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第69話 明かされた秘密

 上位配信プレイヤー「スパーダ」との対戦を勝利で終えたリズ


「(ピリン・・)」


(あれ・・?)

そのとき大量の投げチップの他に

なにかがポイントとして付与されたのが見えた

それはなにか燃えるような青い炎のような形をしていて


それが「1」って表示されていた


「なにかしらこれ・・」


するとリコは

「これね・・ソウルポイントっていうのよ」

「ソウルポイント・・?」


「ワールドプレミアムリーグ限定で勝つと1個だけ付与されるポイントで

いつの間にか導入されてたみたいなんだけど

まだ何にも交換できないし用途自体が不明なんだって

ゲーム内アイテムの一種だって言われてるけど

開発途中だっていわれてるわ」


使い用途はないけど一人一殺で1つのポイントだから

自動的に持ってる数のイコールがワールドプレミアムでの勝利数なので

分かりやすい勝利の勲章のような扱いにもなっているのだという


「ふーん・・」

まあもらえるものは・・もらうけど


「あっ・・ リズのランキングレートが更新されるよ」


世界のオリジンプレイヤー人口の大多数のレートは下界レートという

(ゲーム内では)虫以下の扱いのレート基準であり

そこで大半のプレイヤーたちがひしめき合っている


それを見ると今まで限りなく下界の方にあった私のランキングレートが

一気に上がっているのが見えた


(ええ・・1勝しただけなのに・・

どんだけスパーダって人レート高かったんだよ)


まるでその人が持っていたレートを吸収したみたいだ


といっても上がったのはレートの半分くらいまでで

まだぎりぎり下界レートのままだけど

でもゲーム人口が世界規模で多いから それでもすごくあがってる方だ

ワールドプレミアムリーグだしね


中級リーグ以上のプレイヤーレートの上位半ばくらいで

ようやくだいたい下界レートを脱出できて人間扱いになれる


(まだ人間にはなれなかったかあ・・

せっかくだから久しぶりに

気になってた最上位のランキングレートも見てみよう)


ワールドプレミアムの最上のレートには

逆に人間を超えた扱いの超級プレイヤーたちが集まる


リズはその場所にカーソルを合わせる


「え・・?」


**ワールドプレミアムリーグ**


レートランキング

1位 カーニバル・ジャッジ        ∞

2位 ジャストマン・ストレイト       ∞

3位 M.M                ∞

4位 マーズロメロ超科学推進産業財閥   ∞

5位 スピカ通信技術開発組合機構     ∞

6位 ?????????         ∞

7位 ?????????         ∞

8位 アンビリバブル星導教団       ∞

9位 ?????????         ∞

10位 カランバール・グッドデイ新興財団  ∞

11位 ?????????         ∞

14位 hustler kid            ∞


例によって最上位陣のレートはカンストしてしまっている


オリジンの全世界ランキングレートでは上位72名より上のプレイヤーが

ノーマルの「最上位プレイヤー」を名乗ることができ


そのうちさらに強欲に勝利を積み上げた選りすぐりの上位13名のプレイヤーは

その中でも人間を超えた特別な13柱の称号持ちとなり

地獄のような魑魅魍魎のオリジン界の超級プレイヤーとして殿堂入りを果たす


(・・・)

そのはずなんだけど・・


でも?????ってなに・・? 伏せられてる?

以前は公開されていたはずなんだけど・・


ていうか企業法人も混じってるのはいいのだろうか

以前は最高位の13柱に認められるのは

独立したプレイヤーだけだったはずなのに

世界的に有名な巨大企業法人がかなりの割合で上位に食い込んできている


でも本当に気になったのはそこじゃなかった

(どういうこと・・?)


カンスト最上位勢の中でも

Hustler(ハスラー) kid(キッド) は以前は絶対的な1位だったはずなのに

最上位最強プレイヤーの13柱の座から追放されてしまってる・・

他にも上位だった気がするソロプレイヤーたちの大半が見当たらなくなっている

逆に1位の人は知らない人・・



「(ハスラーキッド、だと・・?)」


今日は私の肩に止まってずっと黙っていたゲンゴが小さく声を出す

「(ゲンゴ 今しゃべったら・・)」

といいかけるけど


(あっ・・)

ゲンゴが真剣な目で画面を見ていたから リズはそれ以上は言えなくなってしまった

(ゲンゴは何かを知ってる・・?)

「・・・」

ゲンゴはそれからは黙って考え込んでしまったようだった



「リコ・・なんかおかしくない? このランキング」


(・・・)

「・・・ここ最近っていうか ソウルポイントのこともだけど

あの日を境にして

ワールドプレミアムリーグのランキングが一斉に大きく入れ替わったらしいの


オリジンに多額の支援投資や献金をした企業アカウントの

ゲーマー部門の総合ランク成績が

正式にランキングレート入りに認められるように適応ルールが変更されて

????で個人アカウント名が伏せてあるのは

上位者の社会的情報の保護だとかで

その日からオリジンから告知されて即導入されていたんだけど


そしたら今の1位の人や????の人たちが急に

凄まじいレートを積み上げてランキングに反映されて

一気にこうなって・・

1位の人は最近になってどこかの通信新興国から参入してきたらしいの

噂では大通信都市で急激に成り上がったすごい大富豪(グリゴルン)だって・・


あと????って情報が伏せてあっても

直接対戦した人にはちゃんと名前は表示されるらしいわ


私も目が覚めてから知ったんだけど

その時はついに世界レートランキングが陥落した、とか

個人のプレイヤーがオリジンで夢を見れる時代は終わったんだ、とか

ものすごい騒ぎになってたわ


その時騒がれ過ぎて世界的な情報統制が行われて

過剰に騒いでたオリジンのアカウントが一億個くらい

巻き添えで差し押さえられちゃったって


今もそのことでは制限が続いてるみたいだから

さっきのシティでは騒ぎは特に何もなかったけど・・」


(・・・)

