試験と私見
眠い、痛い、だるい。
朝起きると机で寝ていた俺は身体中が痛かった。
テスト勉強も中途半端だしバイトも終わらなかった。最悪だ。
とりあえず風呂に入る。身体を起こさないとマズイし臭いのは嫌だ。
「兄さん、風呂ですか?」
「萱、起こしたか?」
「朝の見直しです。中学生も今日はテストです」
「そうか」
「朝はトーストだけでいいですか?」
まあトースター入れるだけだから料理下手でもそれくらいできるだろう。
「よろしく」
「わかりました〜」
ドタドタと足音が遠ざかっていった。
昨日のことをふと思い出す。俺は武田美穂と昔に会っているらしい。しかもそれを隠そうとしている。
小さい頃の記憶は印象深いものしか残っていない。そこから引っ張り出すのはほぼ不可能だろう。
いくら考えてもどうしようもないものはほうっておこう。…どうしようもないけど、結局テスト勉強できなかったことはほうっておけない。今回はマシで勉強できてない。ついに上位陥落となるかもしれん。ヤバいヤバいヤバいヤバいヤバい…
「兄さんいつまで入ってるんですかー」
かなり時間が経ったらしい。俺は慌てて風呂を出た。
「啓おはよ」
「おはよ〜祐樹…」
「疲れてるのか?勉強してたとか?」
「できんかった…今回マズイよ…」
「お前のマズイは俺がどう頑張っても取れない成績だ。嫌味か」
「俺とお前は出来が違うんだよ、ってか夏休みの宿題、お前どうすんの?」
祐樹は黙るとかしこまってこっちを向いた。
「啓。俺、昨日のお前の歌聞いてさ、なにも手につかなかったんだ」
「なにそれ。あんたのせいだから責任とりなさいよ!みたいなオチか?」
「そうだ」
「えっ…身体でか?」
「…なんかエロくなってないか?でも確かにお前の身体が必要なんだ」
「嫌だよ。初めても二回目も三回目も女の子がいい」
「そうじゃなくて…」
祐樹は呆れ顔になってまたあの誘いを言ってきた。
「バンドに入ってくれ。頼む」
「ヤダ」
「少しは考えてくれよ…」
やっぱり歌うんじゃなかったな。少なからず歌ができるとバレたらこいつはより俺の勧誘に本気を出すだろうとは思っていた。
「悪いけど絶対やらない」
「どうしてだ?いつもいつも俺は断ららてばかりだから教えて欲しい」
「いいたくねえよ」
「…でも俺は諦めないからな。あんなの聞かされてじっとしてらんねえんだ」
祐樹真剣な眼差しで宣言した。
いつか諦めてくれるのを期待していたんだけどな。こうなるとこいつはこの件ばかりで頭がいっぱいになるから先が思いやられる。
そろそろ理由話して諦めてもらうか。
「お前のこともバンドのメンバーに話したから前向きに検討してくれ」
「げっ、メンバーって…見理さんとかか?」
「もちろん」
あの人は何よりも苦手なんだけどな。苦手な人ランキング堂々一位だから関わりたくないんだけど。
「放課後に一応スタジオルームに来て欲しい。待ってるから」
「ラブレターの最後みたいだな。いつまでも待ってます!みたいな」
「ラブコールだよ。この場合」
見理さんいるなら行かねばなるまい。無視したら殺される。
結局テストのことなど忘れていた。