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第13話 レベルアップ


 扉が開くやいなや、引き金(トリガー)を引く。銃弾は黒犬の一匹の顔面に吸い込まれ、頭部が粉々に爆砕する。

 さらに、大口を開けて飛びかかってくる黒犬の胴体に狙いを定め、打ち抜く。

 銃声と共に銃口から発射された銃弾により、黒犬の胴部が抉れ、血肉がまるで花吹雪の様に空を舞う。

俺はバリケードまで後退し、銃口を構えて追撃に備えるも、待機している五匹の黒犬は、唸り声をあげるだけで、警戒態勢のままでいた。

 生物としての本能だろうが、今この時に限っては悪手極まりない。

 黒犬目掛けて、三発、続けざまに発砲する。

 闇色の死の弾丸は、まるで俺の意思を具現化するかのように、次々に黒犬達三匹の胴体部にクリーンヒットし、大きな風穴を開ける。

 別室に退避しようとする二匹の黒犬にもすかさず、弾丸を発射する。絶大な威力を秘めた弾丸は、黒犬の頭蓋を打ち抜き脳漿を飛散らせる。

 取りあえず、目に付く七匹はぶち殺したが、まだまだ黒犬はいるだろう。

 このバリケードで可能な限り、黒犬の数を減らすことも、一つの手ではある。

 しかし、この黒犬、どの角度から見ても、普通の犬ではない。通常の犬よりも二回りほど大きいし、第一、頭に角が生えている犬などこの地球には存在しない。

 おそらく、この黒犬は召喚術式により、異界から呼びされた存在。無限に呼び出せるとまでは思わないが、頭である召喚者を叩き潰した方がより効率が良い。それに、下手にここでもたついて、しびれを切らした奴が小雪を人質にとるなどという暴挙に出る可能性も零ではないのだ。

 攻守を入れ替える必要がある。

 右手の銃のグリップに魔力を通し、銃弾を創造、装填する。

 背中を壁に押し付け、沿うようにゆっくり移動する。これなら、背後を意識する必要はない。俺の虚弱体質を鑑みれば、奴等に食いつかれたら引き離すことは不可能であり、一瞬でひき肉になる。こんな工夫も多少なりとも役立つはずだ。



 階段を上がり、手鏡で様子を確認すると、廊下に七匹の黒犬達が徘徊していた。

 予想通り、召喚士の姿はない。大方、奴は家の外で指揮でも取っているのだろう。

 だが、お蔭で判明したこともある。召喚士と黒犬達は意思の疎通まではできない。当然、敵を殺せ、その場に留まれ等の一方的な命令くらいはできるのだろうが、黒犬達から情報を得る事はできやしまい。もし、それが可能なら、階段下の扉前で黒犬達が殺された時点で、階段下に雪崩込んで来ているはずだ。

 さっきの戦闘で得られた情報では、一度に殺せる数は3匹まで。ならやりようはある。

 

 最も近い三匹が横並びに一列に並んだとき、階段から上半身だけ身を乗り出し、三回連射する。

 銃弾が黒犬三匹に命中し、その上半身が破裂するのを確認し、階段を駆け下りると、銃を構える。

 一歩遅れて、黒犬達は階段に姿を現し殺到してくるが、その進行速度は明らかに緩慢だった。一般に四つ足動物は階段を登るのは得意だが、降りるのは不得意な傾向が高い。この黒犬も例にもれなかったらしい。

 階段を駆け下りてくる残りの四匹も、悠々と銃弾をお見舞いし、あっさり絶命させる。


(しかし、どういうことだ?)


 普段から走り込んでいるのだ。自身の身体能力など把握している。奴らが階段を下るのが不得意であることを考慮に入れても、俺よりは早い。だから、ギリギリで奴らを撃ち殺すことになると踏んでいたのだ。

 しかし、蓋を開けてみたらどうだ? 俺は奴らが姿を現す前に、階段下に駆け下りており、銃を構えていた。どうにも現実と予測が噛み合わない。個体によって黒犬の能力に差でもあるのだろうか。だとしても、見かけが同じなのに、これほどの差が生じるだろうか。


(まっ、検証は後だな)


 戦闘中に考えることでもない。敵の能力にばらつきがあると知っただけでも今は良しとするべきだ。

さて、前に進もう。


 《黒角犬》――15匹討伐完了。


                ◆

               ◆

               ◆


 背を壁につけたまま、階段を上がり、手鏡で確認すると、居間から移動してきたと思しき二匹の黒角犬が、仲間の死体をガツガツと喰らっていた。戦闘の真っただ中で、食事とは舐められたものだ。

階段を駆け上がり、二匹を打ち抜く。まるで、ミサイルの直撃を受けたかのように、粉々の細かい肉片となる黒角犬。


(おい、おい、この銃、威力上がってねぇか?)


