第80話 空を射抜く目
「あっちのほうも行ってみたいわ」
ぐいん・・!
(ちょっとミトラ急に動かさないでよ)
「ズボボボボ・・」
あんまりかわいくないパンダトカゲがかわいくない音を出しながら
私たちをのせて空中をゆっくり走る
心なしか注目されているような気がする
(まあ 勇者ミトラがのってるからだな まちがいない)
「よおし みんな空にうまく飛べたようだな
では開始前に言っていたレクを行うぞー!」
地上からボルティックス先生が声を上げる
拡声器がなくても先生の声は上空の方までめちゃくちゃ通る
(半竜人は喉の構造が全然違うのだ)
一旦生徒たちはバイクの運転をストップして地上に降りる
「これから また別の魔法のおもちゃのトカゲたちをこの空中に放っていく
俺の合図ではじまり 合図が終わるまでに
そのトカゲのおもちゃを捕獲したポイントが最も高かったペアに
特別に授業の追加評価を与えるぞ」
「おおおお」「やった~」
(ええ!なにそれ)
宣言をすると先生はちかくにある巨大な荷台に近づいていって
そこにあった大きな檻のようなものを一人で取り出してきて
その檻の入り口を開け放った
「ピギャアアアア!!」
一斉に檻から空に飛び立っていく大量の何かたち
「「 」」バババッ
(ええ・・!なにあれ 魔物!?)
と思ったけど飛んできたうちの一匹がリズの近くにやってきて
素早く周りを回っている
(なにこれ・・うっとおしいわね)
(シュ・・!)
「グアシ!」
リズは鍛え抜かれた反射神経で
その鬱陶しい物体を片手でキャッチすると
「ピギ・・」
それは見た目がタツノオトシゴのような感じで背中側に羽が生えていて
生き物のような見た目をしていたけど 確かに作り物のおもちゃであった
おなかのところに「10」という数字が大きく分かりやすく書いてある
(うーん?10ポイントってこと?)
(でもトカゲ・・ではないわよね いやそういう分類なのかしら)
「こら!そこ まだ捕まえてはいけないぞ
俺の合図で開始だ
このおもちゃには個体差があってかなり性能が違う
捕まえやすい個体は当然ポイントが低いし
捕まえる難易度が高い個体はポイントは高くなるぞ」
「リズ 駄目じゃないの」
ミトラが振り返って私に注意する
「はいはい」
(あら・・ばれちゃった でもね、こいつの方からきたのよ
不可抗力よ しかし先生もあんな位置からよく見てらっしゃるわね
目がいいんだろうなあ)
(ばいばい・・)
リズは手からそのおもちゃのトカゲを放してあげると
「ブイイイン!」
と空の遠くに飛んでいく
「それでは・・トカゲ争奪戦・・開始!!」
先生の武闘の試合が始まるような声が合図だ
「「ブオオオン!!」」
我先にと一斉に学生たちのトカゲバイクたちが急上昇する
「うああ!」
急に力を入れたせいで浮上に失敗してしまったペアもそこそこいた
「はやくはやく!いそいで!」
合図に釣られてミトラがせかしているけど
ミトラのペースに合わせると失敗しそうなので
私はゆっくり起動していく
(後ろのエンジン部分は私が単独で担当してて良かったわね)
「ズズズ・・!」
(ていうか単にトカゲを集めるだけじゃないの 争奪戦なんて穏やかじゃないわね
やっぱり先生は武闘派ね)
周りからは少し遅れて 空中に浮きあがる私たちのパンダトカゲ号
上の方をみると運転に慣れたバイクたちがスピードを出して
さっそく放たれたおもちゃのトカゲたちを追いかけ始めていた
「グオオオオン!」
すごい光の軌跡を描いて飛んでいっているのは勇者アギトのバイクだろう
そのあとをすごい勢いでさっきのステラたちが追っていた
「・・リズ 私たちはどうする?」
「まずは一匹ね あれなんかいいんじゃない?」
その先を私は指さすと
得点が低そうな ちょっと太ったトカゲがフヨフヨとしていた
「じゃあいくわよ!」
やる気満々のミトラ
ぐいん・・!
