第147話 終幕 あの子に会いに
(ピョンコ、ピョンコ・・)
遊んでいた公園のブランコの場所からは移動して
穴の空いた円のドームの基地のような場所の中の影の内側に
アスラとマギハは一緒に並んでちょこんと座っていて
白い魂のオタマジャクシがそのドームの上でちょこちょこ跳ねていた
ただそのドームの上から見えている広場の先の景色は
本当の学園の広場から見えていた建物群ではない何かの建造物が
どれも崩壊して並んで見えているような異様な世界であった
・・・
(きゅっ・・)
体操座りで傍で並んで座っているマギハとアスラ
そのマギハは少しアスラに寄りかかって
アスラにキュっとしがみついてじっと前の方を見ている
「・・・」
(このまま・・このままずっと・・ でも・・)
そんなマギハを受け入れて
ずっと一緒に寄り添って座っていたアスラ
だけど
そっとアスラにしがみついていた手を離すマギハ
「・・?」
(・・・)
マギハはそこで告白をする
「アスラちゃん・・私ね
本当の名前は・・・、マギハ・ウラピコっていうの・・・」
「・・・?
え・・!マギハちゃんそうだったの へえいいねえ、それ・・!」
「・・・、それだけ・・?みんなに隠してたんだよ・・?
周りの人にもわたしの本当の名前は絶対言っちゃいけないって」
「え・・?」
「ウラピコって言ったら・・
大昔のすっごく怖い冥王の魔法使いの名前なんだよ・・?」
「あっ・・、そういえば
リズに・・学園に連れて行ってもらった時にちょっと聞いたことがある・・
気がする」
「・・・、」
「あっ・・!だからマギハちゃんは力があるっていってたの?
やっぱりすごいや!冥王さんの力だったんだ・・!」
「・・、アスラちゃんは私のこと、怖くない・・?」
「え・・?なんで?
マギハちゃんは怖くないよ
だってマギハちゃんはマギハちゃんでしょ・・?」
「うん・・・、でも・・」
「(・・・)」
すると
「(はっし)」
今度はアスラからマギハちゃんに向かって
しがみついてキュっとくっついたのだった
「だいじょうぶだよ マギハちゃんはマギハちゃんなんだよ・・ 」
「アスラちゃん・・」
(・・、アスラちゃん・・やっぱりこのままずっと・・
ずっとここでこうしていたい・・ )
その時
((( )))
「・・!」
一瞬ピクリとなるマギハ
(・・・)
「 ・・行かなきゃ 」
「え・・?」
マギハが少し微笑んでその場からスッと立ちあがる
ちょっとびっくりしてアスラの手が解ける
「ありがとう・・アスラちゃん
でも私・・いかないといけないから 」
それまで一緒にいた丸いドームの中から外に出るマギハ
「え・・、どこいくの マギハちゃん・・!」
慌てて立ち上がってマギハの後を追うアスラ
「 」
マギハが振り返る
そのマギハの後ろには広場にあった女神の像が立っていた
「 メロが・・呼んでるの
だから・・行かないといけないの」
「メロ・・?」
「 メロはね・・とても強いのに本当はすごく寂しがり屋なの
しっかり私が付いていてあげないと 」
(・・・)
マギハは心の空を静かに見上げている
「 」
「!」
そのマギハの姿はだんだん光の粒子が出て透明になっていっていた
「ま、マギハちゃん・・?! どうしたのお・・!」
「アスラちゃん、ここはアスラちゃんの世界だから
私の姿は魔法の姿なんだよ?」
「え・・、そうなんだ・・
あっ!じゃあマギハちゃん・・!」
「・・なあに?」
辺りを慌てて見回すアスラ
「あ、あれ・・
マギハちゃんの本、返そうと思ったんだけどないや・・
あっ、そういえば
マギハちゃん家に返しに行ったんだけど
置いていっちゃったんだった・・、
でもまだマギハちゃんに返せてないっていうか・・」
「ふふ、なにそれアスラちゃん
その本、家のどこに置いてきたの?」
「マギハちゃんのおじさんの部屋・・」
「あれは・・シュバルツの本だから
その部屋に置いたならもう返したことにしていいよ?
