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第47話 『ありがとう』



 左から俺の首を掻き切らんと高速で接近するザムトの剣を【エア】の銃弾により、弾き返す。

 刹那ザムトの左掌底が俺の鳩尾に衝突し、俺も【天叢雲】によりザムトの右腕を根元から切断する。

 後方に吹き飛ばされつつも、【エア】を放つが、左手に持ち変えた闇の剣により、全て撃ち落とされる。


――楽しい。


 権能も魔術も、スキルも使わぬ、武器によるただの愚直なまでの命の奪い合い。それに愉悦を見出すなどもはや、あの義弟(ベヒモス)のバトルジャンキーぶりを笑えない。

 俺の【起源回帰】はまだ、第一層しか封印が解除されていない。大して覚えちゃいないが、過去の俺は強くなりすぎて、この手の戦闘をする相手がいなかった。

 遅かれ早かれ、第二層の封印は解除される。そうなれば、事実上俺に抗える存在は数柱にかぎられてしまい、こうして強者との戦闘(殺し合い)を楽しめることもなくなる。そんな気がするんだ。

 だから――今はこれが最後かもしれぬ、精一杯の潰し合い(死合い)を楽しもう。


 再度接近し、俺に雨霰のような斬撃をお見舞いしてくるザムト。

 それらの全てを【エア】と【天叢雲】で受けきり、【エア】の銃弾を撃ち、【天叢雲】を振るう。

 血飛沫が舞う中で、俺達はただ一心不乱に打ち合った。



 数百、いや、数千にも及ぶ打ち合いの後、ザムトの長剣を【エア】で弾き、俺の【天叢雲】がザムトを袈裟懸けに一閃する。

 身体半分を切り裂かれ、地面に仰向けに倒れ込むザムト。

 当初なら修復していた傷は一向に回復しない。寧ろ、身体の至所に亀裂が走り、風化が始まっている。

終わりが来たんだ。いわば今のザムトは生物という枠を無視した改造により、とっくの昔にボロボロの限界だった。

 そして、もうはや、身体の半分以上が崩れているのに、ザムトのその顔は妙に晴れ晴れとしていた。


「ユウマ……サガラ……」

「何だ?」

「楽しかったかい?」

「ああ、お前、最高に傭兵だったよ」

「何だよ、それ?」


 咳き込みながらもさも可笑しそうに笑うザムト。


「言い残すことは?」


 この崩壊の速度からして、死は間近だ。悔いはない方がいい。


「もしサブ達――部下達が生きていたら、¨今まで済まなかった。好きに生きろ¨と伝えて欲しい」

「承った」


 俺の了承に満足そうに口元を緩めるザムト。


「時間みたいだ」


 ザムトの瞳からは既に光りが消えている。どうやら、終わりが来たようだ。

 俺には最後のやらねばならぬ仕事がある。

 大きく息を吸い込む。


「地獄に行っても覚えておけ! 最強の傭兵《血盟団》団長――ザムト・ケルラルトを倒したのは、俺、ユウマ・サガラだ!」

 

 この俺の宣言に、ザムトは暫し大きく目を見張っていたが、目を閉じると――。


「ありがとう」


一粒の涙を流し、そう呟いた。



 ザムトは、光りの粒子となり、大気に溶け込むように消えていく。唯一地面に残された赤色のスカーフを見下ろしていると、気配が生じたので、振り返ると二人の男が佇んでいた。


「終わったようだな、兄者」


 ウォルトが、いつもの屈託のない子供のような笑みを浮かべつつも、右手を上げて来る。

 なるほどな。あのザムトが出現する前に、洞窟内から爆発音が聞こえたのだが、それは村人達が交戦状態になったからではなく、こいつの仕業か。


「感謝いたします」


 ウォルトの隣にいる青色の髪に無精ひげを生やした三〇代前半ほどの男が、俺に頭を深く下げ、そんな理屈に合わない台詞を吐いてくる。


「なぜ、感謝する? あんた、ザムトの部下だろう? 俺はお前の上司を殺したんだぞ?」


 この青髪の男がまだ排除されずに、この戦場に残っている時点で、ザムトを改造した奴等の犠牲者の一人なのだろう。おかしくなったザムトに今の今までついてきたくらいだ。強い忠誠心を持っていてしかるべきだ。

 そして、俺はその尊敬すべきザムトを殺した。憎しみの罵声を浴びせられこそすれ、感謝されるいわれはない。


「ええ、団長は傭兵として、最強の冒険者ユウマ・サガラに挑み敗れたのです」

「そうだな」


 悪いが、俺は人を殺して称賛されるのだけは真っ平だ。


「何より――」

「話はあとで聞く。今はザムトの傍にいてやれ」


 俺が、ザムトならそれが一番嬉しいと思うから。


「は……い」


 よろめきながらも、青髪の男は、両膝をつき、ザムトが残したスカーフを力いっぱい抱きしめる。

 今まで必死にこらえていたのだろう。大粒の涙が溢れ、青髪の男は子供のように声を張り上げ泣き出した。

 

 そんな光景を最後に俺の視界は、真っ白な霧に包まれていく。


 ――カルウイッチ村盗賊事件終了


 ようやく、盗賊事件が終わりました。ようやく、ここから次第に物語の不可解だったところが、判明していきます。(頑張って書ききります)

 次は、再度地球中心に物語が変遷します。

 二章の後半の目玉が、一二月の世界選手権。再度、一章とは、また趣向を変えて、この物語の核であり、本質であるあの現象が開始されます。

 

 正直、書くのに少し疲れてます。ですので、早く、この物語を書き終えて、読み専に戻りたい。面白そうな物語がかなりありますしね。

 この物語、すでに最後まで粗方のプロットはできてるんだけど、なんせ、我ながら進むのが遅すぎる。ペースを上げて何とか書き切ろう。

 それでは、私のしょうもなくもハチャメチャな物語に、もう少しお付き合いいただければ幸いです。

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