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瞳を見るとBURST HEAT! VS世紀末格闘少女リズと不思議の格ゲー魔法世界  作者: 綾町うずら
勇者たちと動き出した運命編
76/147

第76話 アスラのダンジョン

 「ふーん アスラちゃん大変だったんだね」

 

ここは学園内のとある広場

広場のベンチに並んで座って

今日はアスラとマギハちゃんの2人だけでいて話している


アスラはお出かけ用の服を町のお店で買ってもらえたりもしたけど

今日はネロの部屋のタンスにあった男の子っぽい服を着ている

というよりあのスライムたちの中で

アスラだけはボーイッシュな服しか選ばなかった

ミスラやキスラはちゃんとかわいいワンピースやスカートもよく着ている


まあでも外を動き回って擦りむいたりしてよく汚して帰ってくるので

アスラにはそういう服の方がいいのだろう


今日集合して待ち合わせたマギハちゃんはきれいで真っすぐな黒髪に

いつもの小さい黒いドレスだ


知り合ってからはたまに約束をして

アスラとマギハは2人で遊んだり

風車の家に集まったり外で秘密の会議をしていることがあった


「リズさんも大丈夫でよかったね」

「・・うん」


言葉の歯切れが悪いアスラに

「どうしたの?アスラちゃん今日は元気ないね」


「そうかな」

「そうだよ アスラちゃんの音がね 

 たくさん鳴ってるのは変わらないけど 今日はいつもより違うの」


「音かあ・・」

アスラは指先を口の前にもっていくと

「シュプウ・・!」

と少し頬を膨らませて口から小さく細長い火を前に吹いた


一緒にちょっと小さい火の玉も出て マギハちゃんの前で「パン!」と

曲芸の小さい花火が出る

それを見てキャッキャと喜ぶマギハちゃん


「ふふ ちょっとうるさくなったけど そういうことじゃないから


アスラちゃんからくる音はねえ 

アスラちゃんの内側にある心の泉の音色なの


なにかを思い悩んでいるのね アスラちゃん」



「・・・」

相変わらずマギハちゃんのいうことって

たまによくわかんないことがある


でもそうやって聞くとそうなんだってなぜかわかる



「・・ねえマギハちゃん あたし強くなったと思う?」


「強く?」


「うん・・」

アスラはうつむいて座っている

アスラはまだ気にしているようだった


「アスラちゃん強いじゃん かっこよかったよ 

私 あの時上から聞いてたし見てたよ

シュバルツもアスラちゃんとリズさんはすごいって」


「そ、そうかな」

「そうだよ」


「うふふ・・」

「でも 基本的にアスラちゃん単純だからそこをよく狙われてたね」


「あうう・・」

「あっ・・!」

気にしてた辺りに的確にパンチをうってくるマギハちゃん


(いじいじ・・)

ベンチから降りて地面の砂に指でイジイジし始めるアスラ


(・・・あ)

始めはいじけた様子でいじっていたけど

地面に絵がかけると判明した途端にそちらに意識が移って


「なにこれ」

「イモムシ」

「・・・・」



砂の上の地面には芋虫?の絵が出来上がっていた


「・・アスラちゃん私がいるのに一人でお絵描きして遊ぶの?」

(じー)

マギハちゃんが上から少し嫉妬深い表情を浮かべている


が 

アスラはもう地面に夢中なのでマギハちゃんの表情には一切気が付いていない


「じゃあマギハちゃんも描いていいよ」

「ふーん」


マギハちゃんはアスラの隣にくっつくように座ってかがみこむと


(いじいじ・・)

「あっ、マギハちゃんそれ・・」


「うじうじしたアスラちゃんにはこうするの」


地面のアスラ作のイモムシの絵に

雲のようにふんわりとした羽がマギハちゃんの指によって付け加えられる


これだと はばたくんじゃなくて

雲のような軽さでフワフワと飛んでいきそうなイモムシだった


「描いていいっていったよね アスラちゃん」

「うん じゃあ一緒に描こうね」

「うん」


(いじいじいじ・・)

イモムシに変な足が描かれたりスカートをはかされたりしはじめる

縞模様になったりもしている


「  」

最終的にアスラ・マギハ合作の

謎の翼の生えたイモムシ型芸術モンスターが出来上がった


「・・なんだろうこれマギハちゃん」

「これだと・・モンスターね おかしい ふふ」



「あっ!そうだ私 知ってるわ モンスターよ 

アスラちゃんが強くなるためには

モンスターのいるところで一緒に戦えばいいのよ きて!アスラちゃん!」


マギハちゃんは立ち上がるとすぐにタタタッとかけていく

「え マギハちゃん」(タタタ・・

それについていくアスラ


・・

学園内をマギハちゃんの後をしばらくついていく

やがてそこには


「え・・これマギハちゃんのお家?おっきいね」

「そうよ ここにシュバルツと住んでるの 

シュバルツは今は学園のお仕事でいないけど お手伝いさんはいるよ」

「ふーん」


鉄製のごたごたした柵で囲ってあって厳重そうな広い庭周りに

西洋風の古い石造りの屋敷のような、まるで中に吸血鬼でも住んでいそうな

おどろおかしい雰囲気だが

黒いドレス姿のマギハちゃんにはそれがよく合っていた


「入って」「!」

マギハちゃんが近づくと扉はなぜか自動で勝手に開き始める

どうやら扉周りに魔法の力が使われているみたいだった


マギハちゃんと一緒に入った屋敷の中は広くて立派だったけど

空気がひんやりとしていて お化けが出そうな雰囲気


特に廊下の途中にあった部屋を案内したりはしない様子で

真っすぐ目的の部屋に向かうマギハちゃん


「  」

入ったその一番奥の部屋は書斎になっていたようで

古い本が天井まであるような大きな木棚のいっぱいに並べられていた


「うわあ~何読むのぉ? 絵本?」


「絵本じゃないけど・・でも絵もついてたよ

うーん・・っとね・・ この辺かなあ」


目的のその本は棚の下の方にあるみたいで

厚いカーペットの上でちょうど四つん這いの姿勢で


(ユッサ・・ユサ・・)(ポイポイ

大事にされて奇麗に整頓されている本を次々と無造作にポイポイ放り出していく

マギハちゃんのかわいいお尻のスカートが

リズミカルに揺れている


「あれー あの本はいつもこの辺に隠れてたんだけどなあ」


「・・・」

(じっ・・)

