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Cafe Shelly

Cafe Shelly 届け、この想い

作者: 日向ひなた

 今、私は五千人もの観客の前に立とうとしている。こんな大舞台に立てる日がやってくるなんて。まるで夢みたいだ。けれど、これは夢ではなく現実。

「それではいよいよ、夢見かなのコンサートのスタートです!」

 MCの元気な声で、私は舞台の裏から勢いよく登場する。すると、観客が一斉に声を出して私を出迎えてくれる。うん、これだ。この瞬間を待っていたんだ。ここまでくるのに、本当に時間がかかった。けれど、あきらめないでよかった。

「みなさーん、こんにちはー」

「こんにちはー」

 私の呼び声に観客達も応えてくれる。このとき、三年前の惨めな思いをしたことが頭をよぎった。地方の遊園地での営業で、同じように呼び声をかけたけれど、そこにいたのは老人と小さな子ども、そしてその母親ばかり。みんなポカーンとした顔で、私のせいいっぱいの営業スマイルをただ眺めていただけ。

 けれど、そんな中にも私のファンはいてくれた。たった二人だけだったけれど、熱心に私のことを応援してくれる人だった。その二人のうちの一人は、今観客席の一番最前列にいる。そしてもう一人は…。

 いけない、今はそんな感傷に浸っている場合じゃない。精一杯の歌声をみなさんに届けなきゃ。

 曲のイントロが流れる。今日の一曲目は元気な歌。こうして私のコンサートがスタートした。あとは無我夢中でステージをこなし、心地よい疲れが私を包み込んだ。

「かなちゃん、おつかれさま」

「とっても良いステージだったよ。サイコー!」

 コンサート終了後、たくさんの人が私にそうやって声をかけてくれる。そして、一人の男性が楽屋の前で私を待ってくれていた。あのたった二人だった熱烈なファンのうちの一人。小さな花束を持っている。

「かなさん、ありがとうございました。あいつも天国でとても喜んでくれていると思います」

 笑顔なのに泣きそうな顔をしている。私も、つい涙ぐんでしまった。

「塚原さん、いつも応援ありがとうございます。三宅さんも、きっと天国で喜んでくれていると思います」

 そう言って私はファンの男性、塚原さんから小さな花束を受け取る。今回、たくさんの花束をもらったが、これが何より一番うれしくて、そして一番価値のあるもの。なぜなら、この花束こそが私をここまで引き上げてくれた原動力だったからだ。

「はい、シェリー・ブレンドも持ってきました」

 塚原さんは水筒を私に差し出してくれた。これも忘れてはならないアイテムの一つだ。

「わー、ありがとう。シェリー・ブレンドか。マスターやマイさん、元気にしていました?」

「はい」

 塚原さんはにっこり笑ってそう言ってくれる。思えば、このコーヒーとの出会いが私の運命を良い方向に変えてくれたんだったな。


 三年前まで、私は売れない歌手だった。世の中にはアイドルと言われる人たちがたくさんいる。テレビなどで活躍しているのは、その中のほんの一部。私は歌が大好きで、いつかは大きな舞台で唄ってみせるという夢を持っていた。そして高校を卒業して芸能事務所のオーディションにチャレンジ。なんとか芸能事務所には入れてもそのままデビューというわけにはいかなかった。

 今流行りのグループ歌手の一人として、なんとか入り込むことはできた。けれど、それは地方の小さなアイドルグループに過ぎない。小さなイベントや地域の祭などのステージには立つことができた。が、十五人もいる中のひとりだし、しかも立っているのはセンターではなく端の方。そのため、私という存在が知られることはほとんどなかった。これが八年前の出来事だ。

 それから三年間は小さなアイドルグループで活動をしていたが、そのグループ自体が売れることがなくて解散となった。

「私、これからどうしよう?」

 行き場をなくしてしまった。二十を超えると、もうアイドルとしていけるほどの年齢でもない。けれど、捨てる神あれば拾う神あり。

「かなちゃん、あなた歌はとびっきりうまいんだから。ソロでやってみない?」

 当時の私達のマネージャーから、そんなことを言われた。

「でも、もうアイドルとしては無理じゃないかなぁ」

「別にアイドルじゃなくてもいいじゃない。正統派の歌手として、もっと大人の歌を唄ってみるのはどう?」

「正統派の歌手?」

「うん。実はね、ある人があなたに目をつけたのよ。一度会ってみない?」

 そう言われたら、そこに飛びつくしかない。他のメンバーは芸能の道をあきらめるか、思いっきり路線変更をしてお笑いやグラビア系に行く人もいた。が、誰も再び歌の道には行かなかった。自分の歌唱力がないことがわかっていたみたい。

