移籍とバイト2
「ここって…」
武田美穂は神妙な表情で説明を求めてくる。
「ここは俺がいつも通ってる志位神社。いくら急いでてもここだけは外せん」
「いつも通ってる?」
「ああ。さっきも言ったけどうちは母親が死んでんだ。うちは神道だから母親に神頼みする感じで来てる」
付いてきてもらってる以上説明せざるを得ない。
「あと昔ここで誓った自分を変えるってのができてるか確認するためってのもあるかな?」
「へー…」
武田美穂は無表情になって俺の話を聞いたあと…
「どうして変わったの?」
少しばかり息が詰まった。
こいつも俺の過去を知っているのだろうか?
また俺はあの肩書きに付きまとわれるのだろうか?
「俺の過去知ってんの?」
武田美穂はうすら笑いを浮かべて
「私たち世代では知らない人はいないでしょう川原啓くん」
「まあ結構有名人だったけど…俺苗字変わってるだろ?」
「それでも面影はかなり残ってると思うよ。でも君は学校で見た時から昔の君とは違う感じがして確信はなかったんだよ。昔の明るいキャラとは違ってて…」
「その話はやめよう」
俺は話を途中で止めた。いや、止めさせた。
これ以上聞きたくなかった。まだ俺は過去を過去として捉えられていない。
ーどうして変わるの?ー
そういえば昔ここで聞かれたっけ?あの人と
あの人の子供に。
ー母さんはもういないから!僕は日高家と違って自分で選ばなきゃいけないからー
「昔の俺は昔の俺やから、今の俺とは別人。
変わるきっかけがあったとしても、それも単なるきっかけやから、過去の事。これで理解してくれ」
「よくわかんない」
俺は聞こえないふりをした。
結局過去の自分の決断を確認する事でしか自分を認識できないなんて過去にこだわっている証拠だ。
過去は過去なんてまだ過去をそう捉えられていない俺が言える事じゃない。
これ以上は何も言えない。
「じゃあ質問変えるね」
「なんだよ」
「どうして芸能界辞めたの?」
「それ、結局同じ事聞いてないか?」
「若干違うよー」
「もう何も言うことねえよ」
「あー逃げたな」
「遅れるから早くしよう」
俺たちはお祈りをした。