 最初は、身体の中心に当てても、胴体の一部が吹き飛ぶくらいだったが、今や、どこに当てても、木端微塵に爆砕する。魔力の浸透に慣れて来たということだろうか。


(くそっ! 色々不可解な事があり過ぎて気になってしょうがねぇ)

 

 何度か首を左右に振り、再度、魔力により銃弾を充填し、居間へと向かう。

 手鏡で、廊下から居間の内部を確認すると、黒角犬六匹がうろついている。

 この数なら大した脅威ではない。

 六匹のうち、四匹が部屋の隅へ行ったところで、居間に体を滑り込ませると、弾丸を放つ。

 一瞬で二匹は爆砕し、血液が床、壁、天井に雨の様に跳ねる。直ぐに、階段付近まで退避し、居間から飛び出て来た黒角犬四匹を相次いで絶命させる。

 さらに階段下へ退避し、迎え撃つべく銃口を構え、数秒遅れてようやく姿を現した黒犬目掛けて弾丸を放つ。銃弾は、黒角犬の身体を粉々に破砕させる。


ドクンッ!


 突如、心臓が拍動し、視界が真っ赤に染まり、身体が燃えるように熱くなる。そのとびっきりの熱感とともに、視界がぐらぐらと揺れ動き、背骨に杭が打ち込まれたような激痛が走る。

 居間にいた最後の一匹の黒角犬が階段を駆け下りてくる。視点が定まらず、銃口が揺れ動く。

 黒角犬は俺の前までくると階段からジャンプし、大口を開けて飛びかかってきた。

 妙にゆっくり流れる景色。奴の鋭い牙が俺の喉笛を切り裂かんと迫る中、俺は震える左拳を強く握り締める。

 これは生物としての本能からだろうか。俺は、黒角犬の眉間に拳を渾身の力でぶち当てていた。

 ゴギュッと骨が折れ、肉が潰れる音。そして、黒角犬の首が明後日に向き、床に崩れ落ちる。


 何とか壁に寄りかかり、三枚の扉を閉めると、工房の休憩室まで退避する。

 工房のソファーに数分間横になっていると、熱感に全身の痛み、怠さ等は嘘のように消失してしまう。

もっとも、調子が戻ったのは肉体だけで、頭の中は数々の疑問により、グチャグチャにシェイクされていたわけであるが。


(俺、いつからそんな怪力になったんだ?)


 普段の俺なら、仮に黒角犬を殴っても、ダメージなど与えられはしまい。逆に拳にヒビくらいはいっていたはずだ。それが、俺の左拳は、いとも簡単に黒角犬の首をへし折ってしまった。


(それにこれ、なんだろうな)


 俺の視界の左上に、点滅する青色透明のテロップ。

 テロップには、『鑑定Lⅴ1』との文字があった。おっかなびっくり、『鑑定Lⅴ1』のテロプに触れてみると、《ステータスオープン》、《武具・魔道具鑑定》が表示される。

 《ステータスオープン》のテロップを左の人差し指で押すと、俺の視界一杯に、薄透明のゲームのコマンドのようない物が出現していた。


              ――――――――――――――――――


              『ユウマ・サガラ』

   〇レベル2

   〇称号:覇王(憤怒)

   〇筋力:1/100

   〇耐久力:1/100

   〇器用:1/100

   〇俊敏性:1/100

   〇魔力:2/100

   〇次レベルへ至る条件:魔物を新たに100匹討伐。


              ――――――――――――――――――

 


