第7話 初めてなんだから優しくしてね
「よく聞けユリア」
「なぁに?」
可愛い顔で微笑みかけるな。幼女と分かっていても抱きしめたくなるじゃないか。いかんいかん、俺はロリコンなんかじゃねえからな。
「お前の言う通り魔力が無限なら、メテオレインは国どころか大陸さえ消滅させかねない」
「そうなの?」
「そしてお前はその威力をイメージで制御出来る」
「そうみたいね」
コイツ本当に分かってるのか。
「つまり、この国にあれば頼もしい限りだが、他国に渡れば脅威以外の何者でもなくなるということだ」
「だから王国は私を手厚く迎え入れるんじゃないの?」
「甘いな。いつ爆発するか分からんような危険なものを手許に置こうと思うか? まして中身はともかく見た目は幼女なんだぞ」
「なるほど、そういうことなのね」
「分かってくれたか?」
「要するに貴方は私を手放したくない、と」
「おい……」
「心配しなくてもいいわ。私も貴方みたいなイケメンを手放すつもりはないから」
ダメだコイツ。てか、いけめんってどんな意味だよ。悪口ではなさそうだが。
「幸い真実の氷も元通りだし、ユリアちゃんはBランクということでどうかしら」
「どうして私がこの人より下なわけ?」
「お前のその見た目でいきなりAランクとかじゃ怪しまれるだろ?」
「別にSでいいじゃない」
「幼女がSランクだなんて知れてみろ。毎日毎日引っ切りなしに決闘を申し込まれるぞ」
「Sランク冒険者に決闘で勝てば、その時からSランクを名乗ることが出来るのよ」
「ふーん、Sランクってそんなにすごいの?」
「宿代も食事代も全部所属ギルド持ち。その上依頼を遂行するのに必要な荷物持ちなんかも、ギルドが雇って付けてくれる。他にも……」
「分かった、もういいわ。要は私をSランクにしちゃうとギルドが損するから、Bランクにしておこうというわけね」
「勘違いしないで。表向きはBランクだけど、ちゃんとSランクの扱いにはするから」
さすがギルマスだ。彼女の性格を理解したらしい。
「そう? ならまあ、正直ランクなんてどうでもいいし、好きにするといいわよ」
「お前なぁ……」
やはりランクより特典が目当てだったか。
「ね、あの家はリュオの持ち家?」
「家なしAランク冒険者とは俺のことだ。あれは借り物だが、あと数日のうちに追い出されることになっている」
このところ依頼がなくて、実は今日の火噴き豚討伐も久しぶりだったのだ。お陰で家賃を滞納していたというわけである。
「情けないことを自慢げに言わないで。でもそれなら2人で泊まれるところを探しましょ。うんっと豪華なところがいいわ」
「ふ、2人で?」
嫌な予感しかしない。
「当たり前じゃない。転生してきたばかりで右も左も分からない、こんなに可愛くて幼気な女の子を放り出すつもり?」
「自分で言うか?」
「大丈夫よ。欲情して襲いかかってきても投げ飛ばしたりしないから」
「お、お前何を……!」
ほら、やっぱり。
「その代わり」
「その代わり?」
「初めてなんだから優しくしてね」
「かはっ!」
体つきは幼女なのに、顔だけは女の表情を見せるからタチが悪い。ダメだダメだ。幼女に欲情なんかしてたまるものか。あと10年、いや、せめて成人として認められる15歳になる7年後なら。
そんなことを考えていた俺に、ナハルが冷めた視線を向けていた。