急にバイク動かしてバランスが崩れる
(おっと・・!先が思いやられるわね)
太ったトカゲにパンダトカゲ号が近づいていって
でも特に逃げる様子もないトカゲのおもちゃ
「もうちょっと・・!」
手の届く範囲にきたのでミトラが手を伸ばすと
「ガクン!」
制御がずれて手が離れる
「あっ!ちょっと運転はちゃんと意識してないとだめでしょ」
「くっ・・!難しいわね」
(くっ・・!じゃないわよ)
それでもゆっくり動いて逃げ出さないので
その太ったトカゲの一匹をなんとか捕まえることができた
・・・
「やったわ~♪」
片手で捕まえた太っちょトカゲを持っている笑顔のミトラ
(またそっちに気をとられないでしょうね)
いつでも衝撃に備えているリズ
太ったおなかの数字を見ると 「3」ってかいてある
「3ポイントかあ」
(スタート前に取ったのが10ポイントだからだいぶ低いなあ
まあしょうがないか 太ってるし)
捕まえたおもちゃの得点はバイクにうまくカウントが組み込まれるようで
「シュイン」
と音が鳴ったと思うと
おなかの「3」の数字が消えて
パンダトカゲ号の取っ手近くのメーターに「3」と表示される
すると
「キャッ!」
突如ブルルン!とそのおなかを揺らして太ったトカゲは
暴れてミトラの手から離れると
「フン!」といってふてぶてしく
地上の檻の方にフヨフヨと帰っていった
「ポイントは記録されたし どうやらこれでいいみたいね」
「そうね・・ちょっとびっくりしたけど」
胸のあたりをおさえているミトラ
「じゃあ・・次ね!」
すぐに次に切り替えた様子のミトラ
「あそこよ!」
(ぐいん・・!)
急に上昇する
(ええ わかってたわよ・・!)
リズはミトラの腰にしがみついて対応していた
その先にはちょうどスイ~と泳ぐように横切っている
空飛ぶトカゲのおもちゃがいた
「これもいただきよ・・!」
今度はうまく片手でも意識して運転しながら
そのトカゲに手をのばそうと徐々に近づいていった
その時
「ブオオオオオン!」
「ドゴォ!!」
(げええ!)
なんと突如横から飛び出してきた軽トラックにそのトカゲが
空中で轢かれて跳ね飛ばされてしまった
「あっ・・!」
その軽トラックの運転席から風の魔法が流れてきて
交通事故で轢かれたトカゲを捕まえて回収している
「おお これはミトラ 偶然ですね それにリズさんまで」
(げえ・・!)
そこにはなんと、
あの賢者リードが軽トラの運転席の窓から白いタオルを首から肩にかけて
やたら澄んだ目でこちらの方を見ていた
「よお ミトラはリズと組んでたんだな
俺たちはもうけっこうポイント稼いだぞ」
(軽トラックの見た目みたいって思ってたけど
ほんとに軽トラなのね)
その軽トラの荷台に立っていて お荷物扱いの大剣士ジャスパーもいた
「ハハハ・・ジャスパーはいたって何もしてないでしょうに」
(あれ・・やっぱ気のせいじゃないな)
なんか浄化されてるっていうか・・、
やたら澄んだ目で爽やかにこやかで寛容になっている?ぽい賢者リード
(・・・)
「すみません リズさん 僕がどうしようもなく愚かだったのです
今までの僕はどうかしていました・・
よく記憶が思い出せないのですが リズさんに試合で何かをされたあと
光が見えて 迷える僕の中に一筋の光が差し込んできたんです
あれは今思えば 間違いなく神との会合でした
清く正しい道に進み 聖職者になろうかな、なんて・・
ハハハ・・都合がいいですね 僕を笑ってください」
(ええ・・!ほんとにどうかしちゃってるわ
前より大丈夫ってそういうことだったの
いやある意味 前よりおかしくなってない?これ)
「ちょっと大丈夫なの?これ ミトラ」
「うーんでも 害はなさそうっていうか・・」
コソコソ話している私たち
そこでさらにハっとしたようになる賢者リード
「ああ そうだ!! ミトラとリズさんの獲物を横取りしてしまうなんて
なんて僕は罰当たりだったんだ・・!