「あの日って・・もしかして私たちが大通りで事故?に巻き込まれた日のこと?」


「・・そう

それに今のランキングにいる「ハスラーキッド」は

今までのトップだったハスラーキッドじゃないみたいなの」


「え・・?」


「世界ランク1位だったハスラーキッドは

アカウントを凍結されて称号も剥奪されてリーグ自体を追放されたのよ


今の14位辺りにいるハスラーキッドは最初が小文字のhになっているの

あの前に、リズに何故か接触してきたアカウントと同じアカウントだったのよ


もしかしたら作り直したんじゃないか

とも言われてた  でも・・・」


「え・・、でも・・?」


「でも・・実は 私 本当はリズが目が覚めた時に言おうと思ってたんだけど

ずっと言えなかったの

でもいずれ分かっちゃうから・・いうね

私も事故から目が覚めたら

あの時施設で上の方が異様に慌ただしかったから 

なにがあったのか私たちの紐づけコードアカウント管理情報のパスで

ひそかに調べたの


私の権限じゃ上の方は見れなかったけど

アクセスできた過去に実験を受けた私たちの同期の身体コードバンクが

緊急コールドスリープ済のマークになっていたの


・・、私たちのコード仲間はみんな

脳に重大な損傷を負って

密かに組織の施設に搬送されてコールドスリープ処理されていたのよ・・!


他にも話に聞いたら組織の上級位ランクの人たちもほぼ一緒の状態で

今は組織のコード持ちの実動の主力が壊滅状態って・・


だから 確かな情報は得られなかったけど

あのランキングレートのハスラーキッドにも多分

何かよくないことが起こって・・」


「え・・・そんな、 」


・・

秘密組織ロストオリジでは「コールドスリープ処理」とは

限りなく瀕死に近い状態を意味する


正常な回復が極めて困難な状態だけど その肉体や脳のデータが貴重であり

なんとか生きた細胞のまま技術的に回復が可能になるまで

肉体を特殊な技術で凍結させて生きたまま保存する方法だ


オリジン世界の謎の孤高のトッププレイヤー ハスラーキッド

突然現れた彼の正体は世間は一切知らないし 

組織も公表せずその存在自体を認めていないものの


かつて私たちの組織の中でも飛びきりの異端として扱われた、

人の脳の力を持っていた少年「クルード」

組織の施設の出身が同じで過去に少しだけでも身内で関わりがあって

また彼の 彼と同じ名前の秘密のアカウントの存在を知っていた私たちは


彼こそがオリジンに颯爽と現れて

世界を滅びの争いを巻きこもうと暴走したグリゴルンたちを倒し

世界を救ったレートランキング1位のあの「ハスラーキッド」なのだと

私たちは陰でずっと信じていて

それを密かな心の拠り所にしていたのだ



ただそんな「ハスラーキッド」は

近頃ではもうずっとオリジンでは活動はしてなかった


というよりそれは近頃に始まった話でもなく

グリゴルンたちのレートを吸い上げて圧倒的な一位となった後は

彼の賭け試合のマッチなどの活動はそこからピタリと止まってしまったので

グリゴルン相手に十分に稼ぎきって満足して引退してしまったのだとか

実は裏でもう消されてしまったんじゃないかとか

様々な憶測が噂されていたのだけれど・・


・・


「クルード兄さんたちが・・?」


リズは混乱していた

(クルードたちが・・みんなコールドスリープされたって・・そんな・・)


組織では異次元の才能を認められて離ればなれになって

それからはずっと関わることもなくなって

遠くの世界に行ってまったく身近ではなくなってしまっていたけれど


かつてリズが幼かった遠い日には一緒にみんなで助け合って施設で暮らしていて

一緒にオリジンをしていたこともあった


そんなクルードや同期のみんなが

その日に一斉に事故に遭ってコールドスリープ状態にされた・・?

(いったいどうして・・?)


「一体なにがあったの・・?」

「わからないわ・・私たちが巻き込まれたような爆発が他でも起こっていたのかも


私たちも・・、

もしかしたらあの時すごく危なかったのかもしれないわ」


「・・・・」

「「  」」

リズは私たちの前にあの黒いモンスターたちが現れた、

あの日の時のことを思い返す


(「爆発事故」って報道はされてたけど 

あれは明らかになにかの悪意を持った襲撃だった・・)


それに・・

(あのときハスラーキッド、 

秘密コードの漆黒の怪人は確かに私たちの前であの場所にやってきた・・

あれがクルードだったとしたら・・

だとしたらまだクルードは少なくとも そのときは健在だった


でも私があの白い光につつまれて意識をなくしてしまった後に


私たちを襲撃してきたあの黒いモンスターたちと

ハスラーキッドが戦うことになったのなら

そこで致命的な損傷を負ってしまったっていうの・・?)


(そもそもゲームの世界の怪人が実体でなんであそこにやってこれたの・・?

秘密コードの怪人や私が見た幻の風景が現れる前に

直接(ダイナミック)対戦要求(エントリー)のような白い光の文字を見たけど

まさかゲームの仮想世界からも転送できるの・・?

いやそんなはず・・)


(・・・・)



「ピコン!」「ピコン!」「ピコン!」

(ハッ・・)


上位配信者?であるプレイヤー・スパーダを倒したせいか

リズに対しての直接(ダイナミック)対戦要求(エントリー)の音が反芻(はんすう)するようにいくつも鳴っている


「あ・・きてるね・・」

いたたまれない話題を逸らすようにリコが リズに伺うように声をかける


「うん・・でも今日はもうやめとく」

「そうだね・・」


・・

初めてのワールドプレミアムリーグを切り上げて

今日はもうゲームを終えて清算作業をする

一勝だけでかなりの戦果ではあったけど 今日はもう気乗りがしなかった


「ごめんね・・せっかくリズがワールドプレミアムで勝ったのに・・」

「ううん・・リコ 教えてくれてありがとう」


(クルードだけじゃない・・

みんなどうしてしまったの・・

でも私たちは離ればなれで ろくにやり取りすら・・)



「!そうだわ・・」


(・・「ロストオリジ連合」・・

私たちのかつての施設出身の子供だけで作ったオリジンのクラン


そこにアクセスすれば なにか手がかりが・・)


