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第66話 帰宅後

 ・・・

大量の食料品と今までお金がなくてなかなか新調できなかった衣類や

日用品を抱えこんで施設に帰ってきた私(とおまけの肩のり透明ミニゲンゴ)



 「リズちょっとこれ・・どうしたの?」


「え・・」

だけどなんだか少し怒っているような調子のリコ


(やや・・リコちょっとなんか怒ってる・・?なんでだろう

こんなに食料を持って帰ったっていうのに)


珍しくリコが先に施設に仕事から帰っていた

私がちょっと帰りが遅かったっていうのもあるんだけど

・・


「私てっきりリズがちゃんと休んでるって思ってたのに」

(ああやっぱそうなっちゃうよね)


「まあ いいから いいから」

私はちょっと不機嫌なリコをなだめるように

ちょっと無理やり荷物を押し付ける


「ちょっとこれどうやって持ってたのリズ・・」


リコに手伝ってもらって大量の荷物をおろした後

私はネットカフェでいろいろやってた事情を説明することになる


「いやもう5日も休んでたからいいじゃない?」

「まあリズが大丈夫っていうならいいけど・・」



・・・

・・・・

「ええリズが・・そう

今日のあのイヴっていうプレイヤーだったのね


私あのイヴっていう人をリズに見せてあげたいなって

今日ずっと思ってたのよ その人ずっとイヴ使ってたから」


どうやら今日現れた謎プレイヤーイヴの活躍のことはリコは知っていたようで

詳しく事情をきいてくる

(まあリコも同じリーグの場所で仕事してたはずだからね)


私が事情を話すと

リコもそのときの今日の仕事部屋での出来事を話してくれた



・・・・

リコの視点 仕事のオリジン対戦部屋



リコはオリジンの賞金リーグでの対戦を続けていた


「ピコン!」

「今日はまあまあだなあ・・」

勝ち越していかないと収入にはならないので今日はまあまあ勝っているということだ


体を壊してしまった同僚のエレネが別の施設に飛ばされてしまって

あれからやっとリズが事故から目覚めてくれたけど

無理をしてすぐに働いて またぶり返したらいけないし今日は休んでもらって

今日もわたしはひとりで賞金を稼いでいる


さすがに一人班で部屋を回すのは効率が悪いので

嫌だけど同僚の男たちがやってきて 

そのリズのいない空きスペースを埋めて賞金リーグに参加していく


「よう お前ら交代の時間だ~」

「へへ・・」

「お疲れ様です ボルンさん」

「お疲れ様です」


私の他の席の人に声がかかって人員交代が行われる

常に脳神経を集中して使って受容する情報も多いオリジンは

長時間プレイを続けると

頭がジンジンしてきて脳に負荷がかかるので適度な休憩が不可欠だ


(私も一旦は休憩とろう・・)

そう思って席を離れようとすると


「おい お前は駄目だろ あの役立たず達の分も回収しないといけないんだからな」


リコは唯一の休憩をボルンに止められる

「・・・・わかりました」

私はまた席に座る


「 しかしお前らはほんとに役に立たねえよなあ

勝手に壊れて飛ばされるのがいるし 残ったお前ら2人してまぬけな事故に

巻き込まれて休むしよお


やっとリズの目が覚めたんだろ 知ってんだぞ? オラすぐ連れてこいよ

今まで休んだ分は休みなしで働かせてやる


あんなのでも俺の小遣い稼ぎにはなるんだからな」


(ギリ・・)

奥歯を噛みしめるリコ

「いえ・・リズは安静にして今日は休みだって上に連絡してありますから」


「ちっ、 お前ごときが上に掛け合うなよな

もうさぼりだからな 明日は絶対に連れてこい

きたら馬車馬のようにこき使ってやる」


「まったくよお こんな役立たず派遣しやがって

休んだ上に成果がイマイチなら首にするぞコラ」


(ちっ・・お前らにそんな権限はねえんだよ・・

まあ成績が悪いとそのうち首にはなっちゃうかもしれないけど)


(・・・)