ああ・・!罪を償わなくては・・!
これをどうぞ・・!受け取ってください 今すぐに・・!」
賢者リードは軽トラに轢かれて横たわって昇天したトカゲのおもちゃを
リズのほうに風魔法で送ってくる
「いや いいから そっちで持ってて! いらないから・・!」
珍しく必死でリズが対応する
「そうですか・・」
本当に残念そうな賢者リード
(まあでもいらないものは要らないわ 私たちが捕まえたんじゃないし
まったく・・トカゲを轢き倒すなんてありえないわね
きちんとキャッチするのが清く正しい学生というものよ)
(ていうかほんとに変わっちゃったわね・・害はなさそうだからいいけど)
(・・・)
( あの玉を2回つぶされて2個ともロストしてしまったら
人格が崩壊しちゃったのかしら
光が見えたとか確かにいってたわね
それほどだったなんて・・!やはりあれは恐ろしい技ね)
・・
「では頑張ってくださいね!ミトラ・・!リズさん・・!
応援しています・・!」
「あばよ~」
(ブロロロロロ・・)
私たちの獲物を横取りして
勇者ミトラの取り巻きたちは軽トラで去っていった
「もう・・ほんとなんだったのかしら 疲れたわ」
「ごめんなさいね」
(まあいいわ 気を取り直して・・)
他のおもちゃのトカゲの影がちらっと見える
「ミトラあそこにいるわよ」
「あっ!そうね!」
ぐいん・・!
急前進して またミトラにとっさにしがみつく私
「ごめんね!しっかり捕まっててね」(テヘ)
(もう・・この子わざとやってるのかしら)
そこに
「ゴオオオオ!」
(また何か来たわ・・!)
その迫りくる気配に
まるで驚いたように飛び上がって
素早く逃げ始めるターゲットのトカゲのおもちゃ
けっこう速いタイプのトカゲっぽい
そして進路先にその気配とバッチングする
その正体は
「やあ! やっぱり飛べたんだね だけどこれは渡さないよ!」
「(勇者アギト・・!)」
勇者アギトはその癖のある髪を風にたなびかせて
逃げて上空に上がっていくトカゲに合わせて一気に加速する
「む・・!追うわよ!」
(ああ・・!ミトラの対抗心に火がついちゃって・・!)
「グイイイン!!」
こちらも上空に加速する
(うわあこれ 下を意識するとけっこう怖いわね)
上昇すると傾斜がかなり大きくなるので
パンダトカゲに乗っているだけでは落ちてしまいそうになるので
魔力のオーラでしっかり固定しておく
「バジギイイ・・!!」
だけど勇者ミトラの体とは密着に近くて
勇者ミトラも白く光るオーラで体を固定をし始めたので
(うわああ・・めっちゃ反発してる)
そこで最高に相性の悪い私たちの魔力がぶつかってけっこうひどい音が出る
それでもスピードを緩めるほどではない
風を切って勇者アギトのオートバイと並走する
さらに後ろから
向こうの勇者パーティのステラとローラのバイクも一緒にやってくる
「へえ その乗り物かわいい見た目なのについてこれるのね!
でも・・!これ以上は無理そうね!」
(なんですって!)