それを指をくわえて じっと見ているアスラ



「あ!あったわ アスラちゃん!」



・・・・

・・・

そして話は

その後の風車の家でのことになる


「ふーん それでこの本をマギハちゃんから借りてきたのね」

「うん」


その後マギハちゃんとは別れて

アスラがマギハちゃんから借りてきたらしいその本を

アスラに渡されて持っているリズ


「  」

古そうだけど表紙は皮で丁寧に作られている質のいい本

(まあ・・高そうな本だなあ・・

全然絵本じゃない

書斎から出してきたって言ってたけど

普通にそれってシュバルツ先生の所有物よね


勝手に持ってきちゃって大丈夫かしらね・・

まあマギハちゃんがいいっていうならいいんでしょうけど)


・・

そしてその内容は


「これは・・メリカド地域の近辺のダンジョンと

その出没モンスター調査記録・・かあ」


「(著:ブラスハデス探検調査団・・)」

(ふうん・・まあ知らないなあ)


さっそくパラパラと見ていくと

この辺りにいくつかある周都の近辺に分布するダンジョンや

学園区内にあるダンジョンについても かなり詳しく記載されていた

中にはダンジョンを根城にするボスモンスターのことや

分かれたいくつかの隠し通路のような記載もある


でも書いてあるダンジョンの名前の下の方とかには

昔の筆記体の文字なのか結構読めない文字とかもあって分かりにくい


「へえ そこで取れる素材とか 宝物とかも詳しくかいてあるんだね

すごいなあこれ 印刷じゃないよ一点物だよ」


そこに一緒にいたネロも見慣れないそのダンジョン本を覗いている


「ん?なんだろうこれ・・」


ダンジョンのさらに古そうな記載のいくつかの地図の一部に印がしてあって

その場所にはダンジョンボスの先の空間や

隠し空間には巨大な虫型の原生生物のものと思われる痕跡が

多く見られることを示していた


この本によるとそれは大英雄が栄えた時代よりも前にあったとされる

創世期から旧星代魔王の時代にかけて今の世界の星雲を形成し

古い世界が弾ける一因になったのではないかといわれている生命体


魔物の特徴である魔核を持たずに「柱核」という独自の核を持つ古い生命体で

外部からの魔法の力をほとんど通さず

その土地の魔力を食したとされる大型の「原始虫」の痕跡ではないか、と

調査隊の記録に書いてある


(ただでさえ大昔の大英雄の時代より古いんだ・・


魔法が効かない生き物・・?

そういえば学園南のダンジョンの途中の

隠し通路みたいな場所にも虫みたいな痕跡があったわね・・

あそこだけ雰囲気が異質だったような気がするわ


世界の他の場所にも古い時代のそういうものが残ってるのね)


気になって他のページも見てみると


(あっ すごいこの本 

隠しダンジョンのはずのアスラたちがいた、

あの学園南のダンジョンの記載もあるわ


無人ダンジョン扱いじゃなくて

ちゃんと魔物が出るダンジョンって記載してある

でもそこに「はぐれ(ぼし)(ほこら)」って書いてある・・?場所的に多分間違いない

あそこって昔はそんな名前だったの・・?


当時から真ん中の神殿の石柱と小さい祠はあったみたいだけど

まだ今みたいな学園都市はできてなかったのね

今とはだいぶ地図が違うわ)


なになに・・


(( この隠しダンジョンに生息している魔物は

成体であっても極めて小型で原始的な見た目にとどまっていて

にもかかわらず

一部の魔物には比較的知能指数の高い行動をとる個体が確認された


その特徴的な地質環境から

古来のダンジョン形成の過程が途中で不完全なまま止まってしまい

そのまま取り残されてしまった場所である可能性がある・・?


かつてその地方の古い風習に時折利用されてきた場所ではあるが

そのダンジョン自体は

太古の原初の竜の傷ついた腹からこの地にいくつかが落とされたという

伝説の竜丸石のひとつを削って大昔に作られたという

遺物の竜の石像の力が今もなお生きており、

どういうわけかその場所が常に覆い隠されるような仕掛けとなっており


未知に包まれたダンジョン空間の形成過程の謎を(さぐ)る上で

貴重な土地の例ではあったが

未だに強い効力を持つ石碑の力が我々を拒み

一定距離の領域から奥へと進むことは断念せざるをえなかった


その際は一部の魔物とは接触ができて

他のダンジョンの魔物と比較しても極端に攻撃能力が低く

隊員の一人にそこで遭遇した魔物による攻撃が直撃したが

大した怪我は負わなかった ))


っていう内容


でもダンジョンの一番奥の岩山で

管に繋がれて暮らしていたあの善良な竜についての記載はなかった


まあ奥まではいけなかったみたいだしね

普段は勇者用のダンジョンみたいだし

探索隊は勇者パーティじゃなかったからかな 

でも私たちは普通に竜のところまで行けたんだけどね

石碑の力?とかも今は別になかったし

名称とかもそうだけどいろいろ昔とは違うってことかな


(道理ではじめのアスラたちも小っちゃくて攻撃をしてこなかったのね)


(でも今のこの子たちはけっこう魔法も使えてるけど・・

外に出ると変わるのかしら)



「へえ・・なんか本読んでるのに冒険してるみたいで面白いわね」

「僕 もうちょっと見てみるね!」


ネロはこのアスラが借りてきた本に

けっこう興味を持ったみたいで熱心に調べている


「この白紙の部分はなんだろうね?」


ネロにそういわれてみると本の後ろのページ辺りは

何も書かれていないページが多くあった


((旅の中で遭遇した古の領域 白き魔物の主たち・・?))


「  」

ページの始めの方にそう題名は書いてあったんだけど

その後に続くページは本当に白いだけの何もないページ


(これは魔物が白すぎて見えませんとかじゃないよね・・?)



「さあ・・未記載・・、メモ書き用・・、とか?

