第78話 空飛ぶとかげ
私たちのいるこの国 メリカド魔法共和国の首都メリカドハートから
首都を囲む第二の周都メリカドアドにあるセントラル地区
聖セントラル中央魔法学園に
首都学園の勇者を含む 短期の留学生たちがやってきた
表向きはそういう留学の交流会なのだが
「不祥事に対する国の監査」という名目で監査令を出され
学習の手本となるべく監督生として派遣されてきた首都の学生たち
当然ほかの監査のための監査員などもやってきていて
監査団の姿も見えていた
不祥事を受けて学園の警備体制や守りの基準がしっかりと満たされているか
調査をしにきたのだという
全体の教師の指導法にもチェックが入るため
普段の指導にあまり自信のない先生方はピリピリとしているようだった
「(シュバルツ先生とか大丈夫かしらね・・
監査員の人を「うるさい」とかいって追い払っちゃいそう
まあでも黙って何もしなければエリートって感じだから
なんとかなるのかしら)」
・・
「・・・」
そんなことをリズは教室の席に座ってでのんびり考える
このクラスには例によって留学生は来ていない
だから余計にあまり普段と変わらないなっていう思いもある
(勇者ミトラはいるのにね・・変なの
やっぱりこのクラスはつまはじき者なのかしら)
中等部にやってきた留学生の勇者たちは
まずは学業で一番優秀な振り分けであるA組で交流を広めたりしているらしい
「なんでこないの~」
首都のイケメン勇者の噂を聞いていたクラスの女子とかは非常に残念がっていた
「わはは 残念だったな」
「でも 勇者と一緒にきた女の子二人も美人だって・・」
「ええ! なんでこないんだよ!」
「残念でしたね~」
「ちくしょー!」
なんだかんだ話題では楽しんでいる様子
(今頃は初等部のネロのところにはきてるのかしらね
ネロはたしか勉強できるクラスの子だから・・)
・・・・
授業も終わりに差し掛かったころ
このクラスの担任で
たまに授業でも受け持っていたルージュ・ライアルド・如月先生が
次の授業の話をしてくれる
「次は特別にA組との合同講習になる 多目的会場に移動になるぞ
今回やってきた留学生たちと交流もできるカリキュラムだ
いいか? 絶対にこのクラスの恥ずかしいところは見せるんじゃないぞ」
「え~」 「真面目か・・?」
「はい先生」
個性的な問題児が比較的多いD組クラスの生徒一同の反応は様々だ
(ふうん・・交流ね・・
でもあの勇者たちがどんな実力なのか見てみたい気もするわね
後で はじっこで見ていようっと)
・・・・・
多目的会場にて
合同講習のために教室から移動してきたリズたち2-D組の生徒たち
(ザワザワ・・)
「(さすがに2組分人が集まると多いわね・・
とはいえ会場が広すぎるから全然窮屈じゃないけど)」
多目的会場はスタジアムのようになっていて
屋外も開放してあるので広々で 魔法も十分に使える設備があるので
合同講習にはうってつけの場所であった
(あの辺り・・?)
と思ったけど
先にA組の生徒たちは集まっていたようだけど よく見渡してみても
そこに例の留学生の姿はなかった
(あれ・・?)
それどころか勇者ミトラの取り巻きの男2人を見つけてしまった
「(げえ・・こいつらA組だったのかあ まあ成績とかならそうなのかもね・・
こっちきたらどうしようかしら
剣士のジャスパーのほうはともかく、
賢者リードは大会のあの時のままだったら真面目に危ないわ
でも 立ち姿の姿勢はよさそうね・・普通に戻ってるっていうか
でもなんか変ね
なんかぼーっと空を仰ぎ見てるような)」
(それはそれとして・・)
「なんで私の隣にいるのかしら? ミトラ」
なぜか クラスのはじっこ辺りにいた私の隣にいる勇者ミトラ
「え・・ いや いいじゃない 同じクラスでしょ私たち」
ちょっと上目遣いをしてくるミトラ
「いや でも あなたうちの学園の代表の勇者なんだから
この中でも前の方で目立った方がいいんじゃないの」
「いや 別に目立てとか 絶対交流しろとか今回言われてないから
首都から来たっていう勇者も今はいないみたいだし・・
それに呼ばれたらいけばいいと思うのよ」
「そう・・」
(うーん できれば離れてほしかったんだけどなあ この子目立つから
まあいいか 今はミトラだけみたいだし)
勇者ミトラは私や他の学生と同じように学園の制服を着ている
学園の制服は強制ではないので着なくてもいい
実習などでは動きやすく汚してもいい冒険者のような服を着ることもあるし
貴族の学生は手持ちの適した服が多いし
予算もあるから個性が出るように制服自体に少し手を加えてたりとか
そもそも制服にはあまりこだわらなかったりする
学園の制服をきていると多数の生徒に交じってあまり目立つことはないが
勇者ミトラはその得意の光魔法を使うようになると
「パアア・・!」って
髪の毛が光るように白く染まって
魔法の光アーマーというかそういうものが
その制服の上から装着されて ものすごく姿が勇者っぽくなる
その状態になると
常に出力で光がほとばしっていて周囲にものすごく目立つのだ
(まあ今はいいんだけどさ)
「今日は合同だし A組にミトラの取り巻きたちもいるみたいじゃない
あっちに行かないの?」
「別に私たちいつも一緒にいるわけじゃないわ・・
それになんか様子がおかしいのよ リードが 大会が終わってから
だからちょっと今は距離をとっているっていうか・・
ジャスパーがもう少し俺が見ておくっていうから」
「あれの様子は武闘大会の時からおかしかったじゃない
ちょっと危ないわよあれ
パーティメンバーなんだろうけど
ミトラもこれからの付き合いは考えといたほうがいいわ」
「いや その時のはね 治った?のよ
危ないような異様な感じではなくなったわ
リズとの試合で戦って負けて 病院で目が覚めた時に
どうも変わったみたいなの」
「・・? 治って・・、 その時とも違うの・・?
