらけよ)
勇者アギト?は聖剣は出しているが構えることすらしておらず
剣を持ったままだらりとしていた
「(ならばこちらから一気に仕掛けるわ・・!)」
(シュインシュイン・・!)
勇者ミトラは集中して溜め込んでいた魔力を開放して
ミトラの目が白く輝く
「セイグリッド・セラフ・ライト・・!!」
大出力光魔法の強力な広範囲上位魔法を発動する
「(ピッキャアアアアン!!)」
勇者アギトがその光の奔流に瞬時に飲み込まれる
「・・!うおおおあああ!!」
直撃を受けて悲鳴のようなものを上げる勇者アギト
(効いてる・・!これをくらったら普通は終わりよ
・・だけど相手は普通じゃない)
「さらにたたみかけるわ!」
「オーバー・ライト・ノヴァ!!」
勇者ミトラは光の杖を出して
その杖の先を勇者アギト?の方にまっすぐさし出して
光線のような軌道で強力な光魔法を連発していく
「 」「」「」
空間に激しい光と爆発音が響いて洞窟の空間を反響していく
「まだよ!もういっぱつ!」
その時
「ちっ・・! 「ソーラ・フレア・バースト!!」」
(グワアアアアアン!!)
「な・・!」
勇者アギトはその爆発の中で耐えていたらしく
爆発ごと さらに自分の強力な魔法を発動させて
自分の同心円状の広範囲を術ごとまとめて吹き飛ばした
その中心から
「ピシ・・ピシ・・!」と電流のようなものと
ミトラの術をくらった少し焦げた煙を出しながら
勇者アギトが癖のある髪を揺らしながら出てくる
勇者の魔法の守りは勇者アギト?自身をしっかりと防御していた
「はあ・・ ちがうだろぉ?
せっかく俺が、
勇者らしくお前の準備が整うまで待ってやってたのによお・・、
俺は紛い物の勇者の力なんざ知りたくねえんだ
これだから お前は気にくわなかったんだよ
だせよおらあ! 勇者っていったらあ!「聖剣」だろうがあ!!」
「!!」
「ギュイイイン!!」
勇者アギト?はそう乱暴に言い放つと勇者ミトラに向かって
聖剣の光を放ちながら一気に接近してくる
「くっ・・!「オーバー・ライト・ノヴァ!!」」
やってくる勇者アギトに直撃させるように
勇者ミトラは魔法で迎えうつ
「だから 違うっつってんだろおお!「ライト・スラッシュ!!」」
「ズシャアア!!」
正面からミトラのオーバー・ライト・ノヴァの光が
聖剣によって引き裂かれて
そのまま光の斬撃がミトラに向かってさし迫ってくる
(くっ・・!高度防御詠唱は今からじゃ遅い・・!出すしかない!)
「来て 聖剣!!」
勇者ミトラの手のひらから光が弾けて聖なる光の奔流が生まれる
「!!」
「それで間に合うかあ!? オラァ!」
直後に突進をしてきた勇者アギト?が距離を詰めていて
すでに聖剣は大きく振りかぶられていて
前に放った光のライト・スラッシュに重なるように
斬撃を合わせてきていた
「ジャキイイイイイイイイン!!!」
間一髪、 勇者ミトラの魔法の聖剣は手元に召喚されて
その力任せの勇者アギトの聖剣の一撃を受け止めていた
(だけど・・!)
「くう・・・!!」
(ギシ・・ギシギシ・・!)
「おいぃ~・・間に合ったようだが なんだあそりゃあ
それがお前の勇者の力かあ?
そんな聖剣で俺を止めれるつもりなのかあ・・?ああ!?」
勇者アギトの聖剣を受け止めるミトラの呼び出した聖剣は
勇者アギトのものよりも一回りも二回りも小さく
放つ光の量も一回り小さかった
というよりそれは勇者アギトの持つ聖剣の異様な光と大きさによって
そう見えているのであった
「おい・・!お前 勇者のくせに そいつを使い込んでないだろお
わかるんだぞお・・勇者ミトラ!」
「(ギシ・・!)」
「ううっ・・!」
勇者アギトはさらに聖剣を持つ腕に力を入れて
勇者ミトラを押し込む
「な、なんで・・!こんなことするのよ・・!」
歯を食いしばりながら勇者ミトラは聖剣を押し込んでくる勇者アギトを
キッとにらみつける
「ククク・・!それはお前がわざわざ逃げもせずに止めにかかるからだろ!
