跡継ぎ問題を
「もう、旦那様が……いくらお嬢様が可愛いからと、いつまでも婚約者を決めずにいたからこんなことに……旦那様のせいで……」
ぶつぶつとヘレンが呪いの呪文のようにつぶやきだした。
「お父様を悪く言わないでヘレン。物は考えようよ。結婚しないことで、私は女公爵としてやりたいことができるわ。公爵夫人となれば、領地運営には口を出すな、社交だけしていればいいんだと言われかねないし」
「まぁ、そうですねぇ。お嬢様は旦那様と領地をめぐって領民たちの生活を向上させるために知恵を絞って働くのが大好きですものね……」
そう。公爵家が国で王家に一番近い筆頭貴族と呼ばれるのは、何も血筋や地位だけでのことではない。
財力がけた違いなのだ。
似たような広さの領地を持つ他の貴族の何倍も豊だ。
国家予算と同じレベルのお金を持っている。
それは、もう、面々と受け継がれてきた歴代領主の努力のたまもので。お父様もその教えに従って領地を治めていた。
そう。「領民が幸せに暮らせれば、おのずと税収も上がる」というものだ。「増税すれば一時的に税収は上がるかもしれないが、領民は働く意欲を失い、徐々に税収は落ちる」と言われ、なるほどと思った。
てなことで、ロマルク公爵領の税率は低い。けれど、幸せな生活のため色々な産業が発達し、交易も観光も盛んでかなり潤っている。
「でも、跡継ぎはどうなさるおつもりですか?」
ヘレンがもっともなことを口にする。
「うん、だからね、結婚はしないけれど、子供は持つことにするわ」
「へ?いや、そりゃ貴族が多くの者と関係を持って子供を作ることは、よくある話ですが、それは男性の場合で、えーっと、それに、お嬢様そう言うタイプではありませんよね?ど、ど、どういうことですか?あ、もしかして、実は好きな人がいるけれど、結婚に反対されるような家柄の人だから、とか、そういう……?」
ヘレンの頭の中で、この一瞬にどれだけの想像が駆け巡ったのだろう。
「んー、恋愛も興味ないし。子供は子供でも、養子を迎えようと思うのよ」
「養子、ですか?」
「そう。生まれるかどうか分からない子供を待つより確実でしょ?跡継ぎさえできてしまえば、ああいう輩もいなくなると思うし」
ヘレンが複雑な表情を見せる。
養子案に大賛成というわけではないけれど、ああいう輩がいなくなるのは嬉しいという表情かな。
「セバス、今の話聞いていたわよね?」
ずっと部屋の隅で控えていた執事に声をかける。
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えへへー。ブクマもしてくれてありがとうです!
それから、私、どの作品でもほぼ執事の名前は忘れないようにセバスにしてる。キリリ