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VSヒカル

さて、対ヒカルとなったけど。

「どうする? ユイカ」

構え等からして前に会った2人より強そうだと思う。それにコンビネーションを見せようとか言ったけど、初めてだから会うかもよく分からない。

とりあえず、発案者ユイカに訊こう。

「そうだな、アイツの獲物はレイピア、リーチはコッチの倍以上だ。でも懐に入れば勝機が無い訳じゃない。どうにか飛び込むべきだな」

なるほど、予想外にも頭脳派な一面もあるみたいだ。

「なんか言ったか?」

「別に何もー」

あとやっぱりエスパーかも。

「片方が正面で戦って、隙をついてもう片方が飛び込む。コレでどうだ?」

「役分けは?」

「サキが飛び込む役だ。アタシより小回りも身動きも取りやすいから、どうだ?」

「ん、おっけ」

わたしは黒い紐を伸ばした。コレから邪魔にならない程度に長く伸ばすと、

「いつでも行けるよ」

ユイカに合図を送る。

「よし、行くぜぇ!」

ユイカが前へ出た。わたしも数歩後ろからついていく。

「え?」

すると、ヒカルは声を出した。

「貴女達、獲物は無いのか?」

「そんなもん無ぇよ、アタシ等は拳で戦ってんだ!」

間合いに入ったユイカがストレートを放つ。

ヒカルが避けると、続け様にラッシュ。ヒカルは全ての拳を避けている。やはり今までで一番強そうだ。

とその時、ヒカルが右側に大きく動いた。

わたしはその隙をつき、ユイカの後ろから前へ出て左ストレートを放つ。

「くっ!」

ヒカルはとっさに腕で防ぐが、

「コッチががら空きだぜ!」

そこへユイカが左からフック、ユイカの脇腹に当たった。

ヒカルは後退して間合いを開ける。

「……流石に二対一は分が悪い。だがしかし、私にはまだ秘策がある!」

レイピアの先をこちらに向け、ヒカルは前へと出た。

「さっきみたいに行くぞ!」

ユイカも前へ、わたしも数歩後ろにスタンバイ。

「はぁっ!」

ヒカルがレイピアを突き、

「オラァ!」

ユイカが右ストレートを放つ。

互いの攻撃は互いの肩に当たった。見た目的にはレイピアで突かれた方が痛そうだけど、威力はおそらくユイカの方が上だ。

互いに後退する。

「へっ、なかなかやるじゃねぇか」

「ユイカもな、よく剣相手にここまで迫れる」

「コッチの拳が当たる範囲に入らなきゃ意味無いだろ」

「確かにな……だがしかし、今のを避けなかったのは致命的だな」

「は?」

ヒカルはレイピアの先を向けた。

「このレイピアには特殊な力がある。切っ先で刺された者は、一時的に動きが鈍くなるのだ」

まるで魔法みたいな力を持ったレイピアだな。

そういえばさっきの女の人も裁ち鋏から赤いひし形みたいなのを飛ばして、当たった箇所がぱっくり切れていた。アレも特殊な力だったのかも。

……でも、

「で? いつ鈍くなるんだ?」

ユイカはさっきから普通に動いていた。とても鈍くなったようには見えない。

「なっ……何故だ?」

「お前の勘違いじゃないか?」

「そ、そんなはずはない。前に戦った者達は、皆刺された瞬間、動きが鈍くなったんだ」

「じゃあ、きっとソイツ等の鍛え方が足りないんだ。その分アタシは鍛えてるから一回じゃ効かないんだ」

「そうか……なら、もう一回当てるだけだ!」

切っ先を向けたままヒカルが前へ。

「はぁっ!」

ヒカルがレイピアを突く、それに対してユイカは、

「分かってて当たるかよ」

さっと避けてしまった。

「おらぁ!」

隙だらけになったヒカルに右ストレートを叩き込む。

ドグッ

かなり痛そうな音がしてヒカルの腹に拳が入った。

「はっ!」

しかしヒカルは痛みを感じていないのか、レイピアを更に振るった。

「おっと」

ユイカはそれを避けると、後ろに下がって間合いを取った。

「結構良いのが入ったと思ったんだがな」

効いていない感にユイカも首を傾げる。

確かにそうだ。今まで戦った人も、顔とかに当てたら少し怯んでたけど、痛そうな感じは全くなかった。

わたしだって、あれだけ大きな傷ができて痛みは全く無かった訳だし。

「でもダメージはある筈だよ。今までもそうして倒してきたんだし」

「だな、そうと決まればもう一回だ。チャンスだったらすぐに攻めろよ」

ユイカが前へ出た。わたしも数歩後ろを付いていく。

「くらいな!」

拳を握ってヒカルと間合いを詰めるユイカ、

「その状態、さっきの言葉を忘れたのか?」

ヒカルはそれに、レイピアを構えて待った。

そうだった、確かヒカルのレイピアは切っ先で刺されると動きが鈍くされてしまうんだとか。でも一回刺されたユイカは全く変化無し、本人が一回じゃ足りないと言っていた。

なら、二回刺されたらどうなるんだろう。

この状態、さっきの相討ちと同じだ。このまま同じようになれば、ユイカでも動きを鈍くされてしまうかもしれない。

ヒカルはレイピアを突いた。前には拳を握ったユイカが立っている。

だが、

「忘れちゃいねよ」

その刹那、ユイカはその場にしゃがんだ。

そして、片足を伸ばしてヒカルの足を蹴りつけてバランスを崩させた。

「なにっ!?」

ヒカルは目を丸くした。

まさかあのロングスカートで足技のフェイントとは、わたしも予想外だ。

「今だサキ!」

わたしはしゃがんだユイカを飛び越え、ヒカルの寸前に着地、そこでバランスを崩しているヒカルに右ローキックを……

「さすがに虚をつかれた……だがしかし、甘い!」

ヒカルはすでにバランスをほぼ取り戻していた。

「はっ!」

右足で踏み込み、レイピアが突かれた。

その先には、攻撃状態のわたしが居て……

トスッ!