リズの出力では今はパンダトカゲはこのスピードが精いっぱいといった感じだった
「ローラ!本気よ!アギトよりぶっちぎって!」
「はいきた」
「ドシュウウウウ!!」
一気にさらに加速して私たちを追い抜くステラとローラ組
「おや負けてられないな 僕ももう一段あげるか」
「ピイイイイイイン!!」
勇者の聖属性の魔力をこれでもかと注ぎ込んだ燃焼機関は
爆発的な出力をだす
「ギュワアアアアン!」
「あっ・・!」
横並びのバイクに一気に出力のあおりを受けて
挟まれた私たちのパンダトカゲはバランスを崩す
ぶれてしまったのでスピードが落ちてしまうけど
そこにさらに勇者ミトラの操縦が元のスピードで合わせていたために
かみ合わなくなってしまう
「もらった!」
「むう~」
結局 光の軌跡でぶっちぎった勇者アギトが
そのハイスピードとかげのおもちゃを捕まえていた
かみ合わなくなって徐々に地上に降りていく私たちの上で
勇者アギトたちのバイクが通り過ぎていく
「おおーい 大丈夫かい? けがはなさそうだね」
「ごめんね~!ついてこれるかなって思っちゃった~」
「・・・・」
私たちが無事なことを見届けると
勇者アギトたちは また次のトカゲを探してスイ~と上空に飛び去っていった
(プス、ブスブス・・)
空回りして少し燃焼機関の調子が悪いのをリズが確認する
「ちょっとエンスト気味ね・・一回ちゃんと下に降りましょうか」
「うん・・そうね」
・・・
・・
「おおお~ 勇者アギト一行は違うなあ!」
「すげえ またとったぞ!」
「(それに比べてうちの勇者はいまいちだなあ)」
「(やっぱ首都からきた勇者のほうが優秀なんだな)」
地上に降りて機関を再調整しながらいじっている時
そんな陰口が聞こえてくる
(・・・)
「気にしなくていいわミトラ なかなか楽しかったじゃないの」
「そうね・・」
地上に降りて もうほぼやり切った気の私
スピーディに空を飛べただけでけっこう満足していた
「ビュンビュン・・!」
上空ではかなり過酷な争奪戦が勃発していた
残り物が めちゃくちゃ捕まえにくいトカゲばかりになっていて
バイクへの慣れもあって各自本気でスピードを出し始めたからだ
「ブオオオオ!」
デッドヒートして競争を繰り広げているトカゲバイクたち
だんだん脱落していくバイクもでていた
・・・・
(・・!)
「キイイイン!」
その時 ひときわ速くて虹色のトカゲがその空の真ん中を一気に
横切っていったのが見えた
リズの淡い色の瞳にチラリと一瞬だけ映るその姿
高速でぶれて動く物体の数字を正確に見ることは通常は難しかったけど
リズの鍛えられた目は反射でそれを捉える
そのおなかに書かれていたのは
一瞬だけ写し見えたけど あれは多分「200」という数字だった
(へえ・・あんなのがいるのね・・)
その現れた特別な俊足の虹色のトカゲを見つけて
バイクたちが追っていくが誰も追いつけていない
「・・・」
黙って口を結んで空を見上げている勇者ミトラ
「リズ・・私とリズはもっといける・・」
(キュイイイイン・・!!)
(え・・!)
勇者ミトラは光のオーラ装甲を出して制服の上からその身に纏う
(フサア・・)
普段の黒髪から髪は白色に染まって
まさに勇者の恰好って出で立ちになって私を見てくる
「(本気なのは伝わったけど・・
何もこんなところで出さなくてもね)」
「わかったわ もう1回いくのね」
そのミトラの白い光のオーラにあてられて もう1回は行ってみる気になる私
私はパンダトカゲのさっきと同じように後ろの機関側に乗り込む
「違うわ・・! 今度はあなたが前よ リズ」
「え・・」
「大丈夫!任せて! 私が後ろで出力するわ!」
(ぜ、ぜったい大丈夫じゃない ただでさえミトラは荒い運転だったから
私の普通の出力でバランスがとれてたのに・・!)
