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秋月  作者: ダード
2/2

天文部


 「ようこそ天文部へ!」


星野つかさに手を引かれ中に入ると、そこには超美人なお姉さんがいた。髪は黒色で腰あたりまで伸びていて、なんといっても体のラインが完璧で、出ているところは出ていてとてもエロかった。そのお姉さんの歓迎の言葉で僕たちは迎え入れられた。


「ぼ、僕は一年C組の大久保秋人です。こっちにいるのは同じクラスの長谷川いつきです。」


「えっと。長谷川です。」


秋人はそそくさと自己紹介を終え、星野さんと先輩に笑顔を向ける。すると先輩はそれにこたえるかのように笑顔で返してくれた。


「自己紹介ありがとう。私は二年の須藤雪姫。突然だけど君たち二人には、この部に入部をしてもらうよ!」


、、、、、、

話が全く見えてこなくて、僕と秋人はその場で黙り込み、ただただ立ち尽くしていた。すると、隣で話を聞いていた星野さんが先輩に近づいて行った。


「雪姫先輩、いきなりそんなこと言われたら困っちゃいますよ。だしこの二人は自分見学したいって来たんですから。」


星野さんがそう言うと、先輩は頷き、分かったと告げた。そしてこちらに向き直り、歩み寄ってきた。先輩は僕ら二人の手を握ると。


「好きなだけ見学していって!」


と、満面の笑みで言った。先輩の手は女の子さながらな小さな手で、僕は一瞬ドキッとした。秋人はというと、顔全体を真っ赤に染め上げ、先輩に握られた手一点を凝視していた。すると秋人が何かを決めたかのような顔をしだす。


「あ、あの!」


うわつった声で先輩のことを見つめ秋人が話し出す。僕は何か嫌な予感がした。


「お、俺ら天文部に入部します!」


おいおい、いきなりすぎやしないか?まさかこいつ先輩に、、ん?俺ら?


「ちょ、おま、、、、」


「ほんとうに?」


僕の声を遮るかのように先輩はそう言いながら、目をこれでもかというくらいに見開いていた。僕は撤回しなくてはと焦った。


「いや、僕はまだ入部するかは、、、」


「え、長谷川君は入部しないの?」


不意に星野さんにそう言われ、言葉が詰まる。覗き込むようにして問いかけてくる彼女は、かわいすぎた。


「俺も、、入部します。。」


いきおいと彼女の可愛さに、二つ返事で僕も了承してしまった。これではやってることが秋人と同じではないか。。


「ほんとに?!」


星野さんはそう言うと、よっぽどうれしかったのか、ニコニコしていた。


「あ!あたしは星野つかさ!一年D組だよ!よろしくね!」


「よ、よろしく。」


星野さんと僕のやり取りを見ていた先輩が、部室の端にあるッボックスから紙を二枚だし、僕たちに手渡した。


「そうと決まれば入部の手続きだね!」


紙には《天文部 入部届》と書いてあった。そこには学年、クラス、名前を記入する欄があった。それにしてもテンポが速すぎやしないか?それとなんで星野さんも先輩もそんなすぐに話を進められる。

実は入学当初から天文部の存在は知っていた。星に多少の興味がある僕は、一度見学をしてみようかと思ったのだが、機会がなく、いかずじまいで終わってしまっていたのだ

記入をしようとリュックから筆箱を取り出そうとしたとき、先輩が「これ使って。」とボールペンを差し出してくれた。なんて気の利く優しい先輩なのだろうか。僕は借りたペンで記入し、入部届を完成させた。

それにしても。。。マジで入部するのか、俺。

すると秋人が難しい顔をしだした


「なんでいきなり強制入部なんていったんですか?」.


秋人が星野と先輩に問いかける。確かに考えてみればそうだ。何か理由でも、、、。それとも、ただただ部員をやしたいのか、、、。すると先輩は浮かない顔をして応える。


「んー、それは入部届を出してから話そうかな。」





僕はこの状況に困惑していた。あれから天文部顧問の足立先生に入部届を出すため職員室に行くことになったのだが、あろうことか先輩と秋人は昨日のテレビの話で盛り上がり、ついてこなかったのだ。つまり僕は今、星野さんと二人、、、。


