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第51話 荷馬車の獲得



 馬車での夜間走行の時間である一〇時まで、修練をしようと、《滅びの都》の《氷の草原》へと転移すると、お気楽獣人が、白い歯を見せてニカッと笑みを作る。


「お前、帰郷するんじゃなかったのか?」

「そのつもりだったが、気が変わった」


 意外だな。口調や性格が変質しても、根幹の部分は変わるもんじゃない。少なくとも頑固なウォルトなら、一度決めた計画を放棄しないと考えていた。


「適当すぎんだろ。アイラはどうすんだよ?」

「元々、アイラは旅自体を嫌がっていたからな。ギルドに戻って大喜びだ」

「そうかもしれんが……」


 こうも移り気が激しいウォルトはどうしても受け入れられない。まず、間違いなく理由がある。


「お前、何考えてる?」

「別に何も。それより、時間がないんだろう。早く行こうぜ」


 やはり、無駄か。ウォルトは、一度こうなったら、頑なに口を閉ざす。理由は俺自身で見つけるしかないか。まったく、面倒ごとを増やしやがって。


「わかったよ。行こう」


 息を大きく肺から吐き出して、俺は命懸けの修練へと没頭する。



 約三時間の修練で、《氷の草原》から、《氷の城》へ前へと到達し、俺のレベルは71となった。レベル70に到達し、上昇速度が緩慢となった。今までのように、一日で5~6レベルの上昇は望めまい。今後は、エリアボスの討伐による稀にあるレベルアップなどを目標にすべきか。

 ともあれ、権能の上昇は次の通りだ。


 ――――――――――――――――――


『遊戯の真理』

 〇権能:

 ■小進化(Lⅴ9)

 ■ロード(Lⅴ3)

 ■神眼鑑定(Lⅴ10)

 ■アイテムボックス(Lⅴ10)

 ■休息(Lⅴ10)

 ■万物創造(――)

 ■改良(Lⅴ8)

 ■魔物改良(Lⅴ8)

 ■覇王編成(Lⅴ8)

 ■転移(――)

 ■魔術・スキルの理(Lⅴ7)


――――――――――――――――――


 上昇したのは、《改良》と《魔術・スキルの理》。

 まずは、改良だ。

 次の項目は増えていた。


――――――――――――――――――


【完全なる設計図(魔道具)】


〇説明: 魔道具に限り、設計図を形成できる。

――――――――――――――――――

 

 今までも、似たような機能の方向性取得はあったが、試行錯誤の繰り返しにより、欲しいものに限りなく近いものを作り出していたに過ぎなかった。

 おそらく、この【完全なる設計図(魔道具)】は魔道具に限り、持ち主のオーダーに基づいて、作り出すことができる。

 商業戦略にまさにぴったりの権能だろうよ。

《魔術・スキルの理》については、第一一階梯までのスキルを開発できるようになった。スキルに限定なのは、それだけ第一一階梯は別格ということかもしれない。



時間となり着替えて、カルウイッチ村の中心へと転移し、待ち合わせ場所である南門まで歩いていく。

村人はまだ若干表情が硬いが、怪物達が危害を加えるような存在ではない事を理解したのか、恐怖の感情までは抱いてはいないようだ。現に、数人の村人達は、怪物達と笑顔で話し合っている。


 南門の前には、セシル、シド、グスタフ、ベム、ノックが御者(ぎょしゃ)のチキンと共に、既に待機していた。ここまではいい。なぜ、こいつらまでいるんだ?


「お前、聖都までついてくるつもりか?」

「当り前だ」

「そうにゃ!」


 ウォルトとアイラか。ウォルトの奴、マジで何考えてやがる。

 このウォルトの強引さ。加えて、頑固なウォルトにしてはやけにあっさり、帰郷を後回しにしている。何か理由があると考えるのが自然だ。

 まったく、真八や八雲といい、ウォルトといい、俺の周りで、目下説明不能な事態が進行中らしい。面倒なことにならねばいいのだが……。


「それで、これが聖都まで行く馬車ってわけか……」


 セシル、アイラ、シド達、キッズ連合は、このいかれきった物体Xに目を輝かせている。

 対して、グスタフ達は、毎度の非常識な光景に心底うんざり気味の顔で、成り行きを見守っていた。


『創造主様のお役に立てるとは、まさに至上の喜び』


 むせび泣く馬モドキ。モドキとしたのは、通常、馬は角や翼は生えていないし、言葉も話さないから。さらに言えば、レベル84なんてあるはずもない。

 前回の【怪物晩餐モンスターフィスティバル】と同じなら、あと二体、ボス的怪物がいるはず。まあ、どうでもいいか。

 それより、こんな馬モドキと車両の両方ともこの世界では一目見ただけで、泡を吹いてひっくり返るような非常識な代物だ。とてもじゃないが、目立って仕方ない。


「この世界の一般の馬と車両に変われるか?」

『もちろんです』

『……』


 ユニコーンのような外見の馬から、角と翼が消失し、装甲車のような金属の車両は、モゴモゴと動くと、たちまち木と布からなる車両へと姿を変える。自分で命じておいてなんだが、壮絶にキモイ。


「あ、あっしの馬車が……ただの馬車になってしまった……」


 頬をヒクヒクさせつつも、チキンがそんな訳の分からん感想を呟く。

そんなチキンの肩を掴むと首を大きく左右に振るベム。


「あまり深く考えるなよ、チキン。マスターについては、こういう方だと理解しておけばいい」

「そうそう、じゃないととてもじゃないが、身が持たないぜ?」


 ノックの妙に実感のこもった言葉に、皆がウンウンと頷く。


「おい、こら、ウォルト! 同意してんじゃねぇ。お前は俺側だろ!」

「人聞きが悪いな。俺は、兄者ほど人間止めてねぇよ」


 つうか、お前、そもそも人間じゃないだろう!? 獣人だろ!?

 そんな俺の心の声は当然のごとく無視され、皆は馬車内に乗り込み始める。

 納得がいかない気持ちを抱えつつも、俺も馬車に乗り込んだ。



 馬車の中は、やっぱり普通じゃなかった。空間が捻じ曲げられているらしく、武帝高校の教室程の広さはある。ソファーにベッド、トイレなど生活一式が備え付けられた完璧装備。


「はは……」


 乾いた笑いが口から洩れる。当然だ。この旅で、このアースガルドの文化を知るという俺の当初の目的は絶対に成就しないことを確信したから。

 ともあれ、これなら、期限までに聖都につく。だから、俺はベッドに横になり瞼を閉じた。


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