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第5話 メテオレイン!

「ほへぇ~」


 幼女とはいえ、風呂上がりの姿はなかなかに目を引くものがある。ユリアは元々顔が可愛いし、ナハルが用意した赤いワンピースもよく似合っている。それにポニーテールにした髪も、一段と彼女を引き立てていた。


「どう? 惚れちゃった?」

「バカ言え! 誰がガキんちょなんかに惚れるかって」


 いや、実際はちょっと持ってかれそうになったけど。


「失礼ね! 言ったでしょ、小さな体は魔力を抑えるためで、女の機能は全て満たしているって!」

「へいへい、中身は20歳の()()()()()()()だっけ?」


「今に見てなさい。私が欲しくて欲しくて我慢出来ない体にしてあげるんだから!」

「処女だったクセに」


 しかしまあ、10年後なら是非とも言ってもらいたい台詞(セリフ)だ。


()()喧嘩(げんか)はそのくらいにしておきなさい」

「痴話げ……」

「そんなことより真実の氷、でしょ」

「そうね、そうだったわ」


 真実の氷、それは冒険者がギルドに登録する際に使う、能力のみに反応し熱では溶けることのないと言われる氷である。この氷が溶けた量によってギルド内でのランクが決まるというわけだ。


 ちなみに王都のAランク冒険者でも、わずかに数滴の雫が垂れる程度。俺なんかは雫どころか表面に1滴にも満たない(にじ)みを浮かび上がらせるので精一杯だった。


 さらに上のSランク冒険者となると、現在のところ存在が認められているのがオーギュド・マカエナーという男ただ1人。王都にあるギルド、アトロシーの魔法剣士(ソーサラーナイト)である。彼は氷から小さなコップ1杯ほどの水を(したた)らせたそうだ。


「さて、アテルナ様から無限の魔力とメテオレインを授かったお前さんは、どれだけこの氷を溶かせるのか見物だね~」


「私のいた日本では水晶とか石板なんかを使うのが普通だったけど」

「そっちにもあったのか?」


「物語の中の話よ。実際には能力の測定は主にテストだったわ」

「てすと?」

「説明するのが面倒だから今のは忘れて」

「面倒って……」


 俺のことなど気にする素振(そぶ)りもなく、ユリアは銀の器にに鎮座する氷の球体をしげしげと眺めている。


「本当に、熱では溶けないみたいね」


「1滴でも溶けたら、ここにある注ぎ口みたいなところからこぼれ出てくるわ。そしてその瞬間にユリアさんのAランクが確定するの」

「そんなものには興味ないけど」


 嘘つけ。やる気満々にしか見えないぞ。


「で、どうすればいいの?」


「氷を溶かすのをイメージすればいいわ。例えば太陽で照りつけるとか、火炎魔法で焼くとか」

「魔法なんて使い方も知らないわよ。そうだ、メテオレインのメテオって流星のことよね。それをぶちかますのをイメージすればいいのかしら」

「い、いいんじゃないか?」


 俺に聞くなよ。てか、ぶちかますって。


「そう。ならやってみるわね。メテオレイン!」


 刹那(せつな)、部屋の空気が震えた気がした。いや、間違いなく震えている。その証拠にテーブルに置かれたコップがカタカタと音を立て、ピシッという音と共にひび割れていたのだ。イメージだって言われたのに、コイツ本当に魔法を放ちやがった。


「お、おいっ!」

「ちょっと!」


 こんなところで神話級の魔法なんか放たれた日には、俺たちだけじゃなく町自体が崩壊する。止めないと大変なことになってしまうよ。


「やめろ! ユリア、やめるんだっ!」


 だが、俺の声は魔法に集中している彼女には届いていないようだった。そして俺たちの目には、真っ赤に燃え上がった火の玉が映っていたのである。

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