変なのアスラちゃん 」
「あふう・・、そうだよね うん
ならよかったあ 返せて・・ 」
「・・・」
マギハの脳裏に流れたいつかの日の記憶
(( マギハちゃん・・!あたしね
大会に出るんだよ・・!
絶対すごく活躍するからマギハちゃん見にきて・・! ))
( )
その後 思ったような活躍ができなくて
マギハの前で体操座りでしょんぼりとしていたアスラ
「 アスラちゃん 私が貸してあげた本
アスラちゃんの力になった・・?
私・・アスラちゃんに出会ってアスラちゃんに何かしてあげられた・・? 」
「え・・、うん
でも本だけじゃないよ いっぱいもらったの
マギハちゃんのおかげでいっぱいいろんなことを知れて・・
それであたし強くなれたの
リズに・・強くなったねって、言ってもらえたんだ・・」
「 そっかあ・・、よかった・・
よかったね・・、アスラちゃん 」
( 私ね・・ほんとはアスラちゃんのこと、連れていくために来たの・・
でも・・ )
「 ・・アスラちゃん?
アスラちゃんはゆっくり休まないといけないけど
あんまりゆっくりしすぎたらダメだよ・・?
アスラちゃんが目が覚めないと
みんな心配しちゃうから・・ 」
「え・・ う、うん・・ 」
よくわからずにその言葉に答えるアスラ
「 じゃあね アスラちゃん 」
それはいつもの別れの言葉
だけど
なにか向こうを向いたマギハちゃんから感じ取る雰囲気が
いつもと違っていて
なぜかたまらなく焦る気持ちが募ってくる
「あっ・・、あ・・まってえ・・、マギハちゃん・・!」
((ピシュウ・・))
一瞬だけ光になって後ろの奇麗な女神の像と透けて
すごく奇麗なマギハちゃんは振り向いたようになるけど
そのまま姿は消えていく
( あっ・・、ああ・・、
マギハちゃん、あたしまだ何にも返せてない
まだ言ってないのに・・! )
( マギハちゃん・・! )
なぜか目から涙がいっぱい出てきて
アスラはその消えていったマギハちゃんの姿に
ずっとずっと言いたかったその言葉を叫んでいたのだった
・・・・
風車の家 アスラの部屋
((ピシュン・・))
一緒に触れていた眠るアスラとマギハのおでこが離れていって
魔法の光が消える
「・・・」
私は魔法が嫌いだった
私が今まで見てきた魔法の炎たちは
どれもとても怖くて嫌な音ばかりだったから
でもあの子の炎は違った
(( メロ・・ わたし、あの子みたいに
私も魔法を使ってみたい 魔法を知りたいの
魔法ができるようになって またあの子に会いに行きたいの・・ ))
(・・・)
(( ・・そうか マギハ それはとてもよいことだ
マギハのその心に生まれたその気持ちはとても大事な物だ ))
いつもの書斎でほんの少しだけ光の浮いた机のゆったりとした座椅子で
静かに本を読んでいたその人は
何も言わずに優しく私に小さな魔法の基礎を教えてくれた
( 私の目が覚めたのは
メロのせいでもメロがずっと怖がっていた運命の力のせいでもないの
本当はただ 私自身が魔法の力を望んだから
そう願ったからなんだ・・
私は後悔してない
でも・・ )
マギハが閉じていた瞼をゆっくりと開く
そのマギハの姿は粒子に包まれて
儚く光りながら消えていっていた
「・・さよなら アスラちゃん」
マギハはアスラに背を向けて離れ
その赤く輝く星の光の見える夕暮れの窓の方へと歩いていく
その時
「 うう・・、 ふうう・・、 まぎ・・は・・ちゃん・・・ 」
「!」
驚いて
その声が聞こえてきた方をハっと振り返るマギハ