行動には責任をもてよ・・?
今もそうだしよお
勇者アギトだって お前が止めるからいけねえんだあ・・?」
「何のことよ・・!私があなたや勇者アギトに何かしたっていうの・・!」
「だから したっていってんだろうが! オラァ!!」
「きゃあ!!」
「(ガツウウウン!!)」
勇者アギト?が乱暴に聖剣に力をいれて振り払い
勇者ミトラを後方に押し飛ばす
(ズサア!)
(痛・・)
勇者ミトラの聖剣を持つ手が痺れる
「はあ~・・こんなつば競り合いすらもできないんだからなあ・・
質が落ちたもんだ
こんなのが世界を守る勇者だっていうんだからな 笑える話だぜ
せっかくアギトのやつがいい感じに俺を使いだしたのによお
お前と出会った途端にこいつは俺を遠ざけやがった
お前の理想にあてられて生ぬるい勇者ごっこに戻りだしたんだ」
(・・!)
「・・それはあなたの性格が悪いからでしょ
あなたみたいな聖剣なんて誰だってまっぴらよ!
それになにが聖剣よ あなたなんて乱暴で力が強いだけよ」
「いってくれるなあ そんな余裕あんのかあ お前?
まあ遠からずといったところか
とにかくよお お前に邪魔されたせいで俺はここしばらく暇だったんだ
よって お前はその責任をもって俺につぶされるんだ」
「そんな理由で・・!何が責任よ・・! 勝手なこといわないでよ・・!
あなたが放っておかれたことなんて私には関係ないでしょ!
あなたが勝手に暇になったのよ!」
「うーん わかんねえかなあ・・
特に理由はないが
お前は羽虫が自分の視界の前をぐるぐる飛んでいたら 邪魔だと思うはずだ
それを振り払うか放っておくかは分からないが
生かしておく理由もない どこか別のところに消えるなら知らねえが
まだうろちょろ回っているなら
俺はただその羽虫が静かになるようにつぶすだけなんだ」
「馬鹿にしないでよ・・!!あなたなんかに私はつぶされたりしない!!」
「インファイト・フラッシュ!!」
「!」
勇者ミトラは光の装甲オーラにさらに近接強化呪文を重ねて
一気にスピードをあげて勇者アギト?に接近して
「ハア!!」
「ガギイイイイイン!!」
「ぐっ・・!」
その勢いのまま大振りの聖剣を横なぎに魔力オーラの力任せに振ってぶつけて
聖剣で迎え撃った勇者アギトの聖剣を衝撃で若干横にずらす
(腕ごと聖剣をはじき出すつもりだったけど・・想定内よ!)
「聖剣単品じゃ威力がでないから自分の体全体の力ごとかあ?
涙ぐましいなあ・・、 む・・!」
その時 勇者ミトラは自分の聖剣から手を離しており
その聖剣が勇者アギトの視界を光で塞ぐように投げられていた
(勇者アギトは元々遠距離からの魔法使いだった・・!
そして聖剣の扱いは最近になって上達した・・!
なら剣技でもなく奇襲の徒手近接戦闘での対応はまだ未熟なはず
あの聖剣さえ一瞬隙を作れば・・!)
(くらいなさい!)
「スター・ライト・スマッシュ!!」
強化された勇者ミトラの腕から至近距離からの
強力な光属性近接魔法パンチが放たれる
だが
「 」
「(ガシイ・・!!)」(ピシュウ・・)
「うそ・・」
( ゴゴゴ・・)
「 それはこの俺に対して・・、悪手だなあ 勇者ミトラ 」
「(か、片手ですって・・!)」
勇者ミトラの渾身のパンチは勇者アギトの片手で止められており
「ぐっ・・!」
(動かない・・!)
掴まれたミトラの拳をミトラが引こうと動かそうとしても
まるでびくともしなかった
「(相殺・・された? あの距離のこの魔法の威力で・・?
視界を塞いだあの状態から、訳が分からない・・、
近接格闘術の達人レベルだわ・・いや、それ以上の・・
一体、どうなって・・)」
「捕まえたし もういいかあ・・?」
「!!」
(カランカラン・・)シュウ・・
勇者ミトラの手から離れていた聖剣は地面に落ちて消失する
(ググ、グ・・)ピシイ・・!
