けーる
「ええ、もちろん。普通は自分たちが食べる分の作物は自由に作ってもらうのだけれど。ソフトケールは冬にも収穫できる葉物野菜で、栄誉もある上に、乾燥させれば保存もできるのよ。しかも、ケールに比べて苦くない」
アルバートが感心したように頷いた。
「それは、すごいですね。どうしても冬場に食べられる野菜は不足するので、保存までできるなら便利ですね」
「そうなのよ。だからうちの領地の産業として発展させられないかと考えているところなんだけれど……」
「何が問題なんですか?」
「栽培に手がかかるらしいの。どうも、土が悪いと収穫量が格段に減ってしまい、冬まで持たないらしくて。こまめに栄養を与えないといけないので、重労働だし、栄養となる堆肥の量も増えれば堆肥も作る手間もかかるでしょう?しかも、乾燥させて粉にしてしまうと、芋1個に比べてすごく少なく見えるのよ。かるいし。それなのに、値段は高いって、いくら栄養が取れますよと言っても……売れないかもしれないし……。
領内で冬に自給自足する分に抑えた方がいいのか……」
アルバートがさらに首をかしげる。
「栄養価が高くて軽くて小さくて保存もきくなら、喉から手が出るくらい欲しいような気がしますけど……」
「え?でも、値段の割に満腹感は得られないから……損した気分になるだろうし……」
アルバートがぷっと噴出した。
「まさか、公爵家のご令嬢から、甘いチョコレート1粒よりも、お腹いっぱい食べられる肉の方がいいなんて、兄や友人たちと同じような言葉を聞くなんて思ってなくて」
うっ。私は、自分の食べるときの話じゃなくて、一般論で……と、つい反論しようとしたくなって、やめた。
反論しようなんて何で思ったの?食いしん坊だと思われるのがいやだったから?
別に、親子の間で、食いしん坊だと思われたって恥ずかしくもなんともないわよね?
「……ほら、やっぱり同じお金を使うなら肉の方がいいでしょう?だから、売れないわよねぇ」
と、私のことから話を逸らす。
「いえいえ、売れますよ。例えば船乗りが欲しがると思いますよ。脚気という病気にならない為に、船には果実を積み込んだりしているんですが、その代わりに軽くて場所を取らない物で代用できるのであれば、果実を積み込まなくてもよくなったスペースに、積み荷が積める。もしくは、お酒を積める」
「船乗り……」
その発想は無かったわ。
確かに、お腹いっぱいの観点からいえば同じ価格で買える芋1個と、ケールの葉っぱ1枚だったら、芋のほうが絶対いい。
だけれど、逆に、軽くてかさばらない物が欲しければ……。