**リズの所属していたクランについての情報は

第2話「過去との遭遇」にまで遡る**


・・・・

・・

そのリズが所属するクラン「ロストオリジ連合」にはリズは本当に長いこと

もうアクセスはしていなかった


アクセスしていたのはクランに入りたての頃の最初の方くらいで

それからはずっと寄り付いてもいない


下級ランクが確定して育成機関に放り込まれてしまった自分自身の生活が

そんな余裕がないくらい過酷で大変だったっていうのもある


だけどそれは昔に

私の脳が去っていったいつかの少年が私に残していった言葉を

どうしても真に受けてしまっていたせいなんだ

・・


( 「 帰る場所は大事だ

だが

帰る場所に縛られれば 普通の人間でない俺たちは成長できない


俺たちはあの星屑たちと同じ場所からやってきた


だから

その場所に行くにも俺たちはそこに戻るんじゃなくて

自分の足で星たちの宇宙を一周回ってから

そこに巡り、また辿り着くんだ 」 )


って


確かに子供だった私たちに与えられたコード番号の名前の由来は

大半は無機質な記号と数字の羅列ではあったけど

それは打ち棄てられた光と言われた、人には光が見えないような

宇宙の小さな星たちの仮の名前が元になったものだった



それでその時の純心な私はハッと感化されて

そうなんだ、って


今思うとそれはカッコつけのませた子供の言動に騙されたというか

馬鹿馬鹿しい


私たちは宇宙を駆けまわれる星なんかでもなければ

そこはただの適当に作っただけの誰でも作れるオリジン内の小規模クランであって

別に何か躊躇するほど大そうなものでもなんでもないものだった


だけど自分がちゃんと成長できるまでは

意地でももうそこは見ないんだって


なぜか思ってしまったんだよね


じゃないとなんだかまた負けてしまったような気がして



だけど

いつの間にか


自分の成長なんかまるで実感できない日々が続いて

宇宙を自分で回っているというより

ただ何も見えてこない宇宙をさまよって自分がどこにいるかもわからず

どこにもいけないような自分になっていた



( 普通の人間じゃない私は 一体何者なのだろう )


いつか見た自分の体の身動きのまったく取れなかったおかしな夢の中で

そんな風に思っていたことがある



そうしていつの間にか気が付くと

離れていったみんなともはぐれて

みんなはもうとっくに遠くの向こうに行ってしまっていた



・・・・

・・


リズのオリジンのデータの奥まって もうずっと埋もれて隠れてしまった場所


(認証コードは何処だったかしら・・確か・・)

そのクランに久しぶりにアクセス情報を接続してみる


(・・・)

「リズ 見るの・・?」


「うん でも私は

自分の目で見るまでは信じたくないから・・」


「そっか」


(ピリン・・)

かつてクルードに気まぐれに誘われて入った、

施設の子供たちだけで設立した「ロストオリジ連合」

そのクランはまだ残っていて 


当時わたしのアカウントにクルードが付与してくれたクランの上位権限も

私がアクセスしなくなってからもそのままで残っていた


クラン同盟はオリジンのランキングレートには反映されないし

そもそもが非公開のクランだったから

その存在が知られることもなかった


他のクランでは設備のアップグレードやアカウントの飾りつけなどを

お金をかけて手付けてクラン内で楽しんだりすることが多かったけど


私たちはみんな昔から揃って支給された同じ衣服をずっと着て

ゲームばかりしているような

そういうことには一切の興味がない子供たちだったので

昔からそのままの変わり映えのしない簡素な作りの見た目のままだ



だけど


「あ・・」


リズがそのクランにアクセスすると そこには


「「  」」

ズラリと凍結されて

表示された文字が暗くなって動かなくなったアカウントたちが並んでいた


「・・・・」

「・・、やっぱりここも・・」


凍結されたと聞いていたクルードのアカウントもだけど 

かつてお世話になった年長組の施設出身者や

一緒に暮らしてご飯も囲んで食べたこともある同期だったメンバーアカウントも

そのほとんど全てが凍結されていた


私やリコなどの一部の下級ランクの

組織の戦力外判定されたコードアカウントたちは凍結されずに残っていたけど


それでもクランの過去のログは全てを抹消されて 

新しい発言のやり取りすらできなくなっていた


・・

「・・・・」


隔離されて世間からは被検体扱いではあったけど

それでも活発な子供たちだったリズたちのかつて賑わっていたはずのクランは 


ただ今は星たちの光が失われた抜け殻のようになって

静かに寂れて凍りついていた



・・・・

そして次の日


「(ああ・・寝不足だなあ・・)」


(こんなことなら 塞ぎこまずに

いろいろ話しておけばよかったのかな・・)


昨日 私たちの下級支援宿泊施設に帰ってからいろいろ考えたり

施設の受付からなんとか連絡のつきそうな同期と面会できないか

リコと一緒に掛け合ったりもしてみたけど


私たちは普段許可なしでは

管轄外の町の外へは出ることすら行動を制限されて禁止されている


元々普段から下級ランクの私が面会の申請すら到底かなわないレベルなのに

そもそも組織ではこの事件の被害のことは表に出さず

存在すらしていない扱いとなっていた


なので組織の管理下の私たちが思いついて考えてきたような理由では

全くもって話にも取り合ってもらえず

面会までこじつけるのはまず不可能であった



・・・


「リズ player LOSE・・」

「(・・・・)」


すがるような面談も断られ 

自分たちの組織で置かれている低い立ち位置を再確認させられてから

今日は仕方なくリコといつもの仕事部屋にやってきて

今度は普段のところとは違うワールド中級リーグで対戦をしてみるものの・・

全然勝てないし調子が乗らなかった


(気分で調子がこんなに変わるなんて・・)


ワールドプレミアムのあの時の感覚は全くしないし

上がっていたはずの実力も以前のように逆戻り


(ああ・・ 私の力ってやっぱり一時(いっとき)だけのものだったのかなあ)



結局今日の収支はマイナスだ

(まあ 前に勝った分がはるかに多いから 資金は大丈夫・・)


(っていけない・・ 勝ってたとか関係ない 今勝てないことが問題なのよ

それになんだか私、戦わなきゃいけない気がしてる・・)



