第72話 新たな目覚め
(ここはどこかしら・・)
フワフワとして宙に浮いていて流れていくような感じがする・・
ここに来る前の夢との狭間で
ひそかなシスとのやり取りが少し流れてくる
(「今さらなんだけど どうして私たちをすぐ戻すの?
何か急がなきゃいけないことがあるの・・?」
「今すぐじゃなきゃいけないってわけじゃないけど・・
でもあの世界にはまだ猶予がそんなに残ってるわけでもないんだ」
「猶予が・・ない?」
「うん それにこちら側ではまだ君は力に完全には目覚められないから
それは向こうで開花させる必要があるんだ
あの世界は君を待ちわびている」
「私の力・・?いったい何のこと?」
「それは君が一番よく知っていると思うよ」
「え・・」)
・・・・
雲の上の様な不思議な空間
あれ 私の先に翼を広げて飛んでいる小さい黒い影はゲンゴ人形・・?
(バッサバッサ・・)
(まって・・)
リズは空を泳ぐようにその小さい影の後を追って・・
その時 突如として視界は暗転する
(あれ・・!)
空間が一気に血のように赤くなっていき
私は浮いていた上空から一転、地の底へ叩き落される
気が付くと私は縛られて地面に打ち捨てられていて周りをみると
そこはオリジンの終焉の戦闘ステージの一つのような背景
「グハハハハハ・・・! とうとう捕まえたぞ・・!」
目の前に現れたのは
(うそ・・・!)
あのとき観戦で見た怪人カーニバル・ジャッジが歪んだ笑顔で
そこに立って私を見ている
カーニバル・ジャッジは貼り付けたような笑顔を浮かべたまま
私にゆっくり近づいてくる
「決めたぞ・・! 君を・・・処刑する・・・!!!」
「(い、いやよ・・!)」
だけど声は出せない
ゆっくりと怪人カーニバル・ジャッジは迫ってくる
・・
「(パチ)」
私の目が覚める
「はあ・・!」
私は大きく息を吸い込んでその部屋の天井が映る
普通の部屋の電灯の光が大きく開けたリズの目に入ってくる
体を布が包みこんでいる感触もして
どうやらここは落ち着いたベッドの上のようだった
「(なんだ・・夢か・・)」
私はほっと胸をなでおろす
と同時に少し頭に痛みが走る リズにはその痛みに覚えがあった
記憶が急に更新されるときの痛みだ
だが慣れてきたせいでその頭の痛みはすぐに引いていき
リズ・クリスフォードの脳にその新しい記憶が更新されて自然に定着する
「・・・ふう」
(あの子は夢のつながりで世界を繋ぐっていってた
どうやらちゃんと戻してくれたみたいね・・シス)
すると
「リズ・・? 起きた?起きたの?」
(この声は・・アスラね こっちに戻ってきたわね
アスラも大会で最後に見た時はぐったりしてたけど元気になったのね)
「起きたわよ・・アスラ」
上を向いていてまだアスラの姿は見えていないけど 宙に向かって声を出すリズ
「ふああああん!リズ~」(もぞもぞ)
(あら・・)
アスラのようなサイズの物体がリズの布団の中に潜って入ってきて
ベッドの中の私の体にぴっとりと張り付いてきたのを感じる
(あ、あったかい・・)
(アスラ?普通はもうちょっと顔が見える方にくるんじゃないかしら?)
(一目見ようと思ったのに結局姿が見えないわね・・
まあでもこのじんわり感はアスラだわ)
(ちょっと濡れてる・・アスラ・・泣いてたの?)