だがしかし もうミトラは絶対後ろでやる気のようで
座った私の腰を両手でつかんで ポン!と前に押し出してしまう
(まあ 光オーラがあると相変わらず すごい力ね)
「・・・」
腹をくくる私
「ズズズ・・!」
真面目に危ないことが起こりそうなので
私も最初から真っ黒な私の魔力オーラ全開で行く
物理的にも お腹を魔力オーラでくくっていく
「ギジ・・バチバチ・・・!!」
パンダバイクに乗り込んで 近くで猛反発する私とミトラの魔力オーラ
「いい? あなた荒いから はじめは出力は控えめにして
操作は見てたけど私も取っ手側ははじめてなのよ」
「わかったわ」
取っ手を握りこむ私
「じゃあ・・いくわよ!」
「ええ!」
(ここを・・こう!)
「ギュウウワアアアアン!!!」
一気に波動があふれ出て 爆発しそうなほど力が膨らむ
「(なにこれ~~ いきなり出力しすぎよ・・!!)」
焦る私だけど ミトラの方をちらっと見るとその目は真面目にやっている様子
「(もしかして これがあなたの控えめっていうやつね・・
しょうがないわね 私も自分の器用さには自信があるわ
たとえあなたみたいな じゃじゃ馬でも乗りこなして見せる)」
「浮上・・!」
リズはパンダトカゲの運転を開始する
「バオオオン!」
光が解き放たれて一気に浮上する
(ひえ~ 私の時とは段違いね これが出力の差かしら
ていうか出力で周りに影響がでるレベルなんだけど大丈夫かしら)
落ちないようにお互い魔力でパンダトカゲに体を固定して
さらにミトラは私の腰にしがみつく
「バチバチバジ・・・!!」
(うわあ これオーラなかったら私の腰がつぶれちゃうんじゃないかしら
やっぱり勇者はめちゃくちゃね
でもね ここまできたらいくしかないの)
「発進!」
「ギュゴオオオオ!」
一気にものすごい空気圧の負荷を受けながら
飛び出して前進するパンダトカゲ
(ちょっと・・!これ取っ手側 面白そうだと思ってたのに
スピードが出すぎて そんな余裕全然わいてこないんだけど・・!
危なすぎ・・!)
「リズ見つけたわ あそこよ まだ残ってる!」
ミトラに言われて
その先にいたのは お腹に20ポイントの高得点のトカゲ
(そんなこといわれても制御を意識すると難しいわね・・!)
だけどそのトカゲになんとか舵をとろうと向きを変えたとき
「!」
(あれは虹色のトカゲ・・!)
ちょうど私たちのバイクと
見つけた20Pトカゲとの間の空間の上空から下へ
虹色のトカゲが猛スピードで遮るように突っ込んできて
それを追っていた学生たちの大量のバイクたちもやってくる
「ゴオオオオ!」
そしてそこには勇者アギトたちのバイクも光を出しながら追っていた
どうやら勇者アギトたちも特別な虹色のトカゲに狙いをつけたようだ
「ピッギャア!」
まるで空は全て自分の領域だといわんばかりの
俊足の虹色のトカゲは地面すれすれにまで高度を下げると
今度は一気に向きを変えて
Uターンするように少し真っすぐ進んだあと すぐさま急上昇する
「うわあああ」
このテクニカルな緩急に耐えられずに急降下したときにコントロールを失って
大量にバイクがもつれて脱落していった
「やめろおおお!!」
「・・ジーザス!」
その中には虹色のトカゲを追っていたのか
賢者リードたちの軽トラックも混じっていて
「ドドドドド・・!」
「ぐああああ」
荷台にいたジャスパーに事故をしたバイクたちが降り積もって
ジャスパーはあえなく身一つで面白い格好でつぶれていた
その様子を見ていたのかいないのか
虹色のトカゲはそれを嘲笑うようにキュインキュインとそのスピードで
軌道を変えておちょくっているようだった
・・
この騒ぎで最初の20Pトカゲはどこかに見失ってしまった
(・・・)
(なんていうか 今日は邪魔されることが多いわね・・)
「ねえ ミトラ」
「なに?」
「やっぱいくなら あの虹色の方よね・・!」
「・・・! うふ もちろんよ リズ!」
「追うわよ!」
(いいわ あなたたちもまとめてめちゃくちゃになりなさい!
