表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕たちが過ごした青春  作者: 劉蓮
6/6

第6回 技

だけど青波(せいは)くんは受け取らず、その下に居たPF(パワーフォワード)(るい)くんが来た。僕はそんなことなんか知らなかったので、ビックリしてしまった。累くんといつそんな会話をしたのだろう。

累くんは受け取るとふぅっと息を吐いた。目の前にいる吉田(よしだ) 一樹(かずき)先輩が少し引いた。まあそんな目付きで見られたら誰しも怖がって引くだろう、と思った。

だが累くんはもう一度僕にボールを戻した。目で累くんが“行け”と僕に合図した。

僕は深呼吸をしてドリブルをゆっくり突く。目の前にいる燐さんがボールに気をとられている間、バックチェンジ。左手に移ったドリブルを低く二回ほど早く突くと、そのまま姿勢を低くして抜こうとするが、あっさり止められてしまったので、ターンをして回避。そしてレイアップを使用と思うがダブルチーム。

「碧波っち!」

奏多(かなた)!」

そう叫んで声のする方に直感で後ろ向きのパス。その表紙に僕は前に倒れてしまった。手を付いて立ちあがり、直ぐ様奏多の方を見ると、シュートモーションに入っていた。そのラインはスリーポイントライン。目はすごく真剣な表情をしていて、ボールを下げずにそのまま縦にジャンプ。そのフォームはとても綺麗で目を奪われてしまった。

放たれたそれは綺麗な弧を描きバックボードに当たらず直接ゴール。奏多の様子は、いつもみたいに元気そうではなく、冷静だった。(あたか)も入るのが普通だと言うかのように。

「ナイシュ!奏多」

「うん、新ちゃんが場所取りしてくれたおかげだよ」

「ありがと。でも今回のフォームはちょっとずれてて微妙だったかな」

「そっかぁ」

「まあ次もあるよ」

「んだね!」

何だか、この二人だけ次元が違う気がしてならなかった。それに比べて僕にはまだ相棒が居なくて、なにもできない。

新一(しんいち)と奏多のコンビは、今後使えるかもしれないと言う確信が持てた。

僕はこの二人に得点を任せるという攻めかたを思い付いたが、もしも奏多のシュートが一〇〇%じゃ無かったらと考えると、累くんと青波くんも使うしか無いと思った。

だけど今はそんなことを考えている暇なんて無い。今は守る側なのだから。

僕はボールマンを見つつ後ろの人たちの配置も見たC(センター)の新一くんには、三年生のサウスポーエースの鈴木(すずき) 拓斗(たくと)さん。PF(パワーフォワード)の累くんには、一樹さん。

一樹さんは三年生のスタメンの中でも一番パワーがあり、一人では押さえられないと言った。

「一樹!」

燐さんの声で我に帰ると、ロングパスで一樹さんい繋いでいた。累くんも険しい表情をしながら守っている。

青波くんは必死に面取りをしている。

「負けません、一樹さん」

「おうよ!その行きだぜ、一年生坊主」

累くんの中では、一樹さんはライバルになっているみたい。

一樹さんの強いドリブル。それに負けじと押さえる累くんの姿は、イケメンそのものだった。だけどやっぱり一樹さんの方が強くて、押されてしまう。そしてターン。フリーになった一樹さんは、シュートを打とうとした。

「待て、一樹!」

部長の凌平さんの声。それは遅く、もう一樹さんは打っていた。だが、一樹さんは誰かにぶつかった。そう、僕だ。

まず、燐さんは一樹さんに目を奪われているところで、僕は姿勢を低くして一樹さんに接近。誰もそんなことに気づかなかったので、累くんにだけ姿を現した。すると累くんはあっさり抜かれてくれた。それを伺い、僕は一樹さんの目の前にいる出現し、ファウルをもらったと言うわけだ。

「やってくれるな、一年」

「正直言って、スッゴク痛かったです。流石三年生のスタメンPFですね」

「ほう」

一樹さんが何を察したのかは分からないけど、これは僕が小学の時に教えてもらった技。背が低いのを生かした、ファウルをもらうだけのために作られた技らしい。

「ナイスファウル、高瀬」

「うん。ありがと」

手を差し伸べてくれた青波くんの手をギュット掴み、立ち上がった。そのときの青波くんの表情が、どこか笑っているような気がした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