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瞳を見るとBURST HEAT! VS世紀末格闘少女リズと不思議の格ゲー魔法世界  作者: 綾町うずら
勇者たちと動き出した運命編
73/147

第73話 高等部へようこそ

 そういえば入院していた時に珍しいことがあった


私がベッドで大人しく手を使って

また生産できるようになったセミの抜け殻を量産していたときのことだった


(向こうの世界に意識がいってたときは

抜け殻を作る魔法は使えなかったから ちょっとさぼってたなあ・・)


(お・・、ちょっとなんか器用さがレベルアップしてる気がする

このわきわきとしたリアル感 


やはり向こうでオリジンの画面の中の

終末世界の本物?の虫たちの造形を見てから

またここで参考にして作ると臨場感が増すわね・・)


注意

((*リズの作るセミの抜け殻はよりリアルさが極まっていますが

  虫が苦手な人はファンシーモードに勝手に変換してください ))


・・・・

(スッスッ・・、ペタペタ)

「(もうひとりの存在・・

クルード兄さん・・今はあまり動けないってシスが言ってたけど

この世界のどこかに・・いるのかしらね)」


そんなことを思いながら例のナメクジみたいな

私の魔力ベースの粘土をこねて病室のベッドの端のラインに

淡々とセミを並び上げていた


(スピピ・・)

アスラは今はベッドの上の私の隣の布団の中にいて お昼寝をしている


セミを作りだす前に空いていた手で

アスラのお腹を適当にワッシャワッシャしていると

始めはアスラは喜んで手にくっついてきたりしていたんだけど

お腹が気持ちよかったらしく

そのうちウットリうとうとし始めて眠ってしまったのだった


・・

そんなとき

「面会の方です」

看護婦さんの人が声をかけてくる


(あれ・・だれだろう お見舞いとかかな)


「(ぬっ・・!)」どおおん!

(ええ・・!)


病室のドアから入ってきたのは なんと最近ご無沙汰になっていた

リズの寄生魔法の超結晶体「饅頭マン」の姿であった


(うそお・・!まさか野生の饅頭マンが 私にお見舞いに来るだなんて・・!)



「入るぞ お前が入院したと連絡を受けてな」

(え・・!)

饅頭マンがしゃべりだす そこで私は気が付いたのだった

これは・・そう


「お兄様・・」

といってもクルード兄さんではない


私 リズ・クリスフォードの兄 

同じこの学園の高等部に通っているバゼロ・クリスフォードであった


(ス・・)

スラリとした上級生用のコート姿に

紳士が被るような厚手の生地の中折れ帽子をかぶっていたらしく

その帽子を備え付きのデッキテーブルの上に置いている


バゼロお兄様には以前にリズが饅頭マンを実験的に寄生させていたままで

くっついている饅頭マンの面積が大きいので

他の人には饅頭マンが目に見えないから分からないけど

私の視点ではお兄様の姿の大半が隠れて半饅頭マン化しているバゼロお兄様

・・


(学園にいることはわかっていたけど高等部だったから

全然今の今まで会わなくて忘れていたわね まだ饅頭マンをやってたなんて)


会いはしなかったけど学園でお兄様の噂だけは聞いていた

また魔法の実力をグンと伸ばして高等部での評価を上げていたらしい

饅頭マンに寄生されてからずっと調子がいいみたいだったし・・


そんなお兄様がわざわざ私のところに・・?

(何しに来たのかしら・・)

・・


やってきたバゼロお兄様は私と話をする

・・・


「あのお前があの武闘大会に出場していたとは知らなかった

それも悪くない成績だったとはな 」


「は、はい・・」


すると

(・・・)

「あの大会に自ら出た、ということは・・

お前にもクリスフォード家を継ぐ意思があるということか・・?」



(・・!な、なんでそうなるのお)

「い、いえそんなつもりは

ただ成り行きの上で挑戦をしてみたいと思い・・」


家なんか優秀なバゼロお兄様が

そのまま継いでくれればいいと思う


「そうか・・」



(・・・)

