第64話 始めることは
「今日1日くらい まだ休んでないとだめだよリズ」
「え・・」
昨日は休んで今日からいろいろ行動するつもりで構えていたんだけど
リコは私を心配して今日1日は休みを取れるように言ってくれていたらしい
なんでも5日間も寝ていたのだから今日くらいは寝ていないといけないらしい
(あれ・・なんかおかしくないか 5日も寝ていたのにまだ寝ていないとって)
まあ理屈はわかるけどね
「じゃあいってくるね」
そういうと足早にリコは仕事部屋に行くために出ていってしまった
・・
「ふーむ どうしようかしら・・」
私の食料は昨日食べてほぼなくなってしまっていた
かといって物足りないからってリコの分の食料に手をつけることは
私はしたくなかった
(リコは食べていいって言ってくれてたけどね・・)
今まで寝ていて日銭を得ていないし 貯金もあまりないから
私のここでの生活に余裕はない
だから今日からリコについていって仕事場で小銭を得ていくつもりだったのだ
・・・・・
「どうするんだ 俺はあんなまずいものはもう食べたくないぞ」
スッ・・とミニ鳥人形化したゲンゴが隠蔽の結界を解いて姿を見せる
(ただ飯食らいが一人増えてしまったしなあ・・
ちっちゃくなったとはいえ)
リズに新しい悩みの種ができてしまった
しかも贅沢志向ときたもんだ
ゲンゴって普段あの感じだけど たぶんお坊ちゃまだよね
族長の孫なんだしね 風魔一族のサラブレットよ
(でも・・残念だけどここで私と生活してるうちは
いいものは食べれないだろうなあ・・)
「(安い鳥用のエサでも買ってあげようかしら・・)」
・・・
「ゲンゴ・・あのね 私お金がないから
ここではあんまりいいものは食べさせてあげられないの・・
あれでも最低限の栄養はとれるだけマシな方の食べ物なの」
「そうか・・ なら俺はそれでもいい」
「・・ごめんね」
「大丈夫だ 俺が外で魔物でも適当に狩ってくるから安心しろ」
(うわあ・・安心できない・・!)
ゲンゴはこの世界にも魔物がいると思っているようだ
(私がここでモンスターに襲われて意識がとんだとか言っちゃったから
勘違いしているんだろうか)
ゲンゴに軽く事情を説明
「なに・・魔物がいないのか
じゃあどうやってここのやつらは稼いでるんだ?」
・・・
それでそれを説明するのにオリジンの話をする
「ねえゲンゴ ゲンゴは「オリジン」って知ってた?」
「いや なんだそれは 」
(ゲンゴはオリジンを知らない・・
この世界の人間ならだれでも知っているんだけど
やっぱりゲンゴはこの世界のことは知らない だけど
でもゲンゴのあの時の力はオリジン由来のものだった
だからなにかは知っていると思ったんだけどなあ・・)
それでもう少し噛み砕いてオリジンのことをゲンゴにいろいろと説明をする
・・・
「はあ・・なるほどな しかしオリジンって仮想ゲームで稼いでいるとは
まるっきり生産性のないやつらだな 大丈夫なのかこの世界は」
「うっ・・」
私に深く刺さるその言葉
「でもまあちょうどいいじゃねえか
ここと向こうの世界で関係がありそうなのはその「オリジン」じゃないか
金儲けついでにさっさと調べようぜ」
(まあそれもそうか・・しかし今日は仕事休みなんだよなあ・・
どうしようかなあ)
(ちょうどこっちに戻ってきたのなら
オンラインで「オリジン」もしたいなあと思ってたのよね)
「じゃあ・・」
・・・・・
・・・