 けれど、私はもともと歌いたくてこの道に入ったんだから。これはチャンスだと思って、マネージャーが言う人に会うことにした。

「こちらが作曲家の渡先生」

 私が出会ったのは作曲家の先生。地元で演歌を中心に活動されている先生ということ。演歌かぁ、ちょっと私のイメージとは違うんだけどなぁ。

「かなちゃん、あんたの歌声はいいねぇ。ぜひ君に一曲つくらせてもらいたいんだがね」

「はい、よろしくおねがいします」

 と、元気よくお願いしたものの、演歌というところが頭にひっかかった。けれど、歌で勝負をしていくのならなりふり構ってはいられない。マネージャーも事務所をあげてサポートしてくれるということだったので、これから生き延びていくためにはやらざるを得なかった。

 そこから私は一転。今までフリフリの衣装を着ていたのが、急に着物を着ることになった。また、普段着もなるべくシックなものを身につけるように言われた。演歌歌手としての「夢見かな」を印象づけるためだ。

 ここから地方のドサ回りが始まった。夜の飲み屋街でのキャンペーン。小さなイベントでのミニコンサート。老人ホームなどでの慰問などなど。その場では「応援するよ!」と言ってくれはしたものの、爆発的なヒットには至らない。私、本当にこのままでいいんだろうか。そんな葛藤も続いた。

 そうやっていろいろなところを回っていくうちに、あることに気づいた。地方のイベントやコンサートなどの公の舞台に立つと、いつも真ん前に二人の男性がいて、私のことを応援してくれる。

 そういえば、まだグループでアイドル活動をしていた頃から熱烈なおっかけファンのグループがいたことを思い出した。でも、あのときは二十人くらいだったから、どんな人がいたのかなんて覚えていなかった。おそらく、今目の前で私のことを応援してくれている二人は、その頃からいたに違いない。

「かなちゃん、今日もステージお疲れ様。地道な活動だけど、少しずつ人気は高まってきているよ」

 マネージャーはそう言って励ましてくれる。が、私としてはそんな実感はない。とにかく目の前のステージをこなし、精一杯の笑顔を振りまくのでいっぱいいっぱい。

「マネージャー、私のステージを毎回見に来てくれている二人組の男性がいるじゃないですか。あの二人って、いつくらいからいましたっけ?」

「あぁ、あの二人ね。私も気づいてはいたけど。でも、ああいった熱烈なファンには気をつけてね。下手をするとストーカーになりかねないから」

 確かにそうかもしれない。でも、あの二人にはそんなものを感じさせるようなことはない。むしろ、いつも来てもらって申し訳ないと思うほどだ。

 そんなある日のこと、ステージが終わった後にとうとうこの二人と直接会話をすることになった。

「おつかれさまー」

 ステージ終了後、普段着に着替えて会場を出る。そして電車で帰ろうとしたときに、駅であの二人を見かけた。ちょっと声をかけてみようかな。

「あのー、すいません」

 そう言って二人の後ろから近づくと、二人は驚いた顔をして私の方を向いた。

「か、かなちゃん…」

「はい、夢見かなです。いつもお二人が応援してくれているの、すごくうれしくてつい声をかけちゃいました。いつもありがとうございます」

「ど、どうしてかなちゃんがこんなところに?」

「どうしてって、これから帰るところですから」

「こ、こういう人って、タクシーとかマネージャーが運転する車とかで帰るんじゃないんですか?」

「あはは、私はそんな身分じゃありませんよ。まだまだ売れていない演歌歌手ですから。貧乏だから、節約しなきゃいけないんですよ。お二人はこれから帰るんですよね」

「はい。僕たち、ずっと前からかなちゃんのファンでした。前のグループのときからかなちゃんだけを応援していたんです。周りのみんなはグループが解散したら、バラバラになっちゃったけど。でも、僕たちだけでも応援し続けようって、そう決めたんです」

「ありがとうございます。うれしいなぁ」

 それから電車の中で、二人のファンからいろいろな話をした。不思議だったのは、そんなに私のファンなのに、今まで出待ちをしなかったこと。それにサインも求められたことがない。このことを尋ねたら、こんな答えが返ってきた。

「僕たちはかなちゃんに迷惑をかけたくないんです。今はアイドルから演歌歌手に転身したばかりだし。だから、二人でそっと見守っていこうって、そう決めたんです」

 そんなに私のことを考えてくれていただなんて。逆にこちらからサインをしたくなってきちゃった。それをこちらからリクエストしたら、二人とも目を丸くして驚いてくれた。

「せ、せっかくだからこのシャツにサインをしてもらっていいですか?」

「うん、わかった。あ、名前も入れるね。えっと、お二人の名前は?」

「僕は塚原といいます」

「ぼ、僕は青木です」

「わかった、塚原さんと青木さんね」

 電車の中にもかかわらず、私は二人に快くサインをしてあげた。この時の二人の喜び方は尋常ではなかった。が、それだけ喜んでもらえたのは嬉しいことだ。

 この二人のファンのためにも、もっと頑張らなきゃ。そう思っていた矢先に、とんでもない問題が発生してしまった。

「えっ、この曲を歌っちゃいけないんですか?」

「そうなのよ。先方から連絡があって、著作権料を払っていると言ってもこの曲は歌わないで欲しいと通達がきちゃったの」

 私の持ち歌は、悲しいことに二曲しか無い。そのため、ミニコンサートなどでは私のお気に入りの曲を何曲か歌わせていただいている。その中の一つであり、私の得意とする歌を歌えないという通達がきた。