「まあそれはいい、学園での授業も体の弱いお前が

病欠もせずに続いているとは・・ 母上と父上も喜ぶだろう


俺は家の者から連絡を受けて入院したお前の様子を確認しにきただけだ

別に身体に異常はないのだな?」


「はい 問題ありません 明日には退院できるそうです」


「ならいい 家の者には伝えておく

今後もクリスフォード家に恥じぬように励めよ


これはお前が生活で不自由しないように俺と実家からの足しだ」


(カチャ・・)

そういうと饅頭マン・バゼロお兄様は

小袋をベッドの横の棚の上に置いてさっさと帰ってしまった


「ありがとうございます お兄様・・」


(・・・)

(なんだ・・わりと普通にお見舞い・・だったのかしらね

実家の業務感があったけど)


なんだか雰囲気も以前よりは偉そうというよりは

自信がありつつも落ち着いた雰囲気になっていたような気がする

饅頭はついてるけど・・


お兄様が置き土産に置いていった小袋を開けてみると

銀貨がそこそこの枚数と板状になった銀のインゴットも入っていた

一般的にはかなりの大金だ


一番価値が高い銀貨には品位の高い女神の刻印がされている


・・

本来はそれが金貨でいいはずだが

一番が金貨じゃないのはこの世界の「金」の稀少価値が

私の元の世界と比べても何故か異様なほど高くて

一般に出回る硬貨にはそもそもの使用が適さないくらい

この世界には金がめちゃくちゃ少ないかららしい


世の一般に出回っている金に見えるものは

ほとんどがメッキか代用の偽物の合金だし

本物の純金の指輪とかを持てるのはほんとに限られた貴族や王家の人だけだ


大昔だったり他の国では金貨が流通していた時代もあったみたいだけど

今のメリカドでは流通はしていない

金色に見えるように加工した特別記念硬貨とかはあるけど



「・・・」

(ふーん あのバゼロお兄様だから

もうちょっと私にきつく当たってくるかと思ったけど

拍子抜けしちゃったわね・・


何か言ってきたらせっかく2体目の饅頭マンをつけて

サンドイッチマンにしてあげようと思っていたのに・・


良くも悪くもお兄様は実力至上主義だから

私が活躍する分にはあまりきつくは当たってはこないのかしらね )



「高等部かあ・・」


・・・・

その後 私は無事退院し

学園の先生方に呼ばれて

少し大会のことについて襲撃時の聞き取り調査のために

答えられるいくつかの質問を受けたり話をしたりした


その時に私のD組の担任のルージュ・ライアルド・如月先生も

一緒に同伴してくれていた


・・・・

・・

その後


いろいろ大会後の後処理が終わって

風車の家に戻って少したった時 


「ゴコ・・」ヒュウウ・・

風車の家についている羽車が軋んで回り始める音がしていた

「・・・」

(来たね・・)

風と一緒に大きな天狗のオジキが家まで訪ねてきて

再び私は治療中で体が動かせないゲンゴの病室まで移動して

私の向こうの世界の事情を打ち明けることになる


・・・


「ゲンゴ・・、来たよ」


「おう 来たな」

案内された病室にはオジキとゲンゴの他に

真剣な顔をして腰をかけているクロージュさんもいて

しっかりと部屋は結界で隠されているみたいだった


「ここには今は私たちしかいないわ」

「そうなんですね」


クロージュさんになら・・打ち明けてもいいと思う

これは私にとってけっこう覚悟がいることだったけど

事情が事情なので話しておかないといけないと思った


・・・

話を始めると

耳を傾けるクロージュさんやオジキは

始めはゲンゴや私が何を言っているのかよくわからなくて

やっぱりどこかの打ち所が悪かったんじゃないかと思ったらしい


(そりゃそうだよね 会場での襲撃について詳細を話されるかと思ったら

まったく別の夢みたいな異世界の話をされるんだもん


そもそも私にだってよくわからないのよ・・)