まだ制作途中の本だったのかもね」

「ふーん まあいっかあ」


「それでアスラはダンジョンに行ってみたいの?」

「うん」


(元々別にこの本がなくても

簡単なダンジョンの情報なら学園の書庫にもあるのよね・・

わざわざそんな裏の隠れたところまで行きたいわけじゃないし

この本をよく読み込めば詳しくもっと知れそうだけど・・


かといっていつもお世話になっている学園南のダンジョンっていうのもなあ・・

はぐれ星の祠だってね

アスラが強くなりたいっていってもあそこは

奥にいたあの善良な竜以外の魔物は限りなく弱っちいからなあ

この本にまで弱い魔物ってかかれちゃってたし)


(私もちょっと他の人たちがいる外のダンジョンが

どんなものか見てみたい気がするわね


今まで人目を気にして

無人の誰もいない学園南のダンジョンにしか行ったことなかったし

私の腕輪も先生に新調してもらったし・・)


(・・・)



「よし ダンジョンにいってみるわよ!」

「わあい」

かわいい万歳をするアスラ


「また急に・・」

ネロは困った顔をしていたけど 

探索一式の支度を始めるのか物置からガサゴソ漁り始める


「じゃあこの辺だと どこに行ってみたい?アスラ」


「うーんじゃあここ」ピト

「え、ここは・・」



・・・・

・・・

「ええ なにここ・・あっつうい・・」



ダンジョンにやってきた


ここは学園都市からは少し郊外に出て

東のやや外れにある比較的近場のダンジョンで


学園の東口ゲート駅からロープウェイで台地の外に降りて

足の速い馬車を捕まえれば さほど到着まで時間はかからない

(まあそれでも1時間くらいはかかったけどね)


また一般の人たちにも開放されている

都市部に近いせいもあって地区の整備は行き届いていて

入口近くの町の中まで馬車で来ることができた


学園で見てきたダンジョンと違って

周辺には露店や冒険者用のダンジョンの装備などを扱っているお店もあって


冒険者といわれるダンジョンで素材をとったり

依頼されたクエストをこなしている人たちもまばらに見かけることができたし

区外とはいえ聖セントラル中央魔法学園にもほど近いため 

ダンジョンで己を鍛えにやって来た?学生の姿もある


(カランカラン!)

「あいよ~ こいつは大きいねえ! 秤の銀三分でどうだい」

「大将もう一声頼むよお~」ワイワイガヤガヤ


入り口に近いところには探索が終わって

狩人のような恰好をした活気あふれる冒険者たちが

商人たちを相手に収穫してきた素材の卸売りの査定などをしていて

物珍しいダンジョンの素材たちがどんどん景気よく取引されていく様子を

私は歩いていく横目にみる


(へえ・・素材の査定かあ いいなあ

うわあでっかい変な植物だなあ 結構お高く取引されてる 何に使うんだろう)


・・・

そしてここはあまりダンジョンとしては

他の一般的なダンジョンと比較すると人気のないダンジョンだったりする

その理由は・・



「あつうい・・」

そう 暑いのだ


受付を済ませて洞窟のようなダンジョンの入り口の中に入ると

洞窟のような涼しさとはかけ離れていて


普通に岩場のような渓谷と砂漠のような広い空間世界が広がっていて

地上にはダンジョンの強い疑似太陽光がギラギラと照り付けていた


(まあ わかってたけどね・・)


このダンジョンの名前は「日差しの見る果て」ダンジョンだ



・・

ダンジョンに行く前に近くの露店でかまえていたおじさんに

「よう!そこの奇麗なお姉ちゃん!!ダンジョン行くならこれだよお!

ダメダメ! お肌が日に焼けちまうってえ!!

買っていきなあ!ちょっと高いけどお!」

(高いんか~い)


でもすんごい大声でおすすめされたので

事前にそこで日傘を買っていたのだが

リズはその白い日傘をさしながら そのダンジョンの砂漠の風景を眺める


わりとほんとに日傘としてはお値段は高かったけど

あら~肌が焼けてしまいますわホホホ みたいなおしゃれを気取った傘じゃなくて


ちゃんと肌を守ってくれるような冒険仕様の頑丈な設計で

数回切りだけどそういう日差しを抑えるような魔法もかかっている


長年商売してきた露店のおじさん(いわ)

「安心ってのは安さじゃ買えない」ということだそうな


確かに冒険をする人たちは階級が低くても

身の安全に直結するような装備とかにはお金をかけたがる


(これはほんとに買っといてよかったわね・・それでも暑いけど)



「ネロ~ ネロの頭の上あっついよ~」

「我慢してねミスラ」


ネロとスライムたちも当然のようについてきていたが

ネロの頭の上にのっている今はスライム形態のミスラの冷たさが

重宝されているようだった

(ただミスラにはここは本当につらい環境そうだった)


その涼しさを求めてなのか黄色いキスラも

ネロの頭の上のミスラの上にさらに重ねて乗っていて 

こちらはミスラに都合よく日差しよけにされているようだった


で、さらにそのキスラの上に日差しよけの麦わら帽子を被らせて

自分でさらにダンジョンに用意した大きな荷物も背負っているという、

ネロの苦労人詰め合わせ冒険者スタイル


「ネロ それいいわね(ミスラのこと)」


「え リズ背中の荷物もってくれるの・・?」


「違うわ ミスラのことよ あとで交代ね」

「そんなあ」


すると

「リズ!あたしはいいよお!」


どこかしら近くにいた

アスラがキラキラした目をしてテチテチ駆けてくる


「あっ!ちょっと・・!」(ハッシ)

ミスラに対抗してわたしに飛び乗ってくっついてくるアスラ

(ぐああ・・! あついい・・暑苦しい・・!)


ただでさえ暑苦しい砂漠のダンジョンでさらに暑苦しいアスラが密着してきて

リズからは心の悲鳴と汗が流れ出る


ちょっと笑っているネロ

絶対に後でミスラをよこしてもらうんだからね



「ふん~♪」

こんな状況でもアスラは快適そうだ 暑さに適性があるんだろう


というより借りてきた本をパラパラとパンフレットのようにめくって

このダンジョンの環境にでっかい太陽の挿絵で気が付いたアスラが

このダンジョンを指定してしまったのだ

あまりモンスターもそこまで強くはないということだったので

そのままOK!してしまった


(まあ アスラに好きに選ばせたのがいけないんだけど・・

適当に近くの涼しめの洞窟とかを選んでおくんだったわ)


(あっ・・そうだ)

「アスラ あそこに蝶々が飛んでるわよ」

「うん そうだね」


(ぐぬぬ・・!)

