第十六話 仮面
広輝たちは、玲菜と歩が運転する車で現地へと向かう。
病院の駐車場で広輝は歩が運転する車に乗ろうとしたが、玲菜に大樹とのチェンジを言い渡され、玲菜の車に優里菜と広輝が同乗していた。
納得しない不満気な大樹は、七重に引きづられるように歩の車に連れてかれた。
「まだ何か?」
この事態を招いた原因の一人として、小言を聞かされるのかと広輝の気は重い。
会議室でも言った通り、そういう事は終わってからにして欲しいと思っているが、時間を作られてしまったので、半ば観念していた。何故か助手席ではなく、優里菜を後部座席、広輝の隣に乗せた意図が気になるが、まずは小言処理だ。
そんな失礼なことを考えていたら、広輝にとっては良い意味で予想が外れた。
「私じゃないわ。優里菜よ」
「え」
「私たちは戦いに行くの。なるべく迷いは晴らしておきなさい」
ひとまず広輝は玲菜の考えを理解した。
病院にいた時から、元気が無さそうに見えていたが、それは疲れているからだろうと広輝は思っていた。いつになくよそよそしいのも、体調が万全ではないからだと思っていたのだが、どうやら違うようだ。
「えっと‥…」
「?」
玲菜に促され、優里菜は話を切り出そうとしているが、喉まで出かかったのを引っ込める。
会えば分かると思った。会えば広輝への気持ちを確かめられると思っていた。そうして広輝を目の前にして、その考えが甘かったと痛感している。
全然わからなかった。広輝を信じ切れもせず、疑い切れもしない。
話をしようと、言葉を交わそうと思うのだが、うまく言葉が出なかった。
膝の上で左右の指を絡ませては解き、そわそわと体を動かす。視線も左右を行き来し、広輝と目を合わせようとしない。時折、上目遣いで広輝を見るが、目が合いそうになるとすぐに顔を伏せた。
ここに来て、広輝は玲菜に相談されたことを思い出した。
玲菜がきちんと教育を行ったのなら、優里菜は天子と魔術師の関係を知り、堕天子の事も聞いている。そうであるなら、広輝も優里菜の態度に納得した。
恐怖があるのなら、忌み嫌うのなら、好都合である。
(これ以上は、要らない)
広輝は、優里菜の戸惑いを利用する。
「お前もオレを信じ過ぎない方がいい」
「え……」
「クルスみたいに裏切られるぞ」
広輝の忠告が優里菜の胸に突き刺さる。
優里菜の身じろぎが止まり、ゆっくりと顔を上げた。
感情のない広輝の表情が優里菜の碧い目に映る。そこには冷たさすら無い。どこまでも無感情で、優里菜に興味すら無いと言っているようだった。
他の鳴上の天子と違い、広輝に親しみを覚えていた優里菜。それは、お互いの過去の事があったからかもしれない。しかし、もう違うのだと、あの頃とは違うのだと、風上広輝はいないのだと優里菜に分からせる必要があった。ここに居るのは堕天子と呼ばれる久下広輝なのだと。
けれど、広輝の思惑は外れる。
月永優里菜の心が、広輝の隠れた怖がりを見つけてしまう。
裏切る人間が、わざわざ忠告などするだろうか。そのつもりなら、クルスにしたのようにまずは自分を信じさせようとしないだろうか。
堕天子の話を聞いてから、優里菜の中にあった違和感が確信に近づく。
やはり、広輝は遠ざけている。
優里菜の選んだ言葉は、優里菜の問い掛けは、広輝の芯に触れるものだった。
「広輝くんは何で、まだ戦うの?」
あんなに酷い事があったのに。大事な人たちを二回もなくしたのに。逃げたって不思議ではない。この世界から足を洗う事もできる。それでも広輝は刀を手に取り、立ち向かい続けている。
今、ここにいる。
その理由を理解することができるなら、優里菜はまだ傍にいられる気がした。