「はあ? レベル? 称号? 筋力? 次のレベルに至る条件? そんな阿呆な! ゲームじゃあるまいし……」


 俺の呟きとは裏腹に、今まで複雑に絡まっていた疑問という名の糸はほぐれ、一本の線となっていく。

 確かに、レベルが身体能力の強さの大枠を決める概念だとするなら、幾つかの疑問は氷解する。

 まず、さっき階段で黒角犬の一匹を殺した直後、急に身体が熱くなり、活動能力が著しく低下したこと。これはレベルの上昇により、身体をより強固なものに作り変えていたと解せばしっくりくる。さっきの俺のワンパンの威力も、レベル2に上がった結果というわけだ。

 だとすると、また新たな疑問も生じる。即ち、レベル2に上がる前から、次第に銃弾の威力が上がっていた事実だ。


(レベルにつき、もっと詳しく知ることができりゃあいいんだが……鑑定、まさかなぁ)


 駄目元で、人差し指で、レベルを押す。


              ――――――――――――――――――


                『レベル』


〇説明:肉体と魂の強度の指標。レベルアップは、小進化の一つであり、一段階上の存在へ昇華する。

 次のレベルに至るには、《能力変動値》をMaxの100まで上げ、かつ、《次のレベルまで至るための条件》を満たさなくてはならない。


              ――――――――――――――――――


 よ~し、よし! 鑑定はテロップに触れることで発動するらしい。これ、完璧にゲームだ。

《能力変動値》と《次のレベルまで至るための条件》が判明すれば、レベルに関しては、ほぼ解明したと言っていい。《能力変動値》の文字を触れる。


              ――――――――――――――――――


               『能力変動値』


〇説明:同一レベル内での強さの指標であり、肉体鍛錬や敵を倒すと上昇する。能力変動値は、1~100の範囲で変動する。


             ――――――――――――――――――


 次は、《次のレベルまで至るための条件》だ。


             ――――――――――――――――――


           『次のレベルまで至るための条件』


〇説明:次のレベルに至るための特殊な条件。全能力Max(100)の状態で、この条件を満たすとレベルが上がり小進化がなされる。


             ――――――――――――――――――


 レベルとは肉体と魂の強さの基準であり、レベルが上昇すると、小進化がなされ、劇的に身体能力が上昇する。

 ここで、同一レベル内でも、敵を倒すと1から100の範囲で身体能力は上昇する。ただし、レベルの上昇ほどの凄まじいものではない。

 そして、単に《能力変動値》を100に上げただけでは次のレベルには至れず、他の特殊な条件も加えて満たす必要がある。

 黒角犬を討伐するにつれ、能力値が上昇し、少なくとも十九匹を倒すまでに全能力値がMaxの100に到達していたのだろう。

 出現する度に黒角犬が弱くなったように感じたことや銃弾の威力が増していたのは、レベル1の範囲内で俺の《能力変動値》が増していたことが理由だと思われる。

 そして、最後の俺の左拳の非常識な威力は、レベルが2となり、身体能力が一ランク上に上昇したことが原因だろう。


 最後が《称号》。


              ――――――――――――――――――


                  『称号』


〇説明:その者の存在の格を決め、寿命、成長速度、ステータス、スキル、魔術等の様々な事柄を支配する唯一無二の絶対概念。


              ――――――――――――――――――


 よくわからないが、要するに、寿命や成長速度等、色々な要因を決定する概念なのだろう。《覇王(憤怒)》を指で押すが全く反応しない。まだ《鑑定》のlvは1。ならば鑑定できないものもあってしかるべきだ。

 俺は今までスキル・魔術を発動し得なかったし、身体能力の上昇も僅かだった。それが、今日に関しては、数匹黒角犬を倒しただけで、身体能力が跳ね上がった。この不自然な現象から察するに要因となるのは、あの予知夢だが……今はそんなことを気にかけている余裕はない。考察はこの状況を切り抜けてからゆっくりとすべきだ。


 次が、《武具・魔道具鑑定》。親父の資料では、この黒銃をオーパーツのようなものとしてとらえていた。ならば、他にも重要な機能があるかもしれない。是非、鑑定したいところだ。