思っていても声にはださない心のリコ


結果が出せないと

今よりももっとひどい場所に飛ばされることはあり得る

そこはもう人間の扱いじゃない


・・・

不機嫌になって余計な口を出されないようにボルンには最低限取り繕って

休憩なしでリコはまたオリジンを再開する


交代した男たちが乱暴に機材を扱う音が聞こえる

「ギャハハ・・こいつまぬけ」「一凸ですか、ボルンさん調子いいっすね」

「へへ、爆散させてやるよ」


(ああ隣でうるさいなあ・・集中が途切れてまた負けが増えてきたなあ)


せっかく今日は勝ち越していたのに集中を乱されて負けてしまい

取り分が減ってきて

さらにイライラが募っていくリコ

・・


そのとき


「お、こいつはいいな この「イヴ」ってやつ

ちょうどいい連勝具合だ そろそろここらでガツンと稼ぎたかったんだ」


「(イヴ・・?)」

今のサーバーリーグのランキングは私の画面からも数クリックで確認できる

急激に連勝記録を伸ばしていた「イヴ」というプレイヤーが目立っていた

そのプレイヤーの今日のリーグでのキャラの使用率は100%

「イヴ・バスタードツイン・デストロス」だった


一瞬リズのことが頭をよぎるけど リズは今日はしっかり休んでいて

オリジンにアクセスしているはずがない


(今時キャラの一点使い?キャラによって相性とかあるのに・・

リズみたいな人だなあ・・)

・・


「馬鹿みたいに火力だけでイヴを使ってるやつが調子にのってると

あの役立たずのリズを思い出すな

あいつがさぼってて絞れないからな

決めたぜ 今日はこいつからは身ぐるみ剥がしてやるぜ」


だがこの男

ランキングにのるような調子のいい相手には自分で勝負をしない

自分で勝てないからだ

あくまでこの男の実力は調子が良くてもこの末端リーグの中堅レベル


しかしボルンはそういってニヤリとすると 

自分の通信端末を取り出してひそひそと何かと連絡を取り始めた


(またか・・)

この棟の別の階の部屋でこれも賞金稼ぎを生業にしているこの組合の

稼ぎ頭の唯一中級ランク認定の男がいるのだが 

このボルンとよくつるんでいて

組んでアカウントをやり繰りして不正な替え玉をしている


・・・

しばらくすると 

部屋のドアが「ギィ・・」と開いて

ボルンに連絡を受けた、その男がのっそりとやって来る


組織の中級ランクを持つ「ザイル・キール」という男

過去の実験施設の出身者であり、

安くて不潔なチンピラの風貌のボルンとは少し違い

スラリと背が高く、

灰色が広がっていくようなくすんだ目の痩せた狼のような雰囲気の男で

この男も被験者特有の変わった目の発色をしている


「ボルン また調子にのったカモを見つけたのか」

「頼むぜえ・・」


「おう 俺はオリジンの()()()()()だからな」


この男は組合内でも変人まがいというか相当に癖のある男で

「普通の人間はオリジンに関わり合うことはない」

というのが口癖で

自身はオリジンのことを毛嫌っている上に根拠のない慈善活動家を自称しており


リーグに活きのいい新人が現れると

もうオリジンなんて二度としたくなくなるレベルに

自身の嫌がらせに特化した実力でドブのように汚い戦い方を叩き込む


下級リーグのプレイヤーが中級レベルの実力を持つプレイヤーに勝つことは

実戦ではまずほとんどない


そうして新人プレイヤーにトラウマを植え付け

失望させオリジンから早々に立ち去らせる


この男はそれを「救済」といい

それがオリジンにおける唯一の善行であり

自分の使命であると普段から言いまわっているのだ

・・


そしてその男は今

ボルンの私欲によって都合よく利用されているのだった



「どいつが相手なんだ・・?」


「こいつだ まずは直接対戦要求ダイナミックエントリーだな

今調子にのってるからすぐ食いつくだろう

さあ お前の力でいくらでも()()()()()()()() 」


また一つ連勝が増えたその「イヴ」というアカウントを

まず軽く一瞥してそのプレイを観察する中級ランクの男ザイル・キール


(・・・・・、

基本技に忠実・・だが悪くねえ動きだ・・

「奇麗な野ネズミ」ってとこだな


こいつはボルンじゃ勝てねえな・・ だが)


(・・・)

「今どき暴走しか取り柄がないイヴか、いいぜ 

がっちり対策してドブの泥を食わせてやる


・・だがなんだ こいつキャラ偏向しすぎだろ 素人か?