優里菜の問い掛けで、広輝は優里菜が堕天子について知ったのだと確信する。
「……」
忠告と同じように、優里菜を突き放すこともできる。しかし、それは曲げられないこと。一度でも偽ってしまったら、きっと嘘になってしまう。
始めの誓いに、逝った人たちに背を向けることを広輝自身が許さない。
広輝はまっすぐ広輝を見つめてくる優里菜から、自分の両手に視線を落とす。
開いた両手をゆっくりと握りしめ、自らの信念を口にする。
「もう何も、失わない為に。この手にあるものを取り零さない為に」
二度と誰にも奪わせない。失くしもしない。その覚悟が、広輝の世界に変革を齎した。
広輝が信念を口にした今の一連の仕草を、優里菜は見た事があった。
あの日は雨が降っていた。風が強く吹き、雨と一緒に窓を叩いていた。厚い雲が閉ざした空からの光は鈍く、その病室は人工の灯りだけ。そんな寂しさが積もる病室で目を覚ました広輝は、信じられないくらい素直だった。優里菜の答え合わせに白状もした。再会を拒んだ理由を。気づかないで欲しいと願った理由を。
真実を話してくれた、その時と一緒だった。
だから優里菜は、広輝が紡いだ言葉を疑うことはなかった。
ならば、今の広輝が戦う理由はなんだろうと考えた時、一人の女の子が浮かんだ。
約束の丘で出会い、路地裏で再会し、ギレーヌの被検体にされているという金髪の少女。
優里菜の前で広輝が一番の優しさを見せた少女。
彼女も広輝の手の中に入っているのか。
「愛紗ちゃんも?」
広輝は両手から目を離し、優里菜をちらりと見て言う。
「そっちは違う。単純に気に入らない」
その声には信念を口にした時と違い、怒りが滲んでいた。
目が据わり、強く拳を握りしめる。
「望んでいないことを、無理やりやらせるのが気に入らない」
***
風凰神社・秋宮に向かっている途中、ギレーヌたちが冬宮に現れたと連絡が入り、行き先を変更した。
玲菜の表情が厳しくなり、心なしか運転が荒くなる。玲菜は秋宮から冬宮に移動したことで、第一の封印が解かれたのだと見なした。
解印について必要なものだけでなく、そもそもギレーヌたちがどうして封印と解印について知っているのか。月永と陽本の直系以外全てを知る者はいないはず。
裏切り者の可能性を考え始めるが、すぐに切り捨てる。知っている者を問い詰めたところで、情報元は決して話さないだろう。今の敵から直接聞き出す他は無い。
冬宮の駐車場に到着し、六人は車を降りて準備を調える。広輝は太刀を佩き、優里菜は後ろ髪を一つに結った。
風凰神社・冬宮。神の一柱、風神が祀られている社。
風凰神社は秋宮とこの冬宮の二宮が成っている。冬宮の特徴として、秋宮や他の神社と違って本殿が存在しない。拝殿の奥には玉垣に囲われた空間があるだけだ。
冬宮の周りには建立された時から生きているという大樹が多く残る。まるでこの神社を見守っているように。大樹の葉はところどころ紅葉し始め、秋の訪れを教えてくれる。その隙間から月明かりが覗き、石畳と白石が僅かばかり月光を弾き返していた。
そして耳を澄ませど、静寂だけが返ってくる。戦闘音も無ければ、話し声も、風の音も聞こえない。風の天子である広輝と七重にも。
しかし、その静寂も一の鳥居をくぐると一変した。
全員すぐに天力を纏った。
魔力濃度が濃すぎる。
普段は守護天子によって、天子が心地よく感じる空間に調整されている。邪を含む魔は完全に浄化され、自然の魔力と守護職の天力が親和し、空気中に微量の天力濃度が残るように。
それが、魔力が克ち過ぎている。否、魔力のみがある。それも障りのある魔力。
中でも特に広輝が顔をしかめ、天位:白の大樹ヘ命令する。優里菜にも同じ指示をしたかったが、それでは頭数が不足すると思い、大樹だけにした。
