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繰り返されるあの話

 お父様も、適当なところで手を打てばよかったのに。23歳のときに舞い込んだ話は悪くなかったと思いますわ。

 読書が趣味で人づきあいをさっぱりしない28歳の子爵家3男。面倒ごとがなさそうでよかったのに。父ときたら、娘を愛してくれる人間じゃなきゃダメだ!娘と本とどっちが好きかと尋ねて、本だと答えたんだぞ!……と。いや、貴族の結婚に愛を夢見るから……。お母様が亡くなってから後妻も取らずに、跡取り息子がないままになって……ですね……、今、私、こんなことになってると思うんですよ。

 頭ツールニ伯爵は、窓から差し込む光でピカピカと汗の浮かんだ頭を輝かせながら、濁った眼をこちらに向ける。

「喪が明ければ、リーリア様も30歳……」

 来たぞ。

 また、その話か。

 領地運営、公爵家にとって有益なお話があります。ぜひ面会を!と言われて会って見れば。

 父が亡くなり、悲しみが癒えぬうちから何度となく繰り返されるやり取りだ。

「女の30歳と言えば、子供の二人や三人いてもおかしくない、歳。未だ独身では、外聞も悪いでしょう。しかも公爵家のご令嬢でありながら、この年まで独身を貫いたリーリア様は、なんとお噂されているのかご存知でしょうか」

 はいはい。

 ここからしばらく私のディスりが入るんですよね。

「リーリア様のお顔を見たことのないやからは酷くみにくいのだろうと噂をしております。なんのなんの、お会いしてみれば、30歳という年齢を差し引いても、魅力のあるお姿だを私は思っておりますよ」

 自分は悪く思ってないよと言いたいんだろうけれど、いちいち30歳と馬鹿にした言葉が入ってるの、気が付いているのかなぁ?全然持ち上げてないんだけどね?

「その年から結婚したとして、子をなすことはできないと言う者もいますが、幸いにして私には息子が2人おります」

 ……。

「子供を育てる喜びも味わっていただけますよ」

 その、子供を産んだ母親はどうしたんだと言いたい。

 それに、まさか、将来的には時期公爵にするつもりなんじゃないだろうな?公爵家の血が一滴も入ってない連れ子が後を継げるとでも思っているのか?いや、流石に腐っても侯爵だし、それはないか。

 公爵家の名前を使って、より良い嫁ぎ先を探すとか、商売に利用するとか、他の貴族に大きな顔をするとか……。

 ああ、もううんざり。

「それで、公爵家にとって有益なお話というのは何ですの?早く本題に入っていただけませんこと?」

 手に持っていた扇子を、わざと大きな音が鳴るようにぱちんと閉じる。


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