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瞳を見るとBURST HEAT! VS世紀末格闘少女リズと不思議の格ゲー魔法世界  作者: 綾町うずら
あんまり目覚めない力と来たる天の災い編
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第6話 変質した目覚め



 ・・・・


「 その子供を放っておいてはならない

なぜならその子供はこの世界を滅ぼしてしまうのだから 」


・・



その少女は眠っていたのだった


生まれつき何故か体が弱く

いつも祈るようにして

天にいる神様にいつ見られても恥ずかしくないように

奇麗な姿勢をして眠っていたのだった


そんな少女をその淡い目は外からぼんやりと眺める様に見ている



だけど気が付いたんだ


その少女は「私」であったことに




 ・・・

 私の頭の中に星が流れていくような気がする

それはフワフワとした感覚


・・・


多分けっこう大変な目にあったはずなのに私は呑気な夢の中にいるみたいだった


醒めない夢の中でなぜか思い返していた リズが幼かった昔の日のこと


月夜と星の空に

漆黒の戦闘コート姿の影の怪人と

私が操作するイヴで激しく戦っていたあの日の場面


そういえばあの時の場面は

映像がなぜか色鮮やかですごく鮮明だったような気がする

あの場所にいた怪人たちの姿も今とは少し雰囲気が違っていたような・・

昔のことで記憶がクシャクシャとして変質しているのかもしれない



どうして今思い出したのだろう


私が黒いモンスター達に襲われて囲まれて

今までの目の前の世界全部が爆発したようになったあの時

あの影のようだったオリジンの怪人から

一瞬だけあの時の少年の

星をちりばめたような黄金色の目の光を覗いた気がしたからだろうか


やがて私の目は覚めていく


・・・・

・・



今、その目は覚めて ・・



「あれ・・・・」


(ここは・・)


ベッドの上・・?

まだ暗い・・ そこで感じとったのは

月明りと落ち着いてしっとりとしたオレンジ色の照明の光


え・・なにここ 変な明かり・・?ベッド?


だけど全然それは私の記憶の中にあるようなベッドじゃなかった

私にとってのベッドと言えばあのボロボロになった簡易ベッド

あのカチコチの堅い施設のベッドじゃない


(ポフ・・)

え、白くてふわふわ・・

しかも大きくて広い・・・3人くらいは寝転がれそう


その時 わたしは頭の奥に走っている鈍い痛みに気が付く

さっきから痛みが走るたびに

ズキリズキリとして新しい鮮明な記憶が増えていっているような


それは流れこむのではなく 

元から私の中に今まで意識していなかった記憶があって

それが泉の奥から湧き出してくるような


え・・わたし?


わたし・・じゃない?


わたしの記憶に何かが上書きされていく

なんか怖い・・・


でも自然と受け入れられるようにそれは止めることができない

なすすべもないまま おかしな記憶と鈍い痛みは流れていく


・・

体は寝ころがっていたので起き上がって私の上半身をみる


「ん?・・・」


全然ふだんとは違うきれいな服・・まあそれはいいんだけど

いいことにしよう


そうじゃなくて

暗くてまだ全然みれないけど

わたしの体自体が感覚的に前より少し大きいような・・


(スッ・・)

今いるベッドから降りることにする

いつもと違う広い奇麗な部屋のことは

いつの間のにもう違和感は感じなくなっていた


でも

(やっぱり視点がいつもより高い・・!)


ベッドの近くには大きな鏡がついた台があったので 

裸足で近づいて行ってそこをを覗きこむ



そこにうつるわたしの顔には


(・・・)

顔がなかった・・


ということはなく 部屋は暗かったけど 私の、リズの顔が映り込んでいた


ただやっぱり、


「(なんか肉付きがいい気がするわ・・)」


背が前よりも高くなってる

肌の張りが良くて 髪も栄養が行き届いてつややかで整っているかんじ


肉付きがいいといっても、でっぷり太っているわけじゃない 

いわゆる恵体というやつだけどスリム


元々施設では痩せ気味だったけど 

そこそこ容姿の造形というかパーツとかは揃っていた方だった、と思う だけど

ここでは全てが念入りに奇麗に整えてあって

その雰囲気はまるで きらびやかな貴族の令嬢のよう・・


(あれ・・)