こんなもん制御を意識しなければやりたい放題よ
どれだけ揺れて周りに影響が出ても
私たちだけはがっちり固定だから大丈夫!)
「ええ!」
ミトラがしっかりと私にしがみついてバチバチ音が鳴る
「グオオオオオオン!!!」
もう周りのこととかは制御は一切気にせずに
光の渦をまき散らしながら一気にバイクの集団に追い上げる
「うわあ なんだこいつ!白黒のばけものだ!」
「なんてスピードだ!」
「うわああああ!!」
「ピキイイイイン!!」
バイク集団にリズが突っ込んでいくと
パンダトカゲの光のオーラの嵐に巻き込まれて
油断していたバイクたちがスリップして脱落していく
そのまま一気に獰猛なパンダトカゲは煽り運転ばりに理不尽に
他のバイクを蹴散らしながら突き抜けてトップグループに躍り出る
トップグループの勇者アギトとステラローラ組のバイクに
けっしてわざとではないけど 煽り運転のように肉壁する
「バチバチイ・・!」
だけどさすがに
この首都組のバイクたちはしっかりと光のオーラを防御できるようにしていた
「ちょっとあなたリズだっけ!あぶないじゃないの!」
「うお! やってきたね それが君たちのほんとの実力ってわけだ」
(けっこうぎりぎりだけどね・・!)
勇者とその仲間の3台のバイクは猛スピードで各自牽制しあうように並び立つ
「ギュ!」
それを見て焦った様子をみせた虹色のトカゲは
「ギュウウウウン!!」
真上に空に向かってスピードを出して上昇しだした
「もらった!!」
「今度こそあたしたちがとるわ!」
(これは・・!さっきの加速・・!)
「ゴオオオオオ!!!」
勇者アギトが光のオーラをだして バイクから光の翼のようなものが生えて
スピードが格段に上がり
(ギュイン・・!)
ここで一気にまた突き放して
トカゲを追って円を描くように勇者アギトのバイクは上空に駆け上がる
それをいつでも出し抜けるように
ステラの操作テクニックで後ろにぴったりとつけながら
ローラの出力全開でスピードをあげる、
ステラ・ローラペアの息の合ったバイク
(でも・・さっきのようにはいかないわよ!)
大出力の衝撃がまたパンダトカゲにやってくる
だけど今度はしっかりとバイク全体に包むミトラの光のオーラで
その衝撃の全てを跳ね飛ばして寄せ付けない
「ミトラ・・もう控えなくていいわ 任せたわよ!!」
「任せて! これが私の全開よ!!」
「(キュウウウウイイイイン・・!)」
勇者ミトラはその全力の光の魔力を燃焼機関に絶え間なく注入する
魔力を注入されたパンダトカゲ全体が光始めて
なんと
「グ・・オオ・・!」
(え・・!パンダトカゲの白黒模様が反転したわ・・!)
魔力の過剰な供給によって
バイク本体にまで影響がでてしまっていた
パンダトカゲの目は最初は黒模様だったので黒で隠れていて
トカゲの見た目はともかく たぶんかわいい目をしているんだろうなって
私は勝手に思っていたんだけど
「ギン・・!」
「(うわあ・・!めっちゃ凶悪な目をしている・・!
かわいくないわ・・!)」
目の模様の部分が反転して白くなったので
その眼の形が非常にくっきりはっきりになる
その目は獰猛で獲物を狙う野生の凶悪な鋭い目つきをしていた
(勇者ミトラとまるで天使のような私の魔力を合わせたトカゲバイクが
どうしてこんなに凶悪な目をしているのか理解に苦しむわね・・
ていうか素直にバイクになりなさいよね)
(でもそういう目も・・私は好きよ!)
