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黒い扉

ユイカは財布を開けて中を見て、項垂れた。ヒカルに勝っても、中身に変化が無かったからだ。

「どうっすかな、別にそこまで支障はねぇけど。もう少し動きやすい服の方がアタシは好きなんだよ」

「それフリフリだからね。わたしは似合ってると思うけど」

「お世辞はいらねぇぜ」

「お世辞じゃないよ、可愛いよユイカ」

「なっ、か、可愛い?」

「うん」

「な、なな、」

ユイカの顔が真っ赤に染まっていく。分かりやすく照れているな。

「そ、そんな事より、次の参加者を探そうぜ」

あ、ごまかした。

その時、

「うっ……あ、貴女達」

ヒカルが起き上がった。

「はよっすヒカル」

「よっす、悪いがアタシ達の勝ちだな」

「あぁ、それは別にいい。ただまだ貴女達が側にいてくれて助かった」

「どうゆう事?」

ヒカルは立ち上がってレイピアを納めると話した。

「貴女達にメッセージを届けてくれと頼まれた」

「誰に?」

「神にだ」

神……ってことは、あの妙に聞き取りにくい声か。

「なんて?」

「黒い扉を探せ、と」

黒い扉?

「扉ってぇと、ここに来た時に入ったようなアレか?」

「その色が黒いのを探せ、って事?」

「それは……なぁ?」

「うん、ムズいね。かなり」

あの真っ暗な場所で黒い扉。砂漠でコンタクト探すぐらいのレベルだと思うな。でも、

「まぁ他に目的も無いし、探しながら参加者と出会えばいいかな?」

「だな、そうと決まったらここを出て…」

「あの、貴女達」

ヒカルが口を挟んだ。

「良かったら。私も付いて行っていいだろうか? 神からの助言、それは今一番神に近い証になるのだ。もちろんその黒い扉探しも手伝おう」

「だってさ」

ユイカに視線を送る。

「おぅ、別にアタシ達は構わないぜ。しばらくよろしくな、ヒカル」

「こちらこそ、よろしく頼む」




「こうして、ヒカルが仲間になった まる」

「またそれかよ」

「隙あらばやってくからね。ユイカも油断しちゃダメだよ」

「いや、油断も何もねぇだろ……」

「さっきから何を呟いているのだ?」

わたし達は扉を出て再び暗い空間に来ていた。昼夜の概念が無いと言っていた通り、明るさに変化は全く無い。

「この中から黒い扉を探すの?」

「結構キビい話だぜ、なんでソイツはそんな事言ったんだ?」

「分からない、あれきり声をお聞き出来ないんだ。ただ、神直々の助言だ、聞いておいて損があるわけ無い」

「ふむぅ……ま、のんびり探そうよ。別に時間制限とか無いんでしょ?」

「時間分からねぇしな」

「神は時間に関しては何も言っていなかった。だから平気だろう」

「じゃ、探しますか」

今出てきた扉から離れて、わたし達は歩き出した。






それから数分……まぁ時間はよく分からないんだけど、多分それぐらい経った時、

「あったね」

「あったな」

「やはり神は嘘をつかないのだな」

わたし達は黒い扉を見つけた。

本当に真っ黒な扉だった。さっき入って出た扉と少し飾りが違うけど、空間の中にその扉は浮いているところは同じで、暗い空間の中なのに、その黒い扉は光っているわけでも無いのに見ることが出来た。

「で、黒い扉を見つけてどうすりゃいいんだ?」

「そこまでは神もおっしゃらなかった。ただ黒い扉を探せ、と」

「やっぱり、入るとか?」

扉を見つけたら他に選択肢は……

「もしくはピンポンダッシュ」

「いやインターホンねぇし」

「ノックしてダッシュするとか? ノックダッシュ」

「するな。つうかさっきの扉考えたら誰も出てこないだろ」

まぁ家の扉じゃないしね。

「やはり入るしかないな」

「じゃあ、開けるぞ?」

ユイカがノブに手をかけた。ゆっくりと捻り……

「……ん? なんだ、こりゃ、開かねぇぞ?」

扉を押すが、開かなかった。

「鍵かかってるのかな?」

「でもカギ穴はないぜ?」

となると考えられるのは……

「押してダメなら引いてみれば?」

「それ扉には使わない言葉じゃねぇか? 第一それで開いたら…」

ユイカが扉を引いた。

すると、黒い扉は開いた。

「……」

それを見てユイカは茫然とした表情になった。

「引き戸だったね」

そういえばさっきの扉もユイカ、押してたっけ。

「よし、じゃあアタシから入るぞ」

開き直ったユイカが先人を切って中へ入った。

続いてわたし、ヒカルの順番で黒い扉の中へ、

「うわ、なんだよこの部屋」

最初に入ったユイカが中を見て驚いていた。

黒い扉の先には部屋、例えるなら、書斎というものがあった。

わたし達の背より高い棚が部屋の壁に並び、その全てに本が収まっている。

扉が部屋の中央にあり、その正面には机と椅子がワンセット。その更に奥は棚ではなく真っ黒な壁だった。

机の上には本が数札と万年筆……と羽根ペンとボールペンとシャーペンと鉛筆が並んで置いてあった。

「いったいどれを一番使ってるんだろう……」

「そこじゃねぇだろ」

ユイカの冷静なツッコミが入った。その時、

「おや? 客人か?」

机の奥、黒い壁が急に波打った。

何事かと見ていると、壁の中から人が現れた。

ほどけば長そうな髪を頭の左側で一つに結び、顔には眼鏡。服の上に白衣のような形をした黒色のものを着ている。黒衣っていうのかな?

手には一冊の本と、一本のペンを持っていた。

「貴女は、この部屋の主か?」

「まぁそうだね。私の部屋、私の研究室だ」

研究室? ということはこの人、博士か何か?

「では私からも訊こう。キミ達は今回の参加者だね?」

参加者、大会に参加しているわたし達だ。

「はい、私の名前はヒカルといいます。神に黒い扉を探せと助言を受け、探し当てたのです」

「何だか変わった話し方をするね。神というのは、だいたい誰だか分かったよ……ところでキミ達」

博士っぽい人はわたしとユイカを交互に指差した。

「なんでしょう?」

「それは何の遊びかな?」

わたし達の黒い紐を示した。

「もしくは能力の類いかな?」

「いえ、遊びとか、能力? とかじゃないと思います」

実際よく分からないけど。

「ふむ、今回もまた変わった参加者を送って来たようだね。暇しないのは良いが同時に3人は最早面倒というものだ」

うん、この人も変わってるなー。

「まぁいい、ここへ来れたというだけでキミ達はついている」

博士っぽい人は手に持っていた本にペンを走らせた。それを閉じると、床から椅子が三つ現れた。

「掛けたまえ、新たな参加者達よ」


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