休みはもらっていたけど別に絶対休まないといけないわけではない
(リコは心配していたから これを知ったらちょっと怒るだろうか)
・・
私たちは町外れの小高い丘のふもとに建つ、
組織が経営する下級宿泊施設から外出して
いつもの少し薄汚れた色の上着を着こんでから旧市街の通りを歩いていた
「ゲンゴもついてくるの?」
「俺が暇になるだろ」
(そういうものか)
・・・
「お前が住んでいるところは ずいぶん荒れたところだな・・」
私の住む衛生管理の滞った汚い旧市街の街並みを見て
私の肩に止まったゲンゴがつぶやく
ゲンゴの世界とは違って排気ガスを出すエンジンのついた四駆の車があって
馬車とかは全然走っていないから
始めはそっちの物珍しさがあったけど
それを差し置いてもそっちの方が気になったようだった
ゲンゴの姿は術で周りからは見えなくしてある
相談したけどやっぱりゲンゴはこの世界では珍しいから
姿は隠してもらう方針にした
「それにお前の恰好も男みたいに
そんな全身を着込んで暑くないのか・・?」
「暑いわよ・・でもこの町は荒れてるだけじゃないの、治安も悪いのよ
女の私だけで外に出る時はこうでもしないと危ないから」
「そうか・・、」
「そうだったな・・ここではお前はあの技は使えないんだったな・・」
「そうね でも向こうでは体は動かしてたから
護身術くらいならここでもいけると思うわ 反射神経はここでもいいのよ」
「そういうものか」
・・・
そのまま考え事を話しながら歩いていると
「(ドン!)」
「うわ」
通りで突然すれ違いざまにリズの方にフラリとぶつかってきた、
側頭部のスカスカの髪をかき集めて前に垂らして禿げあがった中年の男
さっそく治安の悪いことであった
「おら 気をつけろォ!」
(なによ そっちがぶつかってきたんじゃない・・)
ヤジを飛ばして去っていく禿げた男
「大丈夫か リズ」
「まあ・・ これくらい平気よ」
とゲンゴのほうを見ると
ゲンゴは何かを持っていてその中身を漁っている
「こっちはお前のだな」
そういってゲンゴは
「あれ・・これ私の財布よね」
私の財布をなぜか持っていて私に渡してくる
「ぶつかった時あのハゲに盗られてたからな
取り返しといたぞ」
「え・・そうだったの ありがとう」
(なんだって~ あのハゲえ・・スリだったのか
くっそ~、 頭の中が今日やることでいっぱいで油断してたわ)
「え・・?じゃあそっちは?」
ゲンゴはもう1個別の財布をもっていてガサゴソ漁っていた
「これはあのハゲの財布だ ・・全然持ってないな」
ゲンゴは紙幣やコインらしきものを全て抜き取ったあとに
手慣れた手つきで魔法で財布を切り刻んでから
「ポイ」
道端の茂みに投げ捨てていた
(こ、こいつもスリか・・!!)
「なんだ そんな目で見て
あのハゲも普通に歩いてたら俺もこうはしなかったはずだ
盗ったから盗られたんだ それだけだ」
「ふうん」
悪びれもしないゲンゴ
(まあ私も全然責める気はなかったけどね
下手したらもう私今日なにもできなくなってたし)
「これはキレイだったから刻まずにとっておいたぞ」
「あっ・・それは」
ゲンゴが持っていたのは「オリジン」のアカウントカードであった
この世界でオリジンをする人間ならだれでも発行して持っているカード
つまりほぼすべての人間がもっているカードだった
「ひょい」
ゲンゴはそれを戦利品として羽織の懐にしまい込む
(盗った・・!)
