第75話 疑問と興味
短いです。後一話いけるかも
――警察庁長官官房長室――
「それでは」
警察庁長官官房長――東条秀忠は、困惑気味に壁に設置された電話機に終了の指示を出す。
(どういうことでしょうか?)
武帝高校校長にして、歩く核兵器こと《八戒》の一人――碇正成からの突然の電話。
碇翁は現在、ロサンゼルスで開かれている年に一回の《八戒》による会議に出席の最中。
話を要約すると――《一三事件》など儂が帰国したら真っ先に片づけてやるから、武帝高校の学生を巻き込むな――そんな内容だった。
即答を避け、事実関係を調査して返答しますとのみ返答した。即答を避けたのは、全く事情が呑み込めないことももちろんあったが、それ以上に碇翁の発言が不可解極まりなかったから。
碇翁は一応武帝高校の校長ではあるが、その本質は教育者ではなく、探索者。探索者は命を懸けてなんぼの職業であり、仮にその卵とは言え、身の安全確保のために電話をかけてくるほど甘くはない。死んだ者が悪い。そんな発想だ。
何より、近年碇翁はいかなる組織からも依頼を受けることを固辞していた。その翁が自ら進んで依頼の受託を申し出るなど雪どころか、爆弾でも降ってくるレベルの稀有な事態だ。
つまり、武帝高校の学生とやらには、碇翁をそうさせる何か重要な価値があり、それらは我ら警察にも関連性があること。
(調べないわけには行きませんねぇ~)
『一三事件』の管理官は、八神徳之助警視正だったはずだ。奴は良くも悪くも有能であり、協力者の少年とやらを知らぬはずがない。そしてそれは、碇翁が八神の上司の秀忠に直接電話をかけてきたことからも明らかだ。確実に八神はその少年とやらと接触している。
碇翁をして執着させるほどの少年。面白い。実に面白い。
秀忠は逸る気持ちを抑えつつも、壁の電話機に八神への通信の指示を出す。