「今日はもうあがりね・・」

リコの方は元気のない声だったけどゲームの集計では勝ち越していたようだった


もう仕事は終わりの時間だけど

でもこんな状態で終わるのは不甲斐ない気分になる


「私はもうちょっとここにいる・・ 勘を取り戻すわ」


もう部屋は貸し切り状態なので普段働き終わった後の時間帯でも

リズたちは居座ろうと思えば居座れる


「そう・・ なら私は先にあがっておくね

支給薬が切れちゃったから今日はわたしは戻らないと


リズ・・、あんまり無理しちゃだめよ

リズは今は投薬は必要ないレベルだけど

無理してたらいつかは発作が起こっちゃうかもしれないわ

私たちの体はあまり丈夫にはできてないのよ」


「・・わかってる、わ」


「そう・・」


そういってリコは先に部屋を出て施設に帰っていった


(そうね・・最近おかしなことが起こり過ぎて

事故の時からだって変な幻の世界がちらちら見えるようになっちゃってたし・・

私の体に何か起こってたのかも・・)



・・・・・

・・・


「いいのか 休まなくて」


「・・今はいいの」


リコの姿が消えて 

ゲンゴがすう・・っと代わりに術を解いて姿を現した


(・・・)

「ずいぶん有名なんだな ハスラーキッドってやつは」



「・・そうよ まさかゲンゴ達と、

向こうの世界の人たちとも因縁があったなんてね」


今日寝不足だったのは不安だったせいでもあるんだけど

昨日帰って駆け回ったあとで

あの時「ハスラーキッド」の名前を聞いた直後に考え込んでいたゲンゴと

夜になって話し合っていたからっていうのもある


・・・・

昨日の夜のこと


いろいろあの日起こっていたことが判明して

少し感傷的になってベッドに座っていた私に影から声がかかる


「リズ 少しいいか?」


「・・なあに?」


「ハスラーキッドってやつのことだ 俺から話しておきたいと思った

今はやめておくか?」


(・・・!)

「ううん いいわ 今は知れることは何でも知っておかないとね

私からも話すわ」


「そうか」



・・・・

・・・


「お前がいた元の実験施設やそのクランってやつの集まりに

その以前のハスラーキッドが関わっていたんだな


そしてそれはこの世界の人間・・

だがハスラーキッド自身は仮のアカウントにつけられていた名前で

オリジンの中に存在する架空の人間・・」

 

(・・・)

「俺は実はそいつのことは敵かもしれないと思っていたんだ・・だが

どうも事情がありそうだな」


「!そうなの・・?」


「ああ これはお前にとっては少し突拍子な話かもしれないが

向こうの世界で俺たちがそいつと関わったことに繋がる話だ 」


・・・

・・・・

独自に「超上層部」といわれる、

世界にある謎の土地にまつわる調査にあたっていたという


その時の風魔の里の魔法使い、選りすぐりの戦闘員で構成された

オジキ達の少数精鋭の調査編成隊



「あの世界の星帯領域にかつてあったっていう上位世界「超上層部」ってのは

入り口が閉じて見えなくなっているだけで

どうもまだ実在はしてるらしいんだ


オジジはその情報が秘密だからあの時

俺とお前がばったり会って一緒に中庭にいた時にはそういって言葉を濁していたが


超上層部っていうのは聖ソウル法典が統制して近代風にそう呼び変えて

世間に広めていた言葉で

実は大昔に信仰されていた世界 いわゆる「楽園」のことだ


元々は古い言葉で「ユラグの地」とも呼ばれていた場所だ


その楽園の場所は

今は「この世界で存在しない観測できない場所」になっていて

そこにあるらしいんだ」


(・・・)

「なにそれ ないのにある? 全然よくわからないんだけど

話の脈絡もちょっと・・」



「おう、つながるように説明する まだ前置きがある  昔の世界の話だ」

・・・

・・


世界にはかつて2つの世界があった

ひとつは物質の世界 もうひとつは目に見えない流れる世界


原初の刻に星々の導きによって

その二つの世界はひとつになった


だが実は二つの世界は完全に混じり合ったわけではなかった


さっき言った「楽園」はその時の古い流れる世界が

質量の大きくなった地上と分かれて色濃く残った場所だとされていて


まだ閉じていなかった楽園が

大昔に上位世界として存在していた時はよ、

俺たちのいる世界は古い名前で「ロツグ」っていう下界の扱いだったんだ


「ロツグ」の由来は

あの世界の最初の人間の国のルーツだと云われていた

「古代ロツグ王朝」から来ていて


まだ悪魔みたいな存在が世界中の大半を支配して

危険な土地や魔物も多かった世界で

ロツグの民の王朝は

今の大陸の東の果てに国を構えて人間の生存圏をなんとか確保していたんだ


・・

太古はそのロツグ王朝が人間の国のほとんどを占める勢力だったんだが

ロツグの古代民は古い王の教えを強く信仰していて

独自の世界を生むダンジョンにまつわる土地を神聖視して

そこで苦労して見つけた資源でも極力は持ち帰ろうとはしなかったり、

自分たちの持つ魔法を

神の使いであると崇めた極一部の血筋の特権階級にしか

伝承をしてこなかったから


見つけた資源を際限なく採取する周りの人間や別種族の国に勢力を追い越されて

人に魔法の力が広まりだしてからは

魔法使いの数の差で魔法武力でも劣るようになったんだ



だがそれでもロツグは古い教えと自分たちの王の血筋を守り続けて 

かつての王朝は歴史と由緒ある人間の国の象徴だったし


ロツグが継承してきた魔法は

後の時代に魔力に適応した人間が生まれるようになって世界に広がった、

今の魔力で行使する魔法ではなくて

この世界の原初の魔法に最も近いと云われてきた旧星代の魔法で


数はまったく揃えられないが

星海からの星の光の流れを詠んで

その星の力を扱う極めて特殊で強力な魔法だったんだ


そのロツグの王の血筋は後の時代に

大英雄の刻冥王ウラピコを生んだ、旧星代の魔法を行使できる

世界最強の魔法使いの一族の血筋でもあったから


周辺国からもロツグは一目置かれる特別な場所に見られて

それから人の魔法がさらに発展して大英雄の時代になっても滅ぼされずに

ロツグ王朝は東の果ての地に小さな王国として その時はまだ残っていたんだ」



(へえ・・旧星代・・、星の力の魔法かあ)