勇者ミトラが必死に掴まれた手の拘束を解こうともがいている目の前で
勇者アギト?はため息をつきながらその様子につぶやく
「ふう・・、ちまちま旅の栞なんぞ作っていい子に冒険しやがって・・、
そんなだからお前らは一生腑抜けてんだあ・・
なあ 別に死んでもいいじゃねえか
それじゃあ面白くならねえだろう・・? 」
「な・・!」
「 少し気分が変わった・・
なあ・・勇者ミトラ
お前・・こいつに捧げられてやってくれねえか」
(捧げ、る・・?!)
「!ど、どういう・・意味よ」
「そういや こいつは俺に最初に言ってたんだ
「勇者として僕に足りないものを教えてくれ」ってなあ
俺もただでこいつの傍にいたわけじゃねえ
聖剣に宿る契約者として・・
その願いだけは最後に叶えてやりたくなってなあ」
「聖剣の剣技なら教えてたんでしょ・・!それで、十分でしょ・・!」
「いいや・・ 足りてねえ 足りてねえよ
こいつには俺の素体として魂に決定的なものが足りていない・・
ただ捻り潰してもよかった気はするが
ふと思ったんだ
今のお前相手なら そいつを教えてやれる気がすんだ・・ 」
「・・!近づかないで!」
「てめえが来たんだろが」
「ククク・・そうやって無防備に簡単に聖剣も手放してんじゃねえぞ こら
勇者が聖剣を手離した時は・・、それは「おしまい」なんだよ」
(ズオオオオオ・・・!!)
掴んでいた手の勇者アギトのもう片方の腕には聖剣が強く光り
ミトラに振り下ろされようとしている
「うう・・!」ミトラがまた暴れても掴まれた拳はびくともしない
(もう、しょうがないわ・・!ここで使うしか・・!私ごともろとも)
勇者ミトラはカッと光る眼を見開いて
(ピシ・・!)
「アルティメット・ライト・バースト!!!」
「ぬあ・・!?」
「グワアアアアアアン!!!」
その場で自爆攻撃に近い巻き込み型の超威力魔法を発動する
「ぐああああ!」
瞬間的な爆発は勇者アギトも巻き込みミトラの掴まれていた拳が外れて
勇者ミトラ自身も爆発の光の奔流によって吹き飛ぶ
・・
(ズザザアア・・!)
「くうっ・・」
強力な勇者の光アーマーで守られているとはいえ
派手に吹き飛ぶほどの魔法をゼロ距離で発動させた勇者ミトラは
「はあ・・はあ・・」
吹き飛ばされて傷だらけで地面に体が転がっていた
「ズザ・・」
(でも・・ 私はまだ大丈夫・・ まだ回復魔法もある
今はあの拘束をとけただけで次第点・・
そしてあの爆発で勇者アギトにダメージが入っていれば・・)
勇者ミトラは自分の傷ついた体に回復魔法をかける
「ハイ・ライト・ヒーリング・・!」
(ポウウ・・!)
「めんどくせえなあ・・!」
(ボアア・・!)
「!!」
爆発の煙と光の粒子がまだ残る広間から
聖剣を乱雑に一振りして辺りの煙を払い 勇者アギトの姿が現れる
(あまり・・効いてない、わ・・)
現れた勇者アギトはローブの衣が少し破れたり焦げたりしているものの
動きを損なうようなダメージを負った様子はなかった
その時
「おい ぼーっと回復してていいのかァ?!」
「!!」
「うっ!きて!聖剣!」
勇者アギトがまた聖剣を振りかぶって突っ込んでくる
なんとかそれに対応するミトラ
「ジャギイイイイイイン!!」
再び乱暴にぶつかる聖剣
「うっ、くうう・・!」
「どうしたああ・・!ボロボロだなあ・・
もうさっきより剣が小さいぞお・・!おいぃ・・!」
じりじりと剣気に押されていくミトラ 白く変化して染まった髪のすぐ近くに
激しくぶつかった光の粒子がやってきて肌に当たる距離
(それでも・・!)
「あなたなんて聖剣じゃない・・!
なら私の聖剣が負けるはずがないわ!!」
そういい放ったミトラの額の金の細いティアラの装具が光って
勇者ミトラの持つ聖剣の光の輝きが強く大きくなる
「ああ~ん・・?なにいってやが・・」
「(ピシ・・!)」
(え・・・?)