辺りが薄暗くてわかりにくかったけど私の目の色だけ若干違う


少し目元の近くに指先をあてる

目のラインは普段よりもクッキリとシュッと整っていたけど

それは前の感じとおおむね変わっていなかった


でも

その目の色だけが

前は確かに生体実験の影響で発色した淡いピンク色だったんだけど

今はその瞳に淡い紫色も混じっていてなんだか妖しい感じ・・


ていうか・・・



「あれから私どうなっちゃったんだろう・・」


私が暮らしていた旧市街に

突然現れて襲ってきたあの黒い姿をした怪物たち

逆向きに歪んだ気持ちの悪い風 

笑顔のまま固まって時間が止まったようになった町の人たち

その後で黒い悪魔みたいな怪物から放たれて私の体を包み込んできた、

あの謎の真っ黒い繭みたいな塊


リズの中でだんだんと蘇るイメージ、記憶たち


あれはたしかに現実にあったもの・・


オリジンのゲーム画面でない現実世界で私の前にパッと現れてやってきた、

オリジンの漆黒の影の怪人・・


(( 今はただの「薄汚い勝負師気取りのガキ」だ ))


ハスラーキッド・・

あの影の怪人はクルードだったの・・?


どういうことなんだろう

オリジンの伝説的なプレイヤーになって

どこかで密かに活躍していたんじゃなかったの・・?


((  ))

あの時 影の怪人に一瞬目を向けられた後

私の胸の中で瞬くように光っていた白い光・・


そして


「リコ・・・」


でも私の隣に今はリコはいない



「「 ズギャアアアアア・・」」


(・・!)

あの都市ごと包み込んで崩壊させたような破滅の光が

ハッと記憶から反芻(はんすう)する


あれに巻き込まれていたらリコやあの町はもう・・、


私がいた世界は・・滅んじゃったの・・?


(・・・)

だけどあれも現実だったなら

私だってもう体ごと全部消し飛んだはずだ

今みたいにただの無傷で動いていられるはずがない


でもあれは・・、私のいた旧市街じゃなくて

何かのよく分からない私の記憶からやってきた別世界であったような気もする

いやもうもしかして一連の流れが全部

夢のような記憶の幻だったのかもしれない


単に私の体に

施設での実験の副作用が最近の体調不良とかが引き金でとうとう現れてしまって

それで見えた幻覚だったとか・・

希望的観測だけど・・



「(それより・・、今の状況は・・)」


・・・

まだ痛む私の頭の意識の中は少しだけぐるぐる回っていた

私の中でズキズキと湧き出しては次々と追加されていく記憶から

今の状況がわかった


はじめ私はあれから何かがあって町から運ばれたか連れ去られて

他の場所で目が覚めたのかと思ったけど、

どうやらそれは違うっていうことに気が付く


・・・・

・・


「私の、もうひとりの私・・?」


そして今立っているこの大きな部屋には今はわたし一人しかいないようだった


私はそれまで体付きをチェックしていた鏡台からは離れていって

おもむろに広い部屋の端の大きな格子(こうし)のついた窓に近づく



・・

「コオオ・・」

窓の外には夜のまだ暗い空があって 

でも夜明けはそう遠くないことがわかる空の感じの色


「  」

その上の方には星空の天の川から枝分かれして尾を引いて

それはまるで空にかける道のように

やけに神秘的で見たこともない長くて青白い光の帯の筋が

空の中心を通っていて


そこからは離れていく流れ星が 1つ、2つ・・3つ・・・え 4つも

なんだか星が多い気がする


その星の流れはずっと尾を引いていて

まるで夜の天井に巨大な怪物の爪痕を付けたように見える


星の夜空はらんらんとしていて騒がしい・・

(珍しいこともあるんだなあ)


・・・


「ここは・・どこなんだろう リコはどうなったんだろう・・」


異常事態ではあるんだけど私は思ったより気分は落ち着いていて

ぼんやりと窓辺で多くの星がながれる夜空をながめる


(あの現れた影の怪人は・・たしか原点?の世界に辿り着けって

言ってたような気がするけど

まさか ここがそうなの・・?)