アスラが子供のように無邪気にひらひらの蝶にむかっていって

私から離れてくれるのを少し期待していたんだけど 

アスラはリズにくっついたまま無情に同意するだけであった


「・・・」

(とはいえ蝶もいるのね・・この環境で)


砂漠の様なダンジョンではあるが 

本格的な砂漠エリアに入る前にはところどころ岩山もあって

ずいぶん大きなサイズの石なんかもある 

そんな大小の岩などが影になってわずかに植物が生い茂る場所があって


(ヒラヒラ・・)

そこに白っぽい蝶のような虫が飛んでいたりした


(ふーん 生きていくのも大変ね・・


でもこの小さい白い蝶々ってわりとどこにでもいるわよね

他のダンジョンや草原でも見た覚えがあった

確か「白爪蝶」だっけ・・、白い花のあるところじゃなくても別にいいのね

案外どこでも生きていける強い虫なのかしら・・)


・・

アスラが引きはがせなかったので仕方なく

ネロたちと一緒にそこにいって岩場の影に入る


「ふんふん~♪」

(ふう・・ちょっと涼しくなったかも・・

このご機嫌なアスラさえくっついていなければね)


・・

ダンジョン探索らしく

岩陰に生えていた植物を観察してネロが手に取って調べてみている


「これはダンジョンだけの植物だね 「七つ実草」

もうちょっと大きくなると房の先に7つの丸くてオレンジ色の実をつけるんだ

実はちょっと酸っぱいけどそれが美味しくて栄養が・・」

「やったー!」



「まずい~~」「きゅ~」

「まだ花だからおいしくないよ」


まだ実がなる前の花を口にくっつけているスライムたち

「でも食べれる・・」シャクシャク


「あんまり変なもの拾って食べないのよ」

・・


「せっかくあの本は借りたけど ここは隠し場所とかはないダンジョンだね

本に書いてないだけで探せば実はあるかもしれないけどね

どうするの?奥までいけばちょっと危ないボスモンスターはいるみたいだけど」


「ふーん、でも今日はそこまで奥に行く気はないから」

「そう」



・・・・

「そっちにいったぞ~ オラァ!」

「チェストォォ!」

「きゅあああ!」

少し遠くの先をみると冒険者の男3人グループがいて

小さいサンドワームのような魔物に砂漠で遭遇していて

囲いながら戦っているところだった


(なんかいじめてるみたいね・・しょうがないけど)

パーティメンバーに杖を持った魔法使いが見当たらず 

剣をとって連携して戦っているから物理主力の冒険者パーティだろうか


「あれが冒険者の戦い方ね・・大変そう

 魔法使いがいないけどやっていけるのね」


他人事なので遠くでのんびり見ているリズ


「冒険者っていってもピンからキリだからね


このダンジョンにはだいたいEランクまでの冒険者の人が狩りに来るみたいだよ

奥地の大きめの珍しい獲物や薬の原料の採取が専門だと

Cランク級のパーティの人たちもくるみたい

あの人たちは・・多分EかFランクの冒険者パーティかなあ」


「へえー そうなのね」


・・

いわゆる冒険者といわれる人たちには

そういうランクっていう等級が冒険者の組織組合によって割り当てられている

勇者のランク付けの制度とほぼ同じで上はSランクから

A、B、C・・と続いていって下はGランクまでだ


これは魔法師とは別の等級で

その理由は冒険者には今戦ってる人たちにみたいに

魔法技能を全く持たない人たちもいるからで


でも魔法使いの人も普通に冒険者として多くの人が世界で活動している

そういう人は例えば 

下位魔法使い兼Cランク級冒険者で職業魔法剣士 

という風な肩書きになっている


中級位レベルの実用的な魔法が使えるならば

そういう魔法使いの冒険者は

どこに行ってもパーティメンバー募集で引っ張りだこだ


(ちなみに聖セントラル中央魔法学園の学生は入学した地点で

自動的にGランク扱いの冒険者の資格がある


高等部できちんと試験を突破していれば

卒業時にはDランクまでの冒険者の資格が得られる

私は手続きもなんにもしてないので多分そのままGランクなんだよ)



・・・

「きゅああ!べちっ」

「ぐえあ! てんめええ」

推定EFランクの物理主体の冒険者パーティの男たちに追い立てられて

体をぶつけて反撃をしている小さいサンドワーム


(あれがこのダンジョンによくいる魔物ね・・

あの本で下調べして書いてあった魔物の細かい姿絵と同じね)


ここは入り口にも近いので

他の冒険者たちと狩場が被るとあまりよくないだろう

冒険者たちにもマナーがあって場所が被らないように気を付けているそうなので

そのマナーに従う


「もうちょっと私たちは奥にいきましょうか」

「そうだね」


・・

砂漠のダンジョンを奥へと進んでいく

(カキカキ・・)

「ここに印をつけて・・」

「何してるの?ネロ」


入ってきた入り口付近にあった最初の岩山の影が

見切れるくらいの距離まで歩いてきたので

ネロは砂漠の途中で迷わないようにマップを照らし合わせながら

今見えていて分かりやすい背の高いサボテンの位置を基準にして

最初の岩山がある方向と自分の位置もメモしていた


「木版の機能を使ってたんだよ」

よく見るとそれは

以前にオジキからもらった風車の家の権利の木版の裏面を使っていた

こっち側から見るとオジキの達筆な魔力のサインの刻印が見える


「メリカドは方位磁針が使えないところが多いでしょ?

だからこういう特殊な地図の付け方をするんだよ」


貰ってみると意外と便利だった木版

刻印の文字の魔力の一部は裏面の機能を使う動力にもなっていて


この木版は実は魔道具のようなもので画面が特殊なので

普通の地図とは性質が大きく異なるけど

例えば道の木にリボンをつけて迷わない目印をつけていくのと同様のことを

木版の画面ひとつで管理できる


つけた目印と自分が持っている木版の位置と離れた距離が

移動をすると相対的に画面内で変化するので

最悪直線的にでも元の目印の方向に合わせればそこまでは戻ることができる


市販の地図と併用すれば利便性がより上がって

もしダンジョン内の地形自体が変わって地図が変わっていた時などでも

記録をしておけば後で正確に修正をできたりもする

・・


「へえ そんな機能もあったのね」

「使えるとけっこう便利だよ」

こうしておくと広いダンジョンの帰り道でも大丈夫なんだって


「いいわね 私にもちょっと教えて」

「うんいいよ」

ネロにやり方を教えてもらいながら歩いていく


・・・

そうやって進んでいくと

(ボゴォ!)モコモコ

「え・・!」


少し前方の砂漠の砂の地面が盛り上がったかと思うと

「ギシャア~~!」


大型犬よりもやや大きいくらいのモグラ型の魔物が

私たちのパーティ一行の前に飛び出してきて

リズの方をみると もう慣れてきたけどなぜか途端に襲い掛かってくる


美味しい獲物の匂いを察知したのか

その風貌は

今までみてきた学園南のダンジョン産の魔物よりかなり大きい


「お、これは少し珍しい魔物だね 「砂粒モグラ」、

毛皮に熱耐性があって 希少な素材として取引がされて・・」


飛び出して襲ってきた砂粒モグラをみてネロが解説する



「(全然砂粒サイズじゃない・・!