「でも、どうしてそうなっちゃったんですか?」

「うぅん、かなちゃんには直接関係ないんだけど。実は渡先生とこの歌の作曲家、あまり仲が良くないのよ。で、今までかなちゃんがこの歌をコンサートで歌っていることは先方は知らなかったんだけど、何かの拍子で知っちゃって。それでね」

 そんな事情があるだなんて。演歌歌手とはいえ、ポップスなんかも歌うことでコンサートでは変化を見せることができ、これが結構評価が高かったのに。

「じゃぁ、別の歌を探さないと」

「でも、あの作曲家の手がけた作品はたくさんあるから。そこは気をつけてね」

「はい」

 はい、とは言ったものの別のお気に入りの曲なんか早々見つかるものではない。次のステージも近づいているのに、曲の構成はどうしよう。本当に困った。

 このことを、ついブログで愚痴ってしまった。私のブログ、ほぼ毎日更新はしているけれど、見てくれる人はほんのわずか。そんなところに愚痴ったところで解決策なんて見つかるはずがない。

 ところが、私のブログに初めてコメントがついた。この前出会った青木さんからだ。

「悩みを解決するために、ご紹介したいお店があります。事務所にお手紙を差し上げますので、ぜひ訪れてください」

 さらに、塚原さんからこんなコメントが入った。

「かなちゃんにはこんな愚痴のブログは似合いませんよ。いつも前向きで、明るい歌を僕たちに届けてください」

 そういえば、青木さんと塚原さんの連絡先なんて知らない。でも、二人とも私のことをいつも見てくれているんだ。そんな安心感が湧いてきた。

 よし、気持ちを切り替えよう。このブログは削除。そして翌日事務所に向かうと、塚原さんからの手紙が届いていた。

「カフェ・シェリーというお店に行ってみてください。そして、そこのシェリー・ブレンドを飲んでみてください。このコーヒーには魔法がかかっています。今望んでいることに対しての答えが見えてきます」

 コーヒーに魔法がかかっている?どういうことだろう。ちょっと大丈夫かな?

 悩んでいたって仕方がない。ここはファンを信用して、このカフェ・シェリーに行ってみよう。

 この日はオフ日なので、早速この喫茶店に足を運んだ。場所は街中。そういえば街中を一人でウロウロするのって久しぶりかも。高校時代はよく友達と遊びに出たものだ。今はイベントでしか来ないし、服を買いに行くのも決まった店にしか行かなくなったからなぁ。

 あ、この通りだ。ここは高校時代にもよく歩いたところだ。でも、こんなところに喫茶店なんてあったかな。高校生の時には喫茶店って行かなかった。ほとんどファーストフードだったからなぁ。

 通りの中ほどにその喫茶店はあった。通りに黒板の看板が出ている。そこにはこんな言葉が書いてあった。

『思い切った行動、それはあなたの人生を思いっきり変えるきっかけになります』

 思い切った行動、思えば高校を卒業して地元にある芸能プロダクションのオーディションにチャレンジしたときは、思い切った行動だったな。周りのみんながびっくりしてたもん。そのおかげで今の人生がある。

 アイドルグループが解散して、私だけ演歌歌手として再デビューした。これもある意味思い切った行動だ。でも、まだまだ芽が出ないのは残念だけど。

 このお店に来たのも、思い切った行動かもしれない。一ファンから送られてきた情報だけでここにやってきたのだから。けれど、ここで何かつかめるかもしれない。一縷の望みにかけてみるしかない。

カラン・コロン・カラン

 喫茶店の扉を開くと、心地よいカウベルの音。同時に漂ってくるコーヒーの香り。その中に甘い香りも含まれて、一瞬にして異世界に飛び込んできた感覚を覚えた。

「いらっしゃいませ」

 女性店員の声。少し遅れて男性の渋い声で同じように私を出迎えてくれる。

「お一人ですか?」

「はい」

「こちらへどうぞ」

 案内されたのは、窓際の半円型のテーブル席。そこは四席ほどあり、一つ飛ばして本を読む男性のお客さんがいた。なんだか落ち着く空間だな。

 お店を見回すと、ブラウンとホワイトのシンプルな内装。ジャズが流れているけれど、それほど気にならない程度の音量。お店のカウンターにはマスターと思われる男性がコーヒーカップを磨いている。

