転校生と過去3
宿題の提出は明日となったのでクラスの半数以上で武田美穂の歓迎会という事でカラオケボックスに来ていた。
俺はカラオケなどほぼ行かないのだが今回はワケが違う。父親からの監視命令付きだ。
「千賀が来るなんて珍しいじゃん」
クラスの女王岡本真紀が話しかけてきた。
「まあね」
愛想笑いで誤魔化す。女王にはおとなしく従わないと後でえらい目に遭わされるのだ。
「あんたクラスで無愛想だし、付き合い悪いから今日も来ないかと思ってたんだけど」
なんか目つけられてるのか?付き合い悪いからあいつ気にくわないみたいな。
「まあ盛り上げてね〜」
岡本はそう言うと離れていった。
カラオケでは盛り上げてね〜なんて言ってた岡本が一番盛り上げてた…とはましな言い方でただうるさいのだ。
次から次に曲を歌う。踊りに踊る。みんなは合わせる。苦笑い。
なんだかねかわいそう…っていうか踊る姿とかほんと蛾みたいだね。お蛾本って感じ。
そもそもこれ武田美穂の歓迎会だよな?
「千賀なんか歌えよ」
牧原が話しかけてきた。
「千賀普段あまりカラオケ来ないからね〜」
「わたしも聞きたい」「おれもー」「僕もー」
歌か…嫌なんだけどな。付き合い上仕方ないな。
あれ?いつ以来だったけ?歌うの。
「じゃあ一曲…」
最近流行りのバラードを歌う。
…なんだろうこの雰囲気?
歌い終わるとザワザワしてた部屋がシーンと静まりかえっていた。
なんか牧原は口をぽかーんと開けてるし、祐樹も同じようだし、お蛾本はなんか鼻ズルズルしてるし…
「千賀…お前スゲぇ…」「わたし泣きそう…」「そこらの歌手よりうまい…」
歌は昔からうまいほうだったから自信はあったけど、この反応はなかなか嬉しい。
昔の俺なら歌ってすらなかっただろうからここでも変われた自分を実感できた。
ふとスマホのアラームが鳴った。一応セットしておいたのだ。
「武田、時間だ」
武田美穂の方を見ると満面の笑みを浮かべて嬉しそうに「うん」なんて言われた。
えーと普通に可愛い…んだろうな一般の目から見たら。
「は?」「ドユコト?」「エ?」
みんな意味不明と言った表情で説明を求めてきた。
「うちの親父の会社は芸能プロなんだよ。こいつは今日からうちに移籍。そして親父に連れてくるよう頼まれてんだ。」
さっきと同じような静寂の後…
「「「えええええええええ」」」
一つ分かったのは人の声はハモりすぎると鼓膜を破りかねないことだ。