そして収穫したお金は
自分では額が分からないので全てリズにまとめて渡す
「少ないがいいものを食うくらいはたぶんあるぞ
朝はあのまずいやつしか食べてなかっただろう これでさっそくいいものを食うぞ」
・・・・・
「いらっしゃい・・!」
その後 私たちは
食料品を売っているこの街では割とマシな部類の中流層のお店に入って
「おお これがうまそうだな 買うぞ」
ゲンゴは特に値札とか見ていない
他にも
「見たことがない」
っていうだけで勝手に私の買い物かごの中に入れたりしていた
「あっ・・!」
「(これはちょっと高いけど・・ まあいいかスリのやつだし)」
私もちょっと食べてみたいかも、と思ったものを手に取って
買い物かごに入れていく
・・・
スリの全財産を使って
その場で食べれるような果物や加工食品を買い漁って
道端の木陰で昼ごはんとしてそれを食べる
(モッチャモッチャ)
「なんだ こっちの果物はあんまりうまくなかったな これは騙されたな」
騙されたといいながら小っちゃい体でやたら食うゲンゴ
「(ちっちゃくなったのになあ・・明らかにあのお腹以上の量だよ)」
・・・
結局その一度の買い物でスリの財産は全てゲンゴにてきとうに使い切られて
私とゲンゴのお腹の中に消えたのであった
(しかしこの金銭感覚は危険ね・・今だけだろうけど
この金銭感覚が続いたら私もすぐ破滅してしまうわ
ゲンゴがついてきたときは気を付けないと・・)
・・・・
・・・
リズが仕事に行く時にいつも通っている、
アナザス地区の旧市街の橋に差し掛かる
そこからは川があるので急に景観が晴れて
遠くにある「通信都市アナザスフリード」の
オリジンの建物を模倣した段々になっている歪なビルのような塔がよく見える
はるか離れた場所の通信都市の超巨大建造物
何十万個もの虫の複眼のような窓がびっちり並んである空間の光の中で
一帯が消えているエリアがあって
その辺りがあの時爆発したのだろうか
今は爆発事故からの急ピッチの復興作業をしているっていう話だった
でも建物の見た目の姿にはもう傷は呑み込んだ後で
もうあんまり変化はないように見えた
ビルの建造物群が巨大すぎるからだろうか
・・・
その異様な姿をした通信都市を私の肩から眺めていたゲンゴ
(・・・)
「すごい建物だな・・、
周りの土の栄養を全部吸い取って自分だけ大きく育つ植物みたいだ
景観がやたら周りと浮いてないか・・?
この町はしょぼいし荒れているのに あそこは随分と景気がいいんだな」
「そうね・・あの辺りだけは最新の技術で発展してるのよ
たしかシンギュラリティ・・だったかなあ
人の知識を超えた先の技術が使われてるって」
「なんだそれは」
「・・、私も正直よくわかんない
でもとにかくそういうすごい技術ができたんだって
それでこことは格差があるのよ
選ばれて登録された人間じゃないとあの都市には入れないの
貧民街の私じゃ、あそこに入ることもできないわ
もしかしたらほんとに浮いてるのかもね
私が生きる場所とは別世界のようなものなのよ」
「そうなのか? 見える場所ならすぐ飛んでいけそうなものだがな」
「・・・」
(・・それはさ、ゲンゴには羽があるからだよ)
少しだけその自由さが羨ましいなと思った
「・・行きたいなら 俺が連れて行ってやるぞ
大都市の方が分かることも多いかもしれないしな
俺の術を使えばあの中にだって、お前も簡単に入れるだろう」
(・・・)
「ふーん・・
でも今はそこに行きたいわけじゃないから 気にしないで」
「そうか」
・・・・
・・・
そんなこんなで寄り道をしてしまったものの
今日私が来ようと思っていた目的の場所にようやくやってくる
「ここはなんだ?」
「ここはインターネットカフェよ」
「よくわからん」
「いいから入るわよ」
街の建物の一角にあるインターネットカフェだが全然オシャレな感じではない
一応は電子通信設備を取り扱っているので
周りの建物と比べれば見た目はいい感じそうには見えるけど
こんなところにある電子設備はどれもどこかから流れてきたお古の旧式だし
中に入ったせまい廊下はショートしそうな剥き出しの配線だらけであり
寂れていて個室のわりに利用料は安めだが客層も最悪だ
普段は利用料金が発生してしまうため仕事部屋でオリジンをしているうちは
リズはまずここに来ることはない
だけど時たまに小規模な大会とかがあって そのとき利用したりしていた