効果があるかわからないが、広輝は本気度を少しばかり示す為に名前を呼んでみる。
「大樹、お前車近くで待機。連絡役だ」
「はあ? ここまで来て引けるかよ」
案の定、大樹に反発されたので、理由を追加した。
「血の臭いが酷い」
「え?」
「そう?」
優里菜と玲菜にはまだその臭いは届いておらず、
「微かに……あるな」
「するねー」
七重と歩は感じ取る。
無風の今は風向きによる微妙な差もない。
「歩ちゃん、鼻がいいのね」
「それほどでもー、ありますね〜」
歩は後頭部をかきながら照れてみせた。
「それと広輝くん、白炎も侮れないわよ?」
白炎とは大樹のこと。四ヶ月前の事件以降、その炎の感覚を身につけつつあり、広輝も優里菜伝えで聞いていた。
ただし、攻撃力だけよくても他が疎かなら、フォローが必要になる。使い所はあるかもしれないが、鈍い移動砲台は周りに負担がかかる。
広輝は大樹に関する責任を放棄することに決めた。この場での最高天位は蒼であり、広輝と玲菜である。このメンバーで話し合ってはいないものの、リーダーが玲菜、副リーダーが広輝だと暗黙の了解のようになっていた。
「ーー僕は守りませんよ」
「上等だ」
副リーダーからリーダーへ大樹を置いておくべきという最後の進言だったが、その意味を知ってか知らずか、大樹は反射で決意を見せる。
彼の意気込みを見て、玲菜が妥協点を提示した。
「撤退の判断は私がするわ。それでいい?」
「……従うか?」
「は?」
「誰が危険に陥っていようとも玲菜さんの指示に従うか?」
「……ああ」
大樹は以前に広輝に言われたことを思い出す。『隊員の死は誰の責任だ?』。反抗心での返事ではなく、改めて戦いの場へ行くのだと決意した。
「言葉だけじゃないと、祈ろう」
一通り話を終えると、一行は慎重に参道を進む。
静寂は鳥居の前と変わらないが、夜の闇に恐れを覚えた。両脇の林から何か出てきそうである。
玲菜たちも血の臭いを感じ取って顔を歪め、優里菜は鼻を手で覆った。
段々と敵に近づいている反面、血の臭い元もなければ、待ち受ける敵の姿もない。
不気味なことこの上なかった。
二の鳥居の向こうに見える神楽殿にも異常は無さそうだった。
風凰神社・冬宮の二の鳥居と拝殿と間には、歌舞を奉納する神楽殿があり、参道から拝殿を直接見ることはできない。
この調子ならば、何かが起こりそうな区切りは二の鳥居。
二つ目の鳥居を潜る前に、優里菜は心配事をもう一つ確認することにした。
広輝の左側から顔を覗き込む。
「ねえ、広輝くん」
「ーー何だ?」
「どこが良くないの?」
「どこも悪くないが?」
優里菜の問いに広輝は即答するが、優里菜はなぜか納得しない。確信があるのだろうか。
「その割には、顔色良くないように見えるけど」
「お前もブラフ使うんだな。この暗さで見えるわけ無いだろう」
そういうことではないのだと、頭に血が上りかけた。一呼吸置いて、直感めいた不安を口にする。
「……前みたいなのは、嫌だよ?」
「善処する」
優里菜が言っているのは、崩落するゲーベルの城から脱出するときのこと。ちゃんと言ってくれていれば、あの状況でもやりようはあった。大丈夫だと無理をした結果があれだった。
その心配している優里菜の割に、当事者の広輝が素っ気ない。
思いやりを無下ににされた優里菜を不憫に思い、また、『善処する』は子供が使う言葉じゃないないなと広輝の辞書が気になる玲菜だった。玲菜はここに来るまでの車中でも、二人の問題として会話に口を挟まなかった。広輝の堕天子についても、天子と魔術師の関係についても、教えるタイミングは図っても、その後の思考に干渉はしない。何を思い、何を感じ、何を考えるのか。その思考の過程に意味があると思っているからである。ただし、導き出した結論が人道から外れ、倫理が逸脱していたのなら、軌道修正するつもりではあった。
