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謎だらけの一部解明

「ほぅほぅ……こうなっているのか」

「くっ……うくっ……」

「なるほどなるほど、やはりキミ達は面白い。ここ数回の内で一番だ」

「いっ……あくっ……」

「……あのー、ハカセ?」

「何かな?」

「そろそろ楽にさせてあげません?」

「いいや、もう少しだ」

「はぁ……」

やれやれ、研究熱心というかなんというか。

「ハカセの華麗なテクにより、ユイカは悶絶するのだった まる」

「変な言い方すんな! しかもそれ今使うのかよ!」

「忘れないようにね、いつまで覚えてるか分かんないし」

「とにかく! 悶絶なんてしてねぇか……あっ」

今のユイカはハカセにより黒い紐を手繰り、髪の中に手を入れられている状態。最初の頃のように気持ち良すぎて声が漏れているようだ。

「ふむ、なるほど」

ハカセの手が離れた。

「はぁー……はぁー……」

ユイカは肩で息をしている。よっぽど疲れたんだな。

「キミ達、名前の由来はあるかな?」

名前の由来?

「由来も何も、わたしは本名ですよ。ユイカは忘れてたみたいだからわたしがつけましたけど」

「なに?」

ハカセは怪訝な顔を浮かべた。

「……ふむ、やはり彼女らもまた……」

何か呟いている。

「……まぁいい、キミ達の事は長く調べていこう」

「はぁ……」

長く調べるほどなのかな?

「さて、一応キミ達の関係を言っておくと、一人の参加者と、一つの思い形見だ」

思い形見?

「思い形見ってなんだよ?」

あ、ユイカが復活した。

「思い形見とは、参加者が戦う為に使う武器のようなもの、例えば、ヒカルの持つレイピアがそうだ」

「コレは思い形見と言うのか」

ヒカルがレイピアを抜きながら呟いた。

「思い形見は、死んだ後、最初に手が触れた物が該当する。ヒカルはそのレイピアに触れたんだ」

「触れるもなにも、持っていたからな」

「そんな感じで、参加者であるサキにも思い形見が持たされているのさ」

……サキにも?

「まさか……」

「その通り、ユイカだ」

ユイカが、わたしの思い形見?

「その紐は思い形見となった物の名残、おそらくキーホルダーの類いだろう」

「キーホルダー……」

その言葉を言った瞬間、頭に痛みを覚えた。

「っっ!?」

急激な痛みに頭を押さえうずくまる。

「サキ!?」

ユイカの声が聞こえ、次第に意識が遠くに移動した……





……誰かの声が聞こえる。



ほら、見てよコレ、  にそっくり



いや、全然そうは見えないけど……



えーそう? この辺りとか似てない?



あー……まぁそこだけなら



でしょ? よーし、これからいつも持ち歩くね。これでいつでも  と一緒



……ごく一部しか似てないけどな




2人の会話、その片方が持っているキーホルダーが、ユイカにそっくりだった。





「………キ! おいサキ!」

「ん……?」

ユイカの声、どうやらまた記憶を思い出していたみたいだ。

ユイカそっくりのキーホルダーを持った人と、そのキーホルダー、つまりユイカにごく一部似ている人との会話。名前は聞こえなかったけど、多分どちらも女の子だったかもしれない。そして、片方は多分わたしだ。記憶として思い出したし、その証拠にキーホルダーのユイカがここに居るから。

「大丈夫かい?」

ハカセの冷静な声が聞こえた。

「……はい、もう平気です」

わたしはゆっくりと顔を上げた。

「何があったんだい?」

「なんというか、記憶を思い出しました」

包み隠さず今思い出した記憶を話した。

「確定だね、ユイカは元々キーホルダー。そしてサキが死んだ後最初に手が触れ、思い形見になった」

「あたしは参加者じゃなかったのか……」

「驚いたかい?」

「いや、よく考えりゃ繋がってる時点で何かしらあんのは予想してたからな、今さらその程度じゃ驚きも落ち込みもしねぇよ」

「順応が早いね、良いことだ」

「それで、わたし達はこれからどうすれば?」

ユイカが参加者ではないとして、これからはどうすればいいのか。

「なに、今まで通り戦えばいい。2人で、な」

「若干反則気味ですけどいいんですか?」

「構わないさ、過去にも2人組で1人を襲った参加者達もいる」

「む、悪い奴らだな」

ヒカルが反応した。

「それに、キーホルダーではないが人形を2つ持って来た者もいた。あれは三対一だったな」

「そりゃ賑やかだな、3人で会話しながら歩いたんなら」

「いや、そうじゃない」

ユイカの言葉をハカセは否定した。顔にかけた眼鏡を少しだけ動かして立ちあがり、本棚から一冊の本を取り出した。それを机に置いて再度腰かける。

「彼女の持っていた人形はただのドールだ。能力により毒を布から中に染み込ませて体積を増やし、自動化を可能にしていた。その手に触れた相手は毒が体に入り、次第に毒が回り……いつの間にか……」

「……」

怖い参加者もいたものだ。いったいどんな人だったのだろう?

「つまり、喋る思い形見など今まで存在していなかった。ということだ。しかし、今目の前にある、いや、いる、ユイカは喋っている。前例が無い現象だ」

「ふぅん、アタシはハカセにとって良い研究対象ってか」

「キミだけでは無い。サキ、キミの記憶喪失もおかしい」

わたしの記憶喪失も?

「本来参加者が失う記憶は名前のみだ。だがサキは至るところの記憶を忘れ、名前を覚えている。これもまた前例が無いんだ」

つまり……

「わたし達、揃って珍しいってことですか?」

「珍しいなんてレベルじゃない。異質の塊だ」

「あんま良い風に聞こえませんね」

「だが事実だ。キミ達をここへ来させる為に少年は伝言を頼んだんだな、納得だ。そういえば、数回前もそんなことがあったな」

何かしみじみと思い出したような顔をしている。

「あぁそうそう、一応言っておくが、ズルをしたくないならコレからも必ず2人で戦うことだ。毒の人形使いと同じく、サキではなければ相手が勝てないのでな」

あぁそっか、わたしは参加者でユイカは思い形見、倒せるのはわたしだけなのか。

「なんかふこーへーっすね」

「仕方ないだろう、キミは参加者、この世界に来た以上戦って勝敗がつくのは決定事項なのだから」

「そうですよねー……あ」

「どうした?」

「いえ、最初の方でユイカだけが戦った時がありましてね」

つまりアレはあのままだったら相手絶対勝てなかったってことだ。

「それはアレだ、キミ達が知らなかった。という一言で片付けたまえ」

「はーい」

あっさり解決した。

「とにかく、サキ、ユイカ、ヒカル、キミ達は今から私の助手になってもらう」

「助手、ですか?」

「いきなりっすね」

「とにかくに繋がらねぇぞ」

ハカセの言葉にヒカルとわたし達は総ツッコミ。

「この部屋に来れた、まぁ対価みたいなものだ。私が驚きそうな謎を持ってきてくれればそれでいい。私はここから出られないのでね。それと、サキは記憶が戻る度にここへその方向をしてくれたまえ」

「それで、わたしとユイカの謎が分かるんですか?」

「分かるかもしれないし、分からないかもしれない。ただ何もヒントが無いよりは答えを探しやすいので、よろしく頼むよ」

「はぁ……まぁ、了解っす」


かくして、わたしとユイカとヒカルは、ハカセの助手にさせられたのだった。


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