 《武具・魔道具鑑定》を押すが、さっきのようなテロップは現れなかった。試しに、ホルスター内の黒銃に視線を落とすと、【エア】のテロップが生じていた。指で押すと――。


              ――――――――――――――――――


                【エア】


〇説明:魂連結感応性金属により造られた生きる兵器であり、覇王専用武具。銃器の形を取り、登録者の成長と共にクラスが上昇する。


〇機能:機能の切り替えは、弾倉(マガジン)を操作することにより行う。

■常時機能:

異空間収納・転移:エアを異空間に収納・転移し得る。

《顕現》で異空間から出現又は二点間転移させ、《退隠》で異空間に収納する。

■追加機能:

◇1の機能――銃弾創造:所持者の魔力を用いて銃弾を創造、充填する。銃弾の威力と弾丸充填数は所持者の魔力に依存する。

◇2の機能――時限弾創造:所持者の魔力を用いて時限式の不可視の弾丸を創造、充填する。

以下のルールに従う。

・爆弾設置:引き金(トリガー)を引くと爆発性の弾丸を発射し、設置する。

爆破(ブラスト)引き金(トリガー)を二秒間長押しすると、設置された弾丸の順に一つずつ爆発する。八秒間長押しすると、全弾丸が爆発する。爆発の威力と弾丸充填数は所持者の魔力に依存する。


〇成長レベル:2


〇武具クラス:伝説級


〇限定称号・覇王:覇王の称号がある者以外、本来の機能を示すことはない。特定の覇王が一度登録すると、永久に固定化される。


              ――――――――――――――――――


 何だ、このチート武器は? 成長する生きる兵器って、生物(いきもの)かよ! 

 二つの機能も心底ぶっ飛んでるし、正直引く、ドン引きだ。それにしても、親父の研究対象が俺の称号である『覇王』の専用武器って、偶然にしてはあまりに出来過ぎだ。何か要因でもあるのかもしれない。まっ、助かるんだけどさ。

簡単に見て行こう。

 まずは、《成長レベル》


             ――――――――――――――――――


               【成長レベル】


〇説明: 魂連結感応性金属により造られた覇王専用武具のみが持つ特殊な性質。所持者たる覇王の成長に伴い、レベル1から10まで成長を遂げる。

             ――――――――――――――――――


 つまり、俺とこの『エア』の魂が繋がり、俺の成長に応じて、【エア】も成長し、《成長レベル》と《クラス》が上昇する。そして、クラスとは――。


             ――――――――――――――――――


               【武具クラス】


〇説明: 武具の機能や強度に応じて、初級、中級、上級、伝説級、神話級、超越級、深淵がある。深淵に近づくほどより、強度で、かつ、超常的力を示すようになる。

             ――――――――――――――――――


 今の【エア】は伝説級。伝説級がどれほどすごいかは知らないが、少なくも《時限弾》の機能は現代魔道科学では再現が不可能。やっぱり、オーパーツだったわけだよな。

 概要は理解したぞ。あとは、《異空間収納》の実験。


《退隠》と唱えると、【エア】が煙のように消え、《顕現》で俺の右手に出現する。《異空間収納》、非常に使える機能だ。これなら下校中に襲われた際でも十分対応が可能だし。まあ、今異空間に収納するのも味気ない。この戦闘中は、ホルスターに収納して置くことにしよう。

《時限弾創造》は、事実上時限爆弾である以上、屋内で実験するのは自殺行為だ。後ほど機能を確かめることにする。

 一先ず、これで検証は終了した。視界の左下方にある【back】を押し、テロップを消失させる。

絶望的だった七三分けの打倒に、かなり近づいたことは確かだ。

 奴もそろそろ、黒角犬の死亡の事実に気付く。小雪の安全確保の観点からも、奴に逃げられるわけにはいかない。早く行動に移すべきだ。

 


 自身の能力の把握は、戦闘には必要不可欠な要素だ。七三分けとの戦闘前までに、レベル2に上昇した俺の現在の身体能力を確認したい。

 それにまだ、この家には、七三分けが召喚した黒角犬が多数いる。そんな状態で七三分けと戦闘状態に突入しても、無数の黒角犬により囲まれて苦戦は免れない。

 七三分けが仮に一流の召喚士であっても、召喚するにはそれなりに時間がかかるはず。それなら、それ以上の速度をもって各個撃破し、数を減らしたところを叩く。こうあるべきだろう。