・・・・

・・・

それでも当事者の私が一番詳しいので向こうの世界の補足した話もして

けっこう長い間話していたような気がする


「・・・」

「にわかには信じがたいものだ、

夢幻の狭間に繋がれたもう一つの世界の自分の持つ記憶、か・・」

「リズ・・あなたは・・」


「でもここの世界の私は私です 

この話はまだ父にも言っていません

なんで私にこんな力があるのかは分からないけど・・」


「そうか・・ そしてその世界に存在する「オリジン」なるものと

この世界でも具現化していたそれらに極めて近き力・・

そしてそれを追う、かの世界の別次元の敵方・・、


うむ・・考える時が足りんな・・」


・・・

「 ・・ この世界には かの楽園の地や各地にあるダンジョンのように

超次元的要素を持つ異界のような土地が過去にいくつも存在し

時代を経てその数は減ったが今もなお存在し続けておる


故に他にも異なるルートでの異世界への転換点が実在することは

可能性としては十分にあるやもしれぬと考えておった


別の次元の世界が存在することを示すような現象や諸国に残された伝説も

今まで数多くあったのだ


だがそのような特異な特徴に

独自の文明すら持つ世界など聞いたことがない・・」



「その世界には魔法を使う魔法使いはいないけれど

科学が発達していて真の魔法使いと呼ばれている存在はいる・・

聞いてみると妙な世界ね


私はその世界の「仮想(バーチャル・)ゲーム」というものが

どういう物なのかは分からないけれど・・


その世界で「宴」と呼ばれていた貴方たちがそこで見た異様な賭け勝負が

この国で中止された本来の星誕祭があった頃と近い、

大滅の日に起こった世界の異変と

同じようなタイミングで重なって起こっていたようね


その勝負の最中で現れた黒布で顔を隠した不気味な姿の集団の特徴・・

どうも部分的に少し引っかかるものがあるのよね


星誕祭の起源は

太古の昔に強い勇者の資質を持つ人間を民の中から探し当てるために

メリカドの他に世界の各地でも

何年かごとに行われていた戦い合う形での儀式が元となっていた


かつて昔のその儀式の多くを取り仕切っていたのは

実は聖ソウル法典とかつてもうひとつ勢力を分けていた集団があって

その集団は「グリゴス」という名で

悪魔信仰のまじないや古い魔術に長けた人間たちの集まりだったの


「グリゴス」のまじない師たちは

聖ソウル法典の当初の立ち上げ時にもその力を貸して

法典の布教を裏から支えていたと云われているわ


だけどその人間たちは儀式に必要だといって

ひたすら強欲に金と人の血肉の供物ばかりを求めたから

民から強い反感を買って忌み嫌われて追放された


それからは儀式は完全に聖ソウル法典が担うようになって

その古い魔法使いの集団グリゴスたちは完全に魔導の歴史から姿を消した・・ 」



「「グリゴス」ですか・・

(昔の世界にはそんな人たちが・・

強欲な古い魔法使い・・、 グリゴルン・・)」



「そう だけど彼らはもうとうに存在していない集団のはず・・


すぐに彼らの悪魔信仰も弾圧を受けたから

今の時代まで残っている資料も極めて少ない

でも何か関連性があるのかしら・・?」


・・

その後 気が付いたことやしばらく考えこんで話合っていたんだけど

異世界の話には一応は一区切りがついて

(大半は後回しで考えるってかんじだったけど)



・・話が落ち着いて休みをはさんでいるとき

私はオジキに前の大会会場での試合のあの時 

私を赤い光で襲ってきた闇食いデーモンをやっつけてくれたお礼をいう


その時に

あの時に空中からデーモンの頭をかち割った技は何だったの?って

オジキに聞くと

「ふむ あれは気合だ」って言われた


(え、ただの気合・・?)

じゃあ私も・・使える?のかな あの技


・・・

はじめ 

この話を打ち明けるとき


(もしかして もう私って

普通の生活とかできなくなって監禁とかされちゃうのかな・・)

って思ってて

始めからどこか もの寂しい雰囲気を出していた私


「敵方からの捕捉は解かれ 察知を振り切った・・か」

「どうやらそうみたいなの」


あの顔のないデーモンをけしかけてきた謎の敵に捕捉されて

まだ追われているなら学園で厳重保護も考えていたらしいけど

事情を聞いてそこまではしないっていう話


オジキがいうには学園の上層部にさらに私たちの情報隠蔽の協力者がいるらしい

協力者やオジキやクロージュさんの隠蔽工作で

試合の中身の様子を隠していたことや

学園にやってきていた来賓方に被害があった襲撃自体に注目が集まったため

試合中の私やゲンゴの力のことは表立ってはいないみたいで


「こちらの動きも気になるが 

以前より首都で少し気にかけていた動きがあってな

首都に任を取られている同郷の者とも掛け合って

一度ワシが直接赴いて見ておかねばならんと思い至った

それでワシはこれからそちらに立ち行かねばならんのだ


お前たちからあった証言の

上位冒険者の行方不明者の名簿詳細についても

首都に着いたときに照会をしておくとしよう」

(そうなのね・・)