どの場所でも例外なく絶大な人気があり
集客が見込める「オリジン」ができる環境だけはバッチリ整っていて
営業している日はここで利用ができる
カフェの利用料金は今日は発生してしまうけど・・
まあ久しぶりだしいいよね
私はまっすぐに受付を済ませ
機械の起動キーにもなっている札のついた小さい鍵を受け取って
仕切りの付いた指定の狭い個室部屋に入っていく
(わあ・・)
そこには狭いが奥行にはスペースが若干あり
その部屋の突き当りの無造作な配線の机に置かれた一台のパソコンマシン画面と
ひとつの座椅子、それとは別に
壁にかけられたオリジンの専用コントローラーがいくつかあって
ゲーム専用のモニターではないので完ぺきとはいえないが
心ゆくまでオリジンに打ち込める環境には一応なっていた
(どうしよう 前はいつもやってたはずなんだけど
やっぱ仕事じゃないってことになると別腹でテンションが上がってくるわ)
「(ブイン・・!)」
オリジンのゲーム画面をロックを解除されたマシンから起動する
リズは専用コントローラーを手にもつ
「うん・・しっくりくるわあ」
(やっぱこの感触よね・・!)
でもなんかいつもよりすごく感覚が馴染んでいる気がする
いいコントローラーを使っているんだろうか
仕事のやつと見た目同じなんだけどなあ
(いいなあ ご飯を我慢してお金を貯めれたら専用で買おうかなあ・・)
リズがこの世界で十分に身体がまだ発育ができていないのは
そういうところがあるからかもしれない
・・・
その時たぶん離れたどこかのカフェの個室で
壁に頭をガンガン擦りぶつけたような騒がしい音がしたかと思うと
「ガアン!!あがあああ!」ガンゴンゴン
「ああ?!音がうるせーぞお!オラア!!」「静かにしろろあああ!!」
とか聞こえてきた
私の所に向けてじゃないけどね
分かってはいたけど まあひどい客層
動物園以下よ
ゲンゴは部屋に入って私の肩からは降りていたけど
ちょうど寝転がれるような枕のついたクッションのスペースにいて
「そういえばここは部屋で寝れるようにもなってるんだな
寝るやつがいるから音を出しちゃいけないのか?」
って聞いてきたけど
「ああー、そういう人も少しはいると思うけど ここは違うのよ
ここに来る人はだいたいみんなオリジンをしにくるのよ
自分は音をガンガン流すくせに
他の人の音がなってると本気で集中できない人がいてよく暴れるの
それでもって負けたら腹いせにまた暴れたりとか
オリジンのプレイヤーってみんな本気すぎて
民度っていうかモラルが異常に低い人が多いのよね~
やになっちゃうわよね」
「・・・お前も負けたら暴れるのか?」
「やあねえ 私は別に負けたからって暴れたりとかはしないわよ
まあ 八つ当たりくらいはするかもしれないけど・・」
「ほう・・そうか」
(あっ・・!)
なんとなくゲンゴが私から若干距離を取った様な気がする
一体どうして
・・・
「さて」
リズは財布からオリジンのリズの個別アカウントのカードを取り出す
そしてオンラインにしていつも仕事でつかっていたリーグにアクセスする
((ワールド下級リーグ))と表示されている
「シャリン・・」
ここはお金をかけて戦闘を行えるリーグの中で入場するのに
入場料が一番安い設定なのだ
そのひどいプレイヤー層から追放リーグとも言われていて
一番しけたリーグともいえる
(だけどそれは私にはしょうがないことよ・・)
組織の下級ランク相当の能力しかないリズでも
汚れた泥の中から貝殻を拾い集める様にして安定して勝ちを拾えるのは
このリーグだけなのだ
実はその下にワールド初級リーグっていうのもあるけど
ここは健全な初心者用なので
ある程度試合を重ねると入れなくなる もちろん私はもう入れない
・・
「ピロリン」
見慣れた下級リーグのフリーのロビーをうろつく
ここはまだロビーなのでお金をかけている場所ではない
自由にプレイヤー同士の交流や対戦や練習ができたりする
「カチャカチャ・・」ピロリン
(今日は登録する名前を変えておくか・・
あれ、けっこう情報を伏せれる・・前はこんな仕様だったかしら、
ここは外部のお店だし仕様が違うのかも
まあいいか
アカウントの情報も伏せれる部分は伏せておこう)
たぶんリコや仕事で一緒になるやつらもどこかにいるだろう
万が一鉢合わせすると後で説明がめんどくさい
「「イヴ」・・っと」(ターン!)