でもこれは・・!昨日あの本で見たところだわ!)」


・・・・

(回想)

風車の家のリビングで

なんにもせずソファーにだべっていたリズであったが


(・・・)

事前に準備をしっかりとしているネロにいわれる


「リズはさ、ダンジョンなめてるよ」

「そ、そんなことないわ」


昨日ダンジョンに行く前にしっかりネロに予習を強いられてしまったけど

ここでしっかり知識が活かされるなんて あの魔物の弱点がわかるわ

お腹の毛皮の色のうすい下あたりよ

やはり私は見る目があるわね


・・・・


「てえい!!」


「ミギュ!?」

「ズギャアアアア!」


(パアン!)リズの拳が直撃して

襲ってきた砂粒モグラがはじけ飛んで飛散する音


パアア・・

砂粒モグラだったものから魔力の光がでて討伐は無事完了する


バサア・・!

とっさに高く放り投げた日傘が時間差で地面にクルクル開いて降りてきて

演出を盛り上げる


「リズかっこいい!」「わあい」

「うふ」

ミスラやキスラの反応は無邪気なものだった

(うん この直した腕輪の感触 

イヴの力を使ってもそれにもしっかり網目が収縮して

フィットしているわ これはいいものね・・!)


が しかし


「あっ・・!」

気が付く

(そうよ ここはアスラのためにやってきたダンジョンだったのに)


「・・・」

ようやく くっついていたところから離れてくれて 

今は少し離れたところからじっと指をくわえて見ているけど 

文句は言ってこないアスラ


(まあ次もあるし大丈夫よ それにいきなり襲ってくるのが悪いのよ

あんなの対処するしかないわ 


・・ていうか全部弾けたら弱点とか関係なかったわね)


アスラの方はまあよかったのだけど


・・

「うーんやっぱり リズが戦うと素材は諦めた方がいいね・・

このダンジョンならもしかしてって思ったけど


全然このレベルの魔物でも素材が飛散して取れないや」


ネロはその四散した現場を検証して残念そうな顔をしている


「あら・・」

・・

ネロが昨日

「そこなら素材もいっぱい取れるかもしれないね!」

っていいながら大量の荷物の中にウキウキとした様子で

採取や剥ぎ取り用の道具も追加していたのを見かけた気がする

・・


「だ、大丈夫よ これからはアスラも戦うわ、 ね?」

「うん 戦う」


「そうだね・・」

ネロはもうあんまり期待はしていないようだった


・・

オジキたちのことで私のオリジンの力って

使い続けてていいのかな?とは思ったけど


別に同じ力を持つ相手同士で戦わなければ大丈夫みたいだし

扱いは一応体術カテゴリーみたいだし・・

それに私は私で力に目覚め?ないとどうもいけないみたいだし

まあこういうあんまり人目につかないようなところでなら鍛えていこうって思う


・・・・

「どうだい とれてるかい」

「ぼちぼちです」(まあ一切とれてないんですが)


途中で最初見たのとは違う冒険者の人たちに出会って

釣りをしたときみたいな挨拶をされたので ありがちな返事を返して

やっぱりもっと奥に行くことにする


(へえ・・やっぱすごいわね あんなのが取れるんだ)


「ザッザッ・・」

こっちの冒険者グループのひとたちはまともそうというか、

特定の素材を専門に狩りに来た感じで

ちゃんと魔法使いっぽい人もいて装備もよかったのでランクが高そうだった

あれはサソリの甲殻だろうか

他にも毛皮や光る植物を持っている専属の荷物持ちの人もいて

なかなか冒険者の趣がある


挨拶をかわした冒険者の人たちと別れて

砂漠のルート奥にぼちぼち進んでいくと

・・


「ジギギ・・!」

(わ 近くで見ると大きい っていうか虫が大きいと異物感がすごいわね)


さっきの冒険者のひとが担いでいたのと似たサソリ型の魔物に遭遇する

魔物はどう見ても私の方に向かってくるんだけど 

ターゲットの私はざっと後ろに下がって 今度こそアスラに任せる



「グレイト・ファイヤー!!」


「ゴオオオオオ!!」

「ジャギギ・・・!」


サソリ型の魔物に直撃するアスラの炎魔法

(あれ・・?)


そしてすぐさま距離を詰め接近するアスラ

「ファイヤーパン・・」



「ブシュウウ・・」(ポウ・・)

なんとアスラのはじめの一撃でサソリ型の魔物は動かなくなって

甲殻の原形は残って燃え尽きて魔力の光がでているところだった


(アスラの魔法も威力高いわよね 等級的には少し上のレベルの魔法だし)


「これは「黒甲サソリ」だね・・、

さっき冒険者の人も持ってたやつだよ」


魔物の原形が残っていたので素材を採取するためにネロが近づいていく


しかし


剥ぎ取ってみようとした瞬間

「バキン・・」

「あ・・」(あーあ)


灰のようになって形が崩れる黒甲サソリの甲殻

アスラの魔法の炎によって甲殻は炭のようになって強度を失っていて

どうやらもう素材としての価値はないようだった


「うーん ここにくる時いくつか簡単そうな採取クエストも

受注してから来ようと思ってたんだけど・・ しなくてよかったね」


「そうね・・」


どうやらリズ達はまだダンジョンの素材たちとは縁がないようだった


それからしばらく奥に進んで・・


・・・・

・・・




「あっ! あれオアシスだよ!」

ダンジョンの砂漠の中にオアシスらしき水場を見つけてはしゃぐネロ


砂漠の中にあらわれたエメラルド色の澄んだオアシスの湖は

まるで砂漠に浮かぶ宝石のようだった


「本当ね!(予習でやったところだわ!)」


このダンジョンにはいくつかオアシスが点在すると本のページに書いてあった

一応砂漠の地図ルートもこのオアシスの辺りを目指していたから

正確にやってこれたということだろう

オアシスの周りは水があるので植物が生えていて

日陰もあって水辺には涼しいところもある

・・

私たちはそこで休憩をすることにして



「リズ~~」ひょいひょいひょい )))