「それって古代は古代でも

よく習う人気の大英雄たちの時代より前の話なのね


でも学園で先生に習った話だと大魔導戦争より前の文明の記録ってほとんど

失われてるって・・


どうしてゲンゴがそこまで詳しく知ってるの?」



「まあ旧星代の時代は古すぎるし

近代の統制では何故かほぼなかったことにもされてるしな


でも知ってるやつは知っている

あまり国家に従属してこなかった古い血筋の貴族なんかは

統制の影響が少なくて

一族でひそかに自分たちの大事な知識を継承して伝え持っていたりするんだ


俺たちは口伝の一族だから影響は少なかったが

そういう知識を手放して忘れちまった魔法貴族は

だんだん不思議と没落していってるな・・


ただうちも歴代の伝え手が代々大雑把だったから

今は書物でも物語の形で伝わってはいるが

その話が含んだ本当の意味までは分かんなくなっちまったものは多い


だが古代ロツグには石を信仰して文字や記録を残す文化があったんだ

神聖な石にしか文字を彫らなかったらしいから残ってる数も極端に少ないが・・


だから今わかってる大魔導戦争以前の記録もほとんどは

そのロツグの石碑の文字の一部から来てるんだ」


(・・・)

「ふーん なるほどね

それに硬い石に刻んだ文字なら大戦争でも燃えて無くならなかったのね」


「まあそういうことだな

でも結局そのロツグ王朝も滅んじまったから

石だけは残ったが世界各地にあったロツグが由来だった古い地名なんかは

その時にほとんど消されたり 

別の地名に強制的に差し替えられて使われなくなったんだ


だからその辺のどうでもいい小さいダンジョンでも

大抵は実は別の古い名前があったりするんだ


・・

それでロツグは今に至るまで名も無くなってただの廃墟になって

人の記憶からは忘れ去られて

かつての上位世界を指す言葉のことも

古い「ユラグ」じゃなくて「楽園」と呼ぶように新しい教えで統制されたんだ


それでその楽園もロツグが滅んだ時に世界から離れて

星に帰ってしまって

入り口は永久に閉ざされた、といわれ続けていた」


(・・・)

向こうの魔法の世界でも知れなかったかなり詳しい世界の話を

向こう側じゃなくて 

リズの魔法なんて全然縁のなかったこっちの世界で知れたのは

少し不思議な気分だった



「そうだったのね・・、それで・・それがどういう風につながるの?

それが観測ができなかったっていう場所に関係してるの?」


「俺はその調査チームに参加してたわけじゃない

だから詳しくは分からないが・・」


・・・・

・・

今は存在しないその場所を割り出すのに

大魔導戦争時代に滅ぼされて廃墟となり

そのまま今は入ることが固く禁じられている場所、


大陸の東の果てにある古い王国の跡地とされる場所にまで(おもむ)いて


力の歪みの痕跡、もしくは土地周辺に集積する魔力の不自然に多い場所

上位冒険者の行方不明の情報が密かに寄せられていた場所などを割り出して


そこが古代にユラグと呼ばれ存在していた上位世界への

間接的な「入り口」だったのではないか、という仮説の推測を立てて

秘密裏に一族でその土地周辺の調査に当たっていた


・・・

ひとしきり話を聞いていたリズ


「東の果て・・その古い王国の跡地っていうのが

その古代ロツグ王朝の跡地なのね」


「そうだ 話はオジジたちが実際に調査にそこまで行った時のことだ」



・・

その時のことだったという


魔の霧と歪な岩柱が入り組んだ特徴的な土地になり

目的の場所付近におそらく近づいたと判断した編成隊が

慎重に周辺の調査作業を開始しだす


・・

そのとある遺構は古い戦場跡でもあり

大昔に人智を超えた英雄たちの魔法が幾度となくぶつかり合った後に

そのまま何の手も施されず放置されたその場所一帯は

長い年月を経た今でも土地の魔力の性質が極端に荒れていて

とてもではないが普通の人間が居続けることができる場所ではない


だがついに編成隊の魔法使いたちは風の魔法で身を守りながら

その古い廃墟の土地の持つ

より不安定で力の強い領域にまで到達した



その時だった


「「     」」ゴゴゴ・・

「!!」


「なんだ・・?」

「な、なんて醜悪なオーラ、だ・・!」

「い、異界の化け物だ・・! ま、まさか あれが悪魔の姿なのか・・?」


突如

従来の魔法師とは異なる、魔法の一切通じない謎の別次元に強い力を持つ

正体不明の異形の漆黒の怪人に遭遇し

そこで激しい戦闘状態になったということ


予期せぬ戦いの最中

その異様な怪人は人間でない見た目をしていたが

魔物ではなく その意思を伝える知能を持っていた


そして自身の存在のことを不思議な音程をした片言の言葉で

「ハスラーキッド」と名乗ったのだという


(・・・!)

ハスラーキッドはあろうことか

向こう側の魔法の世界にも現れていたのだ


オジキは今のゲンゴの元となる力を

(つまり招拳・絶回雷塵の力)

その時というか元々持っていて

最終的にオジキと一対一で現れた正体不明の怪人、

ハスラーキッドとの熾烈な戦闘になり

対抗してその力を使わざるを得ない状況になったのだという


その戦闘は熾烈さを極めたが 

その意思を見せたことで途中で勝負は切り上げられて

オジキも怪人ハスラーキッドもその時は両者は無事に

望まない勝負からは退いたという


しかしそれはただでは終わらなかった


強力で異質な力同士が衝突したことによって

その時戦場になった空間には従来にない変質が生じていて


その異変はこの世界に存在し かつて世界が秘め持っていた力、

「世界の敵を見つけ出す力」によって察知されていて



怪人はそれをこの世界の原初からあった決まりごとの法則

人の目に見えない星の裏に存在してこの世界の形成を成り立たせていた、

「システム」のひとつだといい

オジキたちにこの魔法世界は原初に定められた

そういった見えない上位世界のルールの元に従って存在していたことを伝えた


・・

(原初の世界の、決まりごと・・?)

