表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/31

少し休憩

「いや〜、サキって強いんだな」

「何言ってんの、ユイカの方が倍強いよ」

「いやいや、アタシにはあんな長期戦は出来ねぇよ。カウンターのカウンターとかもな」

短気ってことだね。

「なんか言ったか?」

「いいえ何もー」

後エスパーっぽい。

「ところで良かったの? ユイカも戦わなくて」

先ほど戦った女の人はもう起きただろうか? 倒れたままほおって来てしまったけど。

「アタシ達は二人一組、同じ相手と二戦する必要はねぇよ。それより、傷はどうなった?」

「あーアレ? 治った」

肩につけられた傷はいつの間にか治っていた。見た目に反して血は出なかったし、痛みもなかった。

やっぱり、この世界はおかしい事が在りすぎる。あの傷も、痛みが無いのも、そしてやっぱりこの紐も、

でも、今一番解決しなくてはいけないのは……

「お腹へったー」

「いきなりなんだよ」

さっき動きまくったからだろう、スゴい空腹だ。

「お腹と背中がくっつくぞー」

「んなこと言えてりゃまだ余裕だな」

「ユイカはへってないの?」

「ぜんぜん、別に満腹でもないけど空腹でもない」

あんなに動いたのに? まぁいいや、とにかく何か食べる物は……

「あ、屋台だ」

少し前に屋台を発見した。この際種類に文句は言わない、あそこで何か買おう。

「サイフサイフ……と」

ポケットを探ると、見つけた。子供の頃から使ってる赤いサイフ、中には紙幣が一枚だけ入っていて小銭はなかった。

こんだけしか持ってなかったっけ? とも思ったけど何か一つなら買えるでしょ。

「ちょっと買ってくるね」

と言ってから必要ないと思った。わたしが屋台に向かえば、繋がれたユイカも必然的に付いてくるから。

ユイカも何も言わず、屋台の元へ向かった。





神よ

我らは貴方を、貴女を、崇拝しています




神よ

我らは貴方が、貴女が、居ると信じています




神よ

我らは貴方に、貴女に、見守られていると思っています





あぁ神よ

なぜ貴方は、貴女は、我らの言葉に応えてくれないのですか?





あぁ神よ

我らが貴方から、貴女から、遠い場所に居るからですか?





