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第23話 冒険者登録


 一〇〇枚近くの貨幣はかなり荷物だ。地球の自宅に貨幣を置くと、使用していない財布に白金貨一枚と金貨一〇枚のみをいれて、ピノアの冒険者組合ピノア分館へ向かう。



「これで冒険者の登録をしてくれ」

「一万ルピお預かりいたします」


カウンターに一万ルピを置くと、エルフの受付嬢――シャーリーがにこやかな笑みを浮かべつつも応対してくれた。

セシルを泣かせた件で、去り際に親の仇でも見るような視線を向けられた。だから、冷遇されると踏んでいたのだが、逆に以前より愛想がいいようだ。


「それでは、ユウマ様、まずフルネーム、種族、年齢、性別をお伺いしてよろしいでしょうか?」

 

 シャーリー嬢は、なぜ俺の名を知っている? この世界で名前を教えたのは、限られている。セシルと商業組合の連中だけだ。だとすると、セシルの奴か。同じエルフのようだし、セシルが俺に泣かされたときも激怒していた。恋人か何かだろうさ。まっ、どうでもいいが。


「ユウマ・サガラ、人間族、一六歳、男」


 ちなみに収集した情報では、このアースガルドには、人間族(ヒューマン)獣人(ビーストメン)長耳族(エルフ)小人族(ドワーフ)竜人族(ドラゴニュート)女人族(アマゾネス)の種族があるらしい。この中で地球人の外見は、人間族(ヒューマン)と同一だ。まあ、まんまだがな。


「少々お待ちください」


 シャーリーは黒い板に黒いペンのような物で、書き込んでいく。


「それでは、カードに情報を書き込みますので、この中に右手を入れていただけますか?」


 受付嬢シャーリーは、カウンターの脇に鎮座する黒色の箱のような物体を指し、指示してくる。黒色の箱には、丁度手が入るほどの隙間が空いていた。

 あまり気は進まないが、この黒箱に手を入れないと、これ以上話が先に進まない。

 恐る恐る、手を入れると指先がチクりと微かな痛みが走る。


「ありがとうございました。それでは、カードを作成いたします」

「……」


右手を黒箱から引き抜いて、右手の人差し指に視線を向けると、先には針のようなもので刺された跡があった。

今の操作で情報を取得したのか? とすると、血液から情報を読み取った? 血液情報からカードを作るなど、ある意味、現代地球の魔道・技能科学並みだ。

対して、一般の生活様式は、水道、ガス、電気すらもないバリバリの中世の文明。あまりに、ちぐはぐで嚙み合わない。


「それではカードができるまで、基本的事項を説明させていただきます――」


 受付嬢シャーリーは懇切丁寧に、冒険者について説明してくれた。

 必要な箇所をまとめると次のようなことだ。

まず、冒険者には、SSS、SS、S、A、B、C、D、E、F、G、Hの11ランクがある。このランクに応じて、受けられるクエストや様々な特権や義務につき大きな差がでてくる。

驚いた事にこれらの事項は《サーチャー》のランク付けと同じ。偶然にはあまりに出来過ぎている。この解は容易に察しがつく。即ち、異世界人の存在。俺がこのアースガルドにいるのだ。この世界に地球人の《サーチャー》がいる事もあり得ないとは断定できない。

技術専門の《サーチャー》が何らかの理由でこの世界の地を踏み、冒険者組合の幹部として冒険者のランクの制度を提唱し、冒険者カードを開発した。こう考えれば一応の納得はいくし、文明のちぐはぐさも理解できる。


 冒険者の一般的権利は、次の事項。

第一、ピノアの街中での武具の装備の許諾権。

 第二、魔石売却権。魔物の体内にある魔石と呼ばれる宝石を冒険者組合に売却する権利。ロープレでいう魔物を倒した際に出現する金貨のようなものだろう。

 第三、素材売却権。特定の魔物の身体の一部は特定の武具の素材となりえ、これの売却も冒険者のみに与えられる権利。

 第四、クエスト受諾兼。ただし、各冒険者ランクに応じて、受けられるクエストには制限がある。

 第五、冒険者組合の直轄地での武具や魔道具の売買権。要するに、《東部》での武具や魔道具の売買ができる権利のようなもの。

 第六、ダンジョン侵入権。文字通り、ダンジョンを探索することのできる権利だ。


 対して冒険者の義務と注意事項を定めた規則は限られている。大きくは次の二つ。

 一つ目が、冒険者組合が冒険者ランクに応じて発令する指定魔物の討伐権。この指示には基本冒険者達は逆らえない。

 二つ目が、街内での抜剣又は抜刀はクエストか、自身の身を守るとき以外使用はできない。仮に正当な理由なく剣を抜けば、冒険者組合の排除対象となる。

 他にも細かな規則がいくつかあったが、一般常識の範囲内であり、軽く聞き流す。

 

 最後が、冒険者の相互扶助の《ギルド》という組織について。この《ギルド》も、探索者協議会が認めている組織と共通する。


 シャーリー嬢の長い説明が終了したとき、チーンとベルが鳴り、黒色のカードが黒色の箱から出て来る。

 シャーリー嬢はカードに目を通すが、石にでもなったかのように、営業スマイルのまま硬直化してしまい、ピクリとも動かなくなってしまう。


「どうかしたか?」

「……」


 無言で凝視するだけで、微動だにしないシャーリー。


「おい!」


 俺には時間がない。固まるならあとで思う存分やってもらおう。


「し、失礼いたしました。どうぞ、冒険者カードです。お受け取りください」


シャーリー嬢はいつもの営業スマイルに戻り、俺にカードを渡してきた。カードを受け取り精査する。

 まずは表だ。


――――――――――――――――――


『ユウマ・サガラ』

〇年齢:一六歳

〇種族:人間族(ヒューマン)

〇性別:男


――――――――――――――――――


 表は大した情報はない。

次は裏。カードをめくると――。


――――――――――――――――――


『ユウマ・サガラ』

〇レベル2

〇筋力:33/100

〇耐久力:33/100

〇器用:34/100

〇俊敏性:34/100

〇魔力:34/100


―――――――――――――――――― 


 これ、《称号》と《次レベルへ至る条件》以外は、俺の鑑定のステータスの表記と共通する。

 これでこのカードの作成方法の粗方の予測がついた。

 魔道具の開発スキル・魔術には、作成する魔道具に、作成者の所有するスキルや魔術の性質を付与するものがあるときく。

このカードの開発者である《サーチャー》は俺の《鑑定》と同様の力でも持っており、魔道具開発スキル・魔術を用いて、《鑑定》の能力をカードに付与し、魔道具を作成したのだろう。

 さて、もういいだろう。俺が立ち去ろうとすると、シャーリー嬢は微笑を浮かべつつも、口を開く。


「貴方のよい冒険を祈っています」

「ありがとう」


 礼をいい、俺は冒険者組合を後にした。


冒険者の登録です。結構、面倒な設定の説明はそぎ落とした――つもりです。うざかったからすいません。

やっとのことで、《滅びの都》での修行が始まります。九割が命がけの冒険となる予定ですので、お楽しみいただければと!

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