「(ピシ・・ピシ・・!)」
「あ~あ・・剣が共鳴しちまったか・・これはばれちまうなあ~・・」
「(ズシュアアアア・・・!!)」
「そ、そんな・・!」
勇者アギトの持っていた聖剣から割れるように光が剥がれ落ちていき
そして光が一気に霧状になって消えて
そこに現れたのは
「(ゴゴゴゴゴ・・・!!)」
「「 」」 ド ン
ちりちりとひりつくような炎を出しながら
赤黒い光を放つ、
まるで人を処刑でもするようなおぞましい地獄の大剣が存在していた
(・・!)
「せ、聖剣じゃない・・!!」
「ああ そうだぜえ、だからなんか文句あるかあ!! オラァ!!」
「ガギャアアアアン!!」
「きゃああ!!」
(ピシュウ・・・)
「(え・・!うそ・・私の聖剣が・・!)」
いきなりさらに威力が上がったアギトの変貌した大剣を叩きつけられて
勇者ミトラの持つ聖剣の光が弱くなり形が崩れ始める
「ククク・・!お前もようやくあの聖剣を食らい尽くしたか」
「!!」(聖剣を・・、食らい尽くした・・?)
「さあ お前も暴れ足りないだろう・・!
ほ ら 吹き飛べよ!!! だりゃあ!!」
「ズゴオオオオオ!!」
(パキ・・)
「(あっ・・・)」
その凶悪な斬撃をミトラは崩れかかった聖剣で受けたが
それはもろくも崩れ去ってしまい 余った斬撃エネルギーが
勇者ミトラの光アーマーを直撃して後方に体ごと吹き飛ばされ
「ズガアアアアン・・!!」
後ろの広間にところどころあった大きな岩盤の柱のひとつに叩きつけられる
(パラパラ・・)
「ゲホ・・ゴホ・・! ううっ・・あ・・」
(やられた・・私の光アーマーごと断ち切られてる・・
な、なおさ・・ないと)
叩きつけられて倒れた姿勢から勇者ミトラはなんとか起き上がって
膝をついた姿勢で魔力を形成する準備をする
「うぐ・・!」
(え・・?)
(ただの斬撃・・じゃない・・なにか、体に異常が・・)
勇者ミトラが魔力を使おうとしても
その傷から魔力が漏れ出ているみたいに形を形成することができない
「じゃ、じゃあ・・まず、回復、からよ・・ヒール・・」
「 してみろよ ライト・スラッシュ 」
(え・・)
「聖、剣・・!」
勇者ミトラはまたとっさに聖剣を呼び出す
「あ・・」
しかしそれは連続使用に加えて
ミトラの魔力の流れに異常を伴っていて あまりにも小さい聖剣だった
「ズガアアアアン!!」
・・・・
・・・
(パラパラ・・)
「・・・・・」
「(ああ・・私・・)」
(シュイン・・)
ミトラの残っていた光アーマーが消失し
さらに異常な力のこもった2度目の斬撃をくらった勇者ミトラは
魔力をうまく使うことができなくなって
白い髪から黒い髪の元の姿に戻る
視界がぼやける
「(私 いま ひどい、姿になってる・・)」
(でも・・そうだわ・・あのポーションがあった・・
リズからもらったガラス瓶のポーション・・
自分で魔力をろくに使えない今でもポーションでなら回復できる・・)
戦闘の衝撃で割れてしまってないかなって思ったけど
胸元から無傷の奇麗なポーションを取り出すことができた
(はやく・・ 回復を・・)
ポーションを持つ手がうまく動かせないで震える
(あれ・・どうしよう せめて割れればいいと思ったけど
瓶を割れるほど もう手に力が入らない・・)
「 ガッ !!」
「ふぐ・・!」
無防備になった勇者ミトラの白い首に
近づいてきた勇者アギトが
片方の腕で首に手にかけて圧力をかけて締め上げる
(ググ・・グ・・!)
「くう・・あ・・」
ミトラの首に手をかけたもう片方の腕には
あの異様な大剣が握られている
「効いたようだなあ あの斬撃には使用者本人の魔力を乱して
あわよくば体内で暴走させる異常が付与してあった
さっきの斬撃はまあ普通レベルの斬撃だったし
勇者としてのお前の耐性力も高かったが・・
この俺が本気で状態異常に特化して斬ったらどうなるんだろうなあ?
お前のせいで俺は極一時しか表意識にはでていなかったが少しだけは分かる
お前の理想だったなあ 聖属性の魔法で勇者として認められるって
あいつと楽しそうに話してたなあ・・」
(ゴゴゴゴ・・!)