まさかここでこき使ってるリズじゃないだろうな こいつ」


それに答えるボルンの取り巻きのひょうきんな男


「それはないっすよ 

あいつはこの間の事故の巻き添えでぶっ倒れて休んだままです


あっ ザイルさん、リズに執心でしたか? 見た目はまあまあっすからね」


「・・馬鹿言っちゃいけねえ

組織の女は多少見てくれが良くても頭の方が全員ぶっ壊れてやがる


薬漬けのそこの下級の女みたいにな


俺はもう手遅れな頭の人間は相手にはしねえ」


「ギャハハ・・違いねえ!」


(ちっ・・、言ってろよ)

また声には出さない心のリコ


・・・

「へへ・・」

狙いすましたようにボルンは今一番勢いのあるプレイヤー「イヴ」に対して

直接対戦(ダイナミック)要求(エントリー)を提示する


「・・のってこないな」

「ちょうどこっちも搾り取る金は増やしたかったところだ

食いつくようにガンガン提示額をあげてやる」

「ピピピ・・」


・・・

「ピピピ・・」

「ボルンさん、そんなにレート上げて大丈夫っすか?」

細身の取り巻きの男がやや気になったという顔をする


「ああ?どうせ返ってくる金だ」

「それもそうっすね」


「ピコン!」


「ハッ!食いつきやがった こいつももうお終いだな」


(あーあ 引っかかっちゃったかあ・・)

リコはそのリズに戦闘スタイルが似ているプレイヤーが

これからボルンたちに食い物にされるかと思うとひどく憂鬱な気分になる


「(もう帰ろっかな・・)」


だけど比較的稼げていたリズも休んでいて正直もう生活が苦しい

普段から生活は厳しかったけど

もう部屋にはろくな食べ物の備えも残っていない

(もう少しは働ける私が勝ちを積んでおかないと・・)


・・

そうこうしているうちに

替え玉中級クラスの男ザイル・キールとイヴというプレイヤーの対戦が始まった


リコは仕事の対戦相手とまだマッチが決まっていなかったので

画面を観戦モードにして一旦はその試合の方を見ることにした


結局脳裏にチラチラして気になってしまったのだ

「(あんまりひどいようならすぐ消そう・・)」


だけど・・


・・


(わあ・・上手い 上手いわこの人

操作がとてつもなく精密だわ・・


それにイヴの暴走モードの火力に一切頼ってない・・奇麗な戦い方だわ)


オリジンのイヴ・バスタードツイン・デストロスの公式の設定上には

「勝手に暴走をする」という設定は()()()()()()()()()

ステータス上でもイヴ自身が持つ暴走への耐性は

全キャラ中で随一といっていいほど高い


だがしかし実際にプレイをするとイヴは極簡単な操作のきっかけで

暴走を引き起こしてしまうことは

オリジンをするプレイヤーたちには周知の事実であり


本来破壊された力のゲージが怪人の持つ耐性を超えて溜まってしまうことで陥る、

厄介な状態異常である「暴走状態」への経路が

イヴにおいては二重に存在してしまい

多少の耐性がある程度ではすぐ暴走に陥ってしまう


イヴを使う利点である尖った攻撃性能と破壊力は

その暴走のしやすさによって通常の戦闘ではほぼ打ち消されてしまっており

そのせいでバランスを補うというレベルを超えて

普段の能力の総合バランス的には

全キャラのステータス平均値を明らかに下回っていて

特に防御における面が紙くずにも等しい


しかしその暴走状態だと強い元来の火力の補正がつく能力のため

大抵のイヴを使うプレイヤーは

操作性にはあまりこだわらずに

そのまま雑にイヴの暴走をぶつけるように運用することが大半だった


「  」

でも今戦っている「イヴ」というプレイヤーの 

それらとはまるで別のキャラを操作しているかのような、

性能面では押し負けているはずなのに

そのまるで舞う蝶のように相手を翻弄する華麗な動作に

思わず目が釘付けになる


流れではそのまま勝ってしまうかと思った


「やってくれるぜ・・」

だけど途中から手元が慣れてきた中級クラスの男にガンガン押されていく


(あとちょっとなのになあ・・やっぱダメかあ)