ゲンゴたちの一族は

大貴族という大きな括りの魔法貴族家なので

領地を治めるだけではなくて

昔からの盟約で有事でなくても国にとって必要な場所に

一族の優れた魔法使いを何人も出して任につかせて

国を支えなければならない決まりがある


あれからクロージュさんの方も襲撃後の後始末で大変だったみたいだけど 

大会の会場であけられた守りの痕を分析して

今は人員を派遣して学園やこの都市近辺の結界の守りに

他に隠れた脆弱性などの問題がないかを調べつつ

課題の強化修正を加えていっている最中なんだそうだ


・・

色々事後の話をしていて

その時の私のしょぼくれた様子を見てクロージュさんが

「大丈夫 わたしたちはあなたの味方よ・・」

って言って抱きしめてくれた


クロージュさんの腕の中でリズは少し安心する

(まあなら いいのかな・・)


わたしはその後 

風車の家まで送られて

翌日から普通に学園生活に復帰していた


そういえばしておくことがあった


・・・

・・・・

私はリサ先輩たちのいるテイマーサークルにやって来ていた


お祭り行事のセントラルド武闘大会が終わったので

もう以前の呼び込みの募集ブースは片付けられて元の廊下になっていて


実は怪しい勧誘サークルではなくて

ちゃんとテイマーの顧問の先生もいるちゃんと認可されたサークルだったようで


それとは別の活動拠点として

高等部の敷地に近いところにある小規模な放牧場の一角に

サークルの部室のようなところがあって

そこにいざ入ってみると部室というよりは事務所といったかんじの

わりと新しめの実に奇麗で広々としたところだった

・・


「もう退院できたんだね 大変だったね 一度大会の後 

みんなでリズちゃんの病棟にいったんだけど

隔離されててまだ起きてないって聞いたから心配してたんだよ」


アーノルド先輩もいたようで声をかけられる

今日はフクロウの使い魔はまた勝手にお散歩しているのかいないっぽい


こちらはリサ先輩

「大会はめちゃくちゃになっちゃって残念だったわね・・

でもリズちゃんがこうやって無事ならそれでよかったわあ


アスラちゃんは今日はいないの・・? あれから元気・・?」


「アスラも元気にしてます 今日はお留守番ですけど」


「そんなあ~ じゃあ今度は連れてきて・・ね?」

「はい」

(リサ先輩ほんとに残念そう・・)


「そしたら今日はどうしたんだい?

もしかして、リズちゃんも本格的にテイマーサークルで

活動してくれる気になったのかい?」


一応 籍だけはテイマーサークルに入っているというていの私


ていうかでもこのサークルの本格的な活動ってなんだろう 

アーノルド先輩流にいくと

道行く学生をあの手この手で学園のカフェに呼びこんで

サークルに勧誘とかじゃないよね・・?


「いえ 実はこれなんですけど・・」


「これ? ああ・・」

「まあー すごいわねえ」


リズがいそいそとカバンから取り出したものは

(ぐにゃぐにゃね・・)

「チャカ・・」

かろうじて腕輪といえるものだったけど原形はほとんど

失われてしまっている 


いつかアーノルド先輩にたぶらかされて新調した

リズのテイマー用の元かっこいい腕輪であった


大会でも酷使してぶち壊れてしまった腕輪を

修理してもらおうと思ってここまで持参してきたのだった


「・・これを修理したいんです」


「・・修理かあ・・」

アーノルド先輩はグニャグニャの腕輪をみて少し考え込んでいるようだった


「また・・もしかして買い替えた方がいいとかですかね」

(ここまでぐにゃってるとね・・

オリジンの装甲ぽくて気に入ってたんだけどなあ)


「それもありかと思ったけど 

これは普通の試し用じゃなくて

元が古い型ではあるんだけど結構いいやつなんだよねえ」


(ああ・・やっぱそうなんだあ かなりいかしてたしね)


