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第4話 見たんじゃない、見えただけだ!

「パシルさんはこの後受けた依頼があるの。だから腕を折られたら困るのよ」


 女性としては長身のナハルは、若くしてこのギルドを任された実力者である。年齢は確か29歳と聞いたが、王都にいた頃はBランクまで上り詰めた猛者(もさ)らしい。当然、俺やパシルでは敵わない相手である。


「どうやら命拾いしたみたいね」


 言うとユリアは技を解き、着ていたボロ布の埃を払いながら俺の横に戻ってきた。


「パシルさんも、子供相手にムキになるようでは先が思いやられるわよ」

「うっ……」

「分かったらさっさと行きなさい。依頼主がお待ちだから」


 肩を落としながらすごすごと立ち去ろうとするパシルだったが、ユリアを一睨みすることだけは忘れなかったようだ。しかしそれに気づいた彼女が身構えると、慌ててその場から逃げていってしまった。


「さて、リュオナールさん、今日は何のご用かしら」


 そうだった。パシルなんかと遊んでいる場合ではなかったのだ。


「まずは依頼を受けた火噴き豚(ファイヤーボア)を届けに」

「そう。ならいつも通りにお願い」

「それとこのユリアについてなんですが……」


 俺は彼女が異世界のニホンという国からやってきたことと、アテルナ神からメテオレインの魔法を授かったと言っているのを伝えた。これには普段、何事にも動じることのないギルマスも驚いたようだ。


「それが本当ならギルドとしても放っておくわけにはいかないわね」


「ただ俺も(にわか)には信じられないので、真実の氷で見てもらえないかと」

「そうね。さっき見た戦い方も気になるし」

「あれは柔道……格闘技の技よ」


「じゅうどう……? 聞いたことがないわね」

「前世の異世界ではかなりの実力者だったそうです」


 身をもって体験したし、パシルの巨躯(きょく)があそこまで(もてあそ)ばれたのだから、確かに信じるに値する話ではある。それでもやはり、真実の氷で確かめてみないと完全に頷くことが出来ないのだ。


「にしても……」


 ところがナハルはユリアに目を向けて、上から下まで舐めるように眺めた。


「な、なに?」


「あなた可愛い顔してるのに、酷い格好ね」

「悪い? 気がついたらこれだったのよ!」

「パンツも丸見えだったし」


 ギルマスの言葉にユリアが俺をキッと睨む。


「貴方も見たの?」

「え? いや、見たっていうか……」

「見~た~の~?」


「み、見えただけだ! お前があんなことするからだろ! 見たくて見たんじゃねえよ!」

「仲がいいところを悪いんだけど、その姿のままだとちょっとね。いいわ、待ってて」


 それからしばらくして彼女が持ってきたのは、子供用の赤いワンピースだった。腰にはピンクのリボンがベルトのようにあしらわれている。それと――


「まずお風呂に入ってらっしゃい。下着もこれなら合うはずよ」

「ちょ、ちょっと!」


 ワンピースの上に置かれたパンツを奪い取るようにして、ユリアがナハルを睨む。


「あらごめんなさい。レディに失礼だったかしら」

「ブラは?」

「ぶら?」


「ブラジャーのこと……あ、そっか、こっちの世界では胸当てって言えば通じる?」


「胸当て……? もしかして乳当てのこと?」

「ちち……そうよ、それ!」

「あなたにはまだ必要ないと思うんだけど?」

「イテッ!」


 ユリアは真っ赤になって俺の足を踏みつけてから、ナハルに案内されて風呂に向かう。


 なんで俺が足を踏まれなきゃいけないんだよ。そうは思ったが、ユリアのあの顔を思い出すと不思議と怒りは湧いてこなかった。

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