・・


「それはよく聞けば

俺たちの世界に伝わっている天地創世の古い教えの内容によく似ていた


だが俺たち側に伝わっている教えでは

そこにかつてあった上位世界の神聖なルールたちは

なぜか原初の世界が生まれた時にはほとんどが壊れてしまって

今は少しの基本的な決まりごとしか残っていないことになっていた


今も残っているそれは例えば

人や物に重みがあって地面にきちんと立つことができるのも

重力、質量の決まりごと、

つまり世界の力の法則が俺たちの世界に常に働いているからなんだ


なんでも「世界の敵を見つけ出す力」ってのは

本当は世界に人の敵である魔王が現れた時に 

それを察知して運命に星を遣わせて

後に必ず対となる力を持った勇者と出会うようにする力の法則だったらしいんだ 


それでよ・・、」



「なにそれ まるで、・・」


(ゲーム、みたい・・)


(・・そうか ゲンゴや向こうの人たちには

元々昔から魔法や不思議な勇者たちの伝説があるような世界で生きてきたから

世界に運命みたいなルールや

普通じゃないような不思議な決まりごとがあったとしても

それをある程度は自然に受け入れられる下地があるんだ・・ )



(・・・・)

「それで・・ やつが伝えてきたのは 

今 世界には

その壊れて失われたはずの決まりごとの力の一部をどこかから掘り起こして

その力を部分的に利用している悪い奴らがいるっていう話だったんだ 」

「え・・・」

・・



「なにい・・!」

「そんな、馬鹿な・・!」

うろたえた風魔の戦闘員たち


得体の知れない敵が

戦った後のオジキの位置を捕捉したことが伝えられ

味方の戦闘員で厳戒体制を取っていたにもかかわらず 


後日にオジキは別の強い力を持つ謎の魔法使いに襲撃を受けて


その時 一時的に超時空から現れた敵と共に

見たこともない魔法送転に巻き込まれて姿が消えたのだという


(( ?????

「 それは・・

お前たちにはまだ過ぎた力だろう・・? 」


「なんだと・・?」   ))



その時のことはよくわからない


当の連れていかれたオジキはそれでも後に単身で里まで生きて帰ってきたものの

瀕死の体には大けがをして血を大量に流して失っており

さらにオジキが持っていた秘密の力 招拳・絶回雷塵の力は封じられて

忘却していく強い呪いの魔法を敵によってかけられていて 

その力を急速に忘れていっている途中だった


襲撃は先日に戦った謎の怪人の信用するにはあまりある怪しさに

実はこちらも繋がっていた敵だったのではないか、

と思われていたがそれも今はよくわからない


というのもオジキたちが

そのうちハスラーキッドを名乗る怪人と戦闘をしたことも

その後の何者かからの襲撃のことも

忘却の呪いの力で忘れていってしまったからだ


それはもっと後に判明したことだったが

気が付けばその土地に調査をしにいったことも

その伝え手の記憶すらも

霧がかかったようにその時からの記憶と認識を強制的にゆがめられて

曖昧に忘れていくように作用する恐ろしい魔法だった


それでもその時にまだ残されていたオジキの秘密の力が

全て強い呪いの魔法の力によって忘れ去られる前に

ゲンゴが駆けつけて

秘術によってゲンゴに残っていた力を継承して

そしてその代わりオジキはその力を一切使えなくなり

全部を忘れて失ってしまったのだった


そうして敵によって一族から記憶が完全に忘れ去られてしまった後も

直接忘却の呪いを受けずにその当時の力を受け継いだゲンゴだけは

その時受け聞いた記憶のことを曖昧にならずに覚えていたのだという


・・


「そうなの・・オジキたちがそんなことに・・

それでゲンゴにも力が・・」



「そうだ 俺の言うことだから

オジジたちは信じてはくれるが オジジたちは今も忘れたままだ・・ 」



・・・・

それが昨日夜にゲンゴに教えてもらったこと


(夜遅くなってしまったので

その辺りで話は切り上げたんだけど 結局よくは眠れなかった)


・・

話も時系列もごちゃごちゃになってしまったけれど

それで今は居残りの仕事の部屋でその時の補足というか

ゲンゴからの話の続きを少ししているのだった


その時の悪い敵は

ゲンゴに密かに力が受け継がれていることは知らないはずで


何者かの脅威がまだ世界のどこに潜んでいるか分からない以上

ゲンゴはその力だけは絶対に開放することのないように

オジキに力を制限するように念入りによく注意されていたということだ



「え、でもゲンゴって星誕祭のときに

私と試合の時につかってたよね」


(  )

ゲンゴの力については私も気になっていたところだった

試合の時のあの変化した力は明らかにオリジンの持つ特有の力だったからだ


力をゲンゴに移して忘れてしまったオジキが持っていた秘密の力は

もしかしたらやっぱり私の中のイヴが持っているような

それは完全なオリジンの力だったのだろうか


「・・いや それはしょうがないだろ 

俺だってあの力は使わない気だったんだぞ


それをそこのだれかが先に使った上に煽られたからな

あの時はどうかしてた」


「・・・」スン

舌で上唇(うわくちびる)をちょっとおさえて黙っているリズ


「それに結界で厳重にあの会場は覆われて守られてたんだ

いざってときは特別な非干渉結界もあったから

もし力を使うことがあっても

迷惑はかけるが人目にはつかないと思っていたんだ


向こうじゃ元々 人の目には見えない力だしな

まさかその結界が全部壊されるとは思っていなかったが」



「ふーん・・

その力って・・前にクロージュさんにもちょっと聞いてたんだけど

実体がない悪魔にも通じるっていう特別な風魔の体術なのよね?」


「・・聞いていたか、

それは風魔が一族で相伝してきた対魔術師の投げ技だ

それでも特別な部類には違いないが オジジが持ってた力はそうじゃない


あれはもっと違う物だ

その力は元々一族でもオジジにしか使えなかったし

他の体術だけの力と違って纏う力自体が違っていた


幽玄の狭間 

人には見えていない領域にある特別な強い力の波動を秘めていたんだ


ちょうど

お前があの時見せた力みたいにな・・ 」


(・・!)

ここまで話を聞いて少しピンときたことがあった


「あ・・もしかしてさ ハスラーキッドの力とそのオジキの特別な力が

ぶつかってなにかに捕捉されちゃったのなら


結界が壊されたときにも

私たちの似た力同士があの時接触しちゃってたから

同じように何かのシステムっていうのが動いてたんじゃ・・」



あの魔法の世界には勇者と魔王の間にそういうルールがあったって

敵に味方の力を導く力・・?