「まあ」ギョ


アスラがオアシス周りに落ちていた、

ちょうどいい長さの植物の木の枝を拾ってきて それを二本で器用に建てて

まるで竹馬に乗っているようにずいぶんコミカルに移動している


しかも背丈もやたらと伸びて視点的には私と近しくなっているので

ちょっとびっくりする

この子にはそれが嬉しいらしく ずっととことこニコニコしているのだった


こんなことができているのは以前に

ゲンゴからの体のバランスを取る修行の一環で

風の里から持ってきたらしい訓練用具の小さい竹馬を

アスラに与えられていたことがあったからなんだけど

・・

(そら 棒から手を離すぞー)

(~~っ)

普通にアスラはその時はまたゲンゴに楽しいおもちゃを貰ったのと

おんなじような反応をしていて

それは修行といっても

アスラにとって特に遊んでいるのと変わりがないようだった


そして

・・


「ファイヤー!」ひょいひょいひょい

(あつくるしい・・)


オアシス周りにときどき現れる小型の魔物は

砂の上では意外と動きがとても素早く


アスラはそれを竹馬に乗りながらずっと追い回し続けている


砂に沈む前に竹馬の足を引き抜かないといけないので

なかなか大変そう


まあ修行とオアシス周りの安全のために

アスラには頑張ってもらうことにして




・・

「しっかしあれで強くなれるのかしらねー」


離れたところのオアシスの水辺にいて 

その竹馬の上から器用に戦って?いるアスラの様子を見物している私とネロたち


「アスラの稽古のことは僕はよくわかんないけど・・

でも戦闘経験っていうのかな 


自分の普段とは違う世界や状態に身を置いて戦うと

力をつけやすいってよく言われてるよね


それにダンジョンなんかで魔物を倒したら、あの魔力の光が

一部が倒した人に還元されて技を閃いたりもするっていわれてるから

能力にも一部が蓄積されていって 少しずつだけど強くなっていくみたいだよ」


「そういえばそうだったわね」


・・・

その後 水辺の休息地でリズはネロに交渉?して

担保の日傘とミスラをしぶしぶ交換してもらって


ネロは少し移動した水辺で代わりのリズの日傘をさして

リュックから道具を組み立てて

オアシスの端でキスラと小さく並んで釣りなどをして時間をつぶしていた


水辺は涼しいけど本当に水辺の近くは照り返しがすごいし

テイマーの交信術はもう繋いであるけど

アスラのことも一応ちゃんと目で見ておけるところにいないといけないから

(ここかな・・)

ネロの釣りのポイントからは少し離れた場所にリズは陣取る


わたしはようやくここにきて念願のミスラを

オアシスの水辺の影になっている場所で抱え込む


「リズ・・あっついよ~」


「あ~もうちょっと我慢して~」(はっし)

(うーん ミスラ冷た~い)


・・・

しばらくそうして各自くつろいでいると


・・・・ん?

なにか騒がしい気配・・


(ゴゴゴ・・)

「うあああ! 助けてくれえ~!」

「うひい~」

遠目に私たちのいるオアシスエリアに向かって必死で走ってくる、

ボロボロの姿の冒険者たちのパーティが見える


よく見るとそれはこのダンジョンで最初の方に見た、

小さいサンドワームの魔物をいじめていた野蛮な男3人組の冒険者たちだった


(げげ・・!)

その後ろを見ると 


「ギュアアアアア!!」(ボガーン!)

なにやら超でっかいサンドワームの親玉みたいな魔物に追われているようだった


「・・・」

(これって もしかして因果応報っていうやつなのかしら)


小さいサンドワームをいじめていたら

サンドワームの親玉にあって逆襲されたのだろうか


(とはいえ それに巻き込まれるのはたまったもんじゃないわね

あっちにいきなさいよ)


しかしオアシスは分かりやすい目印なのか

人の姿が見えたからなのか もう真っすぐこちらに向かってくる

(しょうがないわね・・)


「  」キィン

新しくなった銀の腕輪のテイマー術でアスラとはすでに交信していて

地点を決めて合流する

ミスラは危ないのでネロのところに再び預かってもらう


「いくわよ アスラ!」

「うん!」ひょいひょい(まだ竹馬アスラ)


逃げてきた冒険者たちを追ってきた巨大なサンドワームを

私とアスラの間で距離をとって斜めに見えた俯瞰の位置から迎撃する


「グレイト・ファイヤー!」


「!!」

「ズゴオオオ!!」

突然のアスラの炎のビーム状攻撃が

いきなりサンドワームの大きな胴体に直撃して

「ギイアアア!」

地面でのたうち回るでっかいサンドワーム


(さすがに体が大きいから耐えるわね・・!

砂漠にいる魔物だから熱耐性もあったのかしら)


怒り狂ってサンドワームの標的が逃げている冒険者から

変な棒の上にのって攻撃をしてきたアスラの方に移り変わる


なおアスラのグレイトファイヤーの継続直撃はつらいようで

巨大なサンドワームは炎を避けて砂の地面に一気に潜り込んでいく


(地面に潜られた・・!)


ゴゴゴゴゴ・・!!

地面が揺れる


(・・!いけない!)

「アスラ もう竹馬はいいから!

そこから横に遠くに飛び出して!」


(ピョーン!!)

