魔獣の中の現場
なんなんだろう?
俺の目の前で起きている事に理解が出来ない。
向こうでジャイアントマンティスと闘っている黄色いドラゴンは縦横無尽に走り回り体を回転させながら次々と敵を倒していっている。
そして、今俺が乗っているコレも勝手に走ってカマキリどもを倒していく。
中に乗っている不思議な格好の二人は平然としているし、現にマンティスも10匹位になっていた。
「そろそろヒサノブの方も終わりだな。じゃあ俺が後始末すっからよ。フカツはあの辺りに止めてくれ。ブル降ろすわ。」
コウジがそう言うと乗り物が言われた場所に止まり、コウジは俺にごめんよと言いながら降りて行った。
「あの…フカツさん…でしたっけ?コウジさんはどこに行かれたのですか?」
「あ〜、後ろのブルに乗り込みに行ったんですよ。このユニックにはユンボとブルが積んで有りまして………ってわからないか ハハハ!」
笑い事じゃないんだが………俺は少しムッとした。それにフカツは気付いたらしく
「あ!ごめんごめん!あそこでカマキリを潰してるのがユンボ。穴を掘ったりする機械ね。そしてこれから降ろす……」
「(ガガッ)おーぃフカツゥー。乗ったから上げてくれー。(ガッ)」
またどこからか声がする。しかも今度はさっき降りていったコウジの声だ。フカツがクルクル線付き小箱を取り話しかけている。
「はいはい、すみません。今上げます。(ガッ)」
「話の途中でごめんね。チョット待ってて。」
そう言うとまたゴソゴソとしはじめると乗り物が動き出し乗っているトコロがまた浮き始めた。
「うぉ!あ!はっ!?」
2回目なのに俺は変な声を出してしまい、フカツと目があった。バツ悪く微笑むとフカツも微笑み返した。
上昇が止まると後ろからドルル!っと激しい音が聞こえ、先程のように乗り物が数十秒揺れ出した。
「今右側から見えると思うよ。」
そう言いながらフカツが右側を見ているので、視線を追って見てみるとそこには一枚の鏡がある。黄色い何かが写っているが大きいのかいまいち解らない。また乗り物が下降しはじめると右側をどデカい何かが通り過ぎていく。そこには透明な箱が有り、コウジが乗っていた。
「あ!え?コウジ??」
「そうそう。コウジさんが乗ってるのがブルドーザーね。主に平らに整地する機械かな。」
通り過ぎていったブルドーザーと言う物には透明な箱が付いており、そこにコウジが黄色い兜を被って乗っていた。
「ガガッ。おいヒサノブ!片付いたら深く掘ってくれ。おれがこの虫どもの死骸を集めるからよ。(ザッ)」
「(ガガッ)わかりやしたコウジさん!!あと2匹なんで!!待っててくだ(キーーン!!ガッ)」
「(ガガッ)だから、無線で大声出すなっていつもいってんだろ!?(ガッ)」
また声が!キョトンとしているとフカツが気付いたらしくクルクル線付き小箱を手に取り
「あぁこれね。無線って言って遠くの人と話しが出来るんだよ。電話もあるんだけど、この世界じゃ使えないみたいで」
「ムセン!?」
驚く事ばかりだ!この三人はムセンと言う遠話魔法が使えるらしい。
大体わかってきた。
恐らくこの者達は魔法使いで、このユニック・ユンボ・ブルドーザーと言う従魔を使っているんだな!
しかし、こんなに筋骨隆々な魔法使いは見た事が無い。
ならばビーストテイマーか?
そういえば聞いたことがある。はるか西方の蛮族には魔獣を捕まえ調教し従える者たちが居ると。確かにヒサノブと言うヤツを見たが蛮族らしい振る舞いだった。
俺が納得し、うなずいているとフカツが話しかけてきた。
「なにか心の中で勘違いしてるみたいだけど……納得してるんだねぇ〜………」
引き釣った笑みを浮かべている。
はっ!
いやいや!
フカツとコウジはとても紳士的ですよ!
理解してます!
恐らく蛮族の中でも上流階級なのですね!
俺は心の中で理解し微笑み返した。
「カマキリ退治はできたみたいだ。後は片付けだけだね。俺はチョットシートを回収しに行ってくるけど一人で大丈夫?」
フカツが俺の顔を心配そうに覗き込む
「はい!私は大丈夫です。色々とお心遣いありがとう御座います。」
フカツはそう言う俺に安心した様子でユニックから出ていった。
外に目をやるとユンボと言う魔獣が大穴を掘り、ブルドーザーと言う魔獣がジャイアントマンティスの死骸を見事な速さで集め穴に落としている。
俺には何も手伝う事は無いだろう。下手に出ていけば足手まといにもなりかねない。
は!
なんて事だ!今気付いてしまった!
このビーストテイマー達が司祭様の召喚したという異世界のお供達ではないのか!?
いや!きっとそうだ!これほどの力なら魔王軍とも対等に戦える!
恐らく魔獣一体で大隊クラスの力があるはず…
ならばあの三人は大隊長クラスの強者達……
レベルは低く見積っても25…高くて30は有るだろうか?
まあ、レベル36の俺から比べるとまだまだだが、強力な仲間だなハッハッハ!
そんな事を考えていたが100匹以上居たであろうカマキリ達の処理はまだまだ終わらず、フカツも一度は帰ってきたが、コウジ達を手伝うと言ってまた出ていき、俺は手持ち無沙汰だった。
そうなると、目の前の不思議な装置に目が行き、気になり始めた。
そもそもこの場所は魔獣の頭の上なのか?
ユンボとブルドーザーは姿から見ると、恐らく背中に乗っているのだろう。だが、このユニックと言う魔獣はここが先頭だろうから頭の上に乗っていると考えればいいのだろうか。そしてこの目の前に並んだ色々な装置が魔獣を操る道具なのか?
好奇心が湧いてくる。
とりあえず何か触ってみたい。
触りたい!
いやだめだ!魔獣が機嫌を損ねて食べられでもしたら……
でもチョットだけなら…いやいや!
でも〜
この【COOL】って文字のところが芋虫みたいで何か可愛い感じがする。
ここなら大丈夫かもしれない〜。
俺は意を決して触ってみた。
すると、何ということでしょう〜。
どこからともなく爽やかな冷たい風がやってきたのだった。
あ〜♡涼しい〜
鎧を着込んで暑かった俺にこんなに涼しい風を起こしてくれるなんて〜。
まさか北の魔獣なのか?
ありがとう〜〜。
………
ありがとう。
………
ありがとうもういいよ。
……寒くなってきたから……
チョット?寒いよ?
寒い 寒いよ?ねぇ寒いから。
寒いんだって!寒い寒い寒い寒い!!
はっ、まさか!やはり勝手に触った俺に魔獣が怒り、俺を凍らせて食べる気では!?
うぉーー!まずい!まずいぞ!
「ガガッ。おーいフカツ。あんちゃんが車ん中で騒いでっから行ってみてくれ。ザッ」
コウジの声が聞こえた。助けてくれコウジ!
そう思ってると右側の扉が開きフカツが帰ってきた。
その後、これはエアコンと言うもので空気の調整をする物だと教わった。
フカツが何やら調整すると震える俺を温かい風がつつんでくれた。
もう魔獣にイタズラはしまいと誓った俺であった。