どうなっちゃったのそれ」
「話してみればわかると思うけど・・ 今はあんまりおすすめはしないかな」
「そう・・」
(だいじょうぶ 元からこっちから話す気はないわ
ちょっと気になりはするけど)
・・・
・・
「(ゴロゴロ・・)」
(・・?)
その時 地面になにかを転がすような重い音が聞こえてきた
その方向を見やると
スタジアム広場に独りでに進んでくる巨大な荷台
ズンズン、ズズズ・・
(え! なにこれ)
巨大な荷台の塊がそのまま自律してやってきたように見える
(すごいわ・・!こんな魔法があるのね・・!)
と リズは少し感動していたら
「おおーし 持ってきたぞ~」
(ええ~)
普通に巨大な荷物の後ろから
半竜人の魔法剣士のボルティックス・アルハマー先生がでてきた
どうやら普通に荷台の後ろに姿が隠れていて見えていなかっただけみたいだ
(まあ この大きさの荷台を一人で押してくること自体すごいけどね
運搬用の大型魔物が4体くらいいるんじゃないかしら・・
ていうか座学ばっかしてるけど やっぱ武闘派だわこの先生)
・・・
何人かのアシスタントの裏方の人とセッティングして
合同講義の準備を進めるボルティックス先生
「 」
今日は早速監査員の人も合同会場の施設の窓際に何人か
チェック帳?のようなものを持って待機しているみたい
監査のチェックをされていることには
全くボルティックス先生は気にとめていないように
「なんだ 首都の勇者はまだ来ていないのか
せっかく今日は久しぶりに座学じゃないから 気合をいれていたんだがな
まあ合同講習は予定通りに執り行うぞ」
「今日の講義内容はこれだ・・!」
そう先生は高らかに宣言すると
アシスタントの人がさっき先生が押してきた荷台の中から何かを取り出した
(これは・・?)
「(ジャジャーン)」
なにかトカゲのような魔物を模したような中型犬くらいの
大きさの・・なんだろう 模型?
バイクのような取っ手と内燃機関のような機械もついている
・・
「これは竜人の国グラド王国に暮らす竜人族が おもちゃとして使うものだ」
(おもちゃ・・? ていうか竜人の国グラド王国に竜人族って・・
ええそうよ この世界はいろんな種族がいるのよ
ボルティックス先生も半分竜人だったわね確か
竜人つながりかしら・・?)
「先生! どうして竜人族のおもちゃがこの講義で使われるのですか」
「おお 君はいい質問をするな 話を進めやすくていい
まあ特に成績に加点はしないが」
「そ、そんな~」
うなだれるA組の男子学生
成績がいいことだけあって 授業に積極的に参加する質問も多いらしい
「このおもちゃは・・竜人族が空が苦手な子供のために
与えるものなのだ」
(空・・?)
「今日は俺からの特別講習だ
君たちにこの借りてきた竜人族のおもちゃで・・
空を飛んでもらう・・!」
(え~~!)
(ザワザワ・・!)
「まじか」 「空だって!」 「うわあ~」
空を飛ぶと聞いて騒ぎ始める学生たち
(この世界で空を飛べたらいいなって思ってたけど
授業で飛べるなんて・・!
わたしも一応コマンドジャンプはあったけど
あれはあくまでジャンプだし ちょっと楽しみね・・!)
(けど・・ あの中型犬サイズのトカゲの変なおもちゃで飛ぶの・・?
大丈夫かしら ちょっと不安・・)
「説明を行う! ・・が、まずはそうだな
運用にあたって必要なことがある
各自で誰でもいい 2人1組でペアを組んだら
このおもちゃを1つ渡すから荷台の前にくるように!」
(ええ~!)