でもそんなので世界の敵を見つけるだなんて

そんなまるでどこかのゲームの中の悪ふざけの決め事みたいな・・


(・・・)

「・・ありえるな それがあの大会の最中での襲撃だったっていうことか?

だがそれは感知されてたとしても襲撃までが早すぎないか 

オジジの時だって敵の襲撃まで猶予はあったみたいだぞ」


「じゃあ少し前からもう見つかってたとか?」


「あの最高レベルだった会場の守りを破ってきているからな 

ある程度事前に知っていて仕込まれていた可能性はあるな」



「だけどなんで? ハスラーキッドとオジキもそうだけど

私とゲンゴが接触して 

なんで訳の分からない敵なんかに付け狙われないといけないのかしら


もしかしたらまだ・・ 」



その時


「  」



「リズ なんだ・・?その画面は?」


「え・・・?」


振り向くと今まで仕事部屋のオリジンの起動画面の電源を

ずっと入れたままにしていたリズであったが

(  )ヴォン

その画面の中央にいつの間にか

謎の光の渦のようなものが表示されていたのであった


(あれ・・?こんなスクリーンアウトの設定なんかあったんだっけ

だれかが設定していたの・・?)



その直後


「(ギイ・・)」

部屋の真後ろのドアが開く音がした


(あっいけない 誰かしら リコが戻ってきた?それとも会社の組合の人?)

「(ゲンゴ動かないで じっと・・)」



その時突然

「ブワ!」

(わ!)

いきなり私の体全体が魔法の風の衣でくるまれて

足元がわずかに床から離れて 宙に浮かび気味になる

「シュインシュイン・・」

(!これ ゲンゴの風の守りの衣・・)



「おい なんだお前」

ゲンゴの声のトーンがいきなり低く下がる


「(え・・?)」


振り返るとその扉の前には


「「  」」


「ジジジジジジ・・・」

小さい男の子の()()()()()が立たずんでいた

(・・!)

ようなもの、と思ったのは

その男の子には「顔がついていなかった」からだ


その突然現れた存在の顔の目のあった部分からは

いつか見た白い光が漏れ出していた


「な・・?!」

(え・・! あのときの・・? またあの白い光・・?

また、なの? 私を飛ばすつもりなの・・?)


((・・・・))


すると


「 話ができるなら聞け


俺の風の羽衣は お前らのその光をおそらく一回は防ぐことができる

そいつを撃ったら その間にお前を一瞬で切り刻む」


底冷えするような低いトーンのゲンゴの威圧する声のいう通り

その男の子の周りには逃げ場のない鋭い風が囲って回り始めていた


「・・・・」

それに答えない小さな男の子


空気が緊張する



「・・こんな感じだったかな」

口がなくてどこからでている声か分からなかったけど 

冷たいけど少し思っていたより明るいような調子の声が返ってきた


「ジ・・」

白い光は収まっていって

顔がなかった場所には光がなくなって 今は顔がついていた


その顔が


「え・・!」


(ネロに・・そっくり・・!)

現れた小さい男の子の顔はネロにとてもそっくりだった

ネロにとてもそっくりだったけど 

ただネロとは違って犬みたいな小さい耳はなくてその瞳は赤くて髪は白い


「ネロ・・?」

思わず声がでる


「ネロ・・? 僕のこと・・?」


声は似てなかったけど雰囲気は似ていた

ネロの声をより冷たくしたような声というか


(ガキ・・?)

「お前は何者だ」

ゲンゴは警戒を解かないまま詰め寄る


「撃たないよ 僕はただ派遣されてここにきただけだよ


君がオリジンの奥手の方にまで入ってきてくれたから

やっとこの場所がわかったよ」


「答えになってないぞ」


「・・僕は「改変された「楽園」の送転システムが人の形になったもの」だよ

楽園で通知をするメッセンジャーの機能を持つシステムだったもの、それが僕」


「なんだと・・?」

(え・・、「楽園」って・・?

まさか昨日に話してた世界にある楽園のことなの・・?

そんな昨日の今日でいきなり詰め込んじゃって・・、

その楽園のシステムメッセンジャー?どういうこと・・?)


その瞬間 男の子の姿はパッと消えて

「!」

ゲンゴの風の術の包囲を回避して

リズの隣のイスのところに何事もなく移動していた


(こいつ・・、俺の術の完全な包囲を一瞬で・・)

ゲンゴは鋭く回っていた風を一度解除する


「よいしょ・・」

男の子はそのイスを横から えっちらリズのいる真ん中の机の方に寄せてくると

一体どういう原理なのか、またパッと消えて 

今度はそのイスの上に座っていた


(・・・)

寄せてきたのでリズの近くでイスにポンと座っている男の子


「・・・」


思ったより近くで話せそうなので リズは男の子に聞いてみることにする


「ねえ あなたが私たちをここに連れてこさせたの?」


この男の子の姿はあの大会の最後にみた

あの白い光の小さい子の姿に似ていた気がする


「ううん 違うよ」

(え、ちがうんだ・・)


「・・じゃあ あなたはなんできたの?」


「君たちの捕捉を(ほど)くのと 知ってもらうため」


「捕捉・・? やっぱり私たち何かに捕捉されてたの?

それに知ってもらうってなに?」


「そう ()()に捕捉されてた 


あの力の捕捉を振り切ってリセットするには

一度別の世界線に移動しないといけなかった

だからここに飛ばされた 知ってもらうのはこれだよ」


そういうと男の子はリズのモニターを手動で操作し始める

(あ・・)

そういえばさっきのスクリーンに映っていた光の渦のようなものが

もう消えている

この男の子がきたから消えた・・?


(まさか この子はここから・・?

いや そんなまさかね)


(ススっ・・)

すると男の子は勝手にリズのアカウントで

「ワールドプレミアムリーグ」の場所に入ろうとしている


「あ、こら! やめなさい そこはすごい入場料かかるのよ」

「ん 入ったよ」(ピリン)


(あれ・・?)