 先程私を案内してくれた女性店員。若くて髪が長くてきれいな人だ。ここで思いもしなかった質問が飛び出した。

「あの、失礼ですが。ひょっとしたら夢見かなさんじゃないですか?」

「えぇっ、私のこと知っているんですか?」

「はい、以前ここに来られたお客さんで、かなさんの熱心なファンの方がいたもので。それで私もCDを買わせていただきました。まだ若いのに演歌の道に入ったということで、私も注目していたんです。わぁ、うれしいなぁ」

 握手を求めてきた店員さん。こうやって喜んでもらえると、歌を続けてよかったって思う。

「ところで、その熱心なファンの方って青木さんと塚原さんっていう方じゃないですか?」

「あー、お名前はうかがっていなかったけど。二人組でしたね」

「じゃぁ間違いないかな。実は、あることで悩んでブログで愚痴を書いたら、その二人からこのお店を紹介されたんです。なんでも、魔法のコーヒーというのがあるっていうことで」

「そうだったんですね。じゃぁ、やっぱり飲んでいただくのはシェリー・ブレンドですね」

「そう、それ。それをお願いします」

「かしこまりました。マスター、シェリー・ブレンドワン」

「はい、シェリー・ブレンドお一つですね」

 店員さんの声に答えて、カウンターのマスターが注文に応える。一体どんなコーヒーがでてくるんだろう。

 一旦、店員さんは店の奥に引っ込む。しばらく待っていると、今までジャズが流れていたのに曲が変わった。

「えっ、これって私の曲!?」

 なんと、私の歌っている曲を流してくれているじゃない。これにはびっくり。そして店員さん、店の奥から出てくるなりこんなことを言ってくれた。

「今流れている曲を歌っている、夢見かなさんがお店にいらっしゃっています」

 すると、お店にいたお客さん三人の視線は私に注がれた。通常の芸能人だったら、プライベートではこういうのはご法度だろう。けれど今の私は逆。むしろいかにして私という存在を普段からどれだけアピールできるか。これを常に意識している。そんな私の心を読んでいたかのように、店員さんはこんな行動に出てくれたのだ。

「あなたがこの曲を歌っているんですか。いやぁ、歌唱力がすごいですね。高音の伸びが素晴らしいです」

 隣に座って本を読んでいた男性が私に話しかけてくれた。

「いい歌だね。ぜひCDを買わせてもらうよ」

 カウンターにいた二人組のうちの一人がそう言ってくれた。

「ありがとうございます。今度遊園地でミニコンサートがあります。こちらにもぜひお越しください」

 立ち上がって思わず宣伝までしてしまった。言ってしまって、そもそもここに来た目的を思い出した。ミニコンサートでの曲、どうしよう。

「そんな夢見かなさんに、私からプレゼントです。シェリー・ブレンドに特性クッキーをおつけしました。先に黒い方のクッキーから口にしてシェリー・ブレンドを飲んでくださいね」

 店員さんが運んできたコーヒーの皿に、黒と白のクッキーが一枚ずつ乗っていた。

「このクッキーは?」

「黒は黒ごま、白はミルククッキーです。どちらもシェリー・ブレンドの魔法の効果を高めてくれるの。飲んだときの感想を教えてね」

 魔法の効果を高めてくれるって、どんなふうになるんだろう。まずは言われたとおり、黒ごまのクッキーを口に含む。うん、おいしい。パリッとした食感と黒ごまの風味が口の中に広がる。そしてコーヒーを口にする。すると、黒ごまの風味がさらに口の中に広がる。同時に楽しさがこみあげてきた。この楽しさ、私が歌っているときの気持ちと同じだ。

 そもそも私は、歌うことが楽しくて、これをもっと味わいたくてこの世界に入った。今は演歌歌手として辛い時もあるけれど、ステージに立ったときにはたとえお客様が少なくても、楽しく歌わせてもらっている。そのことを忘れるところだった。

「お味はいかがでしたか?」

「はい、なんだか楽しさがこみ上げてきました」

「ということは、かなさんは楽しく歌っていたい、ということですね」

「えっ、どうしてそれがわかるんですか?それに、このシェリー・ブレンドの魔法ってなんなんですか?」

「シェリー・ブレンドは、飲んだ人が今欲しいと思っているものの味がするんです。そして、この黒ごまのクッキーはその効果をさらに強くするもので、なりたい自分の姿を見せてくれるんです」

 そんな魔法のようなコーヒーとクッキーがあるんだ。でも、その効果は間違いない。だって、今私が味わったときにイメージが浮かんできたものは、まさに私がありたい姿そのものだったから。