あの小さいおもちゃをさらに2人で使うの・・? 大丈夫・・?
まあでも空を飛ぶためだもんね
誰か私も言われた通りペアを見つけないと
ペアを・・
(ニマ~・・)
なぜか隣から私の視界の前にきてニマニマニッコリしている勇者ミトラ
(あれ・・おかしいわね 誰かいないかしら・・)
「リズ 私とペア組もう・・?」
だれか探しに行こうかと思ったけど
勇者ミトラに正面から言われてしまって分が悪くなる
(うっ・・どうして・・やっぱ最初にもっと離れておくべきだったかしら
勇者なんかと組んだら目立ってしまうわよ)
(まあでも そんなに目をまっすぐ見て言われてしまってわね・・)
「いいわよ じゃあ取りに行きましょ」
「よし じゃあ私たち一番乗りよ!」
ぐい!
(ぬあああ~!)
リズは勇者ミトラに腕を引っ張られて
荷台までいくことになる
(うわあ めっちゃ力強い・・! 勇者なんでしょ 加減しなさいよお・・!)
よく見たらちょっと光のオーラみたいなのが出ている
普段は細身の女の子だけど これで力を増幅しているらしいのだ
(もう~これだから嫌だったのよ~)
勇者ミトラに連れられて荷台の前まで着く
・・
でも一番乗りではなかったようで 少し順番を待った後
そのトカゲのようなおもちゃが渡される
さらに一緒に一人につき1個ヘルメットがポンと渡される
「ザラザラね・・」
渡されたトカゲのおもちゃを手で触ってみる
(わ 鱗まである ていうか これが飛ぶようにはどう見てもみえないわね)
しばらくして どうやら支給分のおもちゃは全員にいきわたったようで
学生同士の間隔を指定されたように広く取った後
先生が説明を始める
「これがほんとうに飛ぶのか? と思っただろう」
(はい 思いました・・)
「これはこのようにする」
(あれは・・腕の左右で属性が違うわね 雷と炎かしら・・)
「ボウウ・・!」
ボルティックス先生はその大きな腕で片方づつに
器用に別々の属性の魔力をまとわせる
その魔力を纏った腕を
そのトカゲのおもちゃについている取っ手のようなところと
後ろの機械の部分にそれぞれ当てて その魔力を流すと
「グイン!!」(ボオオオン!)
(うわ!)
魔力を吸い取って一気にトカゲは大きくなって
タイヤのない大きなスポーツバイクのような見た目に変化した
「 」
残ったトカゲ要素はトップについているトカゲの顔くらいになっている
「おおお~」「すごいい~」
学生たちから歓声がもれている
「これは竜人族の空が苦手な子供のために
安全に大人が補助して支えられるように
2人でのれるようになっている
2つの別々の魔力をうまく混ぜてエネルギーとして機関で燃焼させて
浮上をするための魔動力に変換するのだ
2人乗りだとそれが一番スムーズな変換法だ
それなりに事前の設備が必要だから これが使えるのは
今日はこのスタジアムの敷地内だけだ
コツをつかむのには少し時間がかかるが
もしコツをつかんでも
あまり調子にのって危険なスピードは出さないようにしろ
渡したヘルメットには魔法防護がかかってるから
もし空から落ちても
そうだな、死ぬようなケガが 大けがで済むかもしれんな」
(ええ~それって大丈夫なの~? ていうか監査の人いるのに
そんなこといっていいのかい先生)
「まあ冗談だな 完全に安全とは言い切れないが
用法を守ってヘルメットをきちんと着けている限りは・・
そうだな そこの君 一歩前へ!」
「へあ!」
適当に目の前から先生に指名された生徒が
突然のことに間抜けな声をあげて一歩前に出ると
「デゴン!」
「あわあ!」
いつの間にか生徒の前に近づいた先生にヘルメット越しに軽くデコピンをされる
生徒は即座に体勢を崩して地面に倒れて・・
と思ったけど
「グワワ・・」(プカプカ・・)
なんと生徒は少しだけ地面から体が宙に浮いていて
転倒の衝撃がなくなっているようだった ポカーンとしていた
ヘルメットと事前に会場に設置された大型の魔法の機材との連携で
そういう風になっているようだった
(へえ・・面白い・・っていうかそっちよりデコピンで転倒って・・
すごい威力ね・・)
「このように 地面の上で衝撃は抑えられる
だから今日は空から落ちてしまっても大丈夫だ
まあ落ちないに越したことはないがな」
「ほら君、俺は指は当てていないぞ
少し君の重心をずらしただけだ」
「は、はいい~・・」
(?そうだったのね)
安全ヘルメットの説明は終わったようで
ポカーンとしていた学生を軽く地面から起こすと
先生は振り返って
そのトカゲのバイクに乗り込んでいく
お手本なので強靭な体の先生もしっかりと安全ヘルメットをかぶって
次の説明に入る
「次のステップだ
今は魔力の属性を変えて分かりやすくしている
動力部ではこのように別々のところから混じり合っている様子がわかる」
「(バチバチ・・!)」
おおきくなったトカゲのバイクのエンジン?部分に
混じり合った別属性の魔力が音を立てている
「ペアで運転操作をする方は前の座席 そうでない方は後ろについておく
竜人族は子供は前に乗せているな
だが全てこなして慣れればこのように・・!」
「ブオオオオオン!」
その場から3メートルほど魔力の光を噴出して一気に浮き上がるバイク
先生は半竜人だけど翼までは生えていないので
完全にバイクの力だけで浮き上がっている
(おおお!)