「アクセル全開!!」
「グオオオオオオ!!!」
かろうじて制御はできているってレベルで
まるで雄たけびのような音を出しながらフルパワーの勢いで
天を駆け上がっていく私たちの反転パンダトカゲ
その勢いはすさまじく
制御と負担を考慮して
円を描きながら追いこみをかけた勇者アギトたちのバイクに対して
「な・・!そんな・・!」
パンダトカゲの軌跡は虹色のトカゲに向かって
迷わず一直線の軌跡でのぼっていく
空気を切り裂くような急激な上昇で
ありえないすさまじい重力が体にかかっているが
リズと勇者ミトラを包む強力な魔力オーラのごり押しで
そのめちゃくちゃな推進を一時的に可能にしていた
意表をついたその勢いで勇者アギトたちも一気にぶち抜くと
「ずがぎゃああん!」
「ギャアアッピ!!」
(ああ~っ・・!!)
リズはその鍛え抜かれた動体視力で前方の虹色トカゲを捕獲できるように
準備していたのだが
勢い余ってパンダトカゲのトップの獰猛な顔がついている部分で
上空に逃げていた虹色トカゲを轢き倒してしまった
(シュルル・・)
「パシ」
轢いてしまってぐったりと目を回して降ってきた虹色トカゲを
問題なくリズは片手でキャッチする
(あーらら ごめんね・・)
トカゲのおもちゃを轢いた瞬間からだんだんスピードを落として
安定させながら その捕まえた虹色トカゲのおなかを見ている
「 」
(ふーん 君はやっぱり200ポイントなんだね)
・・
「わあ!やったじゃないリズ 見せて見せて!」
ぐんぐん前に押し付けてくるミトラ
(ぐあん!)
制御が乱れて大きくパンダバイクが傾く
「ちょっと 今はやめなさいよ! 落ちちゃうでしょ!」
虹色トカゲを追ってかなり上空まで上がっていたため
ここはかなり高い位置にあって危ない
「あ・・!ごめんね」
テヘっとしている勇者ミトラ
ちょうど光のアーマーは解除したところで
羽のように散っていく白い光と
彼女の白から黒に戻っていくサラサラした髪がまぶしく風に揺れていた
「でも・・大丈夫よ!私飛べるから! リズが落ちてもちゃんと
私が追いついてキャッチしてあげるわ」
そういうと散っていった白いアーマーの後にミトラの背中から
エンジェル!みたいな白い光の翼が構成されて にょきっと生えてきた
(げえ・・!勇者ってそうやって飛べるのね)
「そ、そういう問題じゃないわよ 落ちたら落ちるとき怖いでしょ!」
「それもそうね・・」
(もう・・私たちってやっぱ最高に相性が悪いわね)
捕まえた?200点のぐったりした虹色トカゲのおもちゃを
見たがっていたミトラに慎重に肩ごしに手渡しする
(そういえば めちゃくちゃすぎて全然景色なんか楽しめなかったけど
ここはすごくいい眺めね・・)
「(わあ・・)」
雲に届きそうな上空からは
(実際は全然とどかないけどね)
学園とセントラル地区の広大な台地の学園都市の街並みが一望できた
たくさんの建物にそこを縫うように小さくなった人たちの歩みの流れ
中央方面の学園の大きな施設群が目立っていて
セントラルの台地を超えて
遠くの地平線まで空と奇麗な景色がリズの瞳の中にしっかりと映りこんでいた
・・・
「そこまで!!」
虹色のトカゲの争奪戦の顛末を地上から見ていたのか
すぐボルティックス先生が終わりの合図を出して
このトカゲ争奪戦は終わったのだった
・・
「シュシュン・・」
なんとか暴れミトラの出力を制御しきって
地上に降りると過剰魔力の反転パンダトカゲの白黒が元に戻って
普通のパンダトカゲバイクになる
(普通のパンダトカゲってなんだ・・)
・・・
「へえ やるじゃないあなたたち 最初のは思わせぶりだったのね」
「最後はやられたよ」
トカゲ争奪戦終了後、
勇者アギトやステラたちもやってきて勇者ミトラと一緒にわいわい話している
(ふう・・どうやらなんとかミトラの勇者としての尊厳は
保たれたかしら・・ 最初はどうなるかと思ったわ)
「では最優秀ペアの発表を行う・・!」
ボルティックス先生が声を張り上げて一旦 場が静かになる
(お・・!そうだった
最優秀ペアには表彰があるんだったわ
虹色の200点の大物を取ったのだから 私たちの勝利は確実ね
これはD組の完全勝利だわ)
トカゲ争奪戦を煽ったボルティックス先生を
開始前に心の中で批判していたリズだったが
リズの中身は戦闘マニアなので勝手に脳内で
A組とD組の勝負に変換されていたのだった
がしかし
「最優秀ペアは・・313ポイントでA組のステラとローラのペアだ!
