【第一章】第十三部分
「同衾とは人聞きが悪いなあ。」
「それにしても、このようなところで、油を売ってるヒマはありませんことよ。ギラン。」
緋景はあきらかに敵意のある視線をゆめに向けた。長くセクシーな睫。妖艶に紅色に光る薄めの唇。小さいが通る鼻筋。着物の上からでもわかる巨乳は際立っており、ゆめは思わず自分の中乳に手をかけた。
「あれ、この着物の柄、どこかで見たような。」
ゆめは緋景の着物を見つめようとした。
「何をじろじろ見てますの。ワタクシは忙しいんですから。」
緋景は逃げるように、校舎の方へ走り去った。
「はっ、始業時刻になっちゃうわ。遅刻、遅刻~!」
ゆめも慌てて、校舎にダッシュしていった。
この日の夜。緋景は広い自分の部屋で過ごしていた。
「朝の不届き女子、赤空ゆめは眼力で撃退しましたわ。しつこいようなら魔法を使いますからね。」
部屋には人形が所狭しと並び、壁にも同じようなデザイン。一見黄色主体で明るそうだが、思春期女子の部屋とは思えない異様性に満ちている。つまり、ヨンリオグッズの掃き溜めのようになっているのである。
「ああ、お兄様。緋景はかねがね、お兄様をお慕い申し上げています。でもそれは報われない恋だとわかっています。実の兄妹ではどうしようもないのですわ。アナログ魔法の奥義には、叶わぬ恋を実らせるという禁断の奥義があると聞いています。今、魔法界では、デジタル魔法がアナログ魔法を圧倒していますが、この奥義だけはアナログ魔法にしかできないことと言われています。この奥義を使おうかと何度も思いましたが、多大な副作用というリスクがありますし、何より魔法技術が足りませんでした。ワタクシ、明日の放課後はいつもの『癒し』に行ってきます。これしかありませんわ。」