「どうかした?」


僕がおどおどしていると、星野さんは変に思ったのか声をかけてきた。君と二人だから緊張してるなんて死んでも言えない。だからと言って何か言うこともなく。


「ううん。なにもないよ。」


と切り言葉で返してしまった。俺のバカ!せっかく星野さんと二人なのに。。もっと膨らむような話を。。

そうこう考えている間に職員室の前まで来ていた。部室に戻るときはちゃんとした会話をしないとな。


「失礼します。天文部の星野です。足立先生いらっしゃいますか?」


星野さんが先導で職員室に入り先生の返答を待つ。


「はいはーい。今行くから少し廊下で待っててねー。」


足立先生であろう声が聞こえ、僕たちはいったん職員室を出て、廊下で待つ。この時も何を話せばいいのかわからず、僕はだんまりしていた。


「おまたせー!あら、長谷川もいたのね。んーで、どうしたの?」


先生は出てきて、僕ら二人に問いかける。だが僕は帰りに星野さんと何を話すか考えるのに夢中で、自分がしに来たことをすっかり忘れていた。


「長谷川君?」


星野さんに名前を呼ばれ我に返る。そうだった、入部届を出しに来たんだった。慌てて手に持っていた二枚の入部届を先生の方に向けた。


「あっ。天文部に入部したくて、入部届を渡しに来ました。こっちが僕ので、これがもう一人の入部希望の大久保秋人の分です。」


僕は二枚の紙を先生に渡した。先生は少し驚き、すぐに僕たちを見た。


「あー入部ね!オッケー確かに受けっとったわ!星野よかったわねー、一気に二人も入ってくれて。」


「はい!」


入部の手続きとはこんなに軽いものなのか?と思わせるくらいに一瞬で僕は天文部の部員として認められた。


「これであと残すところ一人ね!」


ん?何の話だ?残すところ一人?

先生とのやり取りを終え部室に戻る。先生は「じゃあ、あとはこっちで登録しておくから。またなんかあったら言いなさい。」とは言っていたが大丈夫なのだろうか、、、。それよりも、今のことを考えなくては。せっかの話せるチャンスなのだから。


「あのさ、星野さんは何で天文部に?」


我ながらに普通の質問だったが、今は話しかけることができただけでよしとしよう。

星野さんは少し考えてから「んー」と言い。


「お父さんが星が好きで、その影響で私も好きになって、、、それで、かな。」


どこかの誰かさんとは大違いだ。やっぱり星が好きで天文部なんだよな。じゃあ先輩も星が好きってことか。


「そうなんだ。まあでも好きだから天文部に入部するんだよな。」


僕が苦笑しつついうと、星野さんは「たしかにね」と目を細めて笑った。まったく、いちいちしぐさが国宝級にかわいい。。


「あ、そうだ。同い年なんだからさ、星野さん、じゃなくて、星野でいいよ!」


「わかった。じゃあ、星野で。」


「うん!!」


それからの部室へ戻る時間は、夢のような時間で、僕は星野のしぐさにやられないよう、自我を保つので精一杯だった。


「戻りましたー。」


部室に戻ると先輩と秋人は、テレビの話は終わったみたいで、《星野の導き》と書かれた本を二人で読んでいた。

秋人がにやにやした顔でこちらを見てくるものだから、僕は「なんだよ」と顔で示した。すると秋人が「うまくやったか?」と言わんばかりにグッチョブさいんをしてきた。まさかこいつ、わざと僕らを二人に、、、。

そんなやり取りを秋人としていると先輩が立ち上がった。


「おかえりなさい、二人とも。ちゃんと入部の手続きはできた?」


「はい。足立先生にちゃんと伝えてきました!ただ、なんだか先生の対応が適当だった気が、、、」


「足立先生はあんな感じだけど、ちゃとやることはやってくれるから大丈夫どよ。たぶん!」


たぶんて、、、。まぁ心配することはないか。

僕は、部室の真ん中に置かれた長机にそって置いてある椅子に腰かけた。先輩と秋人は向かいに座っていて、必然的に、はたまたこれも秋人がそう仕組んだのかはわからないが、星野が僕の隣になる。顔に熱を感じ、鼓動も早まってきた。何か気を紛らわすために会話を、、、


「そういえば先輩。さっきの話、あの僕が入部届を出したら話すって言ってた、、」


「あー。そーだったね。」


先輩はそう言うと星野のほうを見る。星野も先輩を見て頷く。すると先輩は再び僕の方に向き直った。


「実は、長谷川君と大久保君を入部させたかったのは、部員の人数が足りなくて困ってたからなんだ。見ての通り、天文部は私とつかさちゃんの二人だけだから、、、」


「そういうことだったんですか、でもそんなに焦らなくても大丈夫なんじゃないですか?」


普通の学校の決まりでは、部活として認められるには5人以上の部員がいるのが条件だ。だが僕の学校にはそんな決まりがなかった。この学校の校長先生は「生徒たちのやりたいように、のびのびと」という考えみたいで、正当な理由があれば部として認められたのだ。だから僕は疑問に思ってしまった。