そんな玲菜の不干渉とは逆に、面白そうなことに口を突っ込む人間が一人いた。
「そうだよ、広輝くん。あの赤髪の人が来るまで、優里菜ちゃんがどれだけ心配してたか。見せてあげたいくらいだよ」
「!?」
「あれは騎士様の帰りを今か今かと待ち疲れたお姫様のようなーー」
「歩さん!」
得意げに語る歩の口を優里菜は慌てて塞ぐ。
当時の優里菜の心境とは全く合っていないが、広輝の無事を祈っていたのは確かだった。優里菜は顔を赤くし、有る事無い事言われないための行動だった。
そこへ鳥居の影から小柄な人物が立ち塞がるように姿を現す。
「ギレーヌの結界内だってのに、緊張感がないな。天子一行は」
黒いフルフェイスに黒いローブ。上下のアンフィット感で怪しさ倍増である。
フルフェイス越しに聞こえた籠もった声から、少年だろうことが推測できた。
「誰?」
端的に玲菜が問う。
待ち伏せていたように現れ、行方を遮るように神楽殿を背にした。
味方ではないことは確かなようである。
フルフェイスの少年は、問い掛けに素直に答えた。
「アラン、と名乗ればわかってくれるかな?」
「隆也と戦った?」
報告は隆也からあった。
ゲーベルの城の地下で隆也が戦った岩石の魔術師。白黒の狐の仮面を付けた少年らしき魔術師。ゲーベルの敵でも味方でもなさそうだった正体不明の魔術師。
しかし天子側の味方ではないことは確かだった。
「……邪魔をする気か?」
広輝は一歩前に出て、太刀に左手を添える。
「待て待て。気が短いなあ。ーー君、久下広輝と月永優里菜は通っていいよ。他はダメ」
鯉口を切る。
「広輝、優里菜、行きなさい」
戦いを始めようとした広輝を玲菜が止める。
「隆也は苦戦したようだけど四対一。何とかなるでしょう」
息子の隆也の実力は知っている。その隆也が辛勝した程度なら問題ないと踏んでの判断だったが、アランも当然実力差を考慮していた。
「四対一? まさか。朱色相当の貴女相手にそこまで傲慢にはなれないよ」
アランが指を鳴らすと、暗闇に伏せていた獣が続々と姿を現す。
「これは……」
「魔道人形!?」
現存動物だけではなく、逸話を元にした幻獣を象った姿。
この獣の群れには全員が見覚えがあった。あの燃え盛る炎とあの新月の夜闇の中で。
「ゲーベルが関わっているのか」
広輝の右手が太刀の柄に添えられる。
ゲーベルが作り出したとされる魔道人形たち。他にその人形を見たことがない彼らにとって魔道人形=ゲーベルだった。ゲーベルが関わっているのならケンタウロス級の人形が出てくる可能性がある。
さらに事件後のゲーベルの行方を天会は知らない。人形が出てくれば、ゲーベルが関わっていると思ってもおかしくない。
「あはは、それもまさかだよ。僕は営業マン。ギレーヌに人形を売りつけに来ただけさ」
アランは声変わり前の少年のように、無邪気に自分の行いを自慢気に話すが、その向こうに少年らしさが一切感じられなかった。フルフェイスに変声器でも仕込んでいるのかと思うほどに。
「『だけ』には見えないが」
「売ったら帰る予定だったんだけど、想定以上の額で買ってくれたからおまけのアフターサービスさ」
「オレたち二人を通す理由は?」
「簡単だよ。堕天子と相性悪いし、ウンディーネもあの宝石を砕く位の天力量食らったら、死んじゃうもん」
アランは広輝の戦い方を知り、天宿での出来事を把握している。ゲーベルの城に居て、ギレーヌたちと取引をしたのなら当然なのかもしれない。
それでも多くの情報を持ってくると思わせるには十分だった。
