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第24話 旅の始まり


 荷物が少ないせいか、馬車の中はそれなりに広く、男四人と女一人が寝るには十分のスペースがあった。

 かなりゴツゴツしていたのと、半端じゃなく揺れるので、慣れてないとゲロゲロの世界へ一直線だったかもしれないが、生憎全く問題はなかった。俺、確か乗り物に弱かったはずだったのだが、俺の知らぬうちに、体質改善がなされたか、それとも、レベルが上昇したせいか。いずれにせよ。好都合なのには変わりがない。


 

 馬車が止まったことを契機に俺の意識は覚醒していき、瞼を開けると、セシルと視線がぶつかる。

セシルは俺の左隣で眠っているし、何ら不自然はない。


「おはよ」

「はい。おはよう……ございます」


 横になり毛布に包まった状態で真っ赤になりつつも、律儀に挨拶を返してきた。

身体を起こして、背伸びをすると、馬車を降りる。

 乳白色の朝日の光が路上へと降り注いでいるその場所は、三メートル程の比較的小さな城壁により囲まれた街の城門前だった。

 一際、広いメインストリートの両脇に立ち並ぶレンガ造りの建築物。その路上を忙しなく行き交う人々。

 ここが、ピノアに最も近い北西の街――ランタン。

 人口、数千のこの世界ではかなりの規模の都市だ。

 このランタンは、ピノアの冒険者組合が支配する街であり、ここからさらに北西が、カルディア教国となる。

 カルディア教国は、中立地帯たるピノア周辺とは比較にならない程、治安が悪い。何より、俺達にとって、敵国に等しい国への旅行だ。いくら俺達が強くなったとはいえ、用心するに越したことはない。

カルディア教国へ入り、街から街へと馬車で夜間を進むことになる。街の区間の数か所は、数日馬車でかかる場所もある。途中で、馬車を買い込む必要もあるかもしれない。俺達の強さなら、盗賊や魔物などは全く障害にならない。むしろ、(ドラゴン)が団体さんで襲ってきても、笑って撃退できそうだしな。

 ともあれ――。


「宿をとりましょう、マスター」

「そうだな。それと、今はマスターではなく、『エア』と呼べ。お前らも仮名を考えておくように」


 グルリと一同を見渡し、そう指示する。


「「「……」」」


 グスタフ達が無言で頷き――。


「は、はい」、


 セシルが眠そうに両目をこすりながらも、元気よく返答する。


「セシル、眠れなかったのか?」

「い、いえ……」


 頬を紅潮させながらも、俯くセシル。

 結構な揺れだったし、それはそうか。むしろ、全く起きなかった俺の方が異常なのだろう。


「セシルちゃん、女の子だねぇ~」


 ノックが俺とセシルを相互に見やり、ニヤケ顔でそう呟くが、グスタフとベムに肘鉄をくらわされ、蹲る。


「だから、隊長、副隊長、それマジで洒落にならないからっ!!」

「当然だ。洒落じゃないからな」

「空気を読めぬ阿呆は、地獄へ落ちよ」


 そんなご無体な宣告を受けつつも、ノックは引きずられていく。

 

「セシル、どうした? いくぞ」


 今もモジモジしているセシルを促し、俺達もグスタフ達に続き、メインストリートを歩く。



 宿は、メインストリートのほぼ中心にあった。ギルドハウスに転移ができる俺達にとっては、正直どこでも同じだが、このなりで安い宿になどに泊まれば逆に怪しまれる。

 そこで、街一番の高級宿へ泊まることになった。

 一日で一人、五万ルピとなった。

 宿の部屋から、地球の自宅へ転移し、朝食を済ませると学校へ向かう。


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