と思ったら
中でちゅーん!ってリズの服に鼻水をこすりつける音が聞こえる
(ああっ・・! ・・まあいいわ)
リズは寝ていた姿勢のまま布団に入ってきたアスラを
適当に抱き寄せる たぶんこれはアスラのおしりの辺り
じんわり感が広がっていく
(はあ・・安心する・・)
(・・・)
「( あのとき・・あの武闘大会の会場で もし白い光じゃなくて
デーモンのあの血のように赤い光の光線に連れていかれていたら
私はどうなっていたんだろう・・ )」
「( 本当に光の捕捉は解けたのかしら・・)」
赤い夢の中の歪んだ笑顔の怪人カーニバル・ジャッジを思い出す
あの日見た凍結されたかつての仲間のアカウントたち
戦いに敗れて棒立ちの抜け殻のようになったハスラーキッド
もし連れていかれていたら
私は今ここにこうして無事に戻ってこれただろうか
・・
「(リズ・・?)」
布団の中でくぐもったアスラの声が聞こえる
「ギュ・・」
腕の中のアスラをぎゅっとする
(もうちょっとだけ・・こうしていよう・・)
「(そういえばあの後 あの大会はどうなったのかしら
アスラはとりあえず無事みたいだけど・・)」
・・・・
・・
「なに 起きたならそう言いなさいね ベッドで遊んでないで」
私の前にあきれた顔のクロージュさん
・・
あの後しばらくじっとしていたけど
ベッドに潜っていたアスラを抱っこしているとすごく
(あっついわこれ・・)
となって
むくりと起き上がって毛布がずれて そこで目が覚めてから
はじめて目がキュルンっとしていたアスラとひょっこり対面したのであったが
そのときに
ちょうど部屋を離れていたらしいクロージュさんが戻ってきていて
私にそう声をかけてきた
目が覚めて気になったことをリズはクロージュさんに聞いてみる
「ここは・・どこなんですか あれからどうなったんですか?」
「それは教えてあげるけど まずあなたは大丈夫なのね?
あれから丸三日くらい寝てたわよ 調子はどう?」
(丸三日寝てたんだ・・
そういえばケガもしてたけど回復魔法がかかったのか全然大丈夫ね)
「はい 大丈夫みたいです」
「そう」
私の健康状態を確認するとクロージュさんは起こったことを教えてくれた
・・・・
セントラルド武闘大会で
会場を襲った闇食いデーモンがオジキにつぶされた後
そのあとの白い光に襲われて ゲンゴが私を連れて飛び去ったとき
途中でゲンゴの翼の羽ばたきが止まって
意識を失って私と一緒に急落下するところを
ぎりぎり乗り込んできたクロージュさんが
魔法の力で受け止めてくれたらしい
(あれ・・?)
だけど話を聞いていると最後に私たちに白い光を放った小さい子供のことは
クロージュさんも含めて他の人には
どうもその姿が全く見えていなかったようで
騒動のことは完全にあの闇食いデーモンのせいとなっていた
会場を荒らしたその闇食いデーモンの残骸を調べたけど
ここに自然に出ることはありえないけど
その個体はダンジョンなどにもいる普通の魔物の個体で
特に凶悪な変異種というわけでもなかったらしい
ただ不自然な点も多くて
何らかの魔法の力で操られていたのではないかという分析だった
その目的は襲撃を企んだ何者かが
星誕祭中に開催されていたセントラルド武闘大会に大勢集まっていた、
聖ソウル法典の重要な来賓を狙って
闇食いデーモンを操って襲撃してきたのではないか、
という推測が出されていたそうだ
その後 クロージュさんが受け止めた私たちが二人とも意識がなくて
現場はその時けっこう大変だったらしい
それでも私たちの容態を調べると
目は覚めないけど意識の状態は深く眠っているのと同じ状態だったらしく
回復魔法をかけて学園の病棟施設に隔離して
そこでしばらく安静に経過をみることになったそうだ
・・・
ということで
私のいるこの場所は
聖セントラル中央魔法学園の病棟宿の入院患者用の一室だそうだ
クロージュさんは医科担当で今まで付き添っていてくれたらしい
アスラは試合後の怪我の治療をしてもらってからは私のところにずっといたらしい
・・・
以前の星誕祭の催しが中断になったのは
異常天体現象などの外的要因を受けた自主的なものであって