 ミリタリーナイフを左手に握る。【エア】の機能は大方理解したし、銃では身体能力の把握という目的にそぐわない。素手の一撃で撃沈したくらいだ。ナイフとはいえ、武器を持っていれば、負けることはあるまい。

 

 階段を駆け上がる。まだ、全力など出していないのに、耳元で風が千切れるほどの凄まじい加速感。あっという間に、階段の上に到着していた。

 もう、こそこそ隠れる必要はない。全匹、俺の家から駆除してやる。

 居間に足を踏み入れると、丁度三匹の黒角犬が死骸を食べていた。

 俺は近くの黒角犬に狙いを定めると、右足で床を蹴り放つ。一瞬で、その懐まで距離を詰め、ミリタリーナイフを頸部目掛けて一閃する。黒角犬の首が宙に浮きあがり、首を無くした胴体からは鮮血が噴水のように噴き出す。

 俺は疾駆する速度を緩めず、左足を床に叩きつけ、目標を二匹目に変える。景色が高速で後ろに流れ、眼前に現れる黒角犬。その首をミリタリーナイフで跳ね上げると、その頭部を右手で鷲掴みにし、もう一匹に投げつける。

 頭部は弾丸のような速度で一直線に黒角犬に衝突する。黒角犬の身体はまるで、ダンプカーにでも轢かれたように途轍もない速度でぶっ飛び壁に叩きつけられた。


(すげえ……)


 投げつけた頭部で、黒角犬の巨体を壁まで吹き飛ばすほどの膂力(りょりょく)。黒角犬をピクリとも反応させないスピード。そのスピードに対応する動体視力。全てが数時間前の俺とは別次元だった。

現在の身体能力は、漠然とではあるが把握した。後は殲滅のみ。ホルスターから【エア】を取り出し、グリップを握り、銃弾を創造・充填する。


                ◆

               ◆

               ◆


 それから、俺は家中を疾走し、黒角犬の間を稲妻のように縫っていく。すれ違い様に、ミリタリーナイフでその首を刎ね、【エア】の銃弾で爆砕する。

 たった数分であれだけ家にいた黒角犬は全て駆除していた。残りは外のみ。その前に、一応、『鑑定LV1――《ステータスオープン》』を確認しておく。

            

            ――――――――――――――――――


             『ユウマ・サガラ』

   〇レベル2

   〇称号:覇王(憤怒)

   〇筋力:9/100

   〇耐久力:9/100

   〇器用:9/100

   〇俊敏性:10/100

   〇魔力:10/100

   〇次レベルへ至る条件:魔物を新たに100匹討伐。


            ――――――――――――――――――

 

 しこたま倒したのに、《能力変動値》が大して上昇していないのは、レベル2だからかもな。つまり、レベルが上がるほど、《能力変動値》の上昇は鈍になる。これもゲームのルールに類似している。

 とは言っても、この一年寝る間も惜しんで頑張っても、ちっとも上達しなかった俺だからわかる。この成長速度は異常だ。なぜ、こんな不思議体質になったのかは不明だし、《鑑定》等、考察すべき点は多いが、今は七三分けを打倒するのが先決。

 黒角犬が七三分けの奥の手なら、負けはしない。さっさと、奴をふん縛って警察に突き出そう。

ドアホンから外の様子を伺うと、巨大な犬に似た個体とその背に乗る主人である七三分けが映像として映しだされる。

 室内を跳梁していた黒角犬の十倍にも及ぶ体躯に、双頭。どう控えめに見ても、室内の黒角犬とは格が違いそうだ。

 七三分けは、額に太い青筋を立てながらも、双頭の犬の背を右拳で叩いている。黒角犬達の制圧がもたついているので怒り心頭というところか。

 だが、怒っているのは寧ろ俺の方だ。七三分け、お前は、小雪に危害を加えようとした。その安易で愚かな選択を死ぬほど後悔させてやる。



 二階のベランダに移動し、【エア】に銃弾を充填し、七三分けを背に乗せる巨大双頭黒犬の一頭の脳天に照準を合わせる。


(開戦だ!)


 【エア】から銃弾が高速で放たれ、俺と七三分けの死合の幕が上がる。



お読みいただきありがとうございます。

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