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【第一章】第一部分

 魔法は言うまでもなくアナログである。火、水、風、土、木など五大魔法やその応用編である移動魔法などは魔法使いである人間が、自然の力を吸収して、体内で、別のエネルギーに変換して、放出することで発現する。これは人体に極度の負担を与え、魔法使いは確実に自らの寿命を燃やす。またエネルギーを吸収される立場の自然も摂理を歪曲され、環境破壊の大きな原因となっていた。

このように、アナログ魔法は長年人間と自然に対して危険だと言われていて、代替魔法エネルギーについて、研究が進められていた。

そんな中、大国間の覇権争いは、科学技術で熾烈を極めていた。量子コンピューターの開発が最優先課題とされ、偶然にも、量子理論を基礎としたデジタル魔法が発見された。量子コンピューターの想像を絶する計算つまり量子の回転により魔法のたまごが発生する。それはエネルギーを吸収するための器となり、人間と自然に負荷のない新しい魔法技術が生まれた。それはデジタル魔法と呼ばれて、洪水のような潮流となって拡散した。インターネットと魔法の融合化を果たしたのである。図書館にいかなくてもパソコン画面を空中に出して、電子データとしての本が物体として取り出せる、そして返せる。これは移動魔法のデジタル化。同様にデジタル風魔法は風力設備の風なし可動、飛行機エンジンなし飛行を可能とした。デジタル火魔法は溶鉱炉を自動運用するなど、強烈なパワーを発揮することができた。

この結果、アナログ魔法は急速に廃れていったのである。


「お~い、ゆめ。遅刻するぞ。」

整えられた髪。普通の目。平凡でどこにでもいる少年。

「ちょっと待ってよ。つかさ~。まだ遅刻するような時間じゃないわよ~。」

中くらいの長さの髪を両サイドで小さく結んで、先端には赤いリボン。

丸く赤い瞳、ようやくつまめそうな小振りの鼻。快活そうなピンクの唇。紺色の地味なセーラー服のゆめは、お約束通り、食パンをくわえている。

「また、寝坊食か。そんなことしてると、いつかウサギの神様に襲われるぞ。」

「ウサギ!?そんな不気味で物騒な言葉、口にしないでよ。朝イチで頭痛がするわ。

またウサギ嫌いかよ。んでもって、代わりにカメサマ崇拝事業を展開か?そんなこと言ってたら、いつかカメサマのバチが当たるわよ。つかさもカメサマ教の信者になるべきよ。」

「誰がそんな新興宗教に入信するか!」

かく言うつかさの学ラン内ポケットには、有名なヨンリオウサギマスコットが忍んでいる。

喜多見つかさは無類のヨンリオグッズ好きの中学三年生男子である。

ヨンリオグッズとは、ファンシーではなく、ファンキーなうさぎキャラをメインキャラクターにした商品群のことである。ファンシーな猫キャラブランドが女子児童や若いギャルを席巻していた時代に、新たなキャラを創造したのが、ヨンリオカンパニーである。

ファンキーというからには、型破りなもの、つまりかわいいイメージのうさぎとは対極にある状態を指す。具体的には、目付きが悪い、サングラスをしている、アフロヘアーである、とかを想像するだろう。ファンキー初心者向けはそれでよし。

しかし、階級が上がるに連れて、色々な不快要素が加算されてくる。目が切れている、鼻が曲がっている、耳が千切れている、口が裂けている、などを主体としたキモイものである。

だが、これだけでは容赦しないのが、ヨンリオである。顔がない、のっぺら坊なフィギュア、それも顔の色にバリエーションがある。レインボーカラーやドス黒いものが人気である。つかさの最もお気に入りは、頭がない、すなわち首が千切れているうさぎフィギュアである。もはやうさぎカテゴリーからコースアウトしているが、好きなものは人それぞれである。

幼馴染みだから友達というのは正しくない。おとなしくて友達ができないとか、イジメられていた、ハブられ対象だったとか、こどもの世界にも様々な人間関係が存在する。

ふたりが仲良くなったきっかけ。一般人つかさが、アナログ魔法使いのゆめに、生命のピンチで助けられたとかいうようなベタなものではない。それは童話のうさぎとかめである。つかさは、うさぎが好き。ゆめはカメサマを信奉する。そんな論争はいかにも子供らしい。

つかさとゆめは幼稚園に入園してからの知り合いである。

「うさぎとかめ、どちらが優れているか、決着がつくまでギロンするんだ。うさきは速い、かわいい、もふもふだし。」

「カメは神様なのよ。それにガメラなのよ。火炎を吐くし、空だって飛んじゃうんだから。」

ガメラは怪獣であって、カメではない。

毎日ふたりでしがない論争を続けていった結果、ふたりは仲良しになっていたのである。

なお、ゆめはこの時点ではまだ極端なうさぎ嫌いではなかった。


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