「んー。確かにね、二人でも部活は続けられるよ。だけどやっぱり人数が多いい方が楽しいでしょ?あとね。」


先輩は言いかけて、一度下を向く。数秒後に挙げられた顔は、眉間にしわが寄せられていて、まさに「困ってます。」の顔だった。


「文化祭ってあるでしょ?それに部として参加するには5人部員が必要なの。確かに文化祭までは時間もたくさんあるんだけど、なんかあせちゃって。」


、、、、。部活として認められてるのに、文化祭だけは違うのかよ。なぜ文化祭もOKにしなかったのだろうか。確かに一人や二人でなにかをやるには大変だが。部活を認めるならやらせてあげればいいのに。


「そうだったんですね。」


「うん。でもね?二人が入ってくれたから四人になったんだけど、、」


「あと一人部員が必要ってことですね。」


「そうなんだよね。」


先輩は顔を傾け困った顔で言った。てかさっきの先生が言ってた「これであと一人ね」って、こういうことだったのか、これで今までのことすべてがつながったな。

なんだかんだで晴れて天文部の部員になったわけだが、部としての活動は何をやるのだろうか。星を観察するには夜まで学校にいなくてはならないし、、、


「ところで先輩。天文部は部活の時間、何をやるんですか?」


「んー。星のことを調べたり、話し合ったり、とかかな。でもね、当分は活動内容を決めてるの!」


「え!?先輩、私そんなこと一つも聞いてないですよ!」


「ごめんごめん。今決めたことだから。」


突然、星野がびっくりしたのか先輩に問いかけた。先輩は笑顔で星野に謝る。それにしても今決めたって。もしかして先輩は天然なのか?


「それでゆきちゃん先輩!何やるんすか?」


さっきまで空気のようにいた秋人が話に割り込んできた。まったく「ゆきちゃん先輩」って、あの数分でどんだけ仲良くなったんだよ。恐るべし大久保秋人。


「うんさっきの話で分かったとは思うんだけど、あと一人部員が必要なのね?だから、、」


「だから?、、。」


「四人に増えたことだし、残る一人入部してもらうために、部活の時間を活用して勧誘できたらなって。」


「なるほど。」


「ゆきちゃん先輩が言うなら、漢大久保秋人、全力で協力します!!」


まったく調子のいいことを、、まるで前からこの部にいたかのように馴染みやがって。でも勧誘ってなにかビラ作ったりしてくばるとかか?


「それで雪姫先輩。具体的になにをやるんですか?」


「それもね、みんなできめてこうかな?って。」





初の部活活動は、入部届を出して、少し会話をし終わった。まだ時間はあったのだけど、先輩が用事があるらしく、今日のとこは解散になったのだ。星野は先輩に続きすぐに帰ってしまった。まあ今日だけで学校一といわれる星野とも仲良くなれたし、これからは部活で逢えるのだから、そんなに焦る必要もないだろうけど。それにしても「明日の部活までに、みんなひとつづつ案を考えてきてね!」と先輩に言われたが、全然思いつかない。ビラを配るのはもうやっているとのことだったし。


「そういえばいつき。お前入部届だしに星野さんと二人になったときうまくやったか?」


案を考えていると、一緒に帰っていた秋人がおもむろに聞いてきた。


「やっぱりお前、わざとしむけたなか。」


「まぁ、わざとお言えばそうなるけど。俺はただあの超絶美人な雪姫ちゃん先輩と話したくて話してたら必然的に?まぁ一石二鳥ってやつだな!」


つまりあれは偶然ってことか。にしても。


「お前あの数分で仲良くなりすぎだろ!」


「なんてったって俺はその道のプロだからな!」


確かに小中とこいつを見てきたが、かわいい子を見つけたと思えば次の日にはあだ名を呼ぶまでに仲良くなってたっけ。でも、仲良くなるだけで付き合えたためしはないんだけどな、、。それは掘り返さないでおこう。


「んで?お前のほうはどうだったんだよ。」


「ぼちぼち。」


「ったく。いつきは草食系の申し子だからな。仕方がない、この秋人様がアドバイスを、」


「断る。」


秋人とのくだらない話が終わり、気づくと分かれ道に来ていた。


「じゃあまた明日な、いつきくん。」


「うるせー。じゃあな。」


それから一人で家までの帰り道を歩く。気づけば日が落ち、周りにある田畑を幻想的に夕焼け色に染める。僕の家は美里高から歩いて30分ほどのところにある。

高校までのバスはないし、あいにく自転車はパンクしているため、仕方がなく歩いて行っていた。街灯がつき始めたころ、

やっとのこと家にたどり着いた。田舎にある僕の家はそれなりの大きさの一戸建てだ。


「そういえば最近。隣にだれか引っ越してきたんだっけか。」


ぼそっと口にしながら家の扉を開ける。すると、階段を駆け下りてくる音がした。これは毎日恒例のことで、僕が外に出ていて帰ってくるといつものことだった。


「お兄ちゃん!おかえりなさい!」


「さや、ただいま。」

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