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スキル《神層学習》―学習する最強の兜(俺)-  作者: 茅原
最強の兜と水着コンテスト
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伝説の剣? part4(最強の兜と水着コンテスト編おわり)

 しかしララはそんなガロン爺さんに目もくれず、


「それに第一、連れていこうにもその剣が抜けないんでしょ?」


と、さっきまでの話を継続。


「抜けないってことは、別にアタシたちにはついて来たくないってことでしょ? なのに無理矢理連れていくなんて、そんなの誘拐と変わりないとアタシは思うけど」

「それは、私もそう思うけど……あっ、じゃあ、こういうのはどうかしら? とりあえず、その岩の壁ごとくり抜いて剣をここから出すの」

「それで?」

「そ、それで……そう、明るい浜辺に置いておいてあげたらどうかしら? そうすれば気分も晴れるかな……なんて……」

「そんなの、観光客の遊び道具になるだけよ。っていうか危ないでしょ、こんな変なのを子供が簡単に触れるような場所に置いちゃ」

「いや、ララ。セリアさんは別にこの街の浜辺、とは言ってないぞ。どこか人里離れた浜辺なら置いといても全く問題ないだろ」

「……あなた達……!」


 ゴゴゴ……と洞穴内に岩が崩れ落ちようとしているような音が重く響く。


「私を無視するなんて……いい度胸ね」


 エルマが微笑むと、そのほうから突風のような何かが強烈に吹きつけてくる。おそらくは、闇属性の魔力の波動。


 ガロン爺さんが腰を抜かしたようにへたり込み、


「も、もう駄目じゃあ……ワシらはもうここからは出られんのじゃ。このままここで生き埋めにされるんじゃあ……!」


 そう呻くが、俺はそれを無視して言う。


「じゃあやっぱり、放っておくのが一番なんじゃないか?『伝説の剣』だなんて言われてコンテストの賞品になるくらいなんだから、これまで何か大事件を起こしたことがあるってわけじゃないんだろうし……もっと時が経てば、海の波が全部洗い流してくれるだろ。恨みも、呪いも、何もかも……」

「何いいこと言ったみたいな感じ出してんのよ。でもまあ、確かにそれが一番かも」

「でも……それじゃ、やっぱり寂しいんじゃないかしら? 死ぬまでずっと独りきりなんて……」

「大丈夫よ。たまに酔っ払いとかが肝試しに来たりするだろうし」

「あなた達……どれだけ私をバカにすれば気が済むのかしら!?」


エルマが怒鳴り、黒い衝撃波がさらに強く俺たちを襲う。まるで崩落寸前のように洞穴の天井から小石がパラパラと降ってくる。


 ヒィッ、と悲鳴を上げてガロン爺さんは頭を抱えて蹲る。


 ララはそんなガロン爺さんを冷たく見下ろして、


「大袈裟な爺さんね。大丈夫よ、ハルトがいるんだから、この洞穴が全部崩れたって死にはしないわ。そうでしょ、ハルト?」

「ん? ああ、別に問題ない」


 エルマが必死で飛ばしてきてる衝撃波も、俺が張っている《カーズ・バリア》に遮られてそよ風ほどにも俺たちに届いていないし、岩が降ってきたところで《自動防御》が勝手にこの周囲を守ってくれるだろう。


 じゃあ、と俺はまとめに入る。


「話し合いの結論は、皆さんの意見を総合的に判断して……『放置する』っていうことで」

「まあ、いいんじゃない?」


 と、ララ。


「そうね……。お爺さんがたまにお参りなんかをしてくれるなら……」


 え!? ワシが!?


 とガロン爺さんが抗議の声を上げるが、これはこの街で起きている、この街の問題なのだ。この程度のことはやってもらわなきゃ困る。


 ってわけで、帰りましょう。というか、ララが変な空気を纏っているこの密室空間から早く出たい。


「あなた達、どーして私を無視するのよぉ……。ちゃんと私の話を聞きなさいよぉ……!」


エルマがその目に涙を浮かべながら言う。と、不意に、


「何をされているのですか? このような所で」


 エルマの背後――そこにエルマが生じさせた岩壁の向こうから、涼しい男の声が響いてきた。


 と思うと、岩壁がボロボロと脆く崩れ落ち、その向こうにたいまつを持った一人の男が姿を現す。


 たいまつの光に照らされて輝く、やや長めの金色の髪。その髪から突き出した長い耳。そしてその青みを感じるほどに白い肌……。


 エルフ族の男だ。


 男はスラリと高いその身に纏わせた真っ青なマントで口元を隠すようにしながら、こちらとエルマとを交互に見る。


 そして、それだけで状況を察した様子で、マントを放して綺麗に(やや冷たさを感じさせるほど)整った口元を見せながらエルマへ歩み寄り、その肩に軽く手を置いた。


「その少女から出て行きなさい、悪しき霊よ。――《ヒーリング・ライト》」

「あらぁ、いい男……」


エルマの足元から淡く白い光が柱のように伸びて、その全身を包み込む。


 エルマはその光の中でうっとりとしたようにエルフの男を振り返って――そしてやがて、とすんとその場に尻餅をつく。


「あれ……? わたくしは……?」


 どうやら霊は成仏してしまったらしい、エルマはポカンとしたように呟いて、目をパチクリさせて辺りを見回す。


 そんなエルマをエルフの男は微笑みながら見下ろして、それからその目をこちらへ――セリアさんへと向けて、言ったのだった。


「久しぶり。綺麗になったね……セリア」

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