【第一章】第四十一部分
「あまり若者が使う言葉には聞こえないけど。」
「そんなことはどうでもいいです。デートの王道は遊園地。一通り遊具を楽しんだら、夕暮れのロマンチックとエロチックが待っています。」
「後半は穏やかではないねえ。」
「それもいいんです!そして高まる気分の中で、観覧車に押し入ります。」
「波風が立ってきたねえ。そ、そこ、つまり観覧車という密室内で、ふたりの気分はハイパーインフレーションになります。さらにサスペンスレベルがあがったねえ。」
「誰にも見られない、音も聞こえない暗がりで、ふたりはキズ!」
「キスじゃなくてキズ?」
「そうなんです。キスなんて陳腐なことは、あたしの場合しません。大胆にキズをつけてもらい、キズモノになります、ごきげんよう!」
「それって既成事実を構築しようとでも?」
「そうです。事実は必要です。殴り愛という究極的な愛があると聞いています、ごきげんよう。」
キスではなくキズつけあう、それで仲が深まるというシミュレーションをゆめは描いていた。
ということで、次の日曜日、ゆめと鳴志司はヨンリオ遊園地にいた。ふたりは来園客の注目を浴びせかけられていた。それはとりもなおさず、ふたりの衣装に帰していた。
鳴志司は白いタキシード、ゆめはいつものメイド服であった。大半の観衆は映画の撮影とでも思ったらしかった。
「よしよし、これで赤空ゆめが既成事実を作ってしまえばうりの思うつぼなのだ、ワハハハ!」
「ちょっと、お客さん。邪魔なんですが。」
マウスキャラ被り物のバイトに隠れて高笑いする楼里。
ゆめが鳴志司と付き合うことは、楼里にとって、好都合であった。