「あげてこんなにすぐ壊れるとはなあ・・まあ あの戦いぶりだと無理もないか」

(ごめんなさい・・)


「ちょっと!リズちゃん困ってるでしょ しゃんとしなさいよ」

アーノルド先輩にあたりがきついリサ先輩


「うちの顧問の先生とかどうかしら」

「うーん彼女は本人が生粋のテイマーであって道具の扱いは点で全然だからね

それに使い魔の散歩ばっかりで普段全然こないし」

「そうだったわね」


(・・・)

なんか癖のありそうなアーノルド先輩たちのテイマーサークルの顧問の先生


「・・でももしかしたら当てがないこともないよ

お金はかかるかもしれないけど どうかなリズちゃん」


(え! なおせるの やったー)


「いいんですか ちょうど臨時収入もあったのでお金なら手元にすぐあります」

(ちょうど先日お兄様にもらったやつがね)


お兄様にもらった銀貨やインゴットのはいった小袋をだして

中身を先輩に見せる


「リズちゃんさすがね・・やっぱりお金持ちね」

(お父様に感謝ですわよ)


がしかし

「どうかな・・足りるかな・・」

私の手から子袋をちょっと広げて

少し中身の銀貨を見ても足りるか分からないというアーノルド先輩


(ええ・・どんだけ前のいいやつだったんだよ・・)

少し焦る私


「まあ 当たってみよう ただしこれからリズちゃん

・・僕と2人で一緒にこれるかい?」


「ちょっとまた あんたね・・」

疑うような視線のリサ先輩


「必要なことだよ」


出会った時からずっとやり手疑惑のあるアーノルド先輩はさも自然に

私を誘ってくる

いや 実際必要なんだと思うけどね 


「今からですか?」


「そう 時間は空いてるかい?

高等部に行くから支度してリズちゃん 腕輪も持ってね」

(高等部・・?)


「わかりました」



・・・・

学園内の高等部へ向かう広い並木の道をアーノルド先輩と一緒に並んで歩く


大会のその後の話や入院していたときのことの話しながら進む

アーノルド先輩は私の歩調に合わせてくれているっぽい


・・・ ・・

「そうそう そうなんだよ 

それで襲撃のことで学園側の危機管理体制を問われるかもしれないみたいなんだ」


「そうなんですね・・」

(まあ あんなに荒れてしまったしねえ・・責任問題とかになってるのかしら

威信のある大会みたいだったし)


・・


そうやって歩いていると

(・・!)

道の向こうから何やらいっぱい羊みたいな使い魔を連れた人がやってくる

「メエ~・・!」(うわあ)

と、いうよりその人自体が逆に大量の羊たちによって担がれているみたいだった

あの羊たちは・・

確か大会のときに警備の手助けをしていた使い魔たちのような気がする


「あ、メイニナ先生こんにちは」

アーノルド先輩が通りがかったその人に挨拶をする

先生だったらしい


使い魔の羊たちに担がれてお散歩?していたらしいその人は

とても小柄な女性で一見はかわいらしい子供のようにも見える


「あ、あーのるど君、ちょ、ちょっと止め・・」


何かを言いかけていたような気がするけど

機嫌がよさそうなモコモコの羊たちに胴上げされながら

(あ、あ~れ~~)メエメエ

その小柄な女先生は道の向こうに通り過ぎて行ったのだった

・・


「さっきのがうちのテイマーサークルの顧問をしてくれてる先生だよ

高等部のテイム術を専門に教えてるメイニナ先生っていうんだ」


「そうなんですね でも あの・・いいんですか

なにか先輩に言いかけていたような気が・・」


「え・・?