たしかに


((ワールドプレミアムリーグへようこそ))


と画面表示はされている

だけどリズのアカウントからは入場しても

徴収されるはずの入場料金の数字分は動いていなかった

・・

「おい お前、捕捉を解くっていったな

ただ世界線ってやつを移動しただけでそいつは完全に解けたっていうのか?」


「・・彼らの力は強力だけど動いてるのは一部だけだから

決められた単純なことしかできないんだ


捕捉っていってもまだ近くでないと

ぼんやりとしか分からない程度の曖昧なものだね

だからこの世界にきて君たちは捕捉対象からはすり抜けたはずだよ」


リズの画面を操作しながら淡々と男の子は答える


「・・そうか」

ゲンゴは若干声のトーンを元に戻したようだった

私にかかっていた守りの風の羽衣もほどけていく


「知ってもらうって このワールドプレミアムリーグのことなの?」

「そうだけど ちょっとちがう」



「今から向かうのは「アンサイド・サイト」

つまり普段は表の人の目には見えていないオリジンの裏道のエリアさ 」




(え・・そこは・・)


「   」

ワールドプレミアムリーグシティの中にあった、

前に散策した時にリズが見かけた 

あの妙に脳に印象に残っていた古い町並み


「タタタ・・」

薄暗くて活気のない誰もいない狭い通り道に

男の子は迷い込むようにしてスイスイ入っていき


さらに道の暗がりの奥に奥にと進んでいく


やがて差し込むわずかな光もなくなるまで狭い空間の道の奥に進むと


「  」ガラリ

そこの蛍光灯に照らされて一際ひときわ寂れて

その全体がぼんやりと白く光った雰囲気の古い本屋のようなお店に入場する


・・・

(でもここ、中身は本屋さんじゃない・・)


小さくて寂れていたけど 

中はオリジンの試合を閲覧できる隠れ店舗だった


男の子は「観戦ゾーン」というところに入っていく

VIP席 S席 A席 B席 C席 があってC席は普段は無料だけど

いいランク帯の席では一般開放していない試合を見れたり

追加オプション席で自由に時間などを設定できるプレミアム観戦では

高額な料金がかかる


「ガコ」

すると男の子は

そこにあったヘンテコな歯車のような機械の隠し取っ手を

逆手に操作したかと思うと


「え・・!」

そこには「「 裏VIP席 」」という項目が新しく追加で情報表示されていて 

通常ではありえない超高額な閲覧設定がされており

実際には誰も入れないような設定にされていた

「スス・・」

男の子はそこに迷わずカーソルを合わせていく


「ちょっと!そこは・・!」

「ん もう入ったよ」(ピリン)


(あっれー・・)

それでもまたリズのアカウントからは数字は動いていなかった


(これいいのかしらね 違法とかじゃないといいんだけど・・)


・・

それからしばらくして


いくつもの最上位帯?と思われる試合の立ち並ぶ部屋の浮遊した空間を

また迷い込むように奥に奥にすすんでいく


「  」「 」「 」


そこは前にリコと一緒にみた普通の試合を観戦するような空間と違って

なにか時空がフニャフニャと歪んでいるように不自然な空間だった


(何ここ・・オリジンの中の隠された試合・・?

最上位なのに知らないし見たことないものばっかり・・


それにレート外の超法外な金額や

取引不可のはずの貴重な限定アイテムを賭けてる試合もあるわ

どういうことなの・・?)


その中には以前円満な合意締結の元で合併されたという国の前の名前があって

その名前がまるまる賭けられていたような試合があったり


数々の国の権力者同士の謎の試合などがゆっくり動きながら渦を巻いていて

異様な雰囲気だった


・・

そしてそこに見えていたのは試合だけじゃなくて

なにか別の空間があってそこから歪んで景色が見えていた


「  」((  ))


(なにあれ・・古い・・風車・・かしら?

何かの像・・?古そうな建物も見える

不思議ね 

時がそこで取り残されてるみたいに穏やか

明らかにおかしい世界なのに なんだかこの風景を見ていると落ち着く・・)


(・・・)

「ここはオリジンのこの都市を守ってる「聖域」に近い場所だからね

大昔に封印された古い景色も見えるよ」


「あの場所がオリジンの聖域・・?」


「そう オリジンみたいに力が荒れている世界で

この高度空中文明都市を維持するのには安定した秩序がいるんだけど


オリジンの怪人たちは存在そのものが

秩序をかき乱して破壊してしまう存在だから

そこで秩序を保つには

オリジンの怪人たちの力を一方的に抑制できるほどの強い聖域が必要なんだ


その聖域の力で

この空中都市はオリジンの住民たちが集まってきても繁栄していられるんだよ


まあ今はここでの試合にしか用はないから」


そういって男の子はその場所を通り過ぎる


「・・・」

(それってオリジンの設定上の話・・よね?)

・・


・・・・

・・

「ここだね」

そして男の子はある試合の前で止まって口を開く

冷たい声だった


「これは当時世界レート1位 Hustler(ハスラー) kid(キッド) と

現在の世界ランキングレート1位のカーニバル・ジャッジの試合の内容だよ


一般には観戦開放は一部と途中までしかされていない試合だよ

僕はここまで案内はしてきたけど


でも見てみるかは 君たちが決めて」


その試合の始まりの日付はリズがあの町の通りで

悪夢の始まりのようだった黒い異様なモンスターたちに襲撃を受けて

その途中で漆黒の怪人のハスラーキッドがやってきたあの日の日付になっていた


(え・・ハスラー・・キッド・・?

あの日の事、なの・・?)


なにかすごく嫌な感じがする


だけど・・・



(気になる)


私はゲンゴの方を見る

ゲンゴは無言でうなずいていた


・・・


「・・見るわ」



「じゃあこれ」

「・・?」


男の子はどこから取り出したのかヘッドホンのようなものを

カチャッと取り出して

リズに手渡した


「オリジンの市販品のヘッドホンだよ でも普通より迫力が出るんだよ

オリジンの最上位の試合は発信される情報量がすごいんだ」


指から伝う普通のヘッドホンの角ばった感触


(・・・)

リズは静かにカチャリとそのヘッドホンをつける

それは少し冷たい耳触りだった



「じゃあ はじまるよ」


ヘッドホンがリズの耳に装着されたのをみると

男の子はゆっくり閲覧開始のボタンを押した



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