「浮き上がる、
そこからが また操作だ この取っ手ハンドルの部分を動かす・・!」
「ブロロロロロ・・!」
すると先生の乗ったバイクはその空中3メートルの固定位置ピッタリから
私たちの合同クラスの周りを
ゆったりと1周周ってまた元の位置に戻ってきた
(ブシュウウウウ・・)
戻ってきて その場の空中でピッタリまた止まると
付近に風の波を発生させながら
まっすぐ地面にゆっくり降りてきて
先生はバイクから降りる
バイクから降りたときに魔力は抜いたみたいで
(シュシュン・・)
と音を出して
そのスポーツバイクのような見た目だったトカゲのおもちゃは
元のトカゲのおもちゃの大きさに戻った
・・
「こんなものだな これが竜人族のおもちゃ「ドラポンライド」だ
2人ならコツをつかめば そう難しいものではない
出力の主が後ろだから
魔力が低い学生は前に乗らせてもらった方がいいかもしれんな
落ち着いたら後で簡単なレクも準備してあるぞ」
「では 各自・・ 始め!!」
(ボルティックス先生は武闘大会で審判やってたから
はじめ!っていったら試合が始まるみたいだなあこれ)
とかリズは思っていた
とはいっても なんだかんだ面白そうなので
私たちのペアに渡された「ドラポンライド」とさっき先生がいっていた、
トカゲのおもちゃにミトラと手を触れる
「どうする?リズ 2人で魔力使うっていってたわね」
(先生は一人でやってたけどね・・まあ慣れないと難しいんだろう)
「じゃあ私が今 トカゲのお尻の後ろに手を当ててるから
ミトラは前の取っ手の方から流してもらえる?」
「聖属性でいいのかしらね?」
(あっ そうか この子聖属性持ちかあ・・)
「それでいいと思うわ 私も流すから」
「わかったわ」
(そして 私の魔力といえば そう・・)
「(ズズズ・・・!)」
邪悪な黒いリズの魔力が渦巻いている
(いいわ 気にすることはないわ 魔力でありさえすればいいのよ)
冷静な目をするリズ
そして魔力を流す
すると・・
「ボアアアアン!!」
(ええ・・! 先生のやつと音違うわよ・・!)
グネグネ動きながら勇者ミトラの白い聖属性とリズの黒い謎魔力が
ぶつかって肥大化していく
「な、なにこれ 大丈夫なのリズ・・?」
「私に聞かないでよ・・」
「(ババーン・・!)」
そして最終的に現れたのは
「バ、バイクじゃない・・!」
それはまるでパンダのように白黒でパンダのような姿をした、
トカゲの乗り物だった
デパートの屋上でコインを入れたら動きそうな雰囲気を醸し出している
生徒たちの変化していくトカゲたちを見てボルティックス先生は
「ああ いうのを忘れていたがペアの魔力の親和性で
乗り物の見た目は変わるぞ かっこいいのがでるといいな」
(なんだって~)
「ゴイン!」 「ボウン!」
次々と他の学生のトカゲのおもちゃたちは色んなバイクに姿を変えていく
(えええ~ みんなわりと普通のバイクなんだけど・・
原付っぽいのもあるけど)
(ていうかなによこれ トカゲっていうかパンダよこれは)
質感までざらざら鱗から毛皮に変わっている
しかもパンダにトカゲも一応混じってるから純粋にあんまりかわいくない
「・・・」
言葉がなくなる私たち
「・・まあ中身がよければいいのよ 重要なのは中身よ」
言い聞かせるように そう声を絞り出す勇者ミトラ
(あれ・・その言葉 昔聞いたことあるような気がする
どこだったかしら・・たしか昔にボロの寮舎で・・いやなんでもないわ)
そう 大事なのは中身
空を飛ぶためには見てくれなんて そんなことは些細なことなのよ
(パアン!)
リズは軽く頬を叩いて気合を入れなおすのだった