「じゃぁ、こっちのミルククッキーはどんな効果があるんですか?」

「それは食べてみてのお楽しみ。そちらもぜひ味わってください」

 店員さんに言われる通り、早速白いミルククッキーを口に入れる。こちらは舌触りがやわらかくて甘い味がする。さらに、コーヒーを口に流すと、すぐに溶けていく感じがする。こちらもとてもおいしい。

 それと同時に、小さい頃の私の姿が思い出された。あの頃、私は無邪気に歌を歌ってたな。自分で作った歌を、両親の前で披露したこともあった。自分で作った歌、そうか、その手があったか。

「自分で歌をつくればいいんだ」

 この言葉が自然に出てきた。

「なにか気づいたようですね」

「はい、次のコンサートの選曲のことで悩んでいたんですけど。でも、なんだかふっきれました。ありがとうございます。あ、でもどんな歌をつくればいいんだろう。演歌歌手だから、やっぱり演歌なのかなぁ…」

「その答えも、シェリー・ブレンドに聞いてみるといいですよ」

 私はあと少し残っているコーヒーを見つめた。「うん」とうなずいて残りのコーヒーを一気に口の中に流し込む。そして目を閉じる。

 すると、パッと目に浮かんだのは青木さんと塚原さん、二人のファン。その二人が私に何かを言ってくれている。何だろう?

 でも、なんとなくわかった。もっと周りのファンの声に耳を傾けてみること。みんなが私に何を望んでいるのか、期待しているのか、それを歌にしてみるといいんだ。ここで目を開ける。

「なんとなく見えてきました。ありがとうございます。早速あの二人に尋ねてみなきゃ」

「何か見えたようですね。いい歌ができることを期待していますよ」

「はいっ」

 元気に返事をして、私はカフェ・シェリーを後にした。そして自宅に帰り早速ブログのメッセージ欄から二人に連絡をした。

 すると、十分も経たないくらいで二人ほぼ同時に私にメッセージが届いた。私はもう一つ、ツイッターもやっているのでそちらに誘導してみた。こっちは全くの非公式だし、名前も私の名前じゃないのでやっているので、誰も知り合いなんていない。と思ったら、この二人、すでに私のツイッターでも知り合いになっていた。おそるべし、だな。

 ともあれ、二人と連絡がついたので、もう一度直接会って曲を作りたいので力を貸して欲しい旨を伝えてみた。

「ちろん、喜んでお手伝いさせていただきます」

 ということで、早速明日会うことになった。場所はもちろん、あの喫茶店、カフェ・シェリーだ。

カラン・コロン・カラン

「こんにちはー」

 心地よいカウベルとともに、今回は私の方から元気よく挨拶をしてみた。

「いらっしゃいませ。あ、かなさん!」

「えへへ、今日も来ちゃいました」

 すると、二人はすでに店の真ん中にある丸テーブル席に位置していた。しかも、いつもとは違うおしゃれな格好をしている。

「か、かなさん。き、今日は僕たちに声をかけてくださって、ありがとうございます」

 緊張した声でそう言いながら、青木さんがとてもかわいらしい、小さな花束を私に渡してくれる。

「わぁ、ステキ。ありがとう」

 今まで何度か花束をもらったことはある。どれも立派なものだった。けれど、今手渡された小さな花束は、今までもらったどんなものよりもあたたかみを感じることができた。なぜだか胸にジーンとくるものがある。

 そうか、私、この二人のファンに愛されているんだな。この人達のためにも、もっと多くの人に歌声を届けなきゃ。応援してくれている気持ちに応えるためにも、もっともっとたくさんの人に私の想いを伝えなきゃ。

 そこからシェリー・ブレンドを飲みながら、いろいろな思いや考えが三人の中から浮かんでくる。それをノートに綴りながら、歌詞が浮かんでくる。さらに歌詞が浮かんだら曲のフレーズもできてくる。曲はスマホにその場でふきこんで記録をする。

 こんなことを繰り返していくうちに、一つの曲が完成した。

「じゃぁ、通して歌ってみますね」

 その曲は、演歌やポップスの類とは違う。どちらかというとバラードに近いかな。一通り小声でアカペラで歌ってみたところ、他のお客さんからも拍手をいただいた。

「すごい、なんかかなちゃんの今までの想いが全て込められている。胸に伝わるものがあります」

 塚原さんがそう言ってくれる。

 よし、これならいける。早速事務所に掛け合って、次のコンサートではこの歌をアカペラで歌わせてもらうことにしよう。

 そう思っていると、青木さんが両手で顔を押さえてじっと黙っている。どうしたんだろう?