アスラはすぐに今まで竹馬にしていた棒の元からは飛び出して

その場を回避する


その瞬間


「「ズボオオオオオオ!!」」


潜った砂の地面から親玉サンドワームが突き破って地上に攻撃をかけていた

「ギギギ・・・!バギイイン!」

親玉サンドワームの大きな口径に縦に挟まった竹馬の棒が

その顎の力によってへし折られる


「あ~~!」


(まあ すごい迫力ね・・!ってそんなこと思ってる場合じゃないわ

真面目に危ない)


「気にしないの!アスラ!」

「グレイト・ファイヤー!!」バッ


すぐさまその飛び出してきたところに

グレイト・ファイヤーの強力な炎をあぶるようにぶつけていく

「ギイイアアアア!!」


砂の地上に勢いで出た場所からグレイト・ファイヤーをぶつけると

出てくるたびにその出た部位にグレイト・ファイヤーが当たって

サンドワームの体全体に満遍なくぶち当たっていって

すごく炎の炙りダメージが入っているようだった


「ギギイ・・!」

それでもまだ倒れない巨大なサンドワーム


(あっ しまった・・!)

アスラに声をだして指示してしまったために

複数あるサンドワームの怒りの目がリズの方を向いていた


「グギャバアア・・!」

(ズズボ・・!)

また再びすごい勢いで地面に潜るサンドワーム


ゴゴゴ・・

だが地面の揺れはさっきと違って小さくなっていった


(ん・・?逃げたのかしら かなりダメージをもらっていたようだし)




「 ふーん でもそんなわけないわよね・・!」


(オジキのは確かこうだったかしら・・! 真似したくなったのよね・・!)


リズは右腕から邪悪なオーラをはちきらせて

バキバキと付近の空気を鳴らしていくと



「 地 裂 掌 破(ちれつしょうは) !!」


(地面に突き立てて力を溜め込んだ滅拳メギラを撃っただけともいう)


リズはその腕を瓦割りのように思いっきり地面に突き立てた


「ズガアアアアア!!」

地面に亀裂が走り とてつもないエネルギーがそこで炸裂する


・・・・・・

・・


「(ウギ・・キャ・・!!)」

このサンドワームは

ここまで巨大に育つまで生きていた個体だけあって頭が良かった


魔物使いの冒険者との戦闘経験もあって

使い魔に指示を出しているのが人間側だとわかっていた


頭の良さで的確に敵を見抜いて 始めのアスラの攻撃から学習して

今度は音を抑えて地中から接近して

逃げたと見せかけて この無礼な人間に鉄槌を下すべく

食い破る気だったのだ


しかし もう少しだけ頭が良ければそのまま逃げることもできただろうに


無常にも今まさに地中から飛び出してリズを食い破ろうと

サンドワームの頭が近づいた瞬間に 

リズの()()はサンドワームの頭上で炸裂したのだった



「(アギャアアアアアア!!)」


巨大なサンドワームは そこで頭と胴体の一部までが破裂して

そのまま地中で動かなくなったのだった



「・・・・」

シーン・・


リズが拳を地面に突き立てたあと 静かになった砂漠のダンジョン


(あれ・・?ほんとに逃げちゃったのかしら?

絶対あの目は来ると思ったのに)



その時

「ポアア・・」


どこからか地面から魔物が討伐されたときに出る光の一部が浮かび上がってきた

それがアスラの方に向かっていく

還元されて強さの経験の一部になるという光


(あら・・アスラの術が効いていて地面の中で

力尽きちゃったのかしらね まあアスラだけで倒せてよかったわね)


「  」

なおリズにも倒した分の光はやって来ていたのだが

地面から足元に近すぎて リズは気が付くことはなかったのだった



・・・・

その後

「あ、ありがとうございます」

「み、水だあ~」

サンドワームに追われていた男3人組の冒険者たちがやってきてお礼を言われる


(こりたらさっさとどっかいってよね)

「よかったですね」

うっかり先に出かかったけど まあ本音は今は抑えておこう


冒険者たちは水分を補給して

今度は深入りせず控えめに狩るんだそうで 

元来た出口に近い方に向かっていった


(こりないねえ 冒険者って死なないと治らないのね)


なお冒険野郎たちが水を補給するときに

オアシスでバシャバシャ水浴びもしていったため 


せっかく撒き餌をまいて魚の影がちらほら見え始めたころだったけど

ネロの釣り堀に魚の影は寄り付かなくなってしまったのだという


(迷惑な話よね やっぱ人がいるダンジョンはあんまりよくないわね

まあ状況が特殊だったんだと思うけどね)


・・

そうしてアスラはまた修行に戻り

私はまた休んでいた木陰の位置に戻る

が今度はミスラは来てくれなかったのだった


というより今度は

一緒に釣りをまた再開していたネロの方に夢中そうだったから

私から声がかけれなかったんだけど


仕方がないので さきほど戦闘で使った新しい腕輪の様子を確認する


(しかしこの腕輪 使ってみるとアスラとの伝導はよくなってるし

滅拳メギラを使ってもフレームがゆがんだりしないし やっぱりすごいわ)


満足な使用感で新しい腕輪の手入れをしながら休憩するのであった



・・・・

こうして

アスラから始まった砂漠のダンジョン探索は帰りのことも考慮して

切り上げ予定の時刻になる

終わってみてアスラを近くまで迎えに行く


「りず・・!」

たくさん修業ができたみたいだから

もしかして素材とかとれちゃうかなって僅かにちらりとは思ったけど

「(プスス・・」

案の定アスラが倒したであろう魔物の素材はみんな炭になっていた


(これは・・炭として素材にはならないのだろうか)


ネロの方は釣りをしても結局お魚は最後まであまり寄り付かなかったみたいで

1匹だけ小さいハゼのようなブサイクな顔をした魚が釣れて

その時はスライムたちとすごく喜んでいたけど 小さいので逃がしてあげて

収穫はゼロであった


「結局素材は取れなかったね」

「そうね」


結局私たちは一つもダンジョン素材はもたずに

来た時の日傘と荷物だけの収穫なしまま このダンジョンを後にするのだった


・・・

(あのボスなんじゃないか、

みたいなでっかいサンドワームは一応倒したけど・・)


そう あの巨大なサンドワームは地中でやられてしまったため

素材の回収などは一切できなかったのだ

回収できたらけっこう質のいい感じの素材が取れそうだったんだけど


(私も入り口の所にいた人たちみたいに査定とかしてみたかったなあ・・)

ちょっと思ったけど



「(まあアスラがまあまあ満足そうだったからいいか)」


(・・今はくっつかないでほしいけどね)