「全てが始まる前・・?」



どうやら私はここで助かってたみたいだけど


なんか変だし・・


ていうか私に名前がある 記憶が湧いて今思い出した


わたしの名前って本当に仮なのよ 「リズ」ってみんなには呼ばれてたけど


「(L110Z2・・)」

これが私の本当の検体番号の名前 

この番号の羅列が「リズ」って読めるって

誰かが言い出してそれからは「リズ」


検体番号が本当の名前っていっていいのかわからないけど

わたしは以前の組織では

当時発見されてまだ名前もなかった肉眼で見えない七等星以下の星に

名称として無理やりつけられていた仮の記号数字を引用して

それらを管理下の子供たちに順番に当てはめて

そういう番号のコードで管理されていたんだ


だけどここでは


「 私は「リズ・クリスフォード」・・?」


きいたことない いやあるけど

さっき思い出した クリスフォード家・・?


私はこの家の娘・・?いったいどういう・・

混乱する わたしはそんなんじゃないただの施設の人間だったはずで・・


だけど自然に私がそのリズ・クリスフォードだったとわかる

疑問も持ちにくくなってくる


でもそんなことやいろんなことを今考えると頭が熱くなって

チカチカしてショートしそうになる


(頭が、痛い・・)


とりあえず私は頭の熱を冷ますために

今日はさっきの大きなベッドのところに戻って眠ることにした


(  )

意識はまた閉じてゆく


・・・・・


長く時間がたっていた気がする


「コンコン」


わたしの部屋の扉の向こうから

そんなノックの音が遠くから絶え間なく聞こえてくるようになって

わたしは目が覚めた


・・

窓の外はとっくに日が昇り 朝を通り過ぎてすっかり明るくなっていて

夜のときは暗くてわかりにくかったけど 

明るくなってから見渡すと この部屋の広さと奇麗さが際立つ


(あれ、こんなものあったかしら)

そして昨日の夜はなぜか気が付かなかったみたいけど


私が眠っていたベッドの周りには

奇麗な宝石と少しの金の装飾がついた魔除け?みたいな

燭台のようなものが取り付けてあって


それは普通じゃない奇妙な燭台だった

上の方は天秤のようにも見えて

下の方はちょっと樹齢がおかしいことになっていそうな木の根が

分かれて張っているようなデザイン


その古そうな燭台には

宝石や木の根に沿って張り付いてパーツの一部に擬態しているように

「  」

なんだか趣味の悪い見た目、

メガネザルのように大きな2つのクリクリとした不思議な目をつけて

虫みたいな羽を生やしたキューピット妖精のような

見たこともないの姿の生き物がくっついて

金色の小さなおもちゃの弓と矢の筒を持って遊んでいるよう


ちなみにその妖精たちは擬態は全然できていない

ヘンテコなのですぐ姿はわかる


一つ一つのデザインや形は違っていて

木の根のところには普通の自然の動物の姿のミニチュア像も

犬や猫、鳥とか鹿とか象とかもついている、そういう奇妙な燭台がよく見ると

この部屋の隅の方にも分けていくつも置かれていた


それらをざっと見た感じ、仮想の存在と思われる動物は

最初の謎の妖精たちだけであった


謎キューピットや動物たちに囲まれて趣味は悪いけど

よくできてるし貴金属の細部の装飾は見事なもので

奇麗なもんだなあ、とか感心していたんだけど


(ふわあ・・)と燭台に蝋燭の炎の代わりの位置についていた宝石から

ぼんやりオレンジ色の淡い光のようなものが

タンポポの綿毛のように浮かんでいたりして


「(え、なにこれ よく見ると普通の灯りじゃない どうなってるのこれ)」


(しゅっしゅ・・)

