01.
雄大な森の中の、木漏れ日が差し込む小さく空けた場所。
そこには親子と思われる大小二つの影があった。
「みてみて、おかーさん!」
浅葱色の髪を三つ編みにした少女が、両手一杯に黄色の花を持って草の上を走っていく。そして母親らしき女性に、その花をずいっとつきだして見せた。
「あらまあ、貴方はお花摘みの天才ね」
同じ髪色をした女性はにっこり笑うと、傍らの篭を少女に差し出した。その意図を理解している少女は中にそっと花を落とす。
いい子ねと頭を撫でる母親と、その手を享受して擽ったそうに笑う少女という図は、何とも微笑ましいものである。
──パキリ、と背後で不穏な音を聞くまでは。
『ぐるるるるる……』
枝の割れる音と獣特有の唸り声に、ハッとした母親がそちらへ振り向く。そこには艶やかな銀の毛並みの、犬とは比べ物にならない体躯を持つ狼がいた。
はっ、はっ、と口を開けて垂らされる舌とその目は、間違いなく母娘を獲物として捉えている。
怯えた少女は母親にしがみつき、母親も早く逃げようと心では思うもののぎらぎらとした眼差しと威圧感に恐怖して、動くに動けないようだった。
母親よりも大きな狼は、じりじりとその距離を詰めていく。そして、その四つ足で地面を強く蹴り大口を開けて親子へ飛びかかった。
母親は娘を抱き締めて庇いながら、死を覚悟した。
『……ギャン!!』
腕と瞼にぎゅっと力を入れていた母親は、狼らしき変な鳴き声を聞く。と同時に、何時まで経っても訪れない痛みを不信に思い恐る恐る目を開けた。
するとそこには二人の青年が立っていて、片方の青年が持つ剣に斬りつけられたのだろう狼が、首元から血を流しながら後ずさっていく姿が見えた。
「や、大丈夫かな?怪我はない?」
青碧の髪色をした青年が母親へ振り向く。目元を布で覆い頭部で結んでいるという不思議な出で立ちであったが、母親はその問いかけにただ静かに頷いて見せた。
更にもう一人、剣を握る青年はちらとだけ親子へ視線をやるが何も言葉を発することなく、すぐに視線を狼に戻す。
「……浅かったか」
次は決める、と呟いたあと、しっかりと切っ先を狼に向ける。深手を負わされ、気配から己よりも格上だと判断した狼はこの場から逃げ出したかったに違いない。尾は完全に丸くなっている。
しかしそんな事などお構いなしに、青年は一度ぐっと足を踏み込み一気に駆けた。
初めまして。
更新頻度はゆっくりなのでまったり気長にお付き合い頂けると幸いです。
また、長く小説を書くこと自体初めてなので不慣れで見苦しい点もあると思いますが、何卒宜しくお願いします。