だけどアスラの意識は眠っていて
その目は瞑ったまま
だけど
その目からいっぱい涙を流していて
意識は眠ったまま
アスラは消えていくマギハに向かって声をかけていたのだった
「 ありが・・、とう・・・ 」
「・・・!」
するとマギハちゃんは最後にアスラににっこり微笑んで
「 うん・・、 」
「 アスラちゃん・・ 」
幼い少女の姿は
小さな黒い蝶のように舞って
ゆっくりと奇麗な星の光になって消えていった
・・・・・
・・
(( ))
・・
リズが気が付くとそこはもう地獄の世界ではなく
リズが戦う前に座っていた、
聖セントラルの中庭にあるベンチで
その座ったままの奇麗な姿勢で戻ってきていて意識が目覚めていた
それはまるで今までのことは
全部リズがベンチでうたた寝をしていた時に見ていた、
刹那の夢であったように思えた
(・・・)
だけどそのベンチにはリズ一人だけ
戦う前にシュバルツ・ブラスト先生が座っていた場所には
今は誰もいなくなっていた
でも
(これ、は・・)
シュバルツ・ブラスト先生が座っていた、
日の沈みかけたベンチの場所には
それが夢でなかった証のようなもの、
小さな白い四角い奇麗な箱がポツンとひとつだけ残されていた
「(スッ・・)」
リズがその残された小さな白い箱をそっと手に取る
( 先生のオルゴール、だ・・)
「( 先生の、願い・・ )」
・・
リズがそのオルゴールの上の方をゆっくり開くと
あの銀河のような精密に刻まれた魔法のコアの部分が見えて
(ん・・?)
横の空いたスペースの小物入れの場所に
((カラン・・))
模様の入った小さい宝石のようなものがひとつだけ入っていて
それをリズは指でつまんでよく見てみる
「きれい・・」
(でもこの文様・・これってオリジンの秘宝、・・?)
・・
気になったけど今は宝石は元の場所にしまう
それからリズは白い小さなオルゴールのつまみを
丁寧に2、3周指で回してから
(・・・)
そのオルゴールをベンチの自分の隣の位置にコトリと置く
「「 ♪~ 」」
白いオルゴールからいくつもの音色が流れ始める
森の中で妖精や小鳥たちが集まって演奏しているようなその可憐な曲は
始めはゆっくりと
だんだん賑やかに風にのって響いていく
(( ))
その曲の音色をじっとその場のベンチに座ったまま
耳をすませて聴いているリズ
(・・・)
( ああ・・、そうだったんだ・・ )
( この音たちを奏でてる森の妖精や小鳥たちの中心にいたのは
・・あの子だったんだ・・ )
リズが目を瞑ると
誰もいなかったベンチには青空と風と妖精たちの奇麗な音色が広がって
あの黒いドレスの黒髪の可憐な小さな女の子が隣で微笑みながら
そこにちょこんと座っているのが微かに感じられた
そのオルゴールの中の平和な風景では
あの小さな女の子の笑顔はずっと守られていて
世界には宝石でも散りばめたように奇麗な音がずっと響いていた
( これが・・先生の願いだったんだ・・ )
( 先生は・・ただこうしてあの子の平和な世界を願って
ずっと静かにここに座ったままでいたかったんだ・・ )
・・・
・・
リズは閉じていた瞼を開けて
誰もいないベンチから夕日をその瞳を映す
その目からは一筋の雫
「 さよなら・・ シュバルツ先生 」
沈みゆく夕日を映した空
その夕日の太陽のすぐ隣には
寄り添うように煌々とした赤い冥王の星の光があって
(( ♪ ))
今は物悲しいその奇麗な音色が 静かにベンチに響いていた