メイニナ先生はいつもあんな感じなんだよ

あれはスキンシップっていうのかな

普段世話をする使い魔が多いと大変だよねえ」


(そうなんですね・・)



・・・

てっきりあのメイニナ先生に会いに高等部にきたのかと思ったけど

完全にあの顧問の先生はスルーされていたため

全然そうではなかったみたい


変わらない様子でしばらく歩いて行って 

先輩と並んでやがて並木道を抜けた高等部の敷地に入っていくと

そこは中等部とはまた違う立派な校舎や施設が並んでいて

高等部だけあって学園の魔法研究棟も多くあるようだった


「わあ・・」

(学園内だけどちょっと緊張するなあ まあ見学だと思って・・)


普段あまり見ない高等部の上級生たちが多く出歩いている


高等部の名誉教授たちはそこで講義に出る間も惜しんで

助教授や学生たちをこき使って

学園から支給される研究費で魔法研究に勤しんでいるらしいという話


(ある意味熱心なのかしら・・)


「こっちだよ」


(あれ・・こっち? こんなところあったのね)

あの立派な魔法の研究施設群のところではなく道を外れていき

だんだん行き来する人がまばらに少なくなって


緑の生い茂った少し離れの

影に取り残されたように寂れたかんじの建物があって

アーノルド先輩にそこについてくるように案内される


・・・・

・・

近くまでくるとそれはとても古い感じだけど

霧に包まれたような石造りの小綺麗な建物があって 不思議な雰囲気がしていた


「ここはなんですか?先輩」


「ちょうど講義だったんだ リズちゃんには言ってなかったね


ここはシュバルツ・ブラスト先生の研究棟だよ」


(え・・、え~)

「ここが・・」


(たしかに先生に来てもいいって言われてたような気がするけど

今くるとは思ってなかったなあ)


「腕輪のことで なんでシュバルツ先生のところなんですか?」


「それは・・まずは講義を聞こう

講義が終わったら先生の時間も取れるはずだから そこで話すよ」


(そういうものか まあいっか、ちょっと気になってたし)


・・・

中に入ると

建物内はまるでドラキュラが出てきそうなシックな雰囲気

やがてその中にある

比較的広い間取りのホールのような部屋に先輩と一緒に入る

(  )

あまり人はいなかったけれど

中にはすでに何人か高等部の学生がいて講義の席についていた


・・・・

・・・

「今日はここでいいかな」


そういってアーノルド先輩はさも当然のように・・

(え・・ここって・・!)


「「どおおおん・・!」」

講義の部屋の ど真ん中の最前列に席をとる

(ええ・・もうちょっと横の端とかじゃないのお~!)


(そういえばアーノルド先輩って学業優秀だって聞いてたわね

優秀な学生ってこうなのかしら・・)


連れてきてもらって離れて座るわけにもいかないので

リズはアーノルド先輩にならって最前列のど真ん中 先輩の隣に座る

最前列には他にも数人の学生がいた


周りにあまり人がいないこともあって

(なんかちょっと落ち着かない・・いやこれが優秀な学生ムーブなのよ

見習わないと)


そうしてしばらくまた腕輪を取り出したりして

講義が始まるまでアーノルド先輩となんでもない話をする


その時ぐにゃぐにゃになった腕輪を

何気なく壊れてなければ普段は見えない裏側なんかを見ていると

「  」

(「 silver 」シルバー・・?)

そういう意味の文字の刻印が見えていて

始めの文字だけ少し太めに刻印されていた

やっぱりこれは銀っぽいって思ってたけど銀の腕輪だったんだなあって納得する


そんなふうにしていると


・・


「おや・・? 珍しいな」


いつの間にか 

すうっと教壇の手前まで講義に歩いてきていたシュバルツ先生の姿があった

私の方をちらりと見ていったような気がするけど

向けてきた視線は本当にわずかだった


相変わらず俳優顔負けの雰囲気と迫力で長身に黒いコートに

ちりばめられた貴金属の魔法具がチラリと光沢を放っていて

このドラキュラ屋敷のような講義部屋の主としては妙にマッチしていた


今日は室内だからなのか

いつかの黒い帽子はかぶっておらず

いつもとは印象の変わった長い白銀の髪をそのままたなびかせていた



「おはよう諸君」


「おはようございます先生」「おはようございます」


シュバルツ先生が

不思議な低くて響く声で軽く挨拶をして それに学生たちが返す


(前に聞いてたけど本当にひとがまばらね・・)


シュバルツ先生は受講生はあまりいないと言っていた

実際にその通りらしく

こうして講義の始まる時間になっても学生はあまりいなかった 

私を入れても数えられるほどスカスカで10人ほどくらいだろうか


(でも はじめての高等部での講義ね・・しっかりしないと)


・・・

シュバルツ先生の授業が始まった



「 では・・今日はこうしようか」




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