【第一章】第十七部分
「ワタクシの思いが誤ってるとおっしゃるんですの?」
「ボクの考え方がおかしいと言うのかい?」
「ムムムですわ!」
「ぐぐぐ!」
ふたりの怒りテンションは頂点を極めた。
『プチッ!』『プチッ!』
ふたりの中で何かが弾けた。
「ここまで話せたことは初めてですわ。」
「気持ちをぶつけ合うって、こんなに清々しいんだ。」
ふたりは相手の心を感じたのである。
「これは本格交際のゴーサイン。デートを重ねていきますわ。」
「滝登さんとヨンリオ・スラングを修得していきたいな。」
わずかとは言えない思いの差がある中で、ふたりは着実に前に進んでいく。
ヨンリオショップでのデート(緋景サイドの概念)は正式に始まった。
次の日もふたりはヨンリオショップにいて、ジト目の店員視線に遠慮しつつ、デートというか議論を行っていた。
「今日は耳で勝負しよう。手とかじゃなくて、いきなり耳ですの!?」
「そっち方面はおとなしいと踏んでいましたのに、意外と大胆ですわね。男子とはこういうものなのかしら?」
緋景はおそらくは勘違いしているが、会話は続行される。
つかさは棚にある小型で黒いウサギを手に取った。隻眼で赤い眼帯をしている性格の悪そうな人形である。耳が小さくネコミミという方が近い。
つかさは黒ウサギの耳を掴んだ。
「あっ、ソッチですの。ガッカリ。」
緋景はあからさまに肩を落とした。