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次に生まれ変わるなら、いざという時に女の子を守ってあげられるような逞しくて格好いいイケメンに

「なんだよ、お前。帰るのか?」


 と、廊下で行き会って声をかけてきたのは、同じ学部、同じサークルの友人である。


「ああ。帰ってレポート書かないと」


 ゼミで発表するためのレポートをまだ書いてない。っていうか、そのために読まなきゃいけない本をまだ一行も読んでない。


「そんなもん、適当に書けばいいだろ」


 友人は学校内をほっつき歩いてでもいたのか、教科書やノートどころか鞄さえ持っていない。その手には購買で買ったのだろう、夕食らしきカップ麺が一個。


「一緒に部室に寄ってこうぜ。っていうか、来いよ。お前いないと麻雀できないし」

「レポートを書かなきゃいかんと言ったのが聞こえなかったのか。あの教授(せんせい)、テキトーにやったら怒るからメチャクチャ怖いんだよ」

「そんなこと気にすんなよ。俺たちは天下無敵の大学生なんだぜ。もっと気楽に構えていこうぜ」

「俺はお前と違って堅実な人間なんだ。ってわけで、じゃあな」


 もう構ってられん、と俺は友人に別れを告げて、大学近くで一人暮らしをしているアパートへ足を向け直す。


実は、俺はそのとき友人に嘘をついていた。


 レポートを書かなきゃいけないっていうのは嘘じゃない。嘘じゃないが、帰りたい理由はそれだけじゃなかった。


『ダーケスト・ヘヴン』


 二ヶ月ほど前から継続して激ハマり中、俺から勉強と睡眠の時間を無限に吸い取っていくゲームが、とにかく早く、一刻も早くやりたくて仕方がなかったのだ。その世界の空気を一秒でも早く吸って、心の安寧を得たかったのだ。


そして、その後は……えーと……なんだっけ?


 ああ、そうだ。


 交差点で信号待ちをしてたら、右折しようとしてたトラックに、馬鹿みたいなスピードで直進してきてた馬鹿みたいに派手な車がぶつかって、その車が俺のほうに……。


 ああ、そうそう。


 それで、俺は隣にいた女子高生を守ろうとしたんだよな。その子、マフラーがもこもこしてて本当に可愛かったんだよ。


でも、その先は……憶えてない。


 憶えてるのは、ああ俺ももっとお気楽に遊んでおけばよかったなって思ったことと……次に生まれ変わるなら、いざという時に女の子を守ってあげられるような、逞しくて格好いいイケメンに生まれ変わりたいって、神様にお願いしたこと……かな。


 それと、できれば、もこもこのマフラーが似合う、こんな感じの可愛い彼女が欲しいって。

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