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【第一章】第二十七部分

『モーッ。』

朝、つかさの家の前に、牛車が出現した。ウシといっても、ヨンリオグッズのような凶悪な眼帯・隻眼の猛牛で、足が八本あるところから、人間界のウシではなく、モンスターと表現する方が的確である。

「なんだ、なんだ?」

突然のことに、近所が大騒ぎになっている。

「あらあら、ワタクシを出迎えるのに、いろんな方がお出ましになるとは。これはワタクシたちの、行く末を呪っているのですね。この町でも捨てられる女になるのでしょうか。なんとも悲しいことでございますわ。よよよ。」

緋景のネガティブ思考はここでもいかんなく発揮された。

「なんだ、この牛車は!?ヨンリオウシなのか?ならばこの騒ぎの当事者は!」

制服姿のつかさが、慌てて家から飛び出してきた。ヨンリオマニアの嗅覚で、騒動の犯人をすぐに特定した。

「つかさ様、お迎えに参上しました。しかし、回りからの祝福が皆無どころか、憎悪に満ちた視線と罵声の集中砲火を浴びていますわ。」

周囲の人々からは罵声ではなく、呆れた驚声が洩れているだけである。罵と驚の漢字はよく似ているが、まったく別物である。

「滝登さん。これは魔法の仕業だね?」

「よくおわかりですこと。その通り、魔界のウシを召喚したものですわ。それもつかさ様好みの、ヨンリオウシですわ。つかさ様、お気に召されましたか?いや、その表情からすると、魔界のウシはお口に合いませんでしたでしょうか。ワタクシの大失態ですわ。よよよ。」

和服の袖を泣きぬらす緋景。これは作為的なものではないように見える。

そんなふたりの様子を堅い表情で見つめている女子。ゆめはつかさ宅の隣に住んでいた。

「つかさはあの子と付き合うことになったのね。うちの制服、じゃないわ。ヨンリオ和服だわ。でも一緒に登校しようとしているし、うちの生徒なのかしら。顔はどこかで見たような気もするし。」

ゆめはつかさの方にツカツカとローファを鳴かせながら、歩いていった。


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