ここでの今日のオリジンのエントリー登録名はそれでいくことにした
・・
2人用の練習モードのところで少し遊ぶことにする
というのも
「これはなんだ?」
(ガッチャ、ガガッチャ・・)
(うわあ)
置いてあった別のオリジン用コントローラーをいじる机の上のゲンゴ
人形の体が小さいせいで指でボタンを押すことができていない
「ちょっと壊さないでよ 弁償なんかできないわよ」
「これはね こうやるの 優しく扱うのよ」
「おお」
羽毛で包まれたゲンゴの腕をリズの指でつまんで
画面のカーソルを合わせて決定Pコマンドのところを
押してあげると画面が次の画面に変わった
ステージも自動で選ばれたオリジンのキャラ同士で対戦できるようになった
(・・・)
「画面の中に別の世界がありやがる・・」
「それがバーチャル(仮想)ゲームよ」
・・
そこは忘れられたオリジンの何処かの荒野の荒れ地であり
その果てしない異色の空には原理は不明だけど
謎の力の元素を含んだ突飛な形をした巨大岩の欠片たちが
常にとてもゆっくり流れていっている
見知らぬ惑星の影は遥か彼方にあって
不自然に透き通る黄色めいた夕闇の色をした空に浮く、
巨岩の欠片たちの向こうの側に見えるもの
一見それは星の川の集まりに見えるがそれらは星ではなく
全部様々な形をした飛べるタイプの虫などの
オリジンの特異な生態系の生き物たちの群れでできた行列であり
荒れた地上で発生して湧き出した大きな力の流れを感知して
その列は不規則に流れを変えてゆく
・・
「なんだ こいつら向かい合ってるぞ」
(完全にゲンゴはゲーム初心者のようね・・)
でも本当に初めてオリジンを見たような初心者の人は
その異形の化け物だらけで狂気じみたゲームの世界観に
本能で忌避感をおぼえてしまうような人もいる
でも不思議なことに小さな子供だけは
オリジンを見てもそれを全く怖がらない
だから小さい時からオリジンに触れていた私には
その感覚はよくわからない
ゲンゴの場合もどうもそういうことはなさそうで
普通に遊びのゲームとして順応しているようだった
「これでね コマンドを使ってここでお互いが戦い合うの」
リズは適当に選ばれたキャラの適当な遠距離攻撃を発動する
「(バシイ~!)」
「オウチ!」
ゲンゴ側のキャラクターがその飛んできた攻撃に当たって叫び声をあげる
それでゲンゴがもっていたコントローラーが
「ビビビビビ・・!」
衝撃機能で震える
「うおっ!」
ダイレクトに震えるミニゲンゴ
(おっと いけないわ衝撃機能なんて操作の邪魔になるだけだから
設定から消しさらないとね 仕事では設定を完璧にしていたから忘れていたわ)
・・・
他にもいろいろとリズにとってはよくない設定が盛り込まれていたので
消し去って最適化させていく
(ゲーム廃人用、それもイヴ特化の超ピーキー仕様になる)
これは帰る時には設定は戻さないといけないんだ
次に利用する人がピーキーすぎてメニューの操作すらできなくなってしまうため
以前戻すのを忘れてカフェを出禁になりかけて
仕事場でもリズは怒られたことがあったのだった
・・・
「おお すごいなこれは」
ゲンゴが適当に見つけたボタンを押してゲンゴが選んだ怪人キャラクターが
盆踊りを踊るようなめちゃくちゃな挙動をする
(ある意味すごいけどね)
そのゲンゴのキャラクターからときどき流れ弾が飛んでくる
すると
(げえ!)
