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第112話 ギルドゲーム開催


 起きると、見知らぬ木目が視界に入る。ボーとする頭を数回振って、当たりを見渡すと、俺にしがみ付き、微かな寝息を立てている小動物。

 抱き上げると、キュウは大きな欠伸をすると、俺の顔を舐め始めた。

 目を瞑っているところから察するに、まだ、半分寝ているのかもしれない。

 キュウの頭部を数回撫でると、¨キュウ¨と鳴き、大きな欠伸をし、再度寝入ってしまう。 


「そうか、ここ、新工房だったな……」


 ようやく、思考にかかった濃密な靄が晴れていく。

 昨日、【滅びの都】での探索の末、《エアブラスト》をぶっぱなし、新工房へ転移し、秀忠から割り当てられた部屋のベッドにダイブし、意識を失ったんだ。

 自身を鑑定すると、レベル29と表記されていた。

 遂に、レベルは30付近まで行った。この調子なら、明日には、レベル40に到達する。

 ラヴァーズのレベルが十台の後半であったことからしても、悪魔のダース(デヴィルズ・ダズン)とかいう、厨二組織がどれほど強かろうが、流石に、レベル40を超えれば、容易に殲滅できるだろう。


 ――――――――――――――――――


『遊戯の真理』

〇権能:

 ■小進化(Lⅴ6)

 ■ロード(Lⅴ3)

 ■神眼鑑定(Lⅴ10)

 ■アイテムボックス(Lⅴ10)

 ■休息(Lⅴ10)

 ■改良(Lⅴ5)

 ■魔物改良(Lⅴ7)

 ■覇王編成(Lⅴ5)

 ■転移(――)

 ■魔術・スキルの理(Lⅴ1)


――――――――――――――――――


 やはり、小進化はレベル5から6まで上昇していた。俺の現在の非常識な成長率はこれで説明がつく。

 しかも、『次のレベルまでの条件』が、レベル30、40、50……のように、レベル10ごとに緩和されていた。

 ちなみに、レベル30に至る条件は、『旧友邂逅』であり、これ以上はどうやっても判明しなかった。字面(じづら)だけ見れば、過去の仲間との偶然の出会いなんだろうが、思い当たる奴などいやしない。まあ、ここで唸っていても全く解決などしない。後で秀忠にでも相談すべきか。

 ロードはレベルが1上がる。


――――――――――――――――――


『ロード(Lⅴ3)』


〇起源回帰:三〇分間、元始の状態に、魂と肉体を回帰させる。

〇使用制限:一日三回

〇使用条件:第一層封印

――――――――――――――――――


 意味不明だ。元始の状態に回帰するって言われてもな。元始が弱けりゃ意味ねぇよ。それに、使用条件の【第一層封印】もよくわからない。

 試しに発動しようとしてみるが、全くうんともすんとも言わない。おいおい、理解してくしかあるまい。

 鑑定は次の項目に置き換わっていた。


――――――――――――――――――


『神眼鑑定』

〇一定領域内に存在するあらゆるものを鑑定する。ただし、覇王以外は限定的にしか使用することができない。

――――――――――――――――――


 つまり、俺の一定領域内に入ったものを問答無用で鑑定する。そんなソナーのような鑑定能力。使えるってもんじゃない。これで、戦闘は激変する。

 魔物改良はレベルが7まで上がり、使役できる魔物の数が三〇体まで上昇し、《魔物融合》もまた、《魔物四者融合》まで進化していた。

 『覇王編成』は、レベルが1上がり、レベル5となっていた。増えていた能力は、《権能使用権》。今までセレーネだけが使用可能だった改良や魔物改良を第一眷属は、一つに限り使用可能となった。

最後が、『魔術・スキルの理(Lⅴ1)』。


――――――――――――――――――


『魔術・スキルの理(Lⅴ1)』


〇説明:勝利した他者の魔術・スキルを奪い、ストックする。ただし、略奪率は、他者が強くなるほど低くなる。同等以下の存在では、原則ランダム。


――――――――――――――――――


 勝利した相手から魔術やスキルを奪う。そんな能力だろうか。使ってみないと真偽は不明だ。

 ともあれ、俺が獲得した初めての魔術・スキルに関する権能。有効活用するべきだろう。

 

 ここで、秀忠から、《文字伝達》により報告事項があったので確認する。

 昨晩セレーネが《鋼の盾》の他の幹部と契約しようとしたが、一切不可能であったこと。

《鋼の盾》の一般メンバーは、グスタフの第二眷属。第二眷属は第一眷属にはなれないのか。もしくは第一眷属になるには隠された一定の条件が必要なのか。言われてみれば、今まで、セレーネが直接契約した面子は限られていた。今後、さらなる考察が必要かもしれない。