この祭典の大会主会場が直接襲撃を受けるのは前代未聞の事態だったので
セントラルド武闘大会の対戦はそこで打ち止められて
私とゲンゴの試合は途中で両者戦闘不能の無効試合ということになり
それでも前の試合で勇者であるミトラ・ネスライトは決勝まで進んでいたため
騒ぎが沈静化した後、特別措置ではあるものの繰り上がって
今大会の優勝者は勇者ミトラ・ネスライトということで
暫定的に決定したのだそうだ
(そしてどうやら私とゲンゴは暫定ベスト4)
大会自体はそこで中断していたものの
後日に勇者ミトラは学園内で星の座の祝福を受けて表彰されたそうだ
(ふーん そうなんだね)
あと、男子選手に対してむやみやたらに金的攻撃をしてはなりません
というやんわりとしたお触書きが試合ルールに追加されたらしい
(うーん あれはわざとじゃないんだけどなあ
まあ妥当といったところか)
(そういえばゲンゴも無事に戻れたのかしら)
「あの ゲンゴは無事だったんですか?」
・・
するとクロージュさんの表情に一瞬陰りが見えて
「ゲンゴは・・無事じゃなかったわよ」
「え・・!」
(そ、そんな・・ )
「ゲンゴはあなたよりも先に目が覚めたけど・・」
(あ、なんだ目覚めてたんだ なら安心 え、それならなんで・・)
「それはもう、あなたにこっぴどくやられたからボロボロよお~
療養魔法はかけたけど無理をして技を使いすぎたようね
あれはしばらく入院ね」
と少し含みをためた後に
愉快そうにクロージュさんの表情はコロっと切り替わる
(あ・・!そうだった・・)
「そうなんですね・・」
「まあそのうち治るわ あの生意気な坊やにはいい薬よ」
(そうなんだ・・とりあえずは無事でよかったか)
「バアン!」
そこで部屋のドアが開いて
「リズが起きたんだって!」
「リズ~!だいじょうぶ?」トタパタ
ネロたちもリズの病室の割と近いところにいたようだ
見ていてくれたんだろうか
ネロとスライムたちがいてなだれ込んできた
「ちょっとあなたたち もう少し静かに開けなさいね」
クロージュさんが呆れた顔をしながら入れ替わるように離れていった
・・・
その後 スライムたちがそういう習性があるのか
まずミスラがリズのベッドの布団の中に入ってきて
それを追うようにキスラもベッド内に突撃してきて
それで元からアスラもいて ベッドがもみくちゃになっていたりして大変だった
ネロはそれを横に見ながら椅子に座って安心したのか
持参したお茶とお菓子を食べていた
「・・・」
(やっぱりそっくりね・・)
「 」
向こうの世界で出会った白い髪に赤い目の
ネロに似た謎の男の子 シスのことを少しだけ思い出す
「なに?リズ?」
「いや なんでもないわ」
(力に目覚めるっていっても具体的にどうするとか
あの子は全然説明してくれなかったのよね・・
クルードや凍結されたみんなのことで調子がのっていなかったし
あの時のあの試合の映像と結末はとてもショッキングなものだった・・)
「 」
だけどあの戦い続ける怪人ハスラーキッドの完璧な動きを見たとき
私の中で別の物も渦巻いていた
それはまるでじわじわとした闘志のような
今ならあの強プレイヤーが闊歩するワールドプレミアムリーグに行っても
戦えるくらいには私は調子を取り戻せると思う
けれどこの世界に戻ってきたからオリジンはもうできないだろう
(だけど私の力って
たぶんオリジン由来のあのイヴの力のことよね・・
でもこの教育機関として最高レベルのこの学園で過ごしてた方が
手がかりもないまま下手に思い詰めて変な行動するよりいいと思うのよね
まずはここでの日常に戻らないと・・)
その後 経過を詳しく検査して再度大丈夫だったようなので
念のため安静にもう一日入院を続けてから退院することになり
もう少しだけ私の入院生活は続くのだった
・・・・
おまけ リズの入院編
「・・・・」
「・・・・」
安静のためにもう一日入院をしていたリズ
私が無事だったのでネロたちは学園の学業に戻ったり風車の家に帰ったりしていた
でもアスラはまだ私と一緒にいる
「やっぱぱや~♪」フンフン
「アスラ、病棟内では他の患者さんとかもいるから