と 思っていたら


「ベチ!」

「イヴ player WIN!!」


(お!おお~~ やったわ~~ ざ、ざまあみろ)

台の影に隠れて口を手で隠してニッコリするリコ


「ああァ!?なんだこいつ」

「ちっ、たまたまだ 俺の技は全部食らってる ずっと死にかけだったくせによ」

「もう許さねえぞお 取り返してやる」

「ピピピ・・」

荒れるボルンたち


(まだやる気みたい・・)

「ピコン!」

「(あ・・また受けちゃったイヴって人・・)」

(さすがにもう厳しいかなあ・・)

リコはもう自分の対戦とかどうでもよくなって さぼって試合を見続けていた


ボルンたちも自分たちのことしか見てなくて 

それを咎める者はこの部屋には誰もいなかった


・・・・

・・・


「イヴ player WIN!!」

(うっひょ~!)


「おい!金がなくなったぞ!!」


「た、たまたまだ 最後見ただろ 

死にかけであんなクソみてえなコンボいれやがって

逆に裏読みしちまっただけだ」


「じゃあザイル!お前も有り金全部出せよ 次は勝てるんだろ!?」

「当たり前だろ おい!お前もだせ!!」


「え!?俺もですか?、ボルンさん・・?」

「たりめえだあ 元々俺もちょっといけない金使い込んでんだ

信用レバレッジもかけてあんだ

取り返さねえといけねんだよ 大丈夫だ俺もさらに追金する」

「シャリーン!」

「シャリーン!」

「シャリーン!」

勝負に熱くなり

ボルンのアカウントに限界を超えてチャージされていく大量の男たちの金


「ピピピピピピピ・・・」


(っ・・・・!)

リコはこの辺りで雲行きが怪しくなってきたのを感じていた


(・・・、)

「こいつはここにいちゃいけねえやつだ・・!救済してやる・・!」

「そうだ!制裁しろ!叩き潰せ・・!」


リコはひそかにリーグでの精算を済ませると

いつでもこの場から去れるように準備していた


(  )

周りの状況に慎重に気を配る中

リコがこの男たちの試合を見る中で

あのイヴというプレイヤーの戦い方に気が付いたどこか妙な気がかり


(あのイヴっていうプレイヤー、

中級のザイルキールの悪どい技を全部受け止めてるように見せかけて

ザイルキールが普段から見せていた、相手の心を折っていたぶるような

その本当に致命的な部分には踏み込ませてない・・


プレイの偶然の一致・・?


ボルンたちは誰も気づいてない


・・いや、ザイルキール本人は少し気が付いてる

だからむきになってるんだ・・、


それをもし意図的にできるとしたら

それはまるで相手の怪人ではなく画面の向こう側の相手の心理の裏を直接覗いて

手玉に取れるようなプレイヤーっていうこと


ある意味確かに

ここにいていいプレイヤーじゃない・・ )



(いや そんなはず・・ )



・・・

試合は

圧倒的だった



「対空強ナユラ砲昇破・滅!!」ズキューン・・!