「青木さん、どうかしましたか?」

 声を掛けると、青木さんは何も言わずに首を横に振るだけ。よく見ると、泣いているようだ。

「大丈夫です。こいつ、きっと感動しているんだと思います。かなちゃんに対しての思い入れが強いんですよ」

 塚原さんは青木さんの背中をさすりながらそう言う。本当に大丈夫なんだろうか?今回の歌詞の中には、青木さんのアイデアがたくさん入っている。それが歌になったから、こうやって感動してくれているのかな。よし、その想いもしっかりと歌に込めていこう。

 その後、あらためてカラオケボックスでスマホにレコーディング。それを事務所でマネージャーや関係者、そして社長にも聞いてもらう。

「うん、いいじゃない。これ、早速曲をつけさせよう」

「でも、一つ問題があります。渡先生が何と言うか…」

「うぅん、その問題があったか」

 せっかく歌自体は評価してもらったのに。そんなことで潰されてたまるか。

「私が直談判してきます!」

 渡先生に、この歌を聞かせて納得させたい。そもそも私は、渡先生の私物ではない。もっと自由に歌を歌いたい。そんな思いを込めて、マネージャーと一緒に渡先生のところへと向かった。

「なるほど、話はわかった。それにその歌もすばらしい。けれど、私は認めないね」

「どうしてなんですか?」

「どうしてもなにも、そんな歌を世に出されたら、私が手がけた歌はどうなってしまうんだい?霞んでしまうじゃないか。そうなったら、私の存在意義はどうなる?」

 まさか、そんな自分勝手な都合で私の曲を認めないだなんて。

「もしかなちゃんがこの曲を世に出したいというのであれば、今後一切、私の曲は歌わないで欲しい。わかったね」

 いくら有名な作曲家だからといって、こんな横暴はないだろう。とはいえ、アイドルグループ解散後に私に演歌の道を導いてくれたのは渡先生だ。その恩はある。また板挟みになってしまった。

 けれど希望は捨てたくない。何か道があるはずだ。

「マネージャー、私、ちょっと行きたいところがあるんですけど」

「どうしたの?ヤケになって変なことしないでね」

「大丈夫です。私を救ってくれる喫茶店に行きたいだけですから」

「かなちゃんを救ってくれる?」

 マネージャーに説明しても、シェリー・ブレンドの魔法のことは理解してくれないだろう。それなら連れて行ったほうが早い。

カラン・コロン・カラン

「こんにちはー」

「あ、かなさん、いらっしゃい」

 店員さんが笑顔で迎えてくれる。

「えっ、か、かなちゃん!」

 なんと、驚いたことに塚原さんがカウンターにいた。でも、青木さんの姿が見えない。

「塚原さん、聞いてくださいよー」

 私は泣きつくようにして、マネージャーを無視して塚原さんの隣りに座った。そして渡先生とのことを一通り話した。

「ひどいでしょー。だから、どうすればいいのかを探りたくてここに来たんです」

「ボクたちが一緒になって作った歌を歌えないだなんて。それじゃぁ、青木の想いはどうなるんだっ!」

 今まで温厚だった塚原さんが、感情をむき出しにして怒りを表した。

「青木さん、どうかしたんですか?」

「あ、いえ、こっちのことで。それよりも方法を考えましょう」

「そう思って、はい、シェリー・ブレンドです」

 カウンターでこの話を聞いていたマスターが、タイミングよくシェリー・ブレンドを差し出してくれた。

「マネージャーも飲んでください。そして頭に浮かんだことや感じたことを口にしてください」

 私とマネージャー、そして塚原さんも一緒にシェリー・ブレンドを飲んでみた。私はその味をしっかりと確認する。

 すると、舌の上で何かが湧き上がってきた。これは熱気。そう、コンサートで会場が湧き上がるあの熱気。これは演歌では見られないものだ。みんなが歓声を上げて私の出番を待っている。私はその期待に応えるべく、ステージの上に立つ。そう、私が望んでいたのはこんな光景。私の歌でみんなが沸き立つ、そしてみんなが喜ぶ。

「えっ、なに、このコーヒー?」

 マネージャーの言葉でハッと我に返った。

「どのような味がしましたか?」

 マスターがマネージャーに尋ねると、こんな答えが返ってきた。

「なにかわからないけど、すごく沸き立つ感じ。興奮と熱狂、うん、その言葉がぴったり」

「あ、僕も同じです。かなちゃんの歌でみんなが興奮してくる、そんな感じがしたんです」

 二人とも私と同じような味を感じたんだ。

「実は私も同じなの。コンサートで私の歌でみんなが歓声を上げている。そんなイメージが湧いてきたの。この光景は演歌だけじゃ無理。マネージャー、やっぱり歌わせてください。あのオリジナルソングがそのための一歩になるって思うんです。だから歌わせて!」