「ガッシイ!」
盆踊りを踊っていたゲンゴのキャラが突如理不尽にワープしてきて
リズに適当に自動で選ばれた怪人を掴み上げて ぶん投げてきたのであった
(なにい~~ この私に初心者がそれを・・
偶然ぽいけど・・
なんだろう やっぱ投げが得意なんだろうか いやな記憶ぅ~・・)
「動き自体にはめちゃくちゃだが
やけにリアルな投げ技の挙動だ・・ オリジン、か・・」
ゲンゴはそう呟いていた
・・・
その後は私も気を引き締めて
またたまに盆踊りを始めたゲンゴのそれを防御したり
カウンターの最適なタイミングを計ったりしていた
( )ピンウィン
練習モードなので攻撃はいくら食らっても
減ったHPは一定時間で不思議な力で再生してすぐ元通りだ
「「ヴォオオ!」」ドゴオオン!
「お、なんだこりゃ 周りが吹き飛んだぞ」
「オリジンの対戦は相手だけじゃなくてそのステージのものはほぼ壊せるのよ
それで崩壊したエネルギーを吸収してキャラの力をあげたりとかもできるわ」
「おお じゃあ全部壊せば無敵じゃねえか」
「そうなんだけどそうやって楽して力を上げようとすると
暴走ゲージっていうのがあってそれが溜まって
怪人の耐性が暴走して操作がきかなくなっちゃうから
際限なくっていうのはなかなかできないようになってるのよね」
「む そうなのか」
またちょっと戦う
ゲンゴの操作は予期はできないので
まあまあ練習モードとしてはいい練習になる
「(あれ・・やっぱり調子いいわ こんなにしっくりくるなんて)」
・・・
私がちょっと感動していると
「そういえばリズ」
「なに?」
「なんでこいつらはみんな変な装甲を付けてるんだ?」
(オリジンのキャラたちのことね
そういえばそうね 私はあんまりにも幼少からやってるせいで
最初からそういうものだと思って とくに何の疑問も持ってなかったわね)
私たちが操作しているキャラたちは
どれもこれも奇抜な姿をしている
「それは・・このゲームの世界観の設定かしらね
滅んだ世界の環境で生きていくには
そういう身を守る防護が必要だったみたいな設定があった気がするわ
ほらオリジンの世界って秩序も崩壊してるから
例えば指先の力ひとつだけで人が死んじゃったら色々と成り立たないでしょ
自分だって危ないし・・
だから身を守りながらそういう自分の活動できるだけの秩序を
自分の内側に維持できる超技術の装置が必要だったのよ
それがみんなが付けてるそういう装甲とかで
他にも外界で身に余るような過剰な力にあてられたときの暴走を
緩和する役割もあるわ
外の世界の環境にはあの怪人たちでさえ
そのままでは完全には耐え切れないの
だからオリジンのそんな環境でも生きていける
虫たちの強い甲殻の仕組みを利用しているのよ
野蛮な怪人はそういう虫たちから直接
ちょうどいい殻を剥ぎ取って装備したりもしてるけど・・」
(・・・)
「やたらと生きづらそうな世界だな・・
じゃあなんでこいつらの世界はそうなって滅んだんだ?」
(え・・・)
(舞台設定だもの、そういうもの・・としか言いようがないわよね
でも・・・)
「・・なんで・・滅んだのかしらね
そういえばそこは設定がなかった気がするわ
元々の原因は天界で神様に近かったっていわれてた超常の存在を
オリジンの怪人たちの先祖が地獄に落として追い出して
世界の秩序がなくなったから・・
なんだけど
そうしないと奪った技術で過去のオリジンの超文明が発展しなかったから
直接の原因はそれからは後のことなのよね
オリジンの世界は地上の文明が滅んでからだいぶ年月が経って
人々の記憶が忘れ去られた後の世界の話だって
あんまり気にしたことがなかったわ」