わたしは避ける間も無くレイピアを受けた。

曲がったレイピアの刃が戻る反動と共に、わたしは後ろへ飛ばされる。

「サキ!?」

「隙ありだ!」

ユイカもヒカルに突かれ、後ろへと飛ばされた。

わたし達はどうにか足から着地した。

「おい大丈夫か?!」

「うん、ちょっと驚いたけど、痛みは無いし…」

その時、変化に気付いた。

「あ、あれ?」

「どうした? どこか痛むのか?」

「ううん、痛みは無い、けど……」

「けど?」

「……体が、動かしづらい」

まるで全身がマヒしたみたい。関節部が油が切れた人形みたいにギシギシと鳴って、ようやく動かせられる感じだ。

コレが、ヒカルの言っていたレイピアの特殊な力なのか。

「あの言葉、本当だったみたいだね」

口は普通に動くな。

「ユイカこそ、二度目刺されたけど」

「いや、なんともねぇ」

ユイカは腕をぶんぶんと振り回した。全く鈍っているようには見えない。

「頑丈だね」

「まぁな、じゃあサキはちょっと休んでろ、アタシが一人でやって来る」

「うん、よろしく……」

手を振ろうとするけど、腕が挙がらなかった。

「任せな」

ユイカが前に出る。

わたしはユイカが動きやすくなるように黒い紐を伸ばした。うん、これは普通に出来る。

しかし、ヒカルは変わった武器を持っているな。

わたしが起きた時には隣にユイカが居て紐で繋がれてただけなのに。まぁ拳で戦うの得意だけど。

とにかく、早く回復する事を願おう。





「さっきの言葉、ウソじゃなかったみたいだな」

ユイカがヒカルに話しかけた。互いに後数歩入れば攻撃の届く距離で止まっている。

「もちろんだ。すでに二回貴女も刺さっている。次で効き目が出るだろう」

「どうかな、アタシはそんな柔な鍛えはしてないぜ」

「だとしても、私は貴女達に勝ち、神の所へ行かなくてはいけないのだ」

「神……ねぇ」

「いない、とでも思っているのか?」

「いや、別、に!」

ユイカが一歩前へ、ヒカルは待ち受けてレイピアの切っ先を突いた。

「っ!!」

咄嗟に避けたユイカの頬をかすった。拳を握って、ヒカルの肩を殴る。

殴られた反動で後ろに下がったヒカルはレイピアを引いて再び突く。

パシッ!

なんと、ユイカはそれを掴んでしまった。

「甘いな、突きのワンパターンしかなけりゃ、もう見切ったぜ」

「くっ……」

刃を握られた為、切っ先を使う事が出来なくなり、加えてヒカルの動きを封じた。ただしそれはユイカも同じだ。

「さっきの続きだけどな」

その状態のまま、ユイカはさっきの続きを語り出した。

「神様は、思ってる奴の所には現れるんじゃないか? 現に神様を願ったヒカルは、こうしてここに居んだろ?」

「……!!」

ヒカルは目を丸くして驚いた。

「……そうだな、私はこうしてここに居るのは、神を思っていたからだ。だがしかし、直接会えたわけではない。つまり神は私達の声に答えてはくれていなかった。今のこれは、神が私のことを見てくださってからなりえた事……故に」

レイピアを持つ手に力を込め、引き抜こうとする。

「私は神に会わなくてはいけない! だから」

それに気付いたユイカは握る手に更に力を込めた。

「あたしもな、会って願いを叶えてもらわなきゃいけないんでね……だから」




「勝つのは私「あたし」だ!」




2人の声が被った。

その直後、




「わたし達、でしょ?」

3人目の声が加わった。まぁわたしだけど。

「サキ!?」

「ユイカ、そのまま!」

動けるようになったわたしは、ユイカの真後ろにいた。

「肩借りるよ」

ユイカの両肩に手を置き、わたしは跳躍。ユイカの肩の上で逆立ちになった。

「いぃ!? サキなにやっ…」

そこまでユイカの声が聞こえた。

わたしは逆立ちの状態から、重力に従ってユイカの前へと落ちていき……

「しまっ!?」



ガスッ!



前にいたヒカルの頭に踵落としを叩き込んだ。

「かっ……」

コレはさすがに効いたらしく。ヒカルはレイピアから手を離し、そのまま仰向けに倒れた。

着地したわたしの隣にユイカが並び、倒れているヒカルを見た。

ヒカルはぴくりとも動かない。多分、勝ったのだろう。

「勝った……のか?」

「うん、多分」

「そっか……じゃあ」

「うん」


わたしとユイカは、ハイタッチで勝利を祝った。


レイピアに対して、拳で戦い続ける2人。

サキとユイカには、武器が無いのか? それとも?


それでは、

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