「まあ、でも。ここで戦ってくれてもいいよ? 間に合うなら、ね」
風神を降臨させてしまえばギレーヌたちは大きな力を手にしたことになる。手始めにこの場の天子を殺すかもしれない。依り代にされた愛紗を使って。憎しみのままに。
「優里菜、いくぞ」
「……」
「優里菜」
優里菜が珍しく声がけに反応を示さない。アランを見つめて表情を曇らせていた。
「優里菜、大丈夫よ。お母さんたちを信じなさい」
「……はい」
優里菜はこの場を離れることを躊躇ったわけではなかった。ただ、天子対魔術師という構図に、言葉にならない霞がかったような感情に見舞われていた。敵であろうと魔術師に協力するのは魔術師で、また天子に協力するのは天子なのだな、と。ゲーベルは絶対的戦闘力を求めて天子を雇っていたが。今回に限れば、アランは商売人としてこの場にいるので、魔術師であることに特に意味はない。天子だったとしてもこの場にいただろう。しかしながら、暗い過去を、情報を咀嚼しきれていない優里菜には、たったそれだけでさえも対立を想起させられてしまっていた。
考えていても仕方ないと、優里菜は自分の頬を叩き、広輝と視線を交わす。
広輝はその目に迷いを払った優里菜の意思を認めた。
そして広輝が「行くぞ」と言い、優里菜が「はい」と答える。二人は参道の石畳を蹴り、鳥居を潜り、アランの横を走り抜け、神楽殿を迂回して拝殿へと向かっていった。
「うひゃあ、怖え。隙きあらば僕を斬ってくつもりだったな、あの堕天子」
アランはフルフェイスから見える範囲で、二人を見送るように姿を追っていた。アランからの不意打ちを警戒してのことだったのだろうが、それにしては広輝の敵意は強すぎでは、とアランは訝しんだ。
「ところで、ここを守護していた天子がいたと思うんだけど、どうしてくれたの?」
「その辺に転がってると思うよ? 戦闘不能になったら追撃はしないようになってるから、生きている死んでるかはその人次第じゃない?」
血の臭いに反し、傷ついたはずの天子がどこにも見えない。最悪、今までの事件のように天力を吸われつくされているかもしれないと玲菜は思っていたので、僅かに安心した。
「ギレーヌたちとは戦わなかったのかしら?」
「戦ったよ。こっちが優勢になったら僕に任せて奥に行っちゃったけど」
「そう」
ひとまず、取り急いで聞けることは聞いた。だから後は魔術師たちの目的を阻止する為に動く。
玲菜は一歩前に出た。
「七重、歩、大樹、人形をお願いね」
振り向くことなく、三人に指示し、纏う天力濃度を上げていく。
「アランは私が相手をするわ」
「報告を聞く限り、相当厄介そうですけど」
ゲーベルの城で戦った隆也の報告では、アランは岩石の魔術を身振り一つで行使する。それは質も量も速度も高度な魔術であり、岩石の力を天子の中に同じことが天術でできる者が何人いるだろうか。
そんなアランを前にしても、玲菜に不安の色はない。それどころか余裕すら見える。
「あら、歩は私が戦うところ見るの初めて?」
「え?」
「雑魚は頼むわね」
玲菜は少しだけ振り向くと、歩たちの向こうで不服そうな大樹を見つける。
「大樹、悔しいでしょうけど、今は自分の仕事をしなさい」
「……はい」
「七重、二人のサポートお願いね」
「はい」
準備は整った。
目の前の障害を排除しつつ、可能な限り傷ついた守護天子を見つけて保護。全部倒した段階で、優里菜たちに合流し、ギレーヌたちの企みを阻止する。
「さあ、アラン。後悔したくなければ道を開けなさい!」
玲菜が右腕を外へ振ると、十個以上の水玉が玲菜の周りに出現。
優しい母親としての姿からは想像できない玲菜の殺気に、アランの背中に冷や汗が伝った。