手で掴んでみようと思ってチャレンジしてみたけど、やっぱり光はつかめなかった


不思議な光を掴むことは早々にあきらめて

光を放つ奇妙な燭台の奇麗な宝石を

「・・・」(・・・)

じっと観察して見るとそういう石の模様なのかなと思っていたけど

少しだけ亀裂が入っているようだった


・・・

(コンコン・・)

部屋の扉のノックの音が間を置いて続く


そういえばそうだった さっきからノックされてたんだった


すると

声が聞こえてくる


「もうお昼ですよ お体はだいじょうぶですか? リズお嬢様」


・・

わたしはそれが私を普段お世話してくれる女のメイドさんの声だとわかっていた

ローラという名前のこの家のメイドだ


(ていうか、メイドさんまでいるんだね なんなんだろうここは)


「だいじょうぶよ はいってきて ローラ」


すると扉からすぐにそこにやってきたのは

あまり飾らないメイド服に身を包んだ女性の姿


「失礼します 

前日は体調が悪くてそっとしておいてほしいとのことでしたので

朝方は声はかけずにおりました」


(・・・)

私はそのローラというメイドのことを何故かもう知っていて

不思議な親しさまで感じていた


「いいわ・・治ったから」

「はい では食事でも こちらにお持ちしましょうか?」


「いいわ、私がいくから」

「わかりました、ではその前にお着替えの方だけ」


自分の体に手を触れられると ちょっと驚いたけど顔には出さずに

さも当然といった流れで

メイドのローラから服の着替えの手伝いの施しをうける


やり取りをする私の声の調子も今まで通りで自然でいいみたいだ


・・・・


少し記憶は整理される

どうやら私はこの家のあまり体がつよくない娘


意識を集中すると 私の中の記憶はどんどん思い起こされる


(・・私が昔から寝てばっかり人間だとか 

貴族だけど教養を得るのに普通に学園に通っている学生だってこととか

今までここで生活していたことが頭に流れてくる)


そんな記憶を辿っていく


私には他に同じ学園に通う成績優秀な兄がおり


お父さん・・お父様までいて 

地元の領主であり このクリスフォード家の当主をしている

一方お母様は優れた魔法使いで忙しく外国での指導や講演などに回っていて

めったにこのクリスフォード家の屋敷にはいない


(え・・・どういうこと)

なんか貴族の家庭だって知ってたけど

今 魔法使いって・・ 


するとまた頭の中を星のようなものが駆け巡る感覚


「  」

あ、いま納得した


(この今いる場所・・、 違う、全然違うわ )


根本的に世界の常識自体が違う


前の世界とは違った決定的に異質な感覚、

それは「魔法」の存在


さっきの掴もうとした魔除けみたいな変な妖精たちの燭台の

ボウ・・と浮いたような不思議なオレンジの光をもう一度意識してよく見る

(・・・)

それはこの装飾品の宝石に施された魔法による反応光の一種なのだった


この世界には当たり前のように魔法の力が存在していて

その力は人々の日常生活にも深く浸透していた


・・

魔法の力・・みたいな力のことは

私は以前の記憶でも一応・・は知っていた


(でもそれはゲームのオリジンの中での

怪人たちが戦いでバチバチぶつけ合う魔力エネルギーとかの話であって・・


はたしてあれは魔法っていいものなのだろうか

あれは魔というかいろんな力を超生成して

それで直接ぶん殴るみたいな原形の欠片すらないものだから

たぶん全然別ものだと思う)


やや無理やりに思い起こした知識の中でここでの魔法っていうのは

簡単にだけど

自分の体の中に実際に巡り廻っている力の源というか

その力の流れを人の技術の力で加工して内側から外へと解き放って

炎や水や風、様々な超常的な現象を生み出す特別な力、

それをどうやら魔法と呼んでいるようだった

 