「そうなんだな・・ かつて天界にいた存在・・、それに地獄、か 」
・・・・
その後もちょっとオリジンの設定上の話を
興味本位に補足とかなんだかしながらゲームをする
「オリジンのキャラクター同士は
一部の隠しコードの怪人キャラ以外は
解放すればみんな選んで戦えるんだけど
2つに分かれた対立派閥みたいなものがあって
天空勢と地上勢っていうんだけど
今私たちが選んでるのはどっちも地上勢のキャラクターね
地上は常に荒れてるから虫の殻の比重が多い重装備なことが多いわ
翼が生えてるのは天空勢が多いわね
地上勢は安定した天空島を手に入れるためによく侵略をしていくし
天空の勢力もより良い地上の資源を得るために
もう地上勢が占拠しているようないい採取場所にも
ガンガン常に攻め入ってるしで
お互いすごく仲が悪くていがみ合ってるのよね
ただどっちもどっちで
もれなくとてもまともじゃない凶悪な性格をしてて
世界を戦いで荒らして回ってる者同士だから
根は似た者同士なんだと思うけどね」
「ほーん なるほどなあ」
ほんとに分かってるのかはよく分かんないような反応
・・でもそろそろ目が画面に慣れてきたし次に進もうかな
「じゃあそろそろ始めるからゲンゴはじっとして見ててね」
「なに」
練習モードを切り上げて
ゲンゴに持たせておくとコントローラーを破壊しそうなので
ひょーいと上に持ち上げて没収する
コントローラーを取り上げられてゲンゴは
ちょっと不満気な様子だったけど その後は黙って画面をみていた
・・・
・・
「これが イヴよ」
アカウントを掛け金を設定できるレートに繋いでから賞金リーグに移って
私はいつもの奇麗でかっこいいその女悪魔を選択する
「これは・・」
「お前に見た あの時の腕と同じような腕だ・・」
選択からの決定Pボタンを押すと
イヴの肩から腕についた装甲と引き締まった背中の機械化した両翼から
邪悪な破壊エネルギーがほとばしっていた
「私はね 昔からずっとこのイヴ一筋だったの・・
あの腕はここでは「破滅の右腕」と呼ばれているわ
ちなみにイヴは天空勢のキャラクターよ」
(・・!)
「どういうことだ・・?オリジンっていってたな
向こう世界ではお前がそのイヴだっていうことなのか?」
「それは違うわ 私は私よ それにイヴは確かに別にいたもの 」
「そうか・・だがやはりこのオリジンになにか関係性がありそうだな」
もしかしてゲンゴと同じ技を持ったキャラもいないかなって
探してみたりもしたけど
そういう似たような技をもったキャラクターは見当たらなかったのだった
でも確かにあれはオリジンの力の波動だったんだけどなあ
隠しキャラとか他のコマンドで解放されるような技とかなかったかしら・・
少し考えこむ
・・・
「ピコン・・!」
(おっ・・!)
そうこうしている間に最初の対戦が成立したことを知らせる音が鳴る
私は意識を今は対戦に切り替える
「お あの向かい合った画面だな」
私の操作するイヴと対戦相手のキャラクターが
火花を散らしながら画面で向かい合う
「「貴方をブチ〇すわ・・!」」
戦闘状態のイヴのボイスが聞こえてくる
「おい、なんだ口が悪いぞこいつ」
ゲームのキャラの言動にいちいち反応する鳥ゲンゴ
野次を飛ばしている
ゲームを今までしたことなかったみたいだから
それはしょうがないかもだけど
「イヴって戦闘するときはそういうキャラなのよ・・
っていうか基本的にオリジンのキャラってみんな過激なのよね・・
でもイヴのこのボイスで喜んでる人も界隈の一部にいるわ」
「はあ・・へんなやつらだなあ」
何やともあれ
「うふふ・・」
(よおし! 久しぶりよ! 気合をいれないとね!)