(ああ・・、

やっぱり・・この人実力を隠してたんだわ


わあ・・奇麗ね・・、リズに見せてあげたかった・・)


「イヴ player WIN!!」


「ば、ばかな・・」

「あが・・」

替え玉をしていた中級クラスの男ザイルキールは

3戦目はそれまでと違い、全く相手にもならず

苦し紛れに繰り出す搦め手も

それらは最初から見透かされていたように無残に爆散させられて

ボルンたちと共に口を半開きにして灰色に燃え尽きた炭のようになっていた


「ブブブー♪」

ボルンの所持資金がとんでもないマイナス赤字表示になって

アカウントにオリジンの運営から超過債務者マークが刻まれる音がする


今はショックで呆然としているけど

ボルンたちが正気に戻ったらここで何が起こるか分からない

もう少しあのイヴというプレイヤーの観戦をしていたかったけど


(いいものを見れたわ)

「(くたばれ・・!)」

リコはベーっと舌をだして


いつも終わる時間よりは早いけど

その場からボルンたちが呆然としている間に

音を立てずにそっと逃げるように仕事場から去ったのだった



・・・・

・・・

買ってきた新品の日用品を仕分けながら そんな風な話をしているリコと

それを聞いているリズ


「へえ・・そういう感じだったのね」


(・・・)

(やっぱり中身はあの人だったかあ 

やり方はともかく腕は立つんだから ボルンとつるむの辞めたらよかったのにね)


・・



「 ・・お前、ここで生き残っていきたければ 奇麗な戦い方は捨てろ 」


いつかのその灰色をした目に汚い小部屋で出会った日に

リズはそう言われた


「お前はもう手遅れだ 救済はできねえ 」



・・・



( 「真っ当な人間ってのはなあ、

オリジンに人生まで捧げたりは、しねえ・・、

今は世界の方がおかしくなっちまった・・、

戻れなく、なる前に俺が救ってやらねえと・・・、お、おええ、、・・」 )


(・・・。)

リズは 普段は冷徹であれほどオリジンのことを毛嫌っておきながら

自分はどっぷりと昼夜オリジンにはまり込んで身動きが取れなくなり

神経痛緩和薬などのいくつもの薬を混ぜ込んだ酒に溺れ、

会社の雑居ビルの階段の踊り場の隅で

通る人にも気味悪がられ誰にも聞かれないうわ言をたれて

床の上で骨を失った無様なタコのように潰れていたその男のことが

どこか嫌いではなかった



私たちの哀しみ


私たちはいつもその能力を他者に利用されている

それは私たち同士が戦うことになっても変わらないし

その人生から逃れることはできない


あの施設出身の男は

自分もまた愚かで手遅れな側で もう戻れない人間だということを

心底自覚していたんだ



・・

(はあ~、あのボルンたちが燃え尽きた様子は

私もちょっと見たかったかも

いやまあどうでもいいわ そんな汚いものを見てもしょうがないからね)


「それならこの買い物も納得ね・・

あいつらボルンだけじゃなくて

中級のザイルキールもボルンの取り巻きたちも有り金全部だしちゃったのよ

はいこのタオルたちはこっちにパスね」


「はいはい、(ポスっ)

それにしても額が多いと思うけどね 連勝分も合わせても」


「なんか使っちゃいけないお金だったらしいわ」


(え、なにそれちょっと怖いなあ・・

そんなお金すぐ全部使っちゃおうかなあ)


「それより リズがあのイヴの人だったなら・・めちゃくちゃ強いわよね

どうしたの?リズ、もしかして今まで私にも隠してたの・・?」


「そういうわけじゃないわ

私は一応あの人のやり方は知っていたし


それに事故から目覚めたらすごくゲームの感覚が鋭くなってたっていうか・・」

(うそじゃないよ)


「そ、そうよね そっかリズは知ってたからあんな・・

そうなんだ・・いいなあ・・ 私も3日くらい寝ようかなあ」

(リコ・・そういう問題なのかい?)


・・

(さてと・・)

買ってきた日用品の仕分け整理が一通り終わる

もうちょっとかかるかと思ったけどリコが手伝ってくれたから

だいぶ早く済んだ


「じゃあリコ せっかく買ってきたからこれ食べようよ

前の施設にいた時 リコこれ好きだったでしょ?」


それはリコが昔から好きだったちょっとお高めのフルーツ


「うん 大好き ここに来てからもうずっと食べれてなかったなあ」


・・・

この日は久しぶりにリコにとって豪勢な食事になった

(まあ私は今日すでにお昼にいろいろ食べちゃったからね)


まあでもいいもんだこういうのも

「おいしいね」

「うん」


たまに満足そうなリコの視線の隙をついて


「(あっ・・)」

(スッ・・)

姿を隠したゲンゴが勝手に私の買い物かごにいれて買ってきて

今はお皿に盛られているブドウの一粒が

まとまったブドウの房から離れていって

空中で消えるのが見えていた



(くちばしなのに器用にあんな大きいのをよく食べるわね・・

のどにつまらせたりしないのかしら)


すると


「ゴホっ」

(コロン!)