 ともあれ、奴らが契約を希望した目的は、俺達のギルド――《三日月の夜(クレッセントナイト)》に加入したかったからに過ぎない。

 確かに、複数のギルドの所属は、契約者にならねば禁じられてはいる。

 しかし、第二眷属も第一眷属も、冒険者組合からは判断不可能だろうし、奴らが契約者であることには変わりはない。加入自体は可能だろう。

 それに、実質的にいっても、第二眷属にも、成長速度等につき、第一眷属と同等の力を持たせることができるし、大した差があるわけではない。

 本人達も殊更不満はないようだし、別に問題は生じまい。


                ◆

               ◆

               ◆


 気持ちよさそうに爆睡しているキュウをベッドに寝かせると、アースガルドのセレーネ宅へ転移した。


「ユウマ、来たか」


 部屋の片隅に俺を視界に入れると、パタパタと駆けてくる銀髪幼女。

 その顔に張り付かせている歓喜の表情からも、ギルドゲームで敗北するとは夢にも思っちゃいまい。

 席でお茶のような者を啜っていた秀忠も立ち上がり、俺に対し一礼をする。


「マスター、冒険者組合からギルドゲームのルールの詳細が送られてきました」


 秀忠は、赤のリボンがまかれた白色の円筒から、羊皮紙を取り出し、俺の前に置く。

 手に取ってざっと目を通すと――。



――――――――――――――――――


『ギルドゲームの開催とそのルールの通告』


〇始組暦五二三年八月二〇日、七のとき、《炎の獅子》と《三日月の夜(クレッセントナイト)》とのギルドゲームを開催する。

〇ルール概要

・勝利条件:相手の屋根上の(フラッグ)を先に奪うこと。

・特別敗北条件:他者のチームのメンバーの命を奪う事。

・ゲーム出場条件:始組暦五二三年八月一九日、一二の時までに両ギルドにつき登録をした冒険者。ただし、両ギルドのマスターは除く。

――――――――――――――――――


 ルールは、実にシンプル。相手のチームの(フラッグ)を奪うこと。その委細が定められていないところから察するに、旗を奪うことを目的とした総力戦ってわけか。


「それで俺達の現在の戦力は?」


 この完璧主義者が、餓鬼共をあれから鍛えていないはずもない。早朝の楽しい散歩など銘をうって、鍛えているはず。


「セシル、アイラがレベル14、グスタフ、ベム、ノックがレベル12。教会の子供達三六名がレベル5です」


 やっぱな。しかも、皆が神話級の武具で完全装備ときている。

確かに、《鋼の盾》の一般メンバーは、昨日の正午までの登録が間に合わなかったから、出場はできない。

 それでも、《炎の獅子》はウォルトのレベル5が最大(マックス)。いくらウォルトが危険でも、奴が奥の手を出す可能性が低い以上、所詮レベル5に過ぎない。《炎の獅子》は、ウォルト以外のメンバーはレベル4以下。流石にこれだけの戦力さなら、敗ける要素など皆無だろうさ。セレーネの余裕もある意味頷ける。


「シスターアンジェは?」

「教会に、一〇〇〇万ルピは支払い済です。ギルドゲームの開催と同時に、解放されるかと」



 気持ち悪いくらいに、順風満帆ってことか。

 だが、秀忠の歪みきった性格は先のラヴァーズ殲滅戦で心底思い知っている。そんな単純で簡単な成功の道など作ってはいないだろう。


「それで、今度は何を企んでる?」

「何のことでしょうかな?」


 その言葉とは裏腹に、秀忠の口端は大きく引かれていた。

 せめて、顔に出すなよ。それじゃ、また、とびっきりの面倒を用意しているのがバレバレだぞ!


「そうかよ。それで、セシル達は?」


 あと、五分ほどでゲーム開始。愚問だったかな。


「すでにこの屋敷の外です」


 やる気満々ってやつか。どうも、先の災難を考えると、悪寒しかしない。

 まっ、こうなった秀忠に何を言っても無駄だ。それに、秀忠の敷いたレールを逸脱しない限り、俺達に真の意味の敗北はないのも確かだし。


「そろそろ、時間ですな」


 秀忠が、再度席に腰を下ろし、狭いセレーネ宅のリビングに設置された複数の画面を眺め見る。

 このゲームのために、カメラをこのピノア全土に設置したようだ。幾つもの画面には、ピノアの様子が映し出されている。

 そして、ピノアの中心に位置する《中央聖教会》前は、尋常ではない数の見物人で溢れており、そして、その中心には、金髪に顎鬚を蓄えたおっさんと、金髪のエルフが佇んでいた。

 顎髭のおっさんが、ピノア分館の分館長――レオン・バントック。金髪エルフがシャーリーだ。だとすると、ギルドゲームの開催の宣言か何かなんだろう。


「《中央聖教会》広場前音声」


 秀忠の言葉に、その宣言の内容が、俺の耳に飛び込んできた。

 レオンが名を呼ぶ度に、歓声が上がる。どうやら、《炎の獅子》のメンバーの紹介らしい。


『ウォルト・サナダ』


 レオンの口から、ウォルトの名が呼ばれると、大歓声が巻き起こる。

 ウォルトの奴、大人気だな。聡い奴のことだ。今回のギルドゲーム、ネメアの奴が仕掛けたくらいの予想はしているはず。

 本人としては、このゲームだけは英雄扱いされたくはあるまい。だって、奴がどの道を選ぼうと、ウォルトの今まで積み重ねて来た信念をズタズタに引き裂くはずだから。


『《三日月の夜(クレッセントナイト)》――グスタフ・ヒッポ、ベム・ライク、ノック・リドエッチ、セシル・フォレスター、アリア・サナダ……』


 レオンは大きく目を見開き、口をパクパクさせていた。

レオンの動揺具合から察するに、どうやら、チームの参加メンバーは、直前の宣誓の儀式にならなければ、冒険者分館長であっても、知らされないルールのようだ。


『レオン分館長?』


 シャーリーの躊躇いがちの疑問の声に、レオンは顔中を苦渋一色で染めて絞り出す。


『《民聖教会》の子供達、計三六名』。


 暫しの静寂。そして、割れんばかりの爆笑が巻き起った。





 お読みいただきありがとうございます。

 次回投稿は明日となります。

 

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