おめでとう!」
「うそ! やったわねローラ」
「きゃあ~やり~!」
ジャンプをして分かりやすくステラと喜び合うローラ
(なにい~~)
(・・そういえば私たちはだいたいノロノロしてるか
地上で調整してばっかだったわね
200ポイントは取ってても
ステラたちが普通にそれよりたくさん取ってましたって
オチだったみたいね)
(あれ・・でもポイント数なら
それなら勇者アギトが多かったんじゃないのかしら・・?)
「なおトップは383ポイントで勇者アギトだったが
お前はソロであってペアではなかったからな
今回のペアの評価の対象にはならん」
「そうなりましたか」
(そういうことなのね)
・・・
「では解散だ」
「「「ありがとうございました」」」
こうして表彰も終わり無事
首都組の勇者アギトのいるA組と
勇者ミトラがいる私たちのD組の合同講習は終わったのだった
と 思っていたんだけど・・
・・・・
解散の直後
「ただし お前たちは残れ」
(ええ~!)
居残りを命じられた私と勇者ミトラ
・・・
「お前たちのやり方は正直にいえば俺の好みではあったが
合同ではあるが あくまで普通の講義だからな あれはやりすぎだ
限度を考えてほしいものだな」
そういって少し困った顔をしたボルティックス先生の周りには
私たちのパンダトカゲのめちゃくちゃな突進によって
巻き込まれてスリップして
脱落したと思われるトカゲのおもちゃ「ドラポンライド」たちが
大量の転がっていたのだった
(あら~・・)
「プシュウ・・」
魔力を抜いてバイクから元のとかげのおもちゃになっていたのだが
ところどころ明らかに修理が必要なかんじで煙を出している
私とミトラのパンダトカゲのおもちゃは表彰後に魔力を抜いたんだけど
元の大きさには戻ったんだけど 白黒は直ってない感じになっていた
すごい勢いで轢き倒してしまった虹色のトカゲのおもちゃは
目を回して機能不全を起こしているようだった
「先生・・これどうするんですか?」
「ああ、借り物だからな・・まあおもちゃの修理費は俺の弁済だな
特になあ本体じゃなくて虹色のやつは性能がいいから高いんだ」
(ひえ~ミトラったらひどいことをするわね ちょっと考えられないわあ)
「あの・・私たちだけ残されたっていうことは その、
私たちも弁済するんでしょうか・・?」
「いや それはない ただなこれだけお前たちが好き放題していって
何食わぬ顔をして去られるのも癪だったのでな
こうして居残りだ 後片づけは手伝ってもらうぞ
以後気を付けるように」
「はい・・」
「は~い・・」
こうして居残りの私たちは講義後の後片付けまでするのであった
・・・
(しかし ミトラも先生も力持ちね・・)
飛行の事故防止の整備のために
スタジアムに設置していた大型の制御機材などが残っていたが
「ガッシャガッシャ・・」
ミトラは白髪に光のオーラをまとわせて
先生は普通に素手でどんどんそれらを片づけていっていた
私は学園のアシスタントさんなどと一緒に
比較的軽めなトカゲのおもちゃたちを運んでいく
白黒が治らなくなってパンダのようになったトカゲのおもちゃの上に
目を回した虹色のトカゲを優しくのせて持ち上げる
(君たちは運がなかったね
ここで私と勇者ミトラと巡ってしまったのが運のつきね)
そうぼんやり思いながら
今日の被害者のトカゲたちと一緒に
後片付けの荷台まで歩いていくリズなのだった