 私の想い、いやこれは私に関わっているみんなの想い。その想いを多くの人に伝えていくこと。これが私の使命だと思っている。

 すると、塚原さんが突然涙を流し始めた。

「塚原さん、どうしたんですか?」

「うっ、うっ…あいつも、あいつの想いも同じだって…」

「あいつって、青木さん?そういえば青木さんはどうしたんですか?」

「青木は…青木は今…闘っているんです…」

「闘っているって、どういうこと?」

「あいつは黙ってろって言ったけど、もう限界です。あいつは…青木は…末期がんなんです…」

「青木さんが…がん」

「青木のがんがわかったのは、かなちゃんを一緒に応援し始めた頃なんです。本当なら入院して、しっかりと療養しなきゃ行けなかったんだけど…でも、かなちゃんの歌を聴くのが、そして応援するのが一番の薬だって。だから痛みをこらえて応援してたんです」

「そ、そんな…」

「青木さんって、いつもこの人と一緒になってかなを応援してくれてた人?」

 マネージャーも心配そうにそう尋ねる。私は黙って首を縦に振った。

「じゃぁ、なおさらコンサートであの曲を歌わなきゃ。そして青木さんのことを応援しなきゃ!」

 今度はマネージャーのほうが熱くなってきた。

 よし、決めた。今度のミニコンサートではあの曲を歌う。もちろん、渡先生の曲も歌う。そして、渡先生に私の想い、さらには青木さんや塚原さん、そしてみんなの想いを伝えてみる。それでダメなら…

 そんなことは考えない。とにかくやってみる。

 このことを二人に伝えると、早速みんなで動き始めた。マネージャーは事務所にアカペラであの曲を歌うことの許可をとることに。塚原さんは青木さんにこのことを伝え、なんとかして次のミニコンサートに来てもらう許可を病院にとること。私はできあがった曲に魂を込めて歌う練習をすること。

 そうして、いよいよミニコンサートの日がやってきた。今回のステージはショッピングセンター。いつもどおり、ちょっと閑散とした会場。これはもう慣れっこだ。でも、ありがたいことに目の前のお客さんは少なくても、私の歌声を耳にしてくれる人はたくさんいる。これは気合が入る。

 私のステージの前に、マジックショーや漫才がある。そしてトリを務めるのが私。

「お次は、地元が生んだ演歌歌手。夢見かなさんの登場です。大きな拍手でお出迎えください」

 司会者がそう言うと、私は意気揚々としてステージに向かった。いよいよ勝負のときがきた。

 観客席を見下ろす。一番前には塚原さん。そしてその横には急激に痩せてしまった青木さんの姿。けれど二人はいつものように私に声援を送ってくれる。

 そして観客席の一番うしろに、ある人の姿をみつけた。渡先生だ。腕組みをして渋い顔で座っている。今日のステージ、どんなふうに私が歌うのか、その様子を見に来たのだろう。

 よし、私の覚悟を、そして私達の想いを思いっきり歌声にしてみせるぞ。

 一曲目は渡先生がつくった演歌。今まで以上に声を伸ばして、曲に込められた想いを意識して表現してみた。二曲目は子供受けする曲。軽く明るい感じで親子連れをひきつける。そしていよいよ三曲目、私達の作ったオリジナル曲だ。これにはまだ楽曲がないため、アカペラで歌うしか無い。

「次の曲は、今回はじめて披露するオリジナル曲です。この曲には私だけではなく、私を支えてくれた方たちの想いをのせています。聴いてください」

 一度深呼吸をして歌い始めようとしたそのとき、予想外のことが起きた。なんと、スピーカーからイントロが流れてきた。今までに聴いたことがない音楽だ。けれど、それは間違いなく私が今から歌おうとしていた曲のものである。どうして楽曲が流れるの?

 不思議に思いながらも、流れてきた曲に合わせて想いをのせた歌を歌う。すごく歌いやすい。みんなが私の歌に聞き入ってくれているのがわかる。さらに、ショッピングセンターで買い物をしていた多くの人が、足を止めて私の方を向いてくれている。

 そして歌い終わった後、ものすごい拍手の嵐。今まで何度もステージに立っているが、こんなに多くの拍手をもらったのは初めてだ。

 そのあと、サイン会とCD販売を行うのだが、持ってきた在庫はあっという間になくなった。これも今までにないことだ。

 一通りのステージが終了して、楽屋に戻ろうとしたときに、塚原さんと青木さんがやってきた。青木さん、泣きそうな顔をしている。

「かなちゃん、ありがとう。僕たちの想いをこんな歌にしてくれて、本当にありがとう。今までかなちゃんを応援してきて、本当に良かった」

 このときには、青木さんの顔は涙で溢れていた。

「かなちゃん」

 二人の奥から男性の声がした。あの声は…

「渡先生っ!」

「かなちゃん、私が間違っていた。やはりあの曲は世に出すべきだ。あれほどの魂の叫びを耳にしたのは久しぶりだ。昔の興奮が蘇ってきたよ。だからこそ、盛り上げるためにあの楽曲が必要だったんだ」

