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第76話 子狐との出会い


二一〇三年一一月三(木)勤労感謝の日


 頬と鼻の頭に生じたザラリとした独特の感触に重い瞼を開けると、小さな獣の顔のアップ。何が楽しいのか瞼を閉じて嬉しそうにペロペロ俺の顔を盛んに舐めている。

 

(は?)


 寝起きで全く働かない頭で、両手で小さな来訪者をそっと掴み上げる。

 小さな耳にやや長い口、つぶらな瞳、モフモフした薄い茶褐色の美しい毛並み。子犬だろう。


「お前どうやって入ったんだ?」

『くぅ~ん』

 

 当たり前だが、俺の家の周囲には野犬などいない。まれに子犬や子猫が森に遺棄されていることはあるが、それでも、玄関と俺のこの部屋には鍵を閉めている。俺のこの部屋に侵入するのは不可能なはずだ。

 バタバタと暴れて俺の手を逃れると、俺の身体にしがみ付き、再び顔を舐め始めた。

 よほど嬉しいのかフサフサな尻尾がブンブン左右に揺れている。


「ん?」


 こいつの尻尾、なんか変じゃねぇか? 幾つものに分裂しているように見えるんだが。

 俺の顔を舐めるのに夢中で尻尾に触れるのは容易かった。

 一本、二本、三本、四本、五本、六本、七本、八本、九本。

 突然変異でもさすがに、九本の尾はないだろう。俺にもこいつの正体が見えてきた。

 鑑定をしてみる。


――――――――――――――――――


『九尾の狐』

〇説明:九つの尾を有する覇種の称号を持つ狐の魔物。憤怒の王の眷属であり、王の成長に従い進化を遂げる。

〇能力変動値:

・筋力1/100

・耐久力:1/100

・器用:1/100

・俊敏性:1/100

・魔力:1/100

〇Lⅴ:12

〇種族:覇魔

――――――――――――――――――


 このちっこい小動物がレベル12……あの死闘を演じた巨大樹木よりも強いのか。心境はめちゃくちゃ複雑だが、こいつの鑑定はできねぇ方がいいな。レベルを見て発狂されてはかなわねぇ。全メンバーにつき、鑑定できなくしくしておくのが吉だ。

 まっ、害はないし、しばらく好きにさせておこう。その間に――。


 今の俺のレベルが12。

 まず権能の確認からだ。

 

――――――――――――――――――


『遊戯の真理』

〇権能:

■小進化(Lⅴ3)

■ロード(Lⅴ2)

■鑑定(Lⅴ7)

■アイテムボックス(Lⅴ8)

 ■休息(Lⅴ7)

 ■改良(Lⅴ3)

 ■魔物改良(Lⅴ4)

 ■覇王編成(Lⅴ3)

■転移(――)

――――――――――――――――――


 小進化は文言に変化はなかったがレベルはLⅴ3になったんだ。成長速度は増していると思われる。

 ロードは、可能回数が四回に増えていたが、残存最大ロード数は零であることを鑑みればこの残存最大ロード数は、記録地点(セーブポイント)の登録時に決まるのだと思われる。

 鑑定はLⅴ7となり、新たな項目が増えた。


――――――――――――――――――


『他者鑑定』

〇右手の掌で他者に触れることにより、鑑定する。

■ステータス鑑定:ステータスを鑑定する。ただし、自身と同Lv以下の存在に限る。


――――――――――――――――――


 Lⅴ8のアイテムボックスは、収納可能容量が無制限へ、劣化速度は外界の一〇〇〇万分の一まで上昇する。ゲームや小説のようなレベルまで上がってきた。

 休息はLⅴ7であり、特傷のままだが、完全修復までの時間が三〇分となる。

改良は、伝説級までの武具や魔道具を作り出すことができるようになった。

《覇王編成》は称号が二段階称号上昇へ変化し、権能使用許諾につき、各眷属は《小進化》、《鑑定》、《休息》、《転移》、《アイテムボックス》を使用することができるようになった。

 また次の項目が増えていた。


――――――――――――――――――


■眷属ツリー:覇王の直属の眷属は、他者(第二眷属)を自己の眷属化することができる。ただし、直属の眷属は覇王の意思に反した眷属化をすることはできず、覇王は事後に、第二眷属の地位を失わせることができる。

 第二眷属の使用できる権能は《小進化》、《鑑定》、《休息》、《転移》のみであり、直属の眷属と比較し限定的な効果しか有しない。

――――――――――――――――――


 要するに、セレーネ、セシル、アイラが他者を眷属化して覇王編成へ引き込むことができるが、効果は通常よりも大分制限されるらしい。

 【エア】も次の新規の機能が追加となった。


――――――――――――――――――

■追加機能:

〇4の機能――《殲滅弾》:射程距離の索敵を行い標的に向けて攻撃する。

〇成長レベル:5

〇武具クラス:超越級

――――――――――――――――――


 使ってないからすごいんだかが分からない。でも、狙撃銃(ライフル)の時と比較するとパッとしないかもな。


 こんなところだろう。そろそろ、マジでスキルや魔術を覚えたいところではあるのだが。

 にしても、この子狐、いつまで舐めてんだ?

 抱き上げて、数回頭を撫でると、気持ちよさそうに瞼を閉じて眠ってしまう。

 そこで机の上の俺のスマホが騒々しく騒ぎだした。子狐をベッドにそっと寝かせると、スマホに出る。


『やあ、おはよう。相良君』

「徳さんか。面倒ごとか?」


 まだ、五時三〇分、何かあったとみるべきだろう。


『少し君に話しがあってね。大丈夫、悪い話題ではないよ。今から時間を採れるかい?』


 俺も徳之助に込み入った相談があった。好都合だ。


「了解だ。丁度俺も相談したいことがあった」

『それは素晴らしいね。今僕と堂島君が君の家に向かってるから、後一〇分くらいでつくよ』


 俺の意思かかわらず、来るつもりだったらしい。若干、だったら聞くなとも思えるが、建前の重要性くらい俺も把握している。仕方あるまい。




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