あんまり歌って騒がないのよ」
安静にとは言っても もう完全に健康体と変わらず病棟を歩きまわれるので
施設を見学しながらアスラを連れてやってきたのは
・・・
「(・・ここね)」
まだゲンゴが入院していると教えてもらった病棟の部屋だった
「やっほーゲンゴ」
「おう よくきたな 大丈夫だったか」
「うん」
部屋に入ってきたアスラの元気なあいさつに声を返すゲンゴ
(あら~・・)
リズもやってきてベッドにいたゲンゴを見る
ゲンゴは体中包帯でぐるぐる巻きで 腕とか足を機材で釣り上げて固定していた
ふてぶてしい顔つきをしていた
(まあ面白い姿・・)
「ゲンゴ どうやら無事だったようね」
「・・これが無事に見えるか?」
「・・・・」
「・・・・」
「・・まあ俺もお前も無事に戻ってはこれたようだな」
「そうね」
「?」
アスラは少し分からないといった顔だった
その後
ゲンゴの怪我の具合の話や大会の話になる
怪我の具合のことは
あまり身動きが取れない病床のベッドのゲンゴに
例の習性ですり寄ってきたアスラが乗りかかって
「おい のるんじゃない」
「痛いの?」
「・・・そういう問題じゃない」
(たぶん痛いんだろうなあ)
さにげなくアスラを風の魔法でベッドの脇にどけていたのであった
そのケガの具合を私が尋ねると
「・・まあ1~2週間ってとこだな 」
「へえ・・けっこう大変そうなのにそんなもんで済むのね」
「だいたいは魔法で治すからな
向こうならもっとかかるかもしれないな」
向こうの魔法がない世界の事情も知ってしまったゲンゴ
「・・向こうでのことはどうする?・・言っていいのか?」
向こうの世界のこと・・ 怪人ハスラーキッドに因縁があったようだし
やっぱり確かめておきたい情報なのだろう
でもゲンゴは私のことを気にしてるみたい
「オジキとかになら・・いいわよ」
「そうか・・わかった
だが事情が複雑すぎる お前がいる時に話したい
俺からも話すが
話せる範囲はお前に任せたい
でも俺はしばらくここで動けそうにない・・」
「いいわ 呼ばれたら私からまたゲンゴのところに行くから その時教えて」
「すまんな助かる
そういえば これが一緒に来ていたんだが要るか・・?」
ゲンゴは胸元からそれをすっと魔法で取り出す
(え、それは・・)
「 」
リズは渡されたそれを手に取ってみると
それは向こうの世界のオリジンのアカウントカードであった
「あのスリのハゲのとっておいたやつだな
持って帰れるとは思わなかった」
(げえ・・あのハゲのやつかあ・・)
「(ピラ・・)」
せっかくなので見てみると
(うわあ・・全然賞金残高入ってないわね
弱小オリジンプレイヤーってとこね)
「あれ・・」
だけどソウルポイントの特別項目は50ポイントも入っていた
(あのワールドプレミアムリーグで1回勝って1つしか入らないポイントなのに・・
あのハゲじゃないわよね・・じゃあ・・シスがいれたのかしら)
「私は別に要らないわ カードはゲンゴがもっていて」
(ハゲの人のやつだしね)
ゲンゴにオリジンアカウントカードを返す
「わかった」
・・・・
また少し話をして今度はこの間の武闘大会の話になる
反省会的な
アスラからなんとなく話していて私たちの試合の話だった
「前よりずっと動きはよくなってたぞ 驚いた」
「そうよアスラすごいわ」
「でもぉ・・」
試合ではゲンゴに対して
あまりうまく戦えなかったことを気にしていたようだった
「まあ気にするな 俺に勝てないのは当然のことだ」
(あ、調子にのってるわ)
「え・・でも・・ゲンゴ
リズにはボロくそに負けて病院送りにされたって・・」
無自覚に煽るアスラ
「・・おい 違うぞ 俺は勝ったからな こんなにはなったが」
「ゲンゴ、私たちの試合は勝敗なしで無効試合になったんだって」
負けず嫌いの私
そう 最終的にリズは捕まってしまい ゲンゴに投げられそうになったけど
その前に試合は中断されて無効試合
「まあ・・そうだったな」
ゲンゴは幻になった試合にほんの少しだけ笑って窓の外を見ていた
・・・・
・・
お昼にちょうどいい時間になったのか