「ふんふんふん~♪」

砂漠のダンジョンの見晴らしのいい少し傾いた太陽の日差しの帰り道で

リズの背中に ご機嫌なアスラがくっついていた


・・・・・


「日差しの見る果て」ダンジョン前の

一仕事終えた冒険者たちが集う施設内の休憩所


・・

「ふう・・」

ようやく暑かったダンジョンから帰ってきて

スッとした外の空気がすごく涼しく感じる


環境が一気に戻って

かいていた汗が冷えたりするとあんまり体によくないので

リズはネロたちの分のお金も払って入り口の近くに併設されたそういう設備で

体を慣れさせたり魔法で奇麗にしてもらうサービスを受けてから少し休憩する


・・

(査定したかったなあ・・)

リズは憧れの素材の査定には未練たらたらで


他の冒険者たちが砂漠から持ち帰った素材の塊を

じゃんじゃらと買い取りをしてもらって

報酬の銀や銅の硬貨と交換している様子を少し離れから見る


・・

その場所の横には横幅の大きな掲示板に

たくさんの依頼のクエストが記載された紙が

ピンで刺されて張り出してある

(ネロが簡単な依頼クエストって言っていたのはこれのことだね)


「あれ・・」

そのクエスト一覧の端の方に気になるものがあった


(学園の敷地内ではこういうものはなかったわね・・)


そこにはモンスターや討伐依頼の募集とは別に

山賊や犯罪者などの顔付きの手配書があったのだが


・・・・

・・・

「「  」」

顔写真不明でそこに記されていたのは

「クルード・アドバンスト」と書かれていた手配書に

大きく塗りつぶすように赤いペンキのバツがしてあった


「・・!」

その手配書は他の犯罪者とはまるで違う扱いで

ありとあらゆる罪状がつづられた後の最後に


「「 世界はこの者を「敵」とみなした 」」とかかれており


とんでもない桁の懸賞金までかけられていたようだった



「(え・・、なにこれ

クルード・アドバンスト・・?この名前・・!

まさかこの世界のクルードなの・・?)」


近くにいた案内のひとにこれは何なのかを尋ねてみる

・・


「あの・・これってどういうことなのか教えてもらえませんか?」


「ああ・・これかい?もうバツが付いてるやつじゃないか 

もう捕まったってことだな


あそこの区の学生さんなら学園都市ではこういうのはなかっただろうな

こんな凶悪な人相書きをズラズラ並べてたら飯がまずくなるからな


馬鹿なやつらさ 何をやったのかは知らねえが

聖ソウル法典直々に神の敵として

魔物領で暴れる魔物どもよりも目の敵にされたのさ


こういう世界的大犯罪者は

捕まったことを大大的にしばらく世間にアピールするために

こうやって捕まってもしばらくは貼ってあるんだ


捕まえたやつが羨ましいね これだけ懸賞金があればこんなちんけな街で

働いていなくて済むぜ」



(・・・)

「そうですか・・ありがとうございます」


「リズ・・どうしたのぉ?」

近くにいて足にくっついてきて肩までのぼってきたアスラが覗いてくる


「ううん なんでもないわ・・」

(クルード・・捕まった、の・・?)


犯罪者の手配書はそのクルード・アドバンストの他にも何枚も並んでいた


「(これは・・)」


「(「狂乱の炎ドラグ・バルバロイ」・・?)」


これも顔写真不明で多額の懸賞金がかけられていて

だけどこちらは捕まったという赤いバツ印はついていなかった 


この名前のかかれた犯罪者にリズが反応したのは

その名前を見たからではない


その手配書の影のかかったような手配者の身体の特徴

その血濡れの強靭な上腕部に刻まれた、

刺繍のような文様の一部だけだったけど


「(この腕の文様・・・、

オリジンの最上位13柱の称号の紋様に似ているわ・・!

一部だけで隠れているけどほぼ同じ・・、どうしてオリジンの・・)」


「  」

その手配書の姿が竜人のようだったことも相まって

リズの脳裏に

地獄のような炎に包まれた処刑の大剣を背負い込んだ

残虐な笑みを浮かべた魔人化ドラゴンロードマンの降り立つ姿が浮かんでくる


((今一瞬映ったのはハスラーキッドと同じ、特別な裏コードを持つアカウント

情報は非公開のプレイヤー「???????」


怪人使用率は9()9().()9()%「魔人化ドラゴンロードマン」


今の世界レートの「1()1()()」に割って入ってきた

オリジン13柱の称号持ちの最上位プレイヤーだよ ))


いつかの楽園の通知システムだと名乗っていた小さな男の子

シスがいっていた冷たい声が思い出される


(どういうことかしら・・私やクルードの他にもこの世界に

オリジンプレイヤーがいるっていうこと・・?


それも最上位レベルの実力のプレイヤーが・・

マークの偶然の一致・・?それにしたって

だとしてもなんで魔法使いの犯罪者として手配されてるの・・? 

「ドラグ・バルバロイ」・・

 神の、敵・・?)


名前は知らないけど赤いバツがつけられてる魔法使いの手配書が

何枚も連なって杭のようなものが突き立てられて並んでいる


「・・・」

(これももしかしたら・・

私の知らないオリジンプレイヤーたち・・?


私の世界の人たちがこの世界にやってきて何か悪いことをしている・・? )


(いや そんなまさか・・、ね )



・・・


「リズ~ 屋台にいこうよー」

陽気なネロたちの呼び声がかかる


ハッと意識が切り替わる



(そうね 考えすぎだわ )


ネロやスライムたちはもう既にダンジョンではなくて

美味しい屋台の料理たちに狙いをつけて目をキラキラさせていた


「アスラ、ほら屋台だって

あなたもミスラたちに付いて好きな所を先に見てきなさい」


「うん!」


(タタタ・・)

私の肩から降りて

かわいいおしりの小さい後ろ姿は駆けて離れていく


見たことのない屋台にはしゃぐミスラたちの方に合流する


(キャッキャ・・)

こうしてみると

あの子が強くなったのか・・なんてやっぱり見た目には全然わからない


(・・・)

それでも努力をするアスラは毎日確実に少しずつ成長していく

アスラだけじゃなくてこの子達や・・私だって、まだまだ成長するわよね


今日はたくさん動いたから君たちは今日もいっぱい食べるんだろう

そして屋台のお金は私のお財布から出るんだけどね


少し町の屋台の料理のいい匂いが風に乗ってここまでやってくる



「・・私もいこう」


リズはその張り出しの掲示板の前を去ったのだった



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