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killer tune  作者: radai
2/16

新学期と雨

ーこけこっこ〜ー

朝7時にセットしておいた目覚まし時計が鳴り千賀啓は目を覚ました。

朝は間抜けなニワトリの声だよな。

昔から朝の寝起きはいいから寝坊はしない。なんとも便利な体である。

それが俺のちょっとした誇りだ。

なんか年寄り臭い特技なので口外したことは一度もない俺自身の秘密。

朝の支度を始める。

着替え、寝癖、そして1人の朝ごはん。

いつものルーティーンをそっと静かにこなしていく。

父親と妹はいつも起きるのは8時なので起こさないよう家を出る。

雨が降っていた。

雨は嫌いだ。

服は濡れ、髪はボサボサになり、昔からの体質なのか頭痛と腹痛のダブルパンチをくらいやすいからだ。

今日は幸いどちらも起こっていない。ありがたやありがたや。

「啓」

振り返ると同級生の高田祐樹が立っていた。

「はよ〜」

「今日はなんともないのか?」

「最近は体質改善されたんかな?なんともねえんだよ〜」

「そうかそうかそうか」

「青汁飲んでるからかな?」

「…お前って年寄り臭いな」

祐樹がククッと笑う。

俺はこいつのでかい図体もいかつい顔も好きではないのだがこの笑顔だけは唯一好きなのだ。

「宿題はやってきたのか?」

「俺はてめえとは違って成績優秀やぞ、おまえこそやっとるんか?」

「俺は数学以外は終わってる。どうだ?進歩だろう」

「終わってるっち…どっちの意味?」

「さっ…さあ?…」

こいつは数学だけは異常にできるのですぐにわかる。

「夏休みはドラムばっかしてたのか?」

「軽音部だよ。当たり前だ」

祐樹は軽音部でドラムを叩いている。

その図体とは対照的に素晴らしいリズムキープでバンドをまとめている。

「啓もうちのバンド入ってみるのはどうだ?」

「何回目だよ?いい加減諦めろ」

「あと一人欲しいんだ。どうしても。啓ならギターうまいしもってこいなんだ」

「他を当たれ」

「うううう…ケチ」

「拗ねても可愛くねえから無駄だ」

俺が入ってもきっと持て余すだけだろう。

何より歌が嫌いなんだ。俺は。


「新学期ってのはやっぱりやなもんだな」

「全くだ」

「今日は早く終わるし、遊ぼうや」

「ほう、誘いはありがたいが…多分帰れないだろう」

「あぁ」

宿題をほぼしていないのだ。そりゃあ何かしらお咎めがかかるのも仕方がない。

「しゃあないな…」

「…」

「なんだよ」

「今ふと思ったんだが…ほんと方言抜けないな」

「そりゃあ向こうに3年もいたけん、なかなかねえ」

「それに…変わったし」

「俺は変わったよ。俺は人生楽しむ事にしたし」

「そうかそうかそうか」

またニカっと笑う。

こいつは母親が死んでから祖父母の家に引っ越していたその前の俺を知っているので俺の変化にすごくビックリしているらしく何度も何度も変わったことを告げてくる。

それを聞くと変わろうと努力した自分をきちんとわかってもらえている気がして、なかなか嬉しく感じるのだ。

「ならもっと楽しくするためにバンドは…」

「さて、2学期頑張りましょ〜」

「話をそらすな〜」

雨の中、俺たちは校門をくぐった。

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