【第一章】第三十一部分
変身魔法はすっかり解けて、廊下を走っていた時、つかさとすれ違った。
「生徒会長のバカ~!」
ゆめは和服姿ではあったが、つかさには顔と声がゆめのものだとすぐにわかった。
「ゆめのやつ、生徒会室から出てきたみたいだな。生徒会長のバカ~!という声が聞こえたぞ。あのセリフはまさに交際をしているということの現れだ。たまたま小さなイサカイがあったが、すぐに元に戻る、それも今まで以上にカンケイが深まるというパターンだよな。」
つかさは、心の奥底に苛立ちの種を感じていた。つかさとゆめの間に、これまでとは違う亀裂が入った。
「すべてうりのシナリオ通りなのだ。ククク。ワハハハ!うっ。」
被り物の女子は腹を抱えたくなるのをこらえるのに必死だった。
緋景とつかさはヨンリオショップデートで留まっていた。
「「今日も今日とてヨンリオで談義。これっていったい何?デートと呼べるのか。そもそも交際していると言えるのか?」」
緋景とつかさの脳内波長は同一軌道を描いていた。
最初は新鮮だと思っていた新築の家も匂いになれてくると、どうでもいいものに成り下がってしまう。通称倦怠期である。
「ワタクシが迎え撃つ王子様はやっぱりお兄様。」
一見、肉食系的な表現であるが、弱い自分を守るために攻撃に打って出たという、変則的な悲観主義の現れである。
「とにかく、ワタクシの方から動かないと前に進めませんわ。」
緋景は前を向いたまま、滑走バックするという、アクロバティックな歩き方を見せた。緋景はこれを、冥王星ウォークと呼んでいる。
『トン、とん。』
赤いメイド服が生徒会室のドアを叩いた。ひとつ目の音は実際に叩いたものだが、二つ目は叩くと入室を拒絶されるのではないか、という悲観主義から、叩かずに小声に出したものである。