「ということは、あの楽曲は渡先生が?」

「あぁ、即興で申し訳ない。今度はちゃんとしたものを用意しよう」

 渡先生、前にお会いしたときの厳しい顔つきから一転、にこやかな笑顔になって私にそう言ってくれた。

「よかった、本当によかった。僕たちの想いが通じた。本当によかった…」

 青木さんがさらに涙を流してくれている。が、その時、青木さんが倒れ込んでしまった。

「おい、青木、大丈夫か?おい、青木、青木ぃぃっ」

「きゅ、救急車をよべっ!」

 その場は騒然となった。意識を失った青木さん。青木さんの名前をひたすら叫ぶ塚原さん。私はその場に立ちすくむことしかできなかった。

 それから二時間後、私は市民病院の一室にいる。ベッドには横たわった青木さん。横には青木さんのご両親。そして塚原さん。

「よくここまで耐えていました。それが不思議なくらいです。よほどの心の支えがあったのでしょう」

 お医者さんがそんなことを言った。が、私はこんなになってしまった青木さんを見つめるので精一杯だった。

「青木、今までよくがんばったな。かなちゃん、これからきっとお前の期待に応えて、あの歌をみんなの前で歌ってくれるぞ。だからもうお前は楽になっていいんだぞ」

 すると、青木さんの目がかすかに開いた。なにか言いたそうな目をしている。

「か…な…ちゃ…ん…ありが…と…」

「青木さんっ!」

 私は青木さんの手を取って、大きな声で叫んだ。青木さんはにこりと笑って再び目を閉じた。この瞬間、心電図が青木さんの死を告げたのがわかった。

「私、誓います。青木さんのためにも、そしてみんなのためにも、この歌をたくさんの人に聴いてもらえるようにがんばります」

 悲しんではいられない。熱心に応援してくれたファンの青木さんのためにも、一緒につくったこの歌を多くの人に聴いてもらえるように動かなきゃ。

 その決心のおかげか、楽曲が新たにつくられCD化も決定。販売と同時に口コミで徐々に私の曲が広がっていった。もちろん、渡先生のつくってくれた演歌も歌った。この異色の二曲が中心となり、私という存在が世間に知られるようになってきた。

 すると、私の後援会も立ち上がった。会長は地元の偉い社長さんが名乗りをあげてくれたが、その社長の元で一生懸命動いてくれたのが塚原さんである。塚原さん、この社長さんを説得して後援会の立ち上げを促してくれたらしい。そのおかげで、地元での私の認知度もかなり上がってきた。

 この動きがマスコミでも取り上げられ、私の曲は一気に全国に広がった。そうして今日、私の念願であった大規模なコンサートが開かれることとなった。

 ここまでくるのに三年間かかった。けれど、これはスタートに過ぎない。


「かなちゃん、青木も喜んでくれているはずです」

「うん、私もそう思う。あの曲を一緒につくったときに、こうなることを願っていたもんね。塚原さん、今まで私を支えてくれて、本当にありがとうございます」

「とんでもない。僕は一ファンとしてできることをやってきただけです。それよりも、ぜひシェリー・ブレンドを飲んでみてください。今この時に、どんな味がするのか。それを教えてください」

「うん、わかった」

 コンサートが終わった後に飲むシェリー・ブレンド。一体どんな味がするのだろう。私は今、何を望んでいるのだろう。

 楽屋にあるマグカップにコーヒーを注ぐ。そして香りを楽しんだ後、ゆっくりと口にする。そして目をつぶってみる。

 目の前に広がっている光景。それは今よりも広い会場で、さらに多くの人が私の歌を楽しんでくれている。さらに私はパワーをみんなに与えている。生きる力、希望、そして感謝の心。そこにはたくさんの笑顔がある。

「たくさんの人に笑顔になってもらう。そのためにまた歌い続けなきゃ」

「かなちゃんが今望んでいることはそれなんですね。僕もそのために協力し続けます」

「塚原さん、ありがとう。よぉし、これからもがんばるぞー!」

 私の想い、みんなの想い、それは笑顔でいること。どんなに苦しくても、笑顔でいれば必ず希望が見えてくる。今日を楽しく生きていける。そのために、私は歌い続ける。

「あ、そうそう、カフェ・シェリーのマイさんから手紙を預かってきたんだった。はい」

「えっ、なんだろう?」

 手紙を開いてみると、そこには私への応援メッセージが書かれていた。そして最後にこんな言葉が記されてあった。

『思い切った行動、それはあなたの人生を思いっきり変えるきっかけになりましたか?』

 今なら自信を持って言える。思い切って行動をして良かったって。

「塚原さんって、何か思い切った行動を起こしてみましたか?」

「えっ、えっと、そ、そうですね。それはこれから起こしてみようかと…」

 すると塚原さん、一度力をためてからおもむろにこんなことを言い出した。

「か、かなさん、好きです!」

 塚原さんの思い切った行動が、この後の私の一生を変えることになるとは…


<届け、この想い 完>

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