ならば、神よ

私は今から貴方の、貴女の、





元を訪れます





「いただきまーす」

屋台から少し歩くと公園があり、わたしとユイカはベンチに並んで座った。

屋台で買ったたこ焼きの封を開くと、ソースの香りがぶわっと溢れた。

「…って、なぜたこ焼きをチョイスした」

「美味しそうだったから」

つまようじで一つ刺して、口に運ぶ。

「むぐむぐ……」

「どうだ?」

「むぐ……うん、なかなかだね」

選んで正解だった。

「そうか、良かったな」

「ユイカもどう? 一つ」

「いや、別にいい。腹減ってないし」

「そんなこと言わずに、一つ」

ぷすっと刺してユイカの口元へ。

「だからいらねぇって」

「いいからいいから」

「……」

根負けしたユイカがたこ焼きにかぶりついた。

「どう?」

「んぐ……普通だな」

「まあね」

たこ焼きを食べながら、わたしは辺りを見回した。

公園内には他に誰もいない時間帯的には真っ昼間ぐらいだろうか、この時間なら幼稚園児とかが遊び来ていてもおかしくない。

「やっぱり、ここも変わってるね」

「今さらだな」

「さっきもだって…」

たこ焼きを買った時の事、屋台の人は一見ただの無愛想に見えた、けどそれにしてもちょっとおかしかった。まるで物を売るだけのロボットのようにも見えた。

「そりゃアレだろ、ここが普通の世界じゃないからだろ」

「だよね……」

多分だけど、わたし達参加者との区別をつける為だと思う。手に物騒な物を持ってよく喋るのが参加者で、そうでないのが違う。分かりやすい区別方法だ。

「……むぐむぐ」

とりあえずはたこ焼きを食べきろう。

「…にしても」

ユイカが呟いた。

「むぐ?」

口に含みながら訊ねる。

「この格好、どうにかなんねぇかな」

両手を拡げて着ている物をよく見せた。

黒と白のツートーンカラーのみ、リボンやフリルの装飾が多く施された長袖に。真っ黒で飾り気一切無しのロングスカート。顔や髪型と相まって西洋人形のような出で立ちだ。

「むぐ……嫌なの?」

「とにかく動き難いんだよ。こんなじゃなけりゃ蹴りも簡単に出せるのに」

スカートを詰まんで愚痴っている。アレだけ強いユイカだけど、格好のせいで動きを制限されているようだ。そうは見えなかったけど。

「どっかで服とか買えねぇかな、最悪下だけでもズボンとか」

「あるんじゃない? 街に洋服屋の一つや二つ」

「そんじゃ、それ食べ終わったら……あれ?」

腰の辺りを叩きながら首を傾げた。

「どうしたの?」

訊ねながらたこ焼きを一つ。

「……財布が無ぇ」

「?」

今のはポケットを探ってたのか。

「サキは持ってたよな?」

「うん」

「じゃあなんでアタシには無いんだ?」

「むぐ……ひょっとして、二人一組だから?」

サイフも二人で一つって事かも。

「マジか……じゃあサキ、さっきのお釣りで…」

「コレだけじゃ服なんて買えないよ」

サイフの中には小銭がじゃらじゃらと数枚、これで服は難しいかもしれない。

「たこ焼きか……」

ユイカはがっくりと肩を落とした。

「まぁまぁ、コレでも食べて元気だして」

たこ焼きを一つ口元へ持っていった。

「はぁ…………んぐ」

ため息をつきながらもたこ焼きを食べた。

そういえばだけど、ユイカはどうやって上を着替えるんだろう? 頭の中とわたしの左腕に黒い紐で繋がってるから、上着が脱げないと思うんだけど……

「んぐ……つかよ、コレからその所持金で行く気か?」

「そんなこと言っても、稼げるものじゃないよ」

「だよな…………まてよ」

何か閃いたみたいだ。

「多分その金は参加者に勝つほど増えてんだきっと、さっきまでに2人倒してあの額だったから、もっと倒せば服買えるくらいすぐに貯まるだろ」

なるほど、それなら納得。

「そうと分かりゃさっさと探しに行こうぜ」

「もうちょっと待って、後二つだから」

その時、

「貴女達」

誰かに呼ばれた。声がした方、公園の入り口を見ると、

「一応問おう、貴女達は参加者か?」

女の人……いや、背は高めだけど多分同い年っぽい、女の子が立っていた。

栗色の髪を後ろで一つに縛っている彼女の腰には、何故か鞘がささっていた。そこにはもちろん剣が収まっている。

「はい、そうですよ」

言いつつたこ焼きをぱくり。

「もう一つ問おう、何故参加者どうしが共にいるんだ? 戦いが終わればそれきりのものだろう?」

「そりゃアタシ等が二人一組だからだよ」

ユイカは頭の横のを掴み、わたしは左腕を挙げて黒い紐を示した。

「ふむ……コレはまた変わった参加者が居たな、だがしかし」

すると女の子は腰にさした剣に手を触れ、一気に引き抜いた。

「誰であろうと、我が望みの邪魔者は倒すのみ。まとめてかかってこい」

引き抜かれた剣は、刃がとても細かった。確か、レイピアとかいう物だと思う。

「だとよ、サキ、せっかくだからアタシ等のコンビネーションでも試してみようぜ」

「おっけー」

最後のたこ焼きを口に運び、入れ物をベンチに置いて立ち上がった。

その瞬間、

「こらっ!」

女の子が大声を出した。

「え……?」

そしてつかつかとこちらへ歩み寄ってくる。

「なんだ? やる気か?」

ユイカは構える。しかし、女の子はわたし達の更に後ろへ行き、

「ゴミはちゃんと捨てろ!」

わたしが置いたたこ焼きの入れ物を掴んで叫んだのだった。



……え? 何、この人?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