やっかいな人
「ただいまセバス。変わったことはない?」
屋敷に足を踏み入れてすぐにセバスに声をかける。
いつもなら、問題ないと笑顔が帰ってくるのだけれど……。下げていた頭を上げたセバスは無表情だった。
ああ、この表情をするときは、怒っているか、厄介ごとだ……。
「ルイード様がお待ちです」
……。厄介ごとの方だった。
ため息をついて、そのままいつもの部屋へと向かう。
ルイードは、謁見室ではなくお父様がお知り合いを招いて気兼ねなくお話をするために整えた小ぢんまりとしたサロンにいることが多い。
形式通り、侍女に入室の許可を取らせ、形式通り入室。そうして、形式通りの挨拶。
「お待たせして申し訳ありません」
突然来るルイードが悪いのだが、形式通りに事はすすめる。
「本日は特にお約束は無かったと思いますが、急用でしょうか?先ぶれを寄越していただければ、準備いたしましたのに」
事前に連絡しなかったルイードが悪い。待たせたのは私のせいじゃないを精一杯アピール。
「ふっ」
ルイードが楽しそうに笑った。
一人がけのソファの一つにどっかりと座り、足を組んでいた男が立ち上がった。
身長は190はあるだろうか。私よりも頭1つ分以上は高い。がっしりとした鍛え上げられた体だ目の前に立たれるとそれだけでも威圧感がある。
ほとんど黒に近い深い茶色と瞳。相変わらず、にくらしいくらい整った顔をしている。
「先ぶれを出して、俺が訪ねていくなんて知ったら、間違いなく君は逃げるだろう、リーリア」
それは、そうね。
っていうか、その日は都合が悪い、体調がすぐれないだの言って断ったって、都合に付き合うだのお見舞いに来ただの、押しかけてきたのはどこの誰だか。
かくなる上は、姿をくらますしかないと思うのよ。うん。
「それで、どのようなご用件で?ルイード王弟殿下」
目の前に立つ男の顔を見上げる。
3つ年上だとか、仮にも王弟に対してだとか、不敬だなんだと言うような関係ではない。
言うなれば、幼馴染というか、親戚関係でもあるため、小さなころからしょっちゅう顔を合わせていたというか。まぁ、兄妹に近いというか……。
ルイードが私の手を取った。
「そろそろ、婚約しないか?」
「そのお話は、生前父がお断りしたはずです」
何度目の会話になるのか。
「ああ、確かにな。私のかわいいリーリアにブースと言ったお前との婚約など許さぬと断られたな」
「そうですわ。私が5歳、ルイード王弟殿下が8歳の時でしたわね。私の顔を見るたびにブスが来ただの、ブス、ブス……と」
ルイードがバツの悪そうな顔をして頭をかく。
「それは、あれだ。俺も普通のガキだったってことで……分かるだろ?」
何が分かるというのか。
どうも。新キャラ登場です。
見事に、哀れです。
コメディですから。