配膳の病院の食事が運ばれてきた
(アレあんまりおいしくはなかったのよね・・健康にはよさそうだったけど
今部屋に戻ったら私のところにも配膳が来てるかしら)
しかし固定されて手がふさがっている様子のゲンゴ
「ゲンゴそれどうやって食べるの?」
「ああ・・それはこうだ」
(あっ・・)
(スッ・・)
ゲンゴは風魔法の力で器用に食器を浮かせて
スプーンまで操って食事を問題なくとれるようだった
「へえ・・すごいわね」
(そういえば向こうの鳥人形と化したゲンゴも器用にいろいろしてたわね)
ゲンゴが食べる前にアスラが寄っていって
「ゲンゴそれ食べていい?」
「こらアスラ」
リズは注意する だけど
「いいぞ」
風魔法で病院食の料理から適当にすくって
ゲンゴからスプーンがアスラの口辺りに渡されて
それからアスラがあーんって大きく口を開いたから放り込まれる
「・・あんまりおいしくない」
アスラが眉間にしわを寄せてなんともいえない顔をする
「だろうな」
「でも食べる」(カプ)
「お、こいつめ」
アスラの食欲を甘く見ていたゲンゴ
そこで止まるかと思っていたところを
アスラにスプーンを口でくわえられて持っていかれていた
・・
そのとき病室のドアがまた開いて
せわしない大人の女の声がやってくる
「ゲンゴだめでしょ 安静にして魔法の回路はしばらく使わないように言ったでしょ
入院が延びるわよ」
「クロージュか・・」
例によってクロージュさんがゲンゴの病室に定期見回りに来ていた
「あらあらリズもいたのね お見舞い? あなたも一応まだ入院してるんだから
あまり出歩いちゃいけないわよ」
「はい・・」
(ばれちゃった・・)
一応注意を聞く気になったのか渋々ゲンゴは風魔法を止めて
浮いていた食器たちはお盆の中に収まっていく
まだアスラがゲンゴのご飯のスプーンをくわえていたので
(スポン)
リズがアスラを捕まえて
アスラの口からアスラのよだれでデロデロのスプーンを回収する
(あれ・・でも魔法使っちゃダメなら
ゲンゴこれからどうやって食べるのかしら・・)
じっとスプーンを見る
(・・・)
「(ゲンゴ・・試合のあの時 私を助けてくれたんだったよね・・)」
よく考えたら試合の時だけじゃない
向こうの世界にいた時、
小さくなってもずっとゲンゴは私のことを守っていてくれていたような気がする
「(じゃあ私も少しは・・)」
「だったらゲンゴ 私がゲンゴの食事・・」
リズはベッドのゲンゴに声をかけ・・
「さあいでよ! 私のかわいい人形よ!」
クロージュさんが突如そう唱えて 私のか細い声を遮ると
床にすごい色の魔法陣が現れて そこから
(ズゴゴゴ・・!)
「(げええ・・!)」
地獄のようにおぞましい骸骨のような人形が現れた
「・・! お、おい まさか」
「大丈夫よ 心配しないで
この子がしっかりご飯を食べさせてくれるから
ゲンゴは安静にできるわよ よかったわね」
「カ・・カカカカ!!」
クロージュさんのお気に入りのおぞましい見た目の骸骨人形は
愛らしい?声をあげる
(プルプル・・)
「ハッ・・!」
よくわからないけど骸骨は何か右手に物を持ちたいようなそんな挙動だ
(サッ!)
そこですかさず
リズは持っていたアスラのよだれ付きスプーンをすぐ骸骨の手に渡してあげる
「あ・・!リズ お前・・!」
ゲンゴが何か言っている
(ハッシ!)
すると骸骨人形はリズとの連携でスプーンを見事に器用に持つ
(そこはちゃんと精密にできてるんだね・・)
アスラのよだれ付きデロデロスプーンを装備して
ゲンゴにじりじりと向かっていく骸骨人形
「や、やめろ 食欲がなくなるだろ・・!」
(どうやら私が手伝わなくてもゲンゴは全然大丈夫なようだ よかったよかった)
本格的に食事の時間になりそうなので
邪魔になると悪いし
私とアスラはこの辺りで失礼してゲンゴの病室を去ったのだった
・・・・
リズの部屋に帰ると やはりというか病院の食事が配膳されて置かれていた
(ゲンゴのところのやつと一緒だね)
病院食のメニューは統一されているらしい
(もくもく・・)
「うーん これは味がうすいなあ・・」
そんなリズの入院生活であった