ほぼブドウの一粒が丸まる空中から転がってきた


(うわ!汚な!ゲンゴきたない!)

(もう・・いわんこっちゃない・・いってないけどさ)

(あっ・・!)


「え・・?」(ポカーン)


ゲンゴの術がゲンゴがブドウをのどに詰まらせて解けてしまったところを

ちょうどリコが振り向いて目撃してしまったのだ


(・・・)

ゲンゴは固まっている



「それ・・お人形?」

リコは首をかしげている


「!(しめた!それでいくわよ!)」

リズはリコに見えないようにかぶさりながら隠すようにゲンゴの方を向く


「(聞いたでしょ そういうことでいくわよ)」


リズはリコに声が聞こえないように

ゲンゴにぎりぎり髪が触れるくらい近くまで顔をもっていって

ひそひそ声でやり取りする

「(お 俺は嫌だぞ)」

「(なにいってるのもうばれたのよ 腹をくくりなさい)」


「ガシイ!」

ゲンゴの返事も聞かないままゲンゴの羽毛のボディを両手で掴み上げる


「(おい やめろ!)」

「(ゲンゴもうしゃべっちゃだめ!)」


「・・・」

そういわれてしぶしぶ人形になることにした様子のゲンゴ



「リズ・・?」

突然の私の不審な動きにリコが不思議そうにする


「ああいやなんでもないわ これね 今日買ったのよ お人形 かわいいでしょ」

リコの方を向いて手に持ったお人形?を見せる


「あのリズが人形を・・?」

(あ、疑ってるよこれは)


「うん 実はずっと前からほしいなって思ってたの 

お金がないから買えないなって思ってたけど」


「そうなんだ・・ ならよかったね」


(ふう・・なんとかしのげたかもお 

じゃあこの人形ゲンゴはもうどこかその辺の収納に適当にしまって・・)


「わたしもそれ持ってみていい?」

(あっ・・、 まあいいか)


「いいわよ」

(一瞬ちらっとゲンゴの目がこっちに向いたような気がするけど気のせいだ

人形だもんね)


リコが両手を出したので私はそこに鳥人形ゲンゴを置く

(ノッシ)

「これ・・鳥・・? ふてぶてしい・・、黒いアホウドリの雛みたい・・

なんか普通の人形じゃないよね」


「そ、そうなの 一癖あるのがほしくて・・」

「ふーん」


(・・・)

「え・・あったかいね、これ・・」

この人形の致命的な欠陥に早くも気が付いてしまうリコ

(げえ・・)


「ああ・・さっきまでずっと私の服の中に入れてたから・・

あったかいでしょ ほら 羽毛とかあるしあったかいのよね」


「ほんとね 本格的ね」

リコはゲンゴ人形の頭の辺りの羽毛を指でグリグリさすっている

(我慢しておいてねゲンゴ)


なんとか関心がそっちのほうに移ったみたいだ


「ほんと本格的・・」

リコは翼のほうに手をもってくると指でつまんで優しく

「ビヨーン」ってする


(あ、やっぱやりたくなるよね)


「わあ・・黒くて奇麗な羽ね 1本抜いてみていい?」

(まあこの娘は)


「だめよ 高かったんだから

いけないわリコ 私そんな邪悪な考え方はよくないと思うわ」


「ごめんごめん冗談よ」

「ならいいけど・・じゃあそろそろ返してね」


「そうね まだご飯たべてるしね」


・・

こうしてゲンゴ人形はその後 私に適当にその辺の箱にしまわれてしまい

ご飯は途中でお預けになってしまったのだった


後で部屋で残り物を持っていってあげると

ゲンゴはふてくされた様子だった



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