「俺が本気で異常を付与した獄炎刀で今から斬り刻まれて・・
お前 明日から今まで通り勇者として聖魔法を使えると思うか?
俺は無理だと思うなあ・・ 」
「・・!・・い、いや・・!」
「ククク・・お前はいい顔の女だったが もっといい顔になってきたぜ・・
だが勇者ミトラ 安心しろ お前に明日はこないんだ
ここで俺に絞められて
お前はこの地の底でひとりぼっちで朽ちて終わるんだぜ・・!」
「あっ・・ああ・・」
(ギシィ・・!)
さらにミトラの首にかかる力が強くなる
「あ・・う・・」
「んん・・? 手に何か握ってると思ったらポーションか
まだそんなもの大事に持ってやがったのか
だが残念だったな それを使う前にお前は終わるんだからなあ・・
切り刻んでやろうかと思ったが・・
その奇麗なお前の顔のままで終わらせてやろう」
抵抗する力がなくなってきた勇者ミトラを
勇者アギトが歪んだ顔で微笑みながら締め上げる
(か、ふ・・)
「ククク・・勇者ミトラ
こんなところで何も成せないまま消えるんだ、
勇者としてはこれ以上ない最低の評価で終わるんだろうなあ
ああ・・ だが俺だけは お前を正当に評価しておいてやろう
お前は雑魚だったが・・
確かに 将来俺の脅威になりうる勇者だった
・・
なあ 俺自身も少し興味が湧いたんだ
ミトラ・ネスライト、お前はその身に
どれほどの世界の可能性の光を宿していたんだ・・?
そのお前が・・ここで無残にも潰える時、
この俺の手の中で お前はどれほど必死に身悶えながら
いったいどれほどの大量のソウルを・・
その身から出し尽くして息絶えていくんだ・・?
お前の魂はいらないが・・
なあ 教えてくれよ
・・「「終わりなき搾精」」・・! 」
(( ズオオオオオ・・・! ))
勇者アギトの手からおぞましいほどの異様な魔法の光が浮き上がる
「 ククク・・
この魔法の魔力は他の魔法と違って
わざわざ俺があいつの魂から取り寄せたんだ
ああ、そうだア・・あいつは前に洞窟から出たら教えてやると言っていたが
お前はもう二度と出れねえからここで教えておいてやるよ
かつてこのダンジョンにあった
もうひとつの古い名を・・
それは古代の星詠みどもの言葉で「エンダアンフェ・ルドム」
そんな言葉はどうでもいいが
今のお前にどうしてぴったりな言葉だったんでなあ
その呪われた地の名の意味は・・・「けして救われぬ、地獄の底の嘆き」・・、」
(ググ、グ・・)
「あ、、う・・」
「 砕け散るだろうなあ・・
意識だけは眠らされていても
この目は、耳は この手の先は あいつのもんだ
こいつの魂が
お前のか細く消えゆく最後の魂の嘆きに触れた瞬間
こいつの魂は眠ったまま 血を噴き出し 砕け散るんだ・・・
何も気付かないまま・・
記憶にはないだろう
その感情には自覚もない
だが その抜け殻の体と魂は全てを理解する
ククク・・、
アギト お前が・・お前こそが
お前が初めて 本気で惚れた女を その手で殺した、男だと・・!! 」
・・・・
・・・
(意識が遠くなる・・)
世界に音はもう聞こえなかった
ぼんやりと乗っ取られた勇者アギトの手が私の首を絞めていて
その手に向かっておぞましい致命的な光が集まって
私に近づいてくるのが見える
だけどもう 私に抵抗する力は残っていなかった
(・・・)
(止めれなかったなあ・・ ほんとはね 少し怖かったの
逃げればよかったのかなあ
私・・勇者になれなかったのかなあ・・
やっと楽しくなってきたのになあ・・
もっとリズやみんなと一緒に冒険したかったなあ・・
リズ・・私ね このポーション とうとう使えなかった・・
でも・・これが こんなところで一人が 私の最後なら せめて
あなたがくれたこのポーションと一緒に・・いさせて・・)
だんだんと
ミトラの胸元でキュっと握っていたガラスのポーションを持つ手が
力が抜けてだらりと下がってきて
そこから緩やかにミトラの指が力なく開かれていって
ミトラが最後まで大事に持っていた奇麗なポーションが
儚くキラリと光って・・
「コマンド 強バーストハイキック!!!」