・・

そして以前と全然違っていたのは

私の家庭のこともそうだ


特に身よりはなかったはずの私

でも今の私にはお父さんやお母さんや兄まで存在するっていう


施設にいた時は私たちのことを管理してくれる人はいたんだけど

父親や母親という存在は私の中には存在していなかったはず


でも もうその瞬間には私の中に

両方のものが自然に私の血のつながった家族として存在していた


・・・

この世界に魔法が存在していることもすごく気になったけど

部屋で一通りの着替えを終えた私は

私の中にあるとある記憶を一致させる確かな確証を得るために

この屋敷のまずは 私のお父様のいるであろう食卓の間に向かう


普段はいないけれど

今の時間ならかなり遅いけどギリギリ昼食の時間であるため

今行けば会えるかもしれない


私はその場所をもう知っていて 

この広い屋敷の中を迷わずに記憶を頼りにそこに歩いて向かう


・・・・

・・・

私は食事のための(たく)と席の並ぶ、

この家の専用の大きな部屋の間取りの前の

両開きの構造になったかなり大きめな扉に自分でゆっくり手をかけて開ける

・・

(ギィ・・)

扉の大きさのスケールに負けない

目の前に広がる貴族が使うような卓のある広い空間のそこには


「・・お父様」


「・・・リズか 」

「朝方に来なかったから 食事ならもう片付けてしまったぞ 

だがなにか適当に使用人に言いつけて用意をしてもらって食べなさい」


「はい」


扉を開けて入ってきた私にそう声をかけて

中央の卓の一番奥の席に座っていて

白い布で食事を終えたばかりの手の先を静かに拭いていたのが

この家の当主 バーゼス・クリスフォード

私の・・お父さん お父様だ

記憶の意識が完全に一致した


お父様にはひげが生えているけどそれは貴族らしく立派にきれいに整えてあり

体格はそれほど大柄ではないけどがっちりとして威厳のある雰囲気で

髭を生やしているせいでその齢代の男性にしては

少し老けて疲れているように見える


落ち着き払った目つきに深い紫色の瞳、

というか歴代クリスフォード家の家系の人間は

このお父様のような紫色の瞳をしているものなんだけど


私は紫色は確かに 瞳の色には入っているんだけど

鏡で見ると全体的には淡いピンク色の瞳で違うんだよね・・


私の目の色はよそからこの家に嫁いできた、

私の母親であるカルミナ・クリスフォードの持つ赤い瞳の色とも違っていた

・・・



「娘が来た 娘の望むものを与えるように」

「準備いたします」


お父様は魔法使いだ

でも今はそういう感じは一切しない


(・・・)

以前のお父様は・・ 仕事で世界を飛び回るお母様ほど有名ではないけど

魔法使いの一族の名門と名高いらしい、

クリスフォード家の貴族当主としても申し分ない魔法の使い手だったんだ


ただ今はあまり魔法使いとしての調子があまり奮わなくなり

力を落としてしまっていて

最近は滅多にそういう力を人前に見せることはなくなってしまっていた


でも一地方を治める貴族の領主としては今もしっかりと現役であり

この辺りの領民たちには支持され続けている


・・

「  」

お父様は近くにやってきた若い執事風の使用人に一言二言、

簡単にいいつけるとすぐに

(カランカラン)


「旦那様、首都からの書簡が届いたそうです」

「ふむ」

食卓での用は終わったのか、

やってきた私とすれ違っていってすぐに部屋を後にしていった

(スッ・・)

出ていくときも普段から忙しいお父様は淡々として

私の方はあまり見ていなかった


「・・・。」

(・・あまりしゃべらないひとだなあ)


(まあ、わたしも、だけどね・・)


魔法使いとしての力は衰えてしまった今でも

いつも領主としての仕事で忙しく普段は寡黙で冷たい印象もあるお父様

そのことも私の知るバーゼスお父様の人物像と一致した


・・・・

やがてそれほど待たずに

食事の時間に遅れた私に対しても

テキパキと仕事をこなした使用人さんが部屋の奥の影の方から

銀の艶のある蓋のついた料理皿たちをたくさんお盆の上にのせていて

それを手慣れた片手にユラリとやってきて


「お待たせいたしました リズお嬢様」

「ありがとう・・」


(うわあ・・)

そして予感はしていたけど

やはりというか貴族仕様の豪勢な昼食がズラリとでてくる 


「・・・」

(お肉だね・・これ 固形食糧じゃないや・・)

