夏季休暇は湖畔で優雅に冒険を(2/2)
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可愛い弟から闘いごっこのお誘いを受けて、第二王子は途端にご機嫌になり立ち上がる。
「よし!どのくらい強くなったかみせてごらん!」
「まずは森でえくすかりばぁを探さないとです!」
「えくすかりばぁ??」
巻き毛様と第二王子の手を引きながら、にこにこで森に向かうキースの説明によると、えくすかりばぁとは闘いごっこにふさわしい枝のことだった。
良い枝を見つけ、三人で軽く打ち合いをする。
「キース、強くなったな!その調子だぞ!」
「えへへ!キースね、強くなってマリッサ姉さまを守るの!姉さまったら、えくすかりばぁ持っただけで足が絡まって転んじゃうから!」
「そ、そうか。マリッサ嬢を守るのか。あ、兄上のことも守ってくれると嬉しいんだが…」
しょんぼりする第二王子とひそかに対抗心を燃やす巻き毛様であった。
闘いごっこの後はお茶をしていたご令嬢方と合流し、湖を散策することになった。湖畔は夏でも涼しくとても過ごしやすく、おいしいお菓子を食べすぎたご令嬢方の腹ごなしの運動にはもってこいであった。爽やかな風に鳥のさえずり、そしてピチャッピチャッズズズッという異音。…異音?
湖に目をやると、黒く大きな生物が数匹這い上がってくるのが見えた。
「きゃあぁぁ!?」
悲鳴をあげるご令嬢方を背にかばい、巻き毛様と第二王子が剣を構えた。
「くふふ!僕わかっちゃった!」
キースが口を押さえて可愛い笑い声をあげた。
「マリッサ姉さまの『昔助けた○○ですシリーズ』の魔亀さんだ!」
「キース正解!よくわかったね~」
「なんだよそのシリーズ!?」
皆の心の声を代表して第二王子が突っ込みをいれた。
「あのねあのね、姉さまが夜寝る時にお話してくれるんだよ~。すごーくおもしろいの!魔亀さんは村の子供達にいじめられてるところを助けてあげたんだよね!」
一体そのシリーズは何本だてなのか…。
「他にはね~、怪我をした魔鳥を助けてあげたり~、雪の日に凍えてた野良ゴーレムにマフラーと帽子あげたり~、いっぱいあるんだよ!」
いや、野良ゴーレムってなんだよ、ゴーレムは凍えないだろなどと突っ込みどころが多過ぎて言葉を失う彼らをまるっと無視して、マリッサは魔亀達に話しかける。
「うんうん。久しぶりだね~。みんな元気にしてた?え?これくれるの?ありがとう!デザートにいただくよ!うんうん。他の子達にもよろしくね!」
「ま、マリッサ嬢は魔亀と会話できますの!?」
「まさか!適当ですよ~!え?甲羅に乗って水中散歩はどうかって?皆さん、どうですか?」
残念ながら、そんな適当なヒアリングによる提案を受け入れられる猛者はいなかった。仕方ないのでマリッサは皆が帰ったあとキースとやることにした。
散策も無事終わりテントに戻ると、男性用テントの中もクッションが敷き詰められ、女性用ほどではないものの過ごしやすくなっていた。
夕食はノービターク領産の海の幸と山の幸の包み焼きに舌鼓を打ち、食後には魔亀からもらったなぞ植物を少量の油と鍋に放り込んで蓋をして火にかけたなぞデザートを恐る恐る食べ、寝る前には満天の星をながめ流れ星を数え、テントの中では寝落ちするまでお喋りを楽しんだ。大満足のグランピングとなったのだった。
「また来年もいらしてくださいね。次は海もご案内したいです。」
マリッサが無人島サバイバルを計画してるとは知らない面々は是非お邪魔したいと和やかに挨拶をかわす。
まだノービターク領で過ごすマリッサとキースに見送られ、往きと同様に転移門をくぐり瞬く間に王都に帰還を果たした。ノービターク領へつながる転移門が閉じた瞬間、口を揃えて叫んだ。
「え?何も起こらなかった!?」
「おかえり。だからノービターク領には冒険要素がないから大丈夫だって言ったろ?」
エリックが苦笑しながら出迎える。
「マリッサの冒険には法則があるんだよ。馴染みのない土地に行くと冒険が起こりやすいんだ。」
肩透かしというか物足りなさを感じてしまって愕然とした。まさか冒険がくせになってる!?
「つまり…お楽しみの冒険は休暇明けの砦宿泊訓練に多分がっつり来る!」
何も起こらずほっとする気持ち半分、釈然としない気持ち半分の生徒達にエリックは次なる危機を伝えたのだった。
マリッサ「あれ?タイトル詐欺だったかも?」
キース「姉さま!普段のキャンプも大事な冒険の一部です!」