「(Fight!!)」
「(カカカカカカカッッ!!!)」
気合をいれて開幕からいきなりコントローラーのボタンを超速度で捌いていく私
コマンド入力を受けてとんでもない挙動で動き出すイヴ
「うお」
私の尋常じゃない指捌きを見たゲンゴが若干戸惑っているような声をだす
「ズギャアアアアア!!」
「うぼあああ」
あっという間に吹き飛ぶ対戦相手
・・・・
「イヴ player WIN!!」
・・・・
「なんだ今のは すぐ終わったぞ」
「・・!」
(これは・・久しぶりで気合が入ってたのもあるけど
以前より明らかにスムーズになってるわ・・!
しかもまだ限界じゃないのもわかる どういうこと・・
それに実戦の感触で分かったけどコントローラー自体は
やっぱり仕事場にあるのと変わらないわ・・)
「うーん なんか調子がいいみたいなのよ」
リズは指をよく馴染むコントローラーから少し離してワキワキと動かす
「そういうものなのか・・? あれだけで稼げたのか?」
「そうよ ほら」
リズの画面のアカウントのところの数字部分を指さすと
そこに勝負に勝ったことで得た賞金額がちょっとだけ増えていくところだった
「イヴ player 1連勝中 対戦求ム」
そう画面がリーグの準備画面に切り替わって点滅している
「こうやってまた対戦相手と戦って連勝を重ねて
徐々に獲得賞金を増やしていくわけ」
「なるほどな」
「とりあえずこのインターネットカフェの利用料金分はペイしたいわね」
「そうか なにかメニューを頼んでいいか?」
(そうか って私の話聞いてないでしょゲンゴ)
そうここは一応はカフェを名乗っているお店
ゲンゴは部屋を漁っていて見つけたのか
いつの間にか食べ物のメニューの一覧を持っている
「だめよ さっきご飯食べたでしょ我慢して」
「だめか・・」
「だめ」
・・・・
「カチャカチャ・・」
リズのコントローラーをひたすらにいじる音が響く
(やっぱり調子がいいわ・・楽しい・・)
その後 リズへの挑戦者たちが次々と現れるが
元々このリーグではリズは
ストレス解消に大味なプレイをして逆に対策されて負けることも多々あったものの
それでも普通のプレイヤー相手ならわりと安定して勝てていたけど
「イヴ player 21連勝中 対戦求ム」
今回はまったく危なげなく勝てるレベルで安定していた
(リーグは・・ここで合ってるわよね
対戦相手の質が極端に下がってるわけでもない
手荒な手を使わなくても戦っていける
やっぱり私が強くなってる・・わね)
もしかしたらリズ・クリスフォードとして向こうでいろいろ修練したり
鳴り虫たちの抜け殻を量産して器用さをあげたり
コマンド操作をして実戦的に体を動かして戦っていたことが
こっちでも私の脳の中に軌跡として刻まれているのかもしれない
(魔法は使えなかったけど・・
私が元からこっちで培っていて使えていたスキルというか
ゲームの技能は引き継がれているのかもしれないわ)
「ピコン!」
(お 次の対戦相手だわ)
「んん?」
リズは少し顔をしかめる
これは・・「直接対戦要求」
今まであった襲撃の流れのこととかがあって少し身構えてしまうが
本来はオリジンの標準的対戦申し込み用の機能である
「・・!」
(それにこのアカウントは・・ボルンのものだわ)
「「ボルン・J・ジョイガー」」
それはリズの仕事部屋を共有する同業者というか
リズが襲撃を受けて白い光によって向こうの世界に意識が飛ぶ前に
リズにしょっちゅう連勝で得たリズの賞金を回収して
リズの取り分まで盗っていくという
ひどい嫌がらせをしてきた因縁ある男のアカウントからの催促だった