施設にいたころではまずお目にかかれないレベルの高級さに

使用される食材たちは見栄えに栄養バランスまで考慮されていた


でもこれは普通の食事だったんだ

ここのわたしにとっては・・


(ただ 病み上がりには少し多いんじゃないかしら・・

まあ治ったからいいけど)


そして自然にフォークを持つ手

食事のマナーや貴族のしきたりとかも理解していることに気が付く

というよりそれはもう私が元から持っていたように自然な感覚だった


迷わず自然に手には持ったけど 

そのたくさん並んだ料理の何から手をつけるかは迷う


「これは何?」

リズの記憶に新しい、美味しそうなお魚の煮込み料理

その問いに使用人さんがまたテキパキと答えてくれる


「お気に召しましたか?

・・これは旦那様には存じ上げなかったのですが

この地域の伝統的な魔除けの料理です


今日は聖ソウル法典の旧星暦では「大いなる滅びの導き」

「大滅」という

この日を境に 

この世界に潜む悪魔たちが目覚め始める日だと言われています


この時期になると流星など天体現象が活発になるので

昔からよく言い伝えがありますね


星屑(ほしくず)(なみだ)」、オーロラが稀に出る時は「悪魔(あくま)(ころも)」などと呼ばれ

古来から聖ソウル法典の伝承記録にも書き残されていますね


今の夜空の星々は

原初の時代の始まりに悪魔が引き起こした災厄によって生まれたのだとか


あと数年すればこの国も星暦の世紀の節目になりますが

その時に世界に再び「災厄」が訪れる日だと


・・まあ迷信でございますよ

この地方ではただこういった家庭料理を食べて

悪魔を払って健康を祈る祝日になっているだけですね 


悪魔というのは古来より

一見は悪魔とは分からないように人を(あざむ)く姿をしているといいます

病気や悪夢にその姿を変えて人を困らせるのです


ですがこの料理を食べれば

そんな悪い悪魔はすぐに吹き飛びますよ


何年も世界中の海を巡ってから

力をつけてこの地の川に必ず還ってくる由緒ある恵みの地魚です


今日のお嬢様の健康を祈願して用意させていただきました」


「あ、ありがとう・・」

どういう料理なのか少しだけ聞いたつもりだったけど

地元の郷土料理の由来の話まで聞かせてもらった


そういえば私が昨日起きた時 夜空が確かにちょっと光ってた・・ 

「聖ソウル法典」っていうのはこの国にある第一宗教だよね

旧星暦かあ それに宗教行事の風習っていうか

ほんといろいろあるんだなあこの国


(・・・)

悪魔を祓う魔除けの料理だってね

そういえば私の部屋の中にも

いろいろそういう魔法の燭台みたいな器具があったけど

あれにくっついていた弓を持って遊んでいた姿の小さい妖精みたいなのが

この世界の悪魔の姿だったのかしら・・?


いやでも

悪魔は悪魔って一見分からないような姿をしてるってさっき言ってたから

あんなバレバレですぐわかるヘンテコなやつは悪魔じゃない気がする


部屋にあったあの不思議な光の趣味の悪い燭台は

昔から体の弱かった私のためにカルミナお母様が

私の部屋に魔除けの器具として施してくれていたんだと私は思い返していた



(あっ、いけない 今は冷めないうちに料理を食べないと・・)


一見した限りはどれも美味しそうなので


(いいわ まずは目についた好きなものから・・)


・・・

・・

少し遅めの昼食が終わった後は

ふつうに広い屋敷の片隅にあるリズ・クリスフォードの自室に戻ってきていた


(うーん おいしかった・・)

(でもいろいろと考えないといけないことがたくさん・・)


リズはこれからどうしようかとベッドに座って軽く背中を伸ばしていた



(これも なにから手をつけていいのかわからない・・)


「コンコン」

そのとき また私の部屋の前にメイドさんのローラがやってきたようだった


「少しよろしいですか?

お兄様のバゼロ・クリスフォード様が